
4月 6, 2025 • インドネシア
2月 2, 2025 • インドネシア • by Erika Okada
目次
BUMN(Badan Usaha Milik Negara)とは、インドネシア政府が所有・管理する国営企業の総称です。日本の「国営企業」に相当し、さまざまな産業分野で重要な役割を果たしています。本記事ではインドネシアの国営企業BUMNについて解説します。
BUMNはインドネシア政府が株式の50%以上を保有する企業で、政府の経済政策や国民の福祉向上に貢献することを目的としています。エネルギー、金融、通信、交通インフラなどの重要な産業で活動しています。
BUMNは2つの主要カテゴリーに分けられます。
① Persero(株式会社型)
② Perum(公社型)
エネルギー関連
金融・銀行
インフラ・建設
通信
交通・物流
4-1経済成長の推進
(1) 大規模インフラプロジェクトの主導
BUMNはインフラ整備の中心的な役割を果たしています。特に、高速道路、鉄道、空港、港湾、電力網の整備など、国の経済成長に直結する分野での投資・運営を担います。
(2) 国家経済の安定化
BUMNは政府の経済政策の一環として、国の経済を安定させる役割を持っています。例えば、国際原油価格の変動が国民の生活に影響を与えないよう、国営石油企業が価格調整を行うことがあります。
(3) 雇用の創出
BUMNは国内最大級の雇用創出機関の一つです。直接雇用に加え、関連企業やサプライチェーン全体での雇用機会を生み出しています。
4-2. 国家財政への貢献
(1) 国庫への利益還元
BUMNは国庫への主要な収入源の一つです。各企業が得た利益の一部は政府に納められ、社会保障やインフラ投資などに活用されます。
(2) 重要産業の保護
民間企業に依存しすぎると、経済危機時に重要産業が崩壊するリスクがあります。BUMNは戦略的産業(エネルギー、金融、通信など)を保護し、外国企業による支配を防ぐ役割も果たしています。
4-3. 社会福祉と国民生活の向上
(1) 価格調整と国民生活の安定
国民の生活に不可欠な燃料・電力・食料・金融サービスの安定供給を担い、市場の暴騰や暴落を防ぐ役割を持っています。
(2) 地方の発展支援
地方の経済発展が遅れることを防ぐため、BUMNは地方の発展に貢献する役割も担っています。都市部だけでなく、地方のインフラ整備や雇用創出を促進します。
4-4. 戦略的・安全保障的役割
(1) 国家のエネルギー安全保障
BUMNは、エネルギーの確保と供給の安定に関わる戦略的な役割を担っています。特に石油・ガス・電力分野では、外国企業の影響を受けずに国のエネルギー供給を維持することが重要です。
(2) 国防産業の支援
インドネシアには国防関連のBUMNもあり、軍需産業の発展や武器の国産化を進めています。
4-5. 技術開発とデジタル化の推進
(1) 国のデジタル戦略の牽引
国営通信会社Telkom Indonesiaは、インドネシアのデジタルインフラ整備を進める重要な役割を果たしています。特に、インターネット普及率の向上やスマートシティ開発に貢献しています。
(2) 産業の近代化
国営企業が技術開発をリードし、インドネシアの産業全体の近代化を推進しています。
インドネシア政府は、国営企業(BUMN)の効率化と競争力向上を目指し、近年さまざまな改革を進めています。特に以下の3つのポイントが重要です。
(1) 民営化の推進:一部BUMNのIPO(株式上場)
インドネシア政府は、一部のBUMNを株式市場に上場(IPO) させることで、民間投資を呼び込み、経営の透明性と効率性を向上させることを目指しています。IPOにより、これらの企業は資本市場からの資金調達が可能になり、事業拡大のための投資がしやすくなります。
最近の主要なIPO事例
政府は今後も国営企業の一部をIPOさせ、競争力のある企業体制を構築する方針です。
(2) デジタル化の強化:TelkomやBank Mandiriがフィンテック分野に進出
インドネシアのデジタル経済の急成長に対応するため、BUMNもデジタル化に積極的に取り組んでいます。特に、通信・金融・物流の分野で大きな進展が見られます。
主要なデジタル化の取り組み
特にフィンテックとデジタルバンキングの分野は急成長しており、国営企業がリードする形でデジタル変革が進んでいます。
国営企業大臣 エリック・トヒル氏
インドネシアの国営企業(BUMN)は、国営企業省(Kementerian BUMN)によって監督・管理されています。この省のトップである国営企業大臣(Menteri BUMN)が、BUMN全体の戦略的指針や政策決定を担っています。
2019年から2024年までのジョコ・ウィドド政権下では、エリック・トヒル(Erick Thohir)氏が国営企業大臣を務めました。彼はメディアやスポーツビジネスでの実績を持ち、特にイタリアのサッカークラブ、インテル・ミラノの元会長として知られています。大臣在任中、トヒル氏は国営企業の改革や効率化、民営化の推進に注力しました。
2024年10月20日に発足したプラボウォ・スビアント政権では、エリック・トヒル氏が国営企業大臣に再任されました。彼の再任は、これまでの改革の継続とさらなる深化を期待するものと考えられます。
国営企業大臣の主な役割は以下のとおりです:
エリック・トヒル大臣のリーダーシップの下、インドネシアの国営企業は、経済成長の原動力としての役割を強化し、国内外の投資家からの信頼を高めることが期待されています。
インドネシアでは、BUMN(国営企業)が依然として就職先として高い人気を誇っています。民間企業や外資系企業と比べて、以下のようなメリットがあるためです。
BUMNはインドネシア経済の重要な柱であり、エネルギー・金融・インフラ・通信など広範な分野で影響力を持つ国営企業群です。ただし、非効率性や財務問題、汚職などの課題もあり、政府は民営化や統合による改革を進めています。
インドネシアでビジネスをする際には、BUMNとの関係が重要になるため、その動向は常に注目されています。
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