3月 1, 2025 • インドネシア • by Delilah

インドネシアの国営電力会社PLN(Perusahaan Listrik Negara)

インドネシアの国営電力会社PLN(Perusahaan Listrik Negara)

インドネシアの国営企業(BUMN)であるPLN(Perusahaan Listrik Negara)は、インドネシア全土に電力を供給する重要な役割を担っています。インドネシアに住まれている方のご家庭の電気もほとんどがPLNによって賄われています。また 新しい店舗ビジネスをされる際にPLNに仕事を依頼した方も多いかと思います。本記事では、インドネシアの社会になくてはならない国営電力会社PLNについて詳しく解説します。

 

PLNの会社概要

PLNは、インドネシア全土に電力を供給する国営企業(BUMN)であり、発電、送電、配電を一手に担っています。 電力会社として、その使命はインドネシアのすべての地域に安定した電力供給を提供することです。

  • 会社名: PT Perusahaan Listrik Negara (Persero)
  • 創業年: 1945年10月27日
  • 本社所在地: ジャカルタ、ケバヨラン・バル、トゥルノジョヨ通り

PLN

 

PLNの創業の経緯やストーリー

PLN(Perusahaan Listrik Negara)の創業の背景には、インドネシアの電力供給の歴史と独立運動が深く関わっています。 19世紀末、オランダ植民地時代に、砂糖や茶の工場が自家用の発電設備を設置したことが、インドネシアにおける電力供給の始まりとされています。 その後、オランダの企業であるNederlands Indische Gasmaatschappij(NIGM)がガス事業から電力供給事業へと事業を拡大しました。

第二次世界大戦中の1942年から1945年にかけて、日本軍がインドネシアを占領し、これらの電力事業は日本の管理下に置かれました。 しかし、1945年8月の日本の降伏後、インドネシアの若者や電力労働者たちは、電力施設を掌握し、インドネシア共和国政府への引き渡しを求めました。 この動きは、独立直後の混乱期において、電力供給の重要性と国家主導の管理の必要性を強く示すものでした。

1945年10月27日、初代大統領スカルノは、公共事業・エネルギー省の下に「電力・ガス局(Jawatan Listrik dan Gas)」を設立し、当時の発電容量は157.5 MWでした。 この組織は、インドネシア全土への電力とガスの供給を担うこととなりました。

その後、1961年1月1日に「電力・ガス局」は「国営電力会社総主事会(Badan Pimpinan Umum Perusahaan Listrik Negara、略称:BPU-PLN)」に改組され、電力、ガス、コークス事業を統括する組織となりました。 しかし、1965年1月1日にBPU-PLNは解散し、電力部門を担当する「国営電力会社(Perusahaan Listrik Negara、略称:PLN)」と、ガス部門を担当する「国営ガス会社(Perusahaan Gas Negara、略称:PGN)」の2つの国営企業が設立されました。 この時点で、PLNの発電容量は300 MWに達していました。

1972年、政府規則第18号により、PLNは公共電力会社としての地位が確立され、公共の利益のために電力を供給する責務を負うこととなりました。 1994年には、政府の方針により民間セクターの電力供給事業への参入が認められ、PLNは公社から株式会社(Persero)へと移行し、現在に至っています。

このように、PLNの創業と発展の歴史は、インドネシアの独立運動や経済発展と密接に関連しており、国家の電力供給を支える中核的な存在としての役割を果たしてきました。

 

 

PLNの事業内容とサービス内容

PLNの主な事業は、以下のとおりです。

  • 発電: 火力、水力、地熱など多様なエネルギー源を活用して電力を生産しています。
  • 送電: 生産された電力を全国の需要地へ送るための送電網の運営・管理を行っています。
  • 配電: 最終的に家庭や企業などの需要家へ電力を供給しています。

また、PLNは再生可能エネルギーの導入や電力インフラの近代化にも積極的に取り組んでいます。

 

 

PLNの主要なマイルストーン

PLNの歴史における重要なマイルストーンを以下にまとめます。

  • 1945年: 「Jawatan Listrik dan Gas」として設立。
  • 1961年: 「Badan Pimpinan Umum Perusahaan Listrik Negara」に改組。
  • 1972年: 「Perusahaan Umum Listrik Negara」として再編成。
  • 1994年: 現在の「PT Perusahaan Listrik Negara (Persero)」として法人化。
  • 2006年: 初の10,000 MW高速開発プログラム(FTP-1)を開始。
  • 2010年: 第二の10,000 MW高速開発プログラム(FTP-2)を発表。
  • 2019年: 環境省から5つのゴールド評価、16のグリーン評価、98のブルー評価を取得。
  • 2024年8月: ジャカルタの大気汚染対策として、スララヤ石炭火力発電所の一部閉鎖を検討。
  • 2024年9月: 2030年までに風力発電容量を5 GWに拡大する計画を発表。
  • 2025年1月: 新たなエネルギー計画で、独立系発電事業者(IPP)の参入を拡大し、政府は送電網の強化に注力する方針を示す。
  • 2025年2月: 新たな電力供給計画(RUPTL)で、再生可能エネルギーの割合を2034年までに約35%に引き上げる目標を設定。

 

 

PLNの過去に発生した問題

PLN(Perusahaan Listrik Negara)は、インドネシアの主要な電力供給を担う国営企業として、その歴史の中でさまざまな課題や問題に直面してきました。以下に、特に注目すべき過去の問題を詳しく説明します。

1. 財務上の課題

PLNは長年にわたり、内部収益の確保に苦労してきました。 政府によって規定された電力料金が運営コストを下回ることが多く、資本コストへの十分な貢献が難しい状況が続いています。 さらに、消費者の電気料金未払い問題や料金値上げに対する抵抗も深刻であり、これらがPLNのキャッシュフローに悪影響を及ぼしています。 例えば、2011年後半、中央ジャワ州バニュマス地区では、PLNの14万の顧客のうち60%以上が電気料金の支払いを滞納し、毎月30万ドル以上の損失が発生していました。

2. 電力盗難の問題

インドネシア各地で電力盗難が頻発しており、PLNの収益に大きな影響を与えています。 これに対処するため、PLNは近年、未払い問題や盗難防止に向けた取り組みを強化しています。 具体的には、新築住宅に対してプリペイドメーターの設置を義務付けるなどの対策を講じています。

3. 汚職問題

PLNの歴代経営陣の中には、汚職に関与したとされる事例もあります。 例えば、2001年から2008年まで社長を務めたエディ・ウィディオノ・スウォンド氏は、特定の調達手続きに関与した疑いで2011年3月にインドネシア汚職撲滅委員会(KPK)によって取り調べを受け、同年12月には5年間の禁固刑を言い渡されました。 また、2019年には、ソフィアン・バシル社長がリアウ州の発電所建設に関連する贈収賄事件で起訴され、一時的に職務停止となりました。

4. 投資プログラムの遅延

PLNは、電力供給能力の強化を目的とした「10,000 MW高速開発プログラム(FTP)」を2006年と2010年にそれぞれ開始しましたが、これらのプロジェクトは大幅な遅延に直面しました。 例えば、FTP-1は2010年までに完了する予定でしたが、2012年中頃の時点で計画された供給量の40%強しか達成されておらず、2014年末でも完了には至っていませんでした。 遅延の主な原因として、設備の調達問題、用地取得の遅れ、資金調達の困難さなどが挙げられます。

5. サービスの信頼性と品質

インドネシアでは、特にジャワ島以外の地域で電力供給の信頼性と品質に課題がありました。 例えば、2005年にはジャワ島とバリ島全域で約1億人に影響を及ぼす大規模な停電が発生し、5時間以上にわたり電力供給が停止しました。 このような事例は、電力インフラの脆弱性と供給体制の改善の必要性を浮き彫りにしています。

これらの問題に対して、PLNは財務構造の改善、汚職防止策の強化、投資プログラムの見直し、そしてサービス品質の向上など、多角的な対策を講じています。 しかし、これらの課題は依然として存在しており、PLNは持続可能な電力供給を実現するために、引き続き努力を続ける必要があります。

 

 

PLNのインドネシアのユーザーの反応

ユーザーから多様な反応を受けています。 特に、PLNが提供するモバイルアプリ「PLN Mobile」は、電力関連サービスの利便性向上に寄与し、高い評価を得ています。 このアプリを通じて、ユーザーは電力使用量の確認や支払い、停電情報の取得などを簡単に行うことができ、日常生活の中での電力管理がよりスムーズになっています。

一方で、PLNの電力供給に関しては、供給過剰や需要予測の誤差などの問題が指摘されています。 例えば、国家電力供給計画(RUPTL)では、2030年までの電力需要が約60GWまで増加すると予測されていましたが、実際の需要は予測を下回る可能性があり、供給過剰の懸念が生じています。 このような状況は、電力供給の効率性や持続可能性に対するユーザーの不安を招いています。

また、再生可能エネルギープロジェクトに関しても、価格交渉の難航や手続きの遅延が報告されており、これによりプロジェクトの進行が遅れ、ユーザーや関係者からの不満の声が上がっています。 具体的には、2017年には18件の再生可能エネルギープロジェクトが価格交渉の問題で遅延しました。 これらの遅延は、再生可能エネルギーの普及と持続可能な電力供給への期待に対する障壁となっています。

総じて、PLNは多くのユーザーから支持を得ている一方で、供給過剰やプロジェクトの遅延、地域間の電化率の差異など、解決すべき課題も抱えています。 これらの問題に対処し、より良いサービスを提供することが求められています。

 

 

まとめ

インドネシアの国営電力会社であるPLN(Perusahaan Listrik Negara)は、全国に電力を供給する重要な役割を担っています。 本記事では、PLNの概要、歴史、事業内容、主要なマイルストーン、過去の課題、そしてユーザーからの反応について詳しく解説しました。 PLNは、発電・送電・配電を一手に引き受け、再生可能エネルギーの導入や電力インフラの近代化にも積極的に取り組んでいます。 しかし、財務上の課題や電力盗難、汚職問題、投資プログラムの遅延など、さまざまな問題にも直面してきました。 ユーザーからは、モバイルアプリ「PLN Mobile」の利便性が高く評価される一方、供給過剰やプロジェクトの遅延、地域間の電化率の差異などに対する懸念の声も上がっています。 PLNはこれらの課題に対処し、より良いサービスを提供するために継続的な努力が求められています。

 

本記事で使用した単語の解説

  • PLN(Perusahaan Listrik Negara): インドネシアの国営電力会社で、全国の電力供給を担当しています。
  • 発電: さまざまなエネルギー源を利用して電力を生み出すプロセスです。
  • 送電: 発電所で生産された電力を高電圧のまま変電所や需要地まで輸送することを指します。
  • 配電: 送電された電力を変電所から各家庭や企業などの需要家に届けるプロセスです。
  • 再生可能エネルギー: 自然界で繰り返し利用可能なエネルギー源(例:太陽光、風力、地熱など)を指します。
  • 電力盗難: 正規の手続きを経ずに不正に電力を使用する行為です。
  • 汚職: 公的な地位や権限を利用して私的な利益を得る不正行為を指します。
  • 投資プログラムの遅延: 計画された投資プロジェクトが予定通りに進行しないことを意味します。
  • 電化率: 特定の地域や国において、電力供給が行き届いている世帯や施設の割合を示す指標です。
  • PLN Mobile: PLNが提供するモバイルアプリで、電力使用量の確認や支払い、停電情報の取得などが可能です。

 

 

FAQ(よくある質問)

  1. PLNとは何ですか?
    PLN
    Perusahaan Listrik Negara)は、インドネシアの国営電力会社で、全国の電力供給を担当しています。
  2. PLNの主な事業内容は何ですか?
    PLN
    は、発電、送電、配電を一手に引き受けており、再生可能エネルギーの導入や電力インフラの近代化にも積極的に取り組んでいます。
  3. PLN Mobileとは何ですか?
    PLN Mobile
    は、PLNが提供するモバイルアプリで、ユーザーは電力使用量の確認、支払い、停電情報の取得などを行うことができます。
  4. PLNが直面している課題は何ですか?
    PLN
    は、財務上の課題、電力盗難、汚職問題、投資プログラムの遅延、電力供給の信頼性と品質など、さまざまな問題に直面しています。
  5. インドネシアの電化率はどのくらいですか?
    2021
    年時点で、インドネシアの電化率は99.45%に達していますが、一部の地域では依然として電化率が低く、改善が求められています。

 

 

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