
4月 3, 2025 • インドネシア, 教育
4月 12, 2025 • インドネシア, 特定技能・技能実習 • by Reina Ohno
目次
日本の造船・舶用工業分野では、深刻な人手不足が続いており、特に中小規模の造船所や地方の工場では、外国人材の受け入れが急速に進んでいます。中でも注目されているのが、「特定技能 造船・舶用工業」としてのインドネシア人技能者の活用です。
本記事では、特定技能「造船・舶用工業」とは何か、採用方法や文化的な注意点、給与・費用の実態、そしてインドネシア人ならではの特性について、わかりやすく解説します。造船・舶用工業分野での外国人採用を検討している方や、インドネシア人材に関心のある企業担当者の方は、ぜひご一読ください。
特定技能「造船・舶用工業」は、日本の造船業界における人材不足を背景に、2019年に新たに設けられた在留資格制度です。この制度により、一定レベルの専門知識やスキルを持った外国人が、各種造船作業や設備関連業務に従事することが認められています。
業務内容
特定技能「造船・舶用工業」の資格を持つ外国人労働者は、以下のような業務に携わることができます。
※現場の主要業務に携わることが前提であり、単純労働や雑務のみは対象外です。
特定技能「造船・舶用工業」の取得方法
特定技能「造船・舶用工業」の在留資格を取得するためには、主に以下のような要件があります。
在留期間と更新
受け入れ企業の要件
特定技能「造船・舶用工業」の外国人を受け入れる企業は、以下の条件を満たす必要があります。
特定技能「造船・舶用工業」は、日本の製造現場における即戦力として期待される制度であり、企業は適切な手続きを踏むことで、優秀な外国人材の受け入れが可能となります。
インドネシア人の造船・舶用工業スタッフは、その国民性や文化的な背景から、以下のような特長を持っています。
助け合いを大切にする文化
インドネシアでは「ゴトン・ロヨン(Gotong Royong)」という助け合いの精神が根付いており、チームでの作業や協力関係を重視します。
造船現場では、大型構造物の搬入・据付や溶接・塗装といったチームワークが求められる作業が多く、この協調性は大きな強みになります。
穏やかで勤勉な性格
インドネシア人は温厚で、与えられた仕事を真面目にコツコツとこなす傾向があります。
重労働や騒音の多い工場環境にも順応力があり、持続的に作業を継続できる体力と精神力を備えています。
宗教的な生活習慣への配慮
多くのインドネシア人はイスラム教徒であり、1日5回の礼拝やハラールの食事、ラマダンなどの宗教習慣を尊重しています。
造船所内でも、礼拝スペースの設置や勤務時間の柔軟な調整を行うことで、安心して働ける職場環境を整えることが可能です。
家族や私生活を重んじる価値観
仕事には誠実に取り組みつつ、家族との時間や心身の健康も大切にする文化があります。
過度な残業や休日出勤が続くと疲労や不満につながる可能性があるため、計画的な労務管理が必要です。
時間感覚の違い
インドネシアでは、比較的おおらかな時間感覚を持つ人が多く、日本の厳格なスケジュール意識とは差を感じることもあります。
ただし、日本での就労に対する意欲や適応力も高く、継続的な教育と明確なルール共有により、着実に改善が見込めます。
このように、インドネシア人の造船スタッフは協調性と忍耐力に優れ、現場作業における即戦力となる可能性を秘めています。文化的な違いを理解し、丁寧なフォローと職場環境の整備を行うことで、長期的な戦力としての活躍が期待できます。
日本におけるインドネシア人造船人材の数は、近年着実に増加しています。特に、特定技能制度の導入以降、造船・舶用工業分野でのインドネシア人労働者の受け入れが拡大しています。
特定技能(造船・舶用工業分野)
2024年時点で、特定技能制度全体の外国人労働者数は約25万人に達しており、前年比で大幅な増加を記録しました。このうち、インドネシア人労働者は制度全体で約44,000人を占めており、造船分野にも多数の人材が配置されています。
造船・舶用工業分野に限れば、2024年時点で特定技能「造船・舶用工業」分野の外国人労働者数は約3,200人。その中でインドネシア人は約850人と推定されており、ベトナム、フィリピンに次いで主要な国籍のひとつとなっています。
技能実習(造船関係)
技能実習制度においても、造船関連分野でのインドネシア人技能実習生の受け入れは年々拡大しています。2024年には、溶接や仕上げ、塗装といった技能を身につけたインドネシア人実習生が多くの造船所で活躍しており、技能実習生全体の中でも存在感を増しています。
全体としての傾向
2024年現在、日本に在留しているインドネシア人労働者の総数は約169,539人となっており、前年比39.5%増と急成長を見せています。この背景には、日本の製造業全般における慢性的な人材不足に対応するため、インドネシアとの政府間協力や人材送出し制度の整備が進んでいることが挙げられます。
これらのデータから、造船・舶用工業分野におけるインドネシア人労働者の存在感が確実に高まりつつあることがわかります。今後も、技術移転や人材育成を含めた両国の連携が進むことで、日本のものづくり現場におけるインドネシア人材の活躍の場がさらに広がることが期待されます。
インドネシア人の造船・舶用工業分野の人材を日本で雇用する際の給与や関連費用について、以下のポイントをまとめました。
給与
インドネシア人を含む外国人造船スタッフの給与は、日本人と同等以上であることが法律で定められています。具体的な金額は、在留資格や地域によって異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。
※これはあくまで平均値であり、勤務地、事業所規模、業務内容、スキル・経験によって異なります。
採用時の初期費用
外国人造船人材を採用する際には、以下のような初期費用が発生します。
継続的な支援費用
特定技能1号で雇用する場合、企業側には外国人材への支援が義務付けられており、登録支援機関に委託する場合は以下の費用がかかります。
その他の費用
造船分野においても、以下のような継続的費用が発生する可能性があります。
これらの費用は、雇用主の支援体制、地域の物価水準、スタッフの生活スタイルなどによって変動します。採用を検討する際は、給与だけでなく、長期的な支援コストも含めた総合的な見積もりが重要です。
インドネシア人材の雇用は、現場の熟練工不足を補い、持続的な製造力の確保と品質向上につながる可能性があり、造船業界の競争力強化にも貢献します。
インドネシアの文化・宗教とその影響
インドネシア人を造船スタッフとして迎える際には、文化や労働観の違いを理解し、相互理解を深めることが、現場での安定した定着につながります。以下に、特に注意すべきポイントをまとめました。
宗教習慣への理解と対応
インドネシアは世界最大のイスラム教国であり、国民の約85%がイスラム教徒です。
そのため、1日5回の礼拝やラマダン(月間断食)中の体調管理や食事、勤務シフトの配慮が必要です。
溶接や塗装など体力を使う作業が多い造船現場では、礼拝時間やラマダン期間中のスケジュールを柔軟に調整することが求められます。
転職への抵抗が少ない文化
インドネシアでは、より良い待遇や職場環境を求めて転職することは一般的です。
長期雇用を目指す場合は、職場の安定性や成長機会を示すこと、報酬・手当などの明確な提示が重要です。
快適で安全な作業環境づくりも、定着率向上に大きく影響します。
時間感覚の違いへの対応
インドネシア人は比較的柔軟な時間感覚を持っており、日本のような厳密なスケジュール感とはギャップがあることもあります。
造船工程は納期や安全性の観点から時間管理が非常に重要なため、教育やマニュアルの整備を通じて時間意識を共有する取り組みが不可欠です。
注意や指導は配慮ある方法で
インドネシア人は、集団の前で叱責されることに対して強いストレスを感じる傾向があります。
注意やフィードバックはできる限り個別に、穏やかなトーンで行うことで、信頼関係の維持とモチベーションの向上が期待できます。
コミュニケーションを大切にする姿勢
インドネシア人は人間関係を重視し、チームワークを大切にします。
造船所のように複数人で連携して作業する現場では、この特性は生産性や安全意識の向上に役立ちます。
日常の会話や相談しやすい雰囲気を作ることも効果的です。
労働制度の違いを理解する
インドネシアでは、THR(宗教手当)や家族行事に関連した休暇制度などがあり、日本とは労働文化が異なります。
病欠や帰省休暇の考え方も異なるため、雇用契約の際には制度面やルールについて丁寧に説明し、納得を得たうえで契約することが大切です。
日本の造船・舶用工業分野では、技能職の高齢化と若手人材不足が深刻化しており、外国人材の受け入れは今後さらに加速する見込みです。
インドネシア人は、まじめで協調性が高く、ものづくりの現場に適応しやすいという特長があります。
文化や価値観の違いを理解し、職場環境や生活面でのサポート体制を整えることで、現場に安定した戦力として迎え入れることが可能です。
特定技能(造船・舶用工業)
技能評価試験と日本語試験に合格した人材を、最長5年間雇用可能。
登録支援機関と連携することで、生活面や言語面のサポートも受けられます。
技能実習制度(造船関係)
3年間(延長で最長5年)の実習を通して、溶接・仕上げ・塗装などの技能を習得。
実習修了後に特定技能へ移行することで、継続雇用も可能です。
大学・専門学校卒業者(技人国)
工業系の大学や専門学校を卒業した人材を「技術・人文知識・国際業務」ビザで雇用。
設計補助、品質管理、現場監督などの高度な業務に従事できます。
インドネシア人材の活用は、日本の造船業が直面する構造的課題に対する重要な解決策の一つです。
しっかりとした準備と文化的理解をもって受け入れることで、現場に新たな活力と安定した労働力をもたらすことができるでしょう。
インドネシア人の強みと課題を理解する
インドネシア人は、人とのつながりや調和を重視する国民性があり、協調性、粘り強さ、真面目で穏やかな性格を持つ人が多く見られます。これらの特性は、複数人での連携が求められる造船現場において大きな強みになります。
一方で、日本とは異なる文化的背景により、以下のような価値観の違いが現場でのギャップにつながる場合もあります。
こうした違いには、入社前後の丁寧なオリエンテーションや、継続的な教育・指導を通じて対応することが大切です。相互理解を深めながら、日本の現場スタイルに徐々に適応してもらうことで、トラブルの少ない職場運営が可能になります。
信頼性の高い送り出し機関との連携
インドネシアには多数の送り出し機関(LPK)がありますが、その教育内容や管理体制にはバラつきがあります。
そのため、確かな実績と日本対応力のある機関と連携することが、採用成功の鍵となります。
たとえば、弊社の提携機関 LPK Timedoor では、以下のような事前教育を実施しています:
こうした準備があることで、現場配属後のスムーズな立ち上がりと早期離職の防止が可能になります。
宗教・家庭事情など文化的側面への理解
インドネシア人の多くはイスラム教徒であり、1日5回の礼拝やラマダン中の断食など、日常生活に信仰行為が深く関わっています。また、家族との絆を大切にする文化も強いため、家族の事情によって急な帰省や休暇を希望することもあります。
このような文化的価値観を尊重し、
といった配慮を行うことで、「理解されている」という安心感を持ってもらいやすくなり、定着率や職場満足度の向上につながります。
日本の造船・舶用工業分野では、熟練工の高齢化や若手人材不足が進行しており、インドネシアを含む外国人材の受け入れが今後さらに重要性を増すと考えられます。
インドネシア人は、協調性、勤勉さ、適応力に優れており、現場での戦力となり得る人材です。一方で、宗教や文化、時間意識の違いなどへの理解を欠いたままでは、トラブルや早期離職のリスクも高まります。
だからこそ、
が不可欠です。これらを整備することで、インドネシア人材と共に、持続可能で強い造船現場の未来を築くことができるでしょう。
LPK Timedoorは、インドネシア・バリ島デンパサールに拠点を置く職業訓練校で、日本での就労を目指すインドネシア人に対し、日本語や日本文化、仕事に対する価値観やマインドセットを学ぶ環境を提供しています。お気軽にお問い合わせください。
所在地と連絡先:
住所: Jl. Tukad Yeh Aya IX No.46, Renon, Denpasar, Bali, Indonesia 80226
電話番号: +81 80-2399-8776(日本人直通)
メール: [email protected]
Website: lpktimedoor.com
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インドネシアの基本情報をおさらい
インドネシアは、東南アジアに位置する世界最大の島嶼国家で、約17,000の島々から構成されています。 以下に、インドネシアの基本情報をまとめます。
面積
約192万平方キロメートルで、日本の約5倍の広さを持ちます。
人口
約2億8,000万人で、世界第4位の人口を有します。
首都
ジャカルタで、人口は約1,067万人です。
民族
約1,300の民族が存在し、主要な民族としてジャワ人、スンダ人、マドゥーラ人などが挙げられます。
言語
公用語はインドネシア語です。
宗教
国民の約87%がイスラム教を信仰しており、その他にキリスト教(10.4%)、ヒンドゥー教(1.7%)、仏教(0.7%)などがあります。
気候
赤道直下の熱帯性気候で、5~10月が乾季、11~4月が雨季となっています。
時差
東西に長いため、3つの時間帯があります。ジャワ島などの西部は日本より2時間遅れ、中部は1時間遅れ、東部は日本と同じ時間帯です。
インドネシアは、多様な文化と豊かな自然を持つ国であり、その多様性が国の魅力となっています。
本記事で使用した単語の解説
特定技能
2019年に創設された在留資格の一つで、日本の特定14業種において即戦力となる外国人労働者を受け入れる制度。造船・舶用工業はその対象業種の一つ。
造船・舶用工業
船舶の建造や修理、エンジン・配管・電装などの舶用機器の取り付け・整備などを行う産業分野。高度な技能とチーム作業が求められる。
技能実習制度
日本の企業が開発途上国の人材を受け入れ、技能を習得してもらうことを目的とした制度。最長5年まで就労可能。
送り出し機関(LPK)
インドネシア側で外国就労希望者を教育・管理し、日本への派遣を行う認可機関。教育品質は機関によって差がある。
登録支援機関
特定技能外国人を受け入れる日本企業が委託可能な支援機関。生活支援、日本語教育、相談対応などを行う。
Gotong Royong(ゴトン・ロヨン)
インドネシアに根付く「助け合い・協力」の文化。チームでの作業を重んじる価値観として知られる。
ラマダン
イスラム教の断食月。日の出から日没までの飲食を控え、礼拝や精神的修養を行う重要な宗教行事。
THR(Tunjangan Hari Raya)
インドネシアにおける宗教手当。特にラマダン明け(イドゥル・フィトリ)前に支給される慣習があり、日本での雇用でも配慮が求められる場合がある。
よくある質問(FAQ)
Q1. 特定技能と技能実習の違いは何ですか?
A. 技能実習は「技術移転」が主目的であるのに対し、特定技能は「即戦力としての労働」が目的です。特定技能は試験合格が必要ですが、より高い自由度と給与水準が特徴です。
Q2. インドネシア人材を採用するために必要な条件は?
A. 技能実習の場合は送り出し機関と提携し、監理団体を通じた受け入れが必要です。特定技能の場合は試験合格者に対して雇用契約と支援体制の整備が求められます。
Q3. インドネシア人は造船業に向いていますか?
A. 向いています。協調性、勤勉さ、身体的な強さ、適応力に優れており、溶接・塗装・電装などチームで行う作業にも高い順応性を発揮します。
Q4. 宗教上の配慮は必要ですか?
A. はい。多くのインドネシア人はイスラム教徒のため、礼拝時間やラマダン中のスケジュール調整への配慮が求められます。信仰への理解がある職場環境は、定着率にも良い影響を与えます。
Q5. コストは高くつきますか?
A. 初期費用や支援費用は発生しますが、長期的には戦力となることでコストパフォーマンスは高くなります。人材不足が深刻な業界においては、確保の選択肢として有効です。
Q6. 採用までにどのくらいの期間が必要ですか?
A. 技能実習の場合は約6〜9か月、特定技能の場合は試験合格後であれば3〜6か月程度が目安です。送り出し機関の教育状況や手続き状況により変動します。
Q7. 特定技能から他の在留資格に移行できますか?
A. はい。特定技能で5年働いた後、「技術・人文知識・国際業務」などへの在留資格変更が可能です。ただし学歴や業務内容など、要件を満たす必要があります。
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