4月 12, 2025 • インドネシア, 特定技能・技能実習 • by Reina Ohno

特定技能ビザのインドネシア人「宿泊・ホテル・旅館」人材の特徴や採用方法を徹底解説

日本の宿泊業界では、深刻な人手不足が続いており、特に地方の中小規模の旅館や観光地のホテル、高齢化が進む地域では、外国人材の受け入れが急速に進んでいます。中でも注目されているのが、「特定技能宿泊業」としてのインドネシア人宿泊スタッフの活用です。

本記事では、特定技能「宿泊業」とは何か、採用方法や文化的な注意点、給与・費用の実態、そしてインドネシア人ならではの特性について、わかりやすく解説します。宿泊業界での外国人採用を検討している方や、インドネシア人材に関心のある旅館・ホテルの経営者の方は、ぜひご一読ください。

宿泊業分野の特定技能人材とは？

特定技能「宿泊業」は、日本の観光業界・宿泊施設であるホテルや旅館における慢性的な人材不足を背景に、2019年に新たに設けられた在留資格制度です。この制度により、一定レベルの接客スキルや業務遂行能力を持った外国人が、ホテル・旅館などでの実務に従事することが認められています。

業務内容

特定技能「宿泊業」の資格を持つ外国人労働者は、以下のような業務に携わることができます。

フロント業務：チェックイン・チェックアウト対応、予約管理、電話応対など
企画・広報：観光案内、多言語対応サービス、インバウンド対応の施策実施など
接客サービス：館内案内、客室サービス、飲食部門のホール業務など
清掃・客室整備：ベッドメイキング、共用部清掃、備品補充など

※施設運営に直接関わる主要業務が対象であり、単純労働や補助的作業のみの従事は対象外です。

特定技能宿泊業の取得方法

特定技能「宿泊業」の在留資格を取得するためには、主に以下のような要件があります。

技能試験と日本語試験に合格
– 宿泊業技能評価試験
– 日本語能力試験N4以上、またはJFT-Basic（日本語基礎テスト）
技能実習2号修了者
– 宿泊業または関連職種で良好に修了している場合、試験免除が可能
観光系・サービス系専門学校卒業者
– 指定された関連コースを修了している場合、試験免除の可能性あり

在留期間と更新

最大で通算5年間の在留が可能
更新は1年、6か月、または4か月単位
5年以内に高度人材資格（例：技術・人文知識・国際業務）への移行も可能

受け入れ施設の要件

特定技能「宿泊業」の外国人を受け入れる旅館・ホテル・宿泊施設等は、以下の条件を満たす必要があります。

適切な業務内容：フロント、客室係、配膳、清掃、案内業務など宿泊サービスに関わる業務であること
受け入れ人数の制限：日本人等の常勤職員数を超えない範囲であること
特定技能協議会への加入：初めて特定技能外国人を雇用した日から4カ月以内に、宿泊分野の特定技能協議会に加入すること

特定技能「宿泊業」は、日本の観光・インバウンド需要の回復や地方活性化を支える即戦力として期待される制度であり、ホテル・旅館などの宿泊施設は、適切な手続きを踏むことで外国人材の受け入れが可能となります。

インドネシア人の宿泊スタッフの特徴や性格は？

インドネシア人の宿泊スタッフは、その国民性や文化的な背景から、以下のような特長を持っています。

助け合いを大切にする文化

インドネシアには「ゴトン・ロヨン（Gotong Royong）」という助け合いの精神が根付いており、仲間と協力しながら仕事を進めることを自然に行います。
宿泊施設では、フロント・清掃・サービスなど各部署との連携が求められる場面が多く、この協調性は大きな武器となります。

穏やかで勤勉な性格

インドネシア人は穏やかで落ち着いた性格の人が多く、真面目にコツコツと業務をこなす傾向があります。
接客業において必要とされる忍耐力や丁寧さにも順応しやすく、礼儀や気配りの文化を重んじる日本の宿泊業でも高く評価されています。

宗教的な生活習慣への配慮

多くのインドネシア人はイスラム教徒であり、1日5回の礼拝など宗教的な行動を大切にしています。
シフトの合間に礼拝の時間を確保したり、ラマダン期間中の食事や体調管理への配慮を行うことで、安心して働ける環境づくりが可能です。

家族や私生活を重んじる価値観

仕事には真摯に取り組みつつも、家族との時間や休息を大切にする文化があります。
そのため、過度な残業や連続勤務が続くとモチベーションが下がることもあるため、無理のないシフト調整や休暇の確保が重要となります。

時間感覚の違い

インドネシアでは比較的ゆるやかな時間感覚を持つ人が多く、日本の厳格な時間管理文化とはギャップが生じる場合もあります。
ただし、多くのインドネシア人は日本のルールに順応しようと努力する姿勢を持っており、丁寧な教育やサポートによって改善が可能です。

このように、インドネシア人の宿泊業人材は、協調性と勤勉さに優れ、ホテルや旅館などのサービス現場において即戦力となる可能性を秘めています。文化的な違いを理解した上で、丁寧なフォローと働きやすい環境を整えることが、長期的な雇用関係を築くうえで重要です。

日本で働くインドネシア人宿泊人材の数は？

日本におけるインドネシア人宿泊人材の数は、近年着実に増加しています。特に、特定技能制度の導入以降、宿泊業分野でのインドネシア人労働者の受け入れが拡大しています。

特定技能（宿泊分野）

2024年時点で、特定技能制度全体の外国人労働者数は約25万人に達し、前年比で大幅な増加を記録しました。
このうち、インドネシア人労働者は制度全体で約44,000人を占めており、宿泊・観光関連の施設にも多くの人材が配置されています。

宿泊分野に限れば、2024年時点で特定技能「宿泊業」分野のホテルや旅館で働く外国人労働者数は約14,000人。
その中でインドネシア人は約3,800人と推計されており、フィリピン、ベトナムと並んで主要な国籍の一つとなっています。

技能実習（サービス・観光関連）

技能実習制度においても、接客補助や清掃などの関連業務に従事するインドネシア人技能実習生は年々増加傾向にあります。
2024年には、宿泊・観光関連分野の技能実習生全体のうちホテルや旅館で働くインドネシア人が約17％を占めており、送り出し国としての存在感を強めています。

全体としての傾向

2024年現在、日本に在留しているインドネシア人労働者の総数は約169,539人となっており、前年比39.5%増と急成長を見せています。
この増加は、日本国内の深刻な労働力不足に対応するため、特定技能制度や技能実習制度を通じてインドネシアからの人材受け入れが加速していることを示しています。

これらのデータから、宿泊業分野におけるインドネシア人労働者の存在感が確実に高まっていることがわかります。今後も、両国間の協力強化や制度整備の進展により、日本の宿泊・観光現場におけるインドネシア人材の活躍がさらに広がることが期待されます。

インドネシア人宿泊人材の給料やその他費用

インドネシア人の宿泊人材を日本のホテルや旅館で雇用する際の給与や関連費用について、以下のポイントをまとめました。

給与

インドネシア人を含む外国人宿泊スタッフの給与は、日本人と同等以上であることが法律で定められています。
具体的な金額は、在留資格や地域、施設の規模によって異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。

技能実習生（宿泊分野）：厚生労働省の令和4年（2022年）のデータによると、技能実習生全体の平均賃金は月額177,800円です。宿泊・サービス分野でもおおむね同水準とされています。
特定技能（宿泊分野）：同データに基づき、特定技能労働者全体の平均賃金は月額205,700円となっており、宿泊分野でもこれに近い水準が見込まれます。

※これはあくまで平均値であり、勤務地、施設規模、業務内容、経験年数などにより大きく異なる場合があります。

採用時の初期費用

外国人宿泊人材を採用する際には、以下のような初期費用が発生します。

人材紹介手数料：20～40万円程度（送り出し機関・受入機関を経由する場合）
健康診断費用：1～2万円程度
在留資格申請費用：10万円前後（行政書士等に委託した場合）
住居の準備費：敷金・礼金・家具・家電など（物件により変動）
渡航費：3～6万円程度（インドネシアから日本までの航空券代）

継続的な支援費用

特定技能1号で雇用する場合、受け入れ宿泊施設には、外国人材への支援が義務付けられています。登録支援機関に委託する場合、以下の費用が必要です。

登録支援機関への委託費：月額2～4万円程度
支援内容には、生活オリエンテーション、日本語学習支援、役所手続きの同行、相談窓口の設置などが含まれます。

その他の費用

宿泊分野においても、以下のような継続的な費用が発生する可能性があります。

在留資格更新費用：数千円〜2万円程度（更新手数料・書類作成費など）
日本語学習支援費：雇用開始から12ヶ月間の語学サポート費
住居関連費用：家賃補助、交通費、住宅手当など

これらの費用は、雇用主の支援方針や地域の物価、スタッフの生活状況によって異なります。
採用を検討する際は、単に給与だけでなく、総合的なコストを事前に見積もっておくことが重要です。

インドネシア人材の雇用は、慢性的な人手不足への対策や、外国人観光客の増加に対応する多言語スタッフの確保につながる可能性があり、ホテル・旅館業界のサービス品質と運営の安定化にも大きく貢献します。

インドネシア人宿泊人材を採用する際に気をつける事は？

インドネシアの文化・宗教とその影響

インドネシア人を宿泊スタッフとして迎える際には、文化や労働観の違いを理解し、相互理解を深めることが、現場での安定した定着につながります。以下に、特に注意すべきポイントをまとめました。

宗教習慣への理解と対応

インドネシアは世界最大のイスラム教国であり、国民の約85％がイスラム教徒です。
そのため、1日5回の礼拝や、ラマダン（月間断食）期間中の体調管理やシフト配慮が必要です。
勤務の合間に礼拝のための短時間休憩を設けたり、ラマダン中は業務負荷や食事休憩のタイミングを調整するなど、柔軟な対応が望まれます。

転職への抵抗が少ない文化

インドネシアでは、より良い条件や職場環境を求めて転職することが一般的とされています。
長期的な雇用を目指すには、キャリアパスの提示や待遇の明確化のほか、働きやすい職場環境づくりなど「定着の工夫」が不可欠です。

時間感覚の違いへの対応

インドネシアでは、時間に対して比較的寛容な文化があります。遅刻や時間のルーズさが見られることもありますが、丁寧な説明と継続的な指導により、日本の時間管理文化を理解してもらうことができます。
宿泊業ではチェックインや食事提供など、時間通りのサービス提供が重要であるため、教育とフォローによる意識付けが必要です。

注意や指導は配慮ある方法で

インドネシア人は、人前で強く叱責されることに敏感です。
注意や指導は、できる限り個別に時間をとって、相手の気持ちを尊重した形で行うことで、信頼関係の構築につながります。

コミュニケーションを大切にする姿勢

インドネシア人は、同僚との会話や交流を大切にし、職場の人間関係を重視する傾向があります。
宿泊業ではフロント・レストラン・清掃スタッフなど多職種が連携する必要があるため、この協調性は現場の雰囲気づくりやサービス品質の向上にも大きく貢献します。

労働制度の違いを理解する

インドネシアには「THR（宗教手当）」や、家族行事に関連した休暇制度などが存在します。
病欠や帰省休暇の取り扱いも日本とは異なるため、雇用契約時にこうした点を丁寧に説明し、相互理解を得たうえで雇用を進めることが大切です。

インドネシア人宿泊人材の採用を検討している方へ

日本の宿泊業界では高齢化と人手不足が深刻化しており、外国人材の採用が年々加速しています。
その中でもインドネシア人は、協調性、勤勉さ、まじめで穏やかな性格から、多くのホテルや旅館において高く評価されています。

文化や価値観の違いに理解を持ち、適切な受け入れ体制を整えることで、長期的な戦力として活躍してもらうことが可能です。

宿泊分野での採用ルートは主に3つ

特定技能（宿泊）

技能評価試験と日本語試験に合格した人材を、最長5年間雇用可能。
登録支援機関と連携することで、日本語や生活面の支援も受けられます。

技能実習制度（宿泊・サービス関連）

実習生として3年間（延長で最長5年）、接客や清掃などの実務を通して技能を習得。
実習修了後、特定技能に移行すれば継続雇用も可能です。

大学・専門学校卒業者（技人国）

観光系やホテルマネジメントなどの学科を卒業した人材を「技術・人文知識・国際業務」ビザで雇用。
運営管理、予約管理、外国人観光客対応など、より高度な業務に従事できます。

インドネシア人材の活用は、日本の宿泊業界が抱える人手不足や多言語対応の課題に対する有効な解決策の一つです。
しっかりとした準備と文化的理解をもって受け入れることで、現場に新たな活力と安定したサービス体制をもたらすことができるでしょう。

インドネシア人宿泊人材採用を成功させるポイント

インドネシア人の強みと課題を理解する

インドネシア人は、人とのつながりや調和を大切にする国民性を持ち、協調性や粘り強さ、穏やかで真面目な性格が多く見られます。これらの特性は、フロント、接客、清掃などさまざまな業務が連携して行われる宿泊施設の現場において、大きな強みとなります。

一方で、日本とは異なる文化的背景を持つことから、価値観や行動様式にギャップが生じる場合もあります。たとえば、

時間に対する感覚が柔軟であること
人前での叱責に対して強い抵抗感を持つ傾向があること

などが挙げられます。

こうした違いには、現場での丁寧なオリエンテーションや継続的な教育・指導を通じて対応することが大切です。相互理解を促しながら、日本の宿泊業の接客スタイルや業務ルールに徐々に適応してもらうことで、スムーズな職場運営が可能になります。

信頼性の高い送り出し機関との連携

インドネシアには多くの送り出し機関が存在しますが、それぞれの教育体制や管理品質には大きな差があります。
そのため、しっかりとした指導体制と実績を持つ信頼できる機関との連携が、採用の成否を分ける重要なポイントになります。

たとえば、弊社のパートナーである LPK Timedoor では、日本人の専任指導者が常駐し、

宿泊業技能評価試験に向けたトレーニング
日本語（N3～N4相当）の集中指導
日本の労働文化や接客マナー、衛生管理への適応支援

などを実施しています。

このような事前教育は、就業後の職場適応をスムーズにし、離職リスクの低減にも効果があります。

宗教・家庭事情など文化的側面への理解

インドネシア人の多くはイスラム教徒であり、1日5回の礼拝やラマダン中の断食など、日常生活に宗教的行動が組み込まれています。
また、家族とのつながりを大切にする文化も強く、家族の事情によって急な帰省や休暇を希望することもあります。

このような文化的価値観を尊重し、

礼拝時間の確保
ラマダン中の業務量や勤務時間の調整
家族都合による休暇への柔軟な対応

などの制度的・運用的な配慮を行うことで、従業員は「理解されている」という実感を持ちやすくなります。

結果として、職場への愛着やモチベーションの向上、定着率の改善へとつながる可能性が高くなります。

インドネシア人の宿泊スタッフは、協調性・勤勉さ・真面目さといった面で優れた資質を持つ人材です。文化や習慣の違いを理解し、適切な育成とサポート体制を整えることで、長期的に信頼できるスタッフとして宿泊現場で活躍してもらうことが可能になります。

まとめ

日本の宿泊業界では、特定技能制度や技能実習制度を通じたインドネシア人宿泊人材の受け入れがホテルや旅館で年々増加しています。人手不足の解消とサービス品質の維持・向上の両面において、インドネシア人は協調性、勤勉さ、適応力の高さから大きな戦力となり得ます。

一方で、宗教・文化的背景や時間感覚などに違いがあるため、採用・育成の際には相互理解を深める体制づくりが欠かせません。信頼できる送り出し機関との連携や、現場での丁寧な指導、支援体制の整備を通じて、インドネシア人材とともに宿泊業の未来を築いていくことが求められています。

インドネシアでのビジネスなら創業10周年のTimedoor

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本記事で使用した単語の解説

特定技能（とくていぎのう）
2019年に創設された新しい在留資格。日本で深刻な人手不足に直面している14業種において、即戦力の外国人労働者を受け入れることを可能にする制度。宿泊業もその一つ。

宿泊業技能評価試験
特定技能「宿泊業」分野での就労に必要な専門知識・スキルを測るための試験。日本語での業務対応能力や接客スキルなどが問われる。

JFT-Basic（日本語基礎テスト）
日本語能力を測る試験の一つで、特定技能在留資格の取得要件。日本語能力試験（JLPT）N4相当とされる。

技能実習制度
発展途上国の若者が日本で技術を習得することを目的とした制度。宿泊業でも技能実習制度の枠組みを活用した受け入れが可能。

登録支援機関
特定技能外国人を受け入れる企業が、生活支援や日本語学習支援などを委託できる外部機関。特定技能制度では、支援体制の整備が義務付けられている。

インバウンド需要
訪日外国人観光客の旅行・消費に関連する経済的ニーズ。多言語スタッフや国際対応が求められる中、外国人宿泊人材が注目されている。

THR（宗教手当）
インドネシアにおいて、ラマダン明け（レバラン）前に支給される宗教手当（ボーナス）のこと。文化的配慮として理解が必要。

FAQ（よくある質問）

Q1. インドネシア人はどのような業務に従事できますか？
A. フロント業務、客室清掃、配膳、館内案内、インバウンド対応など、宿泊業務全般に従事可能です。単純労働だけの業務には従事できません。

Q2. 宗教上の配慮はどこまで必要ですか？
A. 礼拝時間の確保や、ラマダン中の体調・食事への配慮が求められます。就業時間中でも適度な礼拝スペースとスケジュールの柔軟性を設けることで、安定した勤務につながります。

Q3. 宿泊業で外国人を雇用するメリットは何ですか？
A. 人手不足の解消に加え、多言語対応やインバウンド対応が強化され、国際的な接客対応のレベル向上につながります。文化交流による職場の活性化も期待できます。

Q4. 宿泊業技能評価試験の合格率はどのくらいですか？
A. 年によって異なりますが、合格率は50〜70％程度です。事前に日本語能力N4相当の学習と、接客マナー・施設用語の理解を含む研修が効果的です。

Q5. 宿泊業でインドネシア人を採用するにはどうすればいいですか？
A. 特定技能制度を通じた採用ルートとして、技能評価試験と日本語試験を合格した人材、または技能実習2号修了者などを対象に、登録支援機関との連携を図って受け入れるのが一般的です。信頼できる送り出し機関の選定が成功のカギとなります。

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