4月 13, 2025 • インドネシア, 特定技能・技能実習 • by Reina Ohno

インドネシア人技能実習生・特定技能人材需要急増の背景と採用のポイント

インドネシア人技能実習生・特定技能人材需要急増の背景と採用のポイント

目次

近年、日本で働くインドネシア人の技能実習生や特定技能人材の数が急激に増えています。背景には、日本の深刻な労働力不足とインドネシア側の人材送り出し強化の両面があります。本記事では、その需要拡大の背景や制度の最新動向、インドネシア人材の特徴、受け入れ企業が押さえるべき実務ポイントについて、詳しく丁寧に解説します。

また弊社でもインドネシア人材の教育及び送り出し事業を現地でしております。ぜひ興味がある方はお気軽にご連絡ください。

 

 

1. 技能実習制度・特定技能制度の背景と近年の制度改革・統計動向

1. 技能実習制度・特定技能制度の背景と近年の制度改革・統計動向

技能実習制度の目的と歴史

技能実習制度は1993年に創設された制度で、当初は「途上国への技能移転による国際貢献」を目的としてスタートしました。日本で働きながら技能を学び、母国の発展に役立ててもらうという建前でしたが、次第に日本国内の労働力不足を補う制度へと性格が変化してきました。制度開始当初、技能実習生の在留期間は最長2年(研修制度を含む)でしたが、その後段階的に拡充され、現在では最長5年間の在留が可能となっています。

しかし、技能実習制度は長年にわたり「実習生の人権侵害」や「低賃金労働力の確保が目的化している」などの批判も受けてきました。こうした問題を受け、日本政府は制度の見直しに着手しています。

特定技能制度の創設と拡充

2019年4月、日本は新たな在留資格「特定技能」を創設しました。これは、人手不足が深刻な産業分野で即戦力となる外国人を受け入れる目的で導入された制度です。特定技能には1号と2号があり、特定技能1号は14分野(現在は12分野+追加予定4分野)で一定の専門性・技能を持つ労働者を受け入れるもの、特定技能2号はさらに熟練した人材を対象に建設・造船など一部分野で長期在留・家族帯同を認めるものです。

特定技能制度は開始当初こそ受け入れ数が伸び悩みましたが、2022年頃から本格的に受け入れ数が増加し始めました。制度開始時に政府は「5年間で最大34万5千人受け入れ」を見込んでいましたが、2024年3月にはその見込み数を5年間で82万人に大幅上方修正しています。これは当初計画の約2.4倍という大胆な拡充で、日本の人手不足解消に向け特定技能制度への期待がいかに高まっているかを示しています。

直近2年間の制度改革の動き

2023年から2024年にかけて、技能実習・特定技能両制度に関する重要な改革が進みました。特に注目すべきポイントは次のとおりです。

  • 技能実習制度の廃止と新制度創設の検討:有識者会議により技能実習制度を発展的に解消し、新たに「育成就労制度」(仮称)を創設する提言が行われ、2024年6月には関連法改正が可決・成立しました。新制度では人材の人権保護と技能向上により重点を置きつつ、日本での就労も目的とする方向です。正式な運用開始は今後詳細決定待ちですが、将来的に技能実習と特定技能を一本化・再編する可能性があります。
  • 特定技能2号の対象拡大:当初特定技能2号は建設と造船造機の2分野のみでしたが、2022~2023年に議論が進み、2023年には特定技能2号の対象を11分野に拡大する方針が決まりました(介護分野以外の多くをカバー。ただし実際の運用開始時期は分野ごとに順次予定)。
  • 特定技能1号の分野追加:2024年3月には特定技能1号に新たに「自動車整備」「航空」「宿泊」以外の4分野(自動車運送業・鉄道・林業・木材産業)の追加が決定し、1号の対象は合計14分野から16分野になります。これらは今後受け入れ開始時期が調整されますが、裾野がさらに広がります。

直近の統計動向(インドネシア人材の増加)

制度改革の動きと並行して、受け入れ人数の統計にも大きな変化が表れています。特に過去2年間でインドネシア人の存在感が急上昇している点に注目です。

法務省出入国在留管理庁の統計によると、2022年末時点で約4万5千人だった在日インドネシア人技能実習生は、2023年末には7万4,387人と1年間で約1.6倍に増加しました。これは技能実習生全体に占める割合で見ると21%を超え、ベトナムに次ぐ第2位の送り出し国となっています。ベトナム人実習生が依然最大勢力ではあるものの、その比率はやや低下傾向にあり、代わってインドネシア人の比率が急上昇しています。

特定技能についても同様で、2024年6月時点の累計在留者数は約25万人を超え史上最多となりましたが、インドネシア人はベトナム人に次ぐ第2位となっています。特定技能全体に占めるベトナム人の割合は50%程度と依然高いものの、近年はベトナム国内の賃金上昇や他国での就職機会増加もあって伸びが鈍化しており、その分インドネシアやミャンマー、ネパールなどの国籍が急増しています。インドネシア人は特定技能分野でも特に増加が著しく、例えば介護分野の特定技能では国籍別トップになるまでになりました。

このように、制度面でも統計面でも「インドネシア人材」にスポットライトが当たる状況となっています。

 

 

2. インドネシア人材の一般的特徴(性格・勤労観・日本語学習意欲など)

2. インドネシア人材の一般的特徴(性格・勤労観・日本語学習意欲など)

日本で働くインドネシア人が増加する背景には、インドネシア人材の持つ魅力的な気質や能力があります。ここでは、インドネシア人の一般的な性格傾向、仕事に対する姿勢、日本語習得への意欲などを解説します。ただし1億人以上の人口を抱える多民族国家であり、人によって差もありますので、あくまで「傾向」としてご覧ください。

温厚で協調性が高く、勤勉で責任感が強い

インドネシア人はしばしば温厚で穏やかな性格と言われます、笑顔を絶やさず、人助けをいとわない国民性との評価があります。実際にインドネシア人実習生を受け入れた企業からは「彼らのおかげで職場が明るくなった」という声も聞かれます。

また、インドネシア人は目上の人を敬う文化は日本と似ている面があります。礼儀正しく上下関係を重んじるため、日本の職場にも馴染みやすいと言われます。その上で、真面目にコツコツ働く勤勉さと強い責任感を持つ人が多く、「チームワークを重視する日本企業において評価が高い」とされています。例えば介護や製造の現場では、協調性と粘り強さを発揮して戦力になっているとの声があります。

家族思いで向上心が強い

インドネシア人は家族を大事にする価値観が強く、家族のために頑張る傾向があります。出稼ぎに来る若者たちも、両親や兄弟姉妹の生活を支えたいという方が多いです。この家族思いな気持ちは、日本での就労のモチベーションにも直結します。実際、地方出身者の中には月収2万円程度の収入しかない環境で育った人も多く、「日本で稼いで家族に仕送りすること」が仕事への真剣な取り組み姿勢を支える理由となっています。

さらに、向上心や学習意欲が高いのもインドネシア人材の特徴です。若い世代を中心に「日本でスキルを身につけたい」「日本語を習得してキャリアアップしたい」という意欲が強く見られます。これは日本に憧れや親しみを抱いていることにも起因します。インドネシアは世界有数の親日国であり、多くの人が日本の文化や製品に好意を持っています。「日本で働きたい」「日本語を学びたい」という方が少なくなく、採用面接でもその熱意が伝わってくることが多いです。

日本語習得への積極性とコミュニケーション能力

実際、インドネシアの技能実習生候補者は送り出し機関に入る前に日常会話が可能な人もいるほどです。これは送り出し機関と連携した日本語教育体制が全国各地で整備されているためで、結果的に他国出身の実習生より日本語能力が高めだという指摘もあります。

もっとも、来日直後はまだ意思疎通に不安がある人も多いです。ただ彼らはコミュニケーションを取ること自体は好きで社交的な人も多いため、職場の日本人が積極的に話しかけることでどんどん打ち解けていく傾向があります。重要なのは、受け入れる側が遠慮せず歩み寄る姿勢です。会話のキャッチボールを重ねる中で、日本語も上達し、職場への馴染みも早まります。

のんびりした時間感覚とストレス耐性

一方で、インドネシア人の性格として指摘されることがあるのが、時間に対しておおらかでマイペースな点です。渋滞や行列でもあまりイライラせず、締め切りに対しても日本人ほど厳密ではない、と言われることがあります。実際、現地では約束の時間に多少遅れてもお互い寛容だったり、物事を進める文化も見受けられます。

この「スローペース」さは、良く言えば穏やかでストレス耐性があるとも言えますが、日本の職場では最初誤解をを生む可能性があります。例えば、指示した作業の締め切り感覚がずれていたり、「なるべく早くね」といった曖昧な言い方では本当にゆっくり進めてしまったりする可能性があります。受け入れ企業としては、この点を最初に認識しておき、仕事上の指示や締め切りは具体的かつ明確に伝える工夫が必要です。逆に言えば、指示を明確にしさえすれば真面目に取り組んでくれる人材ですので、大きな問題にはなりにくいでしょう。

インドネシア人材の魅力

総じて、インドネシア人材は明るく素直で協調性が高く、勤勉で向上心もあるという魅力を持っています。親日的で日本文化への理解意欲も高いため、受け入れ後の伸びしろも大きいです。ただし文化的なおおらかさからくるペースの違いなど、日本人側が理解・対応すべき点もあります。

 

 

3. インドネシア人材の出身地域ごとの傾向(ジャワ・スラウェシ・スマトラなど)

3. インドネシア人材の出身地域ごとの傾向(ジャワ・スラウェシ・スマトラなど)

インドネシアは約2.8億人の人口を擁し、300以上の民族が存在する多民族国家です。ジャワ島、スマトラ島、スラウェシ島など主要な島ごとに文化や気質に違いが見られ、人材の出身地域によっても若干の傾向があります。ここではインドネシア人技能実習生・特定技能人材の主な出身地域として挙げられるジャワ、スラウェシ、スマトラを中心に、それぞれの特徴を概観します。

ジャワ島出身者:穏やかで控えめ、教育機会が豊富

ジャワ島(特に中部ジャワ~東ジャワ)出身の人々は、インドネシア国内でも最も人口が多く(全人口の約5~6割)、技能実習生候補者もジャワ島出身が多数を占める傾向にあります。ジャワの人々は一般に温厚で控えめな性格だと言われます。他人を立てて自分は一歩引くような慎み深さや、遠慮深い振る舞いが見られ、集団の和を乱さない協調性が高いです。このため、職場でも衝突を避け周囲と調和しやすい傾向があります。

ただし、控えめながらも内に意見を持っている人も多く、親しい間柄になれば自分の考えをしっかり伝えてくれるようになります。上司や先輩に対して表立って反論することは少ないかもしれませんが、信頼関係ができれば本音を打ち明けてくれるでしょう。このような性質から、ジャワ出身の実習生・労働者に対しては日頃から声掛けをして様子を聞き取るといったコミュニケーションが有効です。

ジャワ島にはジョグジャカルタ特別州に代表されるような教育都市もあり、日本語教育機関も数多く存在します。中部ジャワや東ジャワは賃金水準が首都ジャカルタに比べ低いため、海外就労を目指す若者が多い地域でもあります。ジャワ出身者はしっかり日本語研修を積んでから来日する割合が高く、日本語能力が比較的高めといった傾向も指摘されています(もちろん個人差はあります)。総じて、ジャワ島出身のインドネシア人材は温厚で真面目、そして日本で働く準備もしっかりしている人が多い印象です。

スラウェシ島出身者:明るく社交的で粘り強い

スラウェシ島出身の人々も近年日本で活躍する人材として増えてきました。スラウェシ島にはブギス人やマカッサル人など独自の民族文化があり、彼らは明るく楽天的で人懐っこい性格とされます。南スラウェシのブギス人は歴史的に航海術に優れた民族として知られ、海事や漁業に従事する人も多いです。

スラウェシの人々は社交性が高く、初対面で打ち解けるような朗らかさを持つ一方、仕事では誠実で粘り強い一面があります。漁業や農業など自然相手の過酷な環境でも順応できる遮光性が武器です。実直で義理堅い性格から、日本人スタッフとも強い信頼関係を築きやすいでしょう。

宗教的にはスラウェシはイスラム教が多く、北部(マナド等)にはキリスト教徒も多いなど、地域により信仰が分かれます。

スマトラ島出身者:自己主張が強く情熱的

スマトラ島は人口が多く 技能実習生の送り出しでも一定の割合を占めます。スマトラは島内でも多様ですが、北端のアチェ人は厳格なイスラム文化で知られ、勤勉で規律正しい反面、正義感が強く筋を通す気質があります。

一方、北スマトラのバタック人は情熱的で議論好き、自己主張がはっきりしています。インドネシア人の中では珍しく議論で引かないタイプが多く、会議などでも積極的に意見を述べ納得がいくまで折れないというエピソードもあります。このような積極性は、日本の職場では頼もしさにつながることもありますが、時に衝突を招く可能性もあるため、受け入れ側が上手に対話し意見を尊重することが大切です。

スマトラ西部のミナンカバウ人は女性が強い母系社会で有名で、経営感覚や商才に優れる人が多いと言われます。実習や就労で日本に来る人にも、向上心旺盛でリーダーシップがあるタイプがいるかもしれません。彼らは学習意欲が高く、日本語の上達も早い傾向があります。

その他の地域(カリマンタン、バリ、東部地域)について

上記以外にも、カリマンタン(ボルネオ島)出身者や、バリ島・ジャワ西部のスンダ人、東部のモルッカやパプア出身者など、多様な地域出身の人材が日本で働いています。バリ島はヒンドゥー教文化圏であり、バリ出身者はヒンドゥー教徒が多いです。彼らは温和で伝統を重んじる一方、独自の宗教行事(日程)への理解が必要な場合があります。

東部のマルク(モルッカ)やパプア出身の人々は、穏やかで素朴な気質の人が多く見られます。彼らは勤勉ですがシャイな面もあるので、慣れるまで時間を要することもあります。しかし一度心を開けば忠誠心が強く、チームの一員としてしっかり貢献してくれるでしょう。

地域ごとの違いを理解する意義

このようにインドネシア人材は出身地域や民族によってある程度の性格傾向があります。ジャワの人は控えめで協調性が高い、スラウェシの人は明るくタフ、スマトラの人は自己主張が強く情熱的といった違いは、受け入れ企業側が人材育成・マネジメントする上で参考になります。

もっとも、現代のインドネシアの若者は島際の移動や情報交流も盛んで、都市部では多民族が混ざり合って生活しています。そのため一概に地域で決めつけることはできません。実際には個人の性格や資質をしっかり見ることが重要です。ただ背景として「こういう文化で育ってきたのだな」という理解があると、日本人スタッフとのコミュニケーションや指導の際に役立つでしょう。

 

 

4. インドネシア人技能実習生・特定技能人材の育った環境(家族構成・宗教・教育水準・労働観など)

4. インドネシア人技能実習生・特定技能人材の育った環境(家族構成・宗教・教育水準・労働観など)

インドネシアから来日する技能実習生や特定技能人材は、どのような家庭環境や教育を受けて育っているのでしょうか。ここでは、彼らの一般的なバックグラウンドとして多いケースを紹介します。もちろん人それぞれですが、日本人が知っておくと役立つインドネシア人材の育った環境の特徴を挙げます。

家族構成と地域社会のつながり

インドネシアの若者たちは家族や地域コミュニティとの結びつきが強い環境で育つことが多いです。一般的な家庭では子供の数は2~3人程度が多いものの、祖父母や叔父叔母なども含めた大家族志向が根強く、親戚一同が近くに住んで助け合う文化があります。特に農村部では三世代同居も珍しくなく、幼い頃から家族みんなで協力し合って生活してきています。

そのため、日本に働きに来る若者も「家族の期待」を背負っているケースが少なくありません。例えば長男・長女が家計を支えるために海外就労を志望する場合、両親や下の兄弟を支援したいという強い思いがあります。実際、インドネシア人実習生の多くは毎月の給与から生活費を差し引いた残りを実家へ仕送りしています。家族を思う気持ちが彼らの原動力になっており、「日本で頑張って働き抜こう」という責任感にもつながっています。

また、地域社会(村落や町内)のつながりも強く、近所の人同士で助け合ったりお祭りを催したりする文化が根付いています。こうした背景から、インドネシア人材は協調性がありチームワークに向いていると言えるでしょう。子供の頃から周囲と協調して生活しているため、職場でも周りの人との関係を大切にします。

宗教と価値観

インドネシアは宗教的にも多様ですが、国民の約87%がイスラム教徒(ムスリム)です。ほかにキリスト教(カトリック・プロテスタント)、ヒンドゥー教、仏教などが信仰されています。信仰心が生活に根付いている点はインドネシア人の大きな特徴です。

ムスリムであれば、子供の頃から1日5回の礼拝(お祈り)を日常的に行う習慣を身につけています。家族や学校でも宗教教育が行われ、ハラル(イスラム法に則った食事)に関する知識や断食(月 رمضان〈ラマダン〉期間の断食)も経験しています。そのため、日本に来ても基本的な信仰の実践は続けたいと考える人が多いでしょう。

ただ、インドネシアのムスリムは比較的穏健で柔軟な考え方をする人も多く、「やむを得ない場合は礼拝時間を多少ずらしても構わない」という緩やかな運用をしている人もいます。とはいえ、受け入れ企業としては礼拝スペースの確保や就業中の一時的な礼拝時間の配慮、食事で豚肉を避けるなどの対応が必要です。この点については後述の「文化的配慮のポイント」で詳述しますが、本人たちも日本で働くにあたり柔軟に対応しようという姿勢はありますので、事前に話し合っておけば問題なく受け入れ可能です。

一方、キリスト教徒やヒンドゥー教徒の場合はそれぞれ宗教行事の日(クリスマスやガルンガン祭など)に休暇を取りたい希望があるかもしれません。いずれの宗教にせよ、信仰を大事にする価値観を持って育っていることを理解し、尊重することが円満な受け入れの鍵となります。

教育水準と日本語・技能の習得

来日するインドネシア人技能実習生・特定技能人材の多くは、高校卒業程度以上の学歴を有しています。農村部出身でも義務教育(小中学校)は修了しており、高校まで出ている人がほとんどです。中には大学を中退して実習生になるケースや、短大・専門学校を卒業して特定技能を目指すケースもあります。

理系・文系問わず基礎学力は身についており、日本での技能試験や日本語試験にも真剣に取り組める素地があります。また最近では、日本向けの技能実習コースを設けているインドネシア国内の職業訓練校もあります。そうした学校では機械加工や建築、介護など専門技能を在学中から身につけ、日本語も学んで卒業後に日本へ…という流れを支援しています。

日本語教育については、第2章でも述べたように送り出し機関と提携した日本語学校が各地にあり、多くの候補生は渡日前に数か月から1年程度の日本語研修を受けています。そのため、来日時には日常あいさつや簡単な会話ができる人が多く、中には日本語能力試験N4やN3に合格している人もいます。

技能面では、建設系なら溶接や配管の基礎を学んだ人、介護ならインドネシア国内で介護研修を受けた人などもいます。ただ、実際の実務経験はそれほど長くない若者が大半です。多くは20代前半~半ばで、母国での就労経験が1~2年以内か、アルバイト程度という場合もあります。「日本で経験を積みたい」「技術を学びたい」という意欲が強い反面、即戦力というよりは成長途上の若者という認識が必要です。

労働観・キャリア観

インドネシアの若者の多くは、「仕事は生活のための手段」という現実的な労働観を持ちつつも、良い仕事に就いて成功したいという向上志向も併せ持っています。特に地方出身者にとって海外就労は経済的に大きなチャンスであり、「3年間日本で働いて家を建てる」「貯金して帰国後に事業を起こす」など明確な目標を持って来る人もいます。

一方で、日本でのキャリアアップにも興味を示す人が増えてきました。技能実習から特定技能、さらに長期的には技術者ビザや永住といったキャリアパスを描いているケースもあります。「日本でできるだけ長く働き、スキルと経験を積んで将来は日本企業で幹部になりたい」「日本で得た知識を持ち帰り起業したい」など、夢を語る若者も少なくありません。

こうした背景には、インドネシア国内の雇用環境の変化もあります。インドネシアでは若年人口が多く競争が激しいため、海外でキャリアを積むことが一つの差別化要因となっています。また、同世代で日本に行った先輩が成功した話などがSNS等で共有され、「自分も頑張れば道が開ける」という前向きなマインドを醸成しています。

このように、インドネシア人材は家族や地域に支えられ、信仰心を持ちながら、教育を受けて育ち、チャンスを求めて日本に来る場合が多いです。彼らの背後にある想いや目標を理解することで、受け入れ側もより適切なサポートができるでしょう。

 

 

5. 日本側の受け入れ事情(少子高齢化・人手不足・業種別ニーズ・地方と都市部の違い)

5. 日本側の受け入れ事情(少子高齢化・人手不足・業種別ニーズ・地方と都市部の違い)

次に、日本が外国人材、それもインドネシア人材の受け入れを急拡大させている背景について整理します。日本側には、周知のとおり少子高齢化による深刻な人手不足という事情がありますが、それが具体的にどのような形で現れており、どの業種でどんなニーズがあるのか、さらには地方と都市部での違いなどを見ていきます。

少子高齢化と労働力人口減少

日本では生産年齢人口(15~64歳の人口)が年々減少しており、2030年代以降さらに労働力不足が深刻化すると予測されています。少子高齢化の進展により、若手の人材確保が困難になっているのです。特に介護や建設、農業などの分野では国内の若者のなり手が不足し、高齢化や離職によって労働力の穴が広がっています。

総務省のデータでは、日本の総人口は減少傾向に入り、高齢者(65歳以上)の割合は約29%と世界でも類を見ない「超高齢社会」です。これに伴い、例えば介護分野では需要が急増する一方で人材の確保が追いつかず、常態的な人手不足となっています。製造業や建設業でも団塊世代の大量引退などで技術者不足が懸念され、若手の採用が課題となっています。

こうした背景から、日本政府は外国人労働者の受け入れ拡大に舵を切りました。先述の特定技能制度創設・拡充もその一環です。外国人労働者数は年々増え続け、2023年にはついに200万人を突破しました。つまり、鹿児島県の人口に匹敵する数の外国人が既に日本で働いていることになります。このように、日本の労働市場において外国人材はなくてはならない存在となりつつあります。

外国人材受け入れの業種別ニーズ

人手不足の度合いは業種によって異なりますが、外国人材へのニーズが特に高い業種としては以下が挙げられます。

  • 介護業界:超高齢化により介護職員が大幅に不足。特定技能「介護」では2024年末時点で約4.4万人の外国人が就労しており、今後も増加見込みです。インドネシア人はEPA介護福祉士候補などで以前から介護分野に関わりが深く、特定技能でも主要な戦力となっています。
  • 建設業:東京五輪やインフラ老朽化対策で需要が増える中、若手技能者不足。技能実習・特定技能を合わせて多くの外国人が現場で働いています。インドネシア人も鉄筋施工や型枠、配管といった職種で活躍例があります。
  • 製造業(工場労働):製造ラインのオペレーターや溶接・鍛造などの分野で慢性的な人手不足。特定技能では「飲食料品製造業」分野が受け入れ人数トップで約7万人に達しています。この分野には多くの外国人が就いており、インドネシア人も食品工場などで増えています。また、機械加工や電子部品組立などの素形材産業分野も4.4万人超の外国人が特定技能で働き、第2位の受け入れ規模です。
  • 農業・漁業:農村の高齢化・後継者不足により、収穫作業や酪農、漁業の担い手が不足。技能実習では農業・漁業分野の外国人が多く、特定技能でも農業分野の伸びが顕著です。インドネシアは農漁業国でもあるため、適応力のある人材が見込まれます。
  • 外食・サービス業:飲食店や宿泊業も慢性的な人手不足分野です。特定技能「外食業」はコロナ禍で一時停滞しましたが、営業再開に伴い試験実施数も増えて急増しています。インドネシア人留学生がアルバイトで飲食店勤務する例も多く、今後特定技能としても採用が進むでしょう。

以上のように、特に人手不足が深刻な業界では外国人材への需要が高く、その中でインドネシア人材も重要な役割を果たしています。例えば、特定技能全体の中ではベトナム人が多数を占めますが、ベトナムの景気向上などで供給がやや不安定化する中、インドネシア人が第二の柱として期待されています。

地方と都市部での受け入れ状況の違い

外国人労働者の受け入れは、日本全国で広がっていますが、都市部と地方でニーズの現れ方に違いがあります。以前は、工場のある茨城県や群馬県など地方県が外国人労働者数上位に入っていましたが、近年では愛知県や首都圏(東京周辺)の受け入れが増加しています。最新の統計では、都道府県別の特定技能在留者数は1位愛知県(2万0,757人)、2位大阪府、3位埼玉県、4位千葉県、5位東京都となっており、都市近郊での増加が目立ちます。

都市部では飲食料品製造の工場やビル清掃、外食・小売など幅広い業種で外国人が働いています。一方、地方では介護施設や農場、水産加工場など地元日本人だけではまかなえない職場で外国人実習生・労働者が欠かせなくなっています。例えば、ある過疎地の農協ではインドネシア人実習生を複数受け入れて農作業を維持しているケースや、地方の中小建設会社がインドネシア人技能者を現場リーダー候補として育成している事例もあります。

地方では言語サポートや生活環境整備が都市より手薄な場合もありますが、その分地域ぐるみで温かく受け入れる動きもあります。地域住民が実習生の宿舎近隣に事前説明をして受け入れ態勢を整えたり、祭りに招いて地域に溶け込ませたりといった取り組みも報告されています。

総じて、日本全体で外国人材への依存度が高まりつつあり、インドネシア人材の受け入れも都市・地方問わず拡大しています。ただ、地方ほど人手不足が深刻であり、今後も地方企業・団体がインドネシアを含む海外からの人材に活路を見出す動きは強まるでしょう。一方都市部でも、多文化共生の環境整備が進むにつれ外国人の働きやすさが向上し、インドネシア人が定着・活躍しやすくなることが期待されます。

 

 

6. 業種別の受け入れ状況と課題(介護・製造・建設・農業・外食・漁業など)

6. 業種別の受け入れ状況と課題(介護・製造・建設・農業・外食・漁業など)

ここでは、日本でインドネシア人材の受け入れが進んでいる主要業種ごとに、その現状と課題を解説します。介護、製造、建設、農業、外食、漁業など分野別に、受け入れ人数の動向やインドネシア人材の活躍状況、直面している課題を見ていきましょう。

介護分野:インドネシア人が存在感を発揮

介護は特定技能制度の目玉分野の一つで、慢性的な人手不足に対処するため多くの外国人材が受け入れられています。2024年12月末時点で特定技能「介護」で働く外国人は4万4,367人に達し、この数は右肩上がりで増加中です。国籍別ではインドネシア人が介護分野で最も多くなっています。これはインドネシアがEPA(経済連携協定)を通じた看護師・介護士受け入れで古くから関係があったことや、技能実習「介護」も盛んで実習修了後に特定技能に移行するケースが多いことが影響しています。さらに、インドネシア国内で介護技能評価試験・日本語試験(特定技能介護)の実施回数が多く、合格者が増えていることも在留者増加を後押ししています。

介護現場でのインドネシア人の評判は概ね良好です。前述のように温和で真面目な気質が、高齢者に寄り添う介護業務に適しているとの評価があります。「利用者に対して優しく接し、日本語も熱心に勉強してコミュニケーションをとっている」といった声も聞かれます。宗教上の理由で夜勤や食事提供に制約がある場合もありますが、施設側が配慮することで大きな問題なく勤務できているケースが多いようです。

課題としては言語の壁と資格取得があります。介護では利用者との円滑な意思疎通が業務の質に直結するため、一定以上の日本語力が欠かせません。また、将来的に介護福祉士の国家資格を取得すれば長期的な定着も可能になるため、外国人介護職には資格取得支援が求められます。インドネシア人材は学習意欲が高いので、日本語学校や介護学校への通学支援を行うことで国家試験合格者も出始めています。現状では技能実習→特定技能で最長10年在留できますが、介護福祉士資格取得者は在留資格「介護」への切替えでさらに長期就労も可能です。こうしたキャリアパスを描けるようにすることが課題であり、受け入れ各所で支援体制が整えられつつあります。

製造業分野:工場労働の主力として増加、一方安全管理に留意

製造業は外国人技能実習生が昔から多く働く分野であり、特定技能でも最大規模の受け入れとなっています。中でも食品加工などの単純作業系から、機械部品加工などの技能系まで幅広く人材が求められています。

特定技能では「飲食料品製造業」が最も在留者数が多い分野で約7万0,202人(全体の27.9%)を占めます。この分野は従来から技能実習生や留学生のアルバイトが多く働いていた領域で、工場数も多いためニーズが大きいことに加え、作業内容が比較的定型的で習得しやすいため外国人労働者にも人気があります。インドネシア人も食品工場で多数活躍しており、例えば食品加工会社でライン作業のリーダーに抜擢された事例などもあります。「手先が器用でまじめに作業してくれる」という評価があり、衛生ルールなどもきちんと守れる人が多いようです。

次いで多いのが「素形材・産業機械・電子電気情報関連製造業」(新名称では「工業製品製造業」)で約4万4,044人、これも実習生出身者が多い分野です。鋳造・プレス加工や電子機器組立てなどでインドネシア人実習生が技能を発揮しています。こちらはある程度専門技能が必要ですが、インドネシアは工業高校出身者も多いため、基礎知識を持った人材もいます。中には溶接技能実習で優秀な成績を収め、日本の技能五輪ならぬ技能競技大会で表彰されたインドネシア人実習生もいるほどです。

製造業における課題は、安全管理と日本人とのコミュニケーションです。工場では機械や危険物を扱うこともあり、言葉の誤解や習慣の違いから事故につながるリスクがあります。例えば、安全手順の理解不足や、防護具の着用ルールの認識違いなどです。これに対して企業側は、多言語の安全マニュアルや作業手順書を用意したり、ベテランの日本人職員がマンツーマンで指導したりする工夫をしています。また、外国人同士で固まらず日本人従業員とのチームワークを醸成することも安全な職場づくりに有効です。インドネシア人は真面目ですが遠慮する面もあるため、「分からないことはすぐ聞くように」と声掛けしやすい雰囲気を作ることが大切です。

もう一つの課題は将来的な人材定着です。製造業の場合、特定技能2号への移行対象ではない分野も多く、最長在留5年で帰国となる場合が大半です。せっかく技術を身につけた人材が5年でいなくなってしまうのは企業にとっても痛手です。現在、政府は技能実習に代わる「育成就労制度」を創設し、日本で長く働ける道を増やそうとしています。製造業の現場からも、「優秀な外国人にはもっと長く働いてほしい」という声が上がっており、新制度や在留資格の柔軟化に期待が集まります。

建設分野:技能者不足を補う戦力、技能向上と定着が鍵

建設業では、外国人技能実習生・特定技能外国人がすでに不可欠な戦力になっています。高所作業や力仕事もいとわず働いてくれる外国人は、若手が減少する建設現場にとって貴重な存在です。2023年時点で特定技能「建設分野」の在留者は31,853人おり、第4位の受け入れ規模です。さらに多くの技能実習生が建設関連職種(鉄筋施工、型枠、左官、配管、電気設備など)で働いています。

インドネシア人は建設系でも増加傾向にあり、2010年代後半から積極的に受け入れる日本企業が出てきました。例えば東京のある鉄筋工事会社では2017年からインドネシア人実習生を受け入れ始め、現在では十数名のインドネシア人が在籍、その中から現場リーダーに育成しようとしているケースがあります。社長曰く「日本に来て仕事をするという熱意ある彼らを将来のリーダーに育てたい」とのことで、技量や日本語の上達も著しく、既に日本人職長からも信頼を得ているとのことです。

建設業の課題は何と言っても安全と技能習熟です。足場の組立や重機操作など、命にかかわる注意点が多い職場です。ここで言葉の問題や文化の違いが影響しないよう、徹底した安全教育が必要です。企業によっては、実習生・特定技能外国人向けに母国語で安全研修ビデオを用意したり、安全標識を多言語併記にしたりと工夫を凝らしています。また、日本人のメンター制度を導入し、現場ごとに外国人労働者をケアする担当者を決めている例もあります。

もう一つは技能検定や資格取得です。建設分野では特定技能2号への移行が認められているため、一定の経験を積んだ外国人技能者は2号に移行し在留の長期化が可能です。2号に移行すれば在留に上限がなくなり、家族帯同や永住申請も視野に入ります。そのためには技能試験等に合格することが必要で、日本語の壁もあり容易ではありません。しかし企業側がしっかり訓練計画を立て、技能検定受験を支援すれば合格も十分可能です。すでにインドネシア人実習生から日本の技能検定に合格し、技能実習3号生や特定技能2号へ移行した例も出ています。

また、建設業界では外国人材に対する偏見をなくし、公正な待遇を保証することも課題です。過去には一部で賃金未払い等の問題も指摘されましたが、現在は監理団体や国交省の監督もあり改善が進んでいます。彼らを対等な技能者として扱い、キャリア形成を支援する姿勢が、結果的に長く日本で働いてもらうことにつながります。

農業分野:地方農業の担い手、季節変動への対応が課題

農業分野は、日本人の高齢化と後継者不足が顕著で、技能実習生の力に頼る部分が大きい業界です。野菜・果物の収穫、苗の育成、酪農の搾乳や飼育管理など幅広い作業に外国人実習生が従事しています。インドネシア人も、例えば宮崎県や北海道などで農業実習生として働く人がいます。

近年は特定技能「農業」分野も拡充されつつあり、特定技能試験の合格者が増えています。インドネシア国内でも農業技能評価試験が行われ、合格した人が日本に特定技能で入国するケースも出てきました。農業分野の特定技能在留者は2023年時点で1万人余りですが増加傾向にあり、インドネシア政府も農業分野の人材育成に力を入れています。

農業でのインドネシア人材の強みは、暑い気候や屋外作業に慣れていること、そして根気強く単調な作業にも取り組めることです。実家が農家という実習生も多く、農作業自体に抵抗がありません。日本の先進的な農業技術を学びたいという意欲もあり、真剣に仕事を覚えようとします。

課題としては、季節的な仕事量変動や地域生活への順応があります。農業は繁忙期と閑散期の差が大きく、忙しい時期は早朝から日没まで働く一方、オフシーズンは仕事が減ります。繁忙期の長時間労働で体調を崩さないよう労務管理に注意が必要ですし、逆に暇な時期にモチベーションを維持する工夫もいります(研修の実施や有給取得の奨励など)。

また、多くの農業実習生は地方の農村地域で暮らします。都市部出身のインドネシア人にとって、日本の寒村での生活は娯楽も少なく孤独感を感じることもあります。地域住民との交流機会を設けたり、インターネット環境を整えて家族と連絡を取りやすくするなどの配慮が望まれます。受け入れ農家や農協の中には、月1回の面談やイベントへの招待などを通じて実習生のメンタルケアを行っているところもあります。

さらに、農業は天候等に左右され不確実性が高い分野です。例えば台風被害で作物が全滅した場合、実習生の作業計画も狂ってしまいます。その際には監理団体と連携し、別の農家へ一時的にヘルプに出すなど柔軟な対応が必要です。このような不測の事態への備えも課題と言えるでしょう。

外食業・サービス業分野:需要回復で急増、接客言語力がポイント

外食業(飲食店)や宿泊業といったサービス業分野も、外国人材の活用が期待されている領域です。これらの分野はコロナ禍で一時停滞しましたが、2023年以降回復傾向にあり、特定技能試験の実施数も増えてきました。インドネシア人は日本食文化や観光業にも関心があり、ホテルスタッフや調理補助、レストランのホール係などで働きたいという希望者もいます。

外食業の特定技能は2021年頃まで受け入れが少なかったものの、飲食店の人手不足再燃に伴い合格者・入国者が増えています。外食分野ではベトナム人が依然多いですが、インドネシア人も徐々に参入しています。例えば大手牛丼チェーンやファストフード店でインドネシア人留学生がアルバイトしており、そのまま特定技能に切り替えるケースなどがあります。

宿泊業では、日本語とおもてなしスキルが求められるため、即戦力となる人材は限られますが、リゾートホテルや旅館での裏方業務(清掃・ベッドメイキング等)や簡単なフロント業務に従事する外国人が増えています。インドネシア人は英語を話せる人も多く、訪日外国人対応では英語力が強みになることもあります。

サービス業の課題は、接客に必要なコミュニケーション能力です。お客様対応を直接行う場合、敬語や丁寧な物腰といった日本独特の接客マナーを身につける必要があります。インドネシア人は礼儀正しいですが、言葉遣いや細やかな気配りの面では最初戸惑うこともあります。受け入れ企業は独自の研修プログラムを用意し、ロールプレイングなどで接客スキルを訓練しています。また、メニューや館内案内の内容をしっかり理解させるための教育も重要です。

一方で、外国人ならではの強みもあります。例えばハラル対応の知識を活かし、イスラム教徒観光客へのメニュー提案にインドネシア人スタッフが貢献するといった事例があります。また、多言語対応では母語のインドネシア語だけでなく、英語やマレー語が話せる人もおり、訪日客対応に重宝されています。

サービス業ではシフト勤務や夜勤も多いため、生活リズム管理や交通手段の確保も課題です。深夜勤務がある場合、寮を職場近くに用意する、送迎を出すなどの対応が必要でしょう。また、お客様から外国人スタッフに思わぬクレームが出ることもあり得ます。その際は企業が前面に立ってフォローし、スタッフを守る姿勢が大切です。

漁業・水産加工分野:タフさが求められる現場、労働環境改善が課題

漁業や水産加工の分野でも、多くの外国人実習生が活躍しています。日本人若年労働者の減少に伴い、漁船への乗船実習生や、水産物の加工工場で働く実習生は年々増えてきました。

インドネシア人は海洋国の出身ということもあり、漁業分野との親和性があります。実際、日本の遠洋漁業の世界では昔からインドネシア人船員が雇われてきた歴史があります。近年は技能実習制度を通じて漁船漁業(水産物の漁獲)や養殖業でインドネシア人実習生が働いています。南方の島国で育った彼らは海に対する馴染みがあり、船上生活にも順応しやすいと言われます。

水産加工(例えば魚の選別・箱詰め、缶詰製造など)でもインドネシア人実習生は重要な戦力です。東北や北海道の水産加工場では、季節労働的に実習生が大量に作業を行い、地元経済を支えているケースもあります。

この分野の課題は、労働環境の厳しさにあります。漁業は危険と隣り合わせで、長時間労働や重労働も伴います。寒冷地での作業や夜間操業など、過酷な条件下で働くことも多いため、心身の負担が大きい職場です。過去には外国人船員や実習生が事故に遭ったり、体調を崩す事例も報告されており、労働安全衛生の徹底が急務です。

具体的には、防寒着や安全帯の完備、十分な休息時間の確保、栄養ある食事の提供などが必要です。また、漁船内での人間関係にも配慮が要ります。閉鎖空間で長期間日本人船員と寝食を共にする中、コミュニケーション摩擦が起こらないよう、船長や乗組員に多文化理解の研修を行う取り組みもあります。

水産加工場でも、冷たい水を使う作業や早朝からの勤務など大変な面があります。インドネシアの若者には初めて経験する寒さということもあるので、防寒対策や体調管理が重要です。企業は休憩室に暖房を入れたり、温かい飲み物を常備するなどの気配りをしています。

もう一つの課題は離職・失踪リスクです。漁業分野は技能実習生の失踪率がやや高い傾向が指摘されています。これは仕事の厳しさゆえに途中で投げ出してしまう人が一定数いるためです。インドネシア人材に関しては、第7章でも触れますが近年は失踪トラブルが比較的少ないとはいえ、業種によっては起こり得ます。そこで、待遇改善やメンタルケアが鍵となります。漁業組合によっては、実習生に週一回日本語教室を開いて気分転換させたり、休日に町に出られるようサポートしたりして、ストレスを軽減させる努力をしています。

以上、主要業種ごとに受け入れ状況と課題を見てきました。どの業種においても、インドネシア人材は欠かせない戦力となりつつありますが、それぞれ言語・技能・文化の壁に対する乗り越え方がポイントとなります。

 

 

7. 他国(ベトナム・ミャンマーなど)との比較分析(供給不安・失踪問題など)

7. 他国(ベトナム・ミャンマーなど)との比較分析(供給不安・失踪問題など)

日本で働く外国人材の主な出身国として、インドネシア以外にベトナムや中国、フィリピン、ミャンマー、ネパールなどがあります。中でもベトナムは長らく技能実習生送り出し国のトップであり、ミャンマーも近年存在感を増していた国です。本章では、他国出身者と比べたインドネシア人材の特徴や、各国の供給状況・課題を比較分析します。特に問題視されることの多い失踪(行方不明)問題や、各国の情勢による人材供給リスクにも触れます。

ベトナム人材との比較:最大勢力だが最近の変化

ベトナムはこれまで日本の技能実習・特定技能制度を支えてきた最大の送り出し国です。2020年前後には、技能実習生全体の50%以上がベトナム人であったほどです。日本語教育や送り出し機関もベトナム国内に数多く整備され、非常に多くの若者が日本行きを希望してきました。ベトナム人の特徴として、勤勉で器用、向上心が強いことが挙げられます。日本企業からも総じて評価が高く、「明るく賑やかで活気が出る」といった声もあります。

しかし、近年ベトナム人材にいくつかの変化が生じています。一つは国内経済の発展による賃金上昇です。ベトナムの都市部では給与水準が上がり、日本との賃金格差が縮小してきました。そのため、以前ほど「日本で高賃金を稼ぎたい」という動機が強くなくなりつつあるとの指摘があります。実際、ベトナムから日本への技能実習生送出数はここ数年伸びが鈍化しており、一部では台湾や韓国など他の国への就労を選ぶ若者も増えています。

もう一つ大きな問題として、技能実習生の失踪(行方不明)問題があります。統計上、例年失踪者の半数以上がベトナム人と言われてきました。2022年には技能実習生全体の失踪者数が9,000人を超え過去最多となりましたが、その多くがベトナム出身者です。失踪の主な原因は「母国で抱えた高額な借金」と指摘されています。送り出し時に悪質な仲介業者(ブローカー)が法外な手数料を取り、渡航時点で数十万円もの借金を背負う実習生が後を絶ちませんでした。借金返済に追われ、少しでも賃金の高い非合法就労に走ってしまうケースが多発したのです。

これに対し、日本とベトナム双方の政府・機関も対策に乗り出し、ブローカー規制や手数料上限の設定、日本側受け入れ企業への指導などが行われました。多少の改善は見られるものの、依然としてベトナム人実習生の失踪はゼロにはなっていません。ベトナム政府も、優良送り出し機関の認定や日本語教育支援などで健全化を図っていますが、完全な解決には至っていない状況です。

一方、インドネシア人材は失踪トラブルが比較的少ないと言われます。その背景には、インドネシア政府が人材ブローカーの取り締まりを徹底し、高額な借金を負わせない仕組みを整えたことがあります。既に2010年代後半に大規模な摘発が行われ、多くの悪質ブローカーが逮捕された経緯があります。その結果、現在では公式の送り出し機関を通じた場合、候補生が巨額の借金を抱えることはほぼなくなりました。インドネシア人技能実習生に関して「借金苦による失踪」はかなり抑制されているとみられます。

ただし、インドネシア人の絶対数が増えたため、これからは失踪者数自体は増加する可能性があります。環境に適応できず途中帰国・失踪してしまう人が出ないよう、受け入れ側でのサポートが重要です。ベトナム人材についても、問題発生の要因を減らし待遇を改善することで、優秀な人材に長く働いてもらえるよう対策が進められています。

ミャンマー人材との比較:政情不安による影響

ミャンマー(ビルマ)出身の技能実習生・労働者も、日本で近年増えていました。ミャンマー人は温厚で真面目、手先が器用という評価があり、縫製業や食品加工などで高く評価する企業もあります。また日本との賃金格差が大きく、熱心に働く人が多いです。

しかし、2021年2月に発生した軍事クーデター以降、ミャンマーの政情が不安定化し、日本との人材やりとりにも影を落としています。クーデター直後からミャンマーからの新規入国者数は減少し、一時は渡航手続きが滞る状態にもなりました。さらに、日本にいるミャンマー人技能実習生がクーデターを理由に難民申請を行い在留を延長するケースも相次ぎました。これは、人道的配慮から法務省が一時的に実習修了者に在留特別許可を与えるなど対応したためですが、日本で働き続けたいミャンマー人にとって一種の逃げ道となりました。

こうした状況から、日本企業側にとってはミャンマーからの人材供給が不安定になったと言えます。送り出し機関の業務も混乱し、ミャンマー人候補者を思うように受け入れられない局面がありました。加えて、ミャンマー人実習生の中には祖国の混乱への不安から帰国を躊躇する人も増え、失踪や不法残留のリスクも高まる懸念がありました。

一方インドネシアは政治的に安定しており、経済も堅調に成長しています。したがって政情不安による人材流出のリスクは低いと言えます。日本との間で人材協力に関する政府間のパイプもしっかりしており、送り出し・受け入れの枠組みが安定しています。例えば2023年には日本政府(JICA)がインドネシア労働省に送り出し支援アドバイザーを派遣するなど、制度運用の強化に協力しています。こうした連携により、インドネシアからの人材供給は今後も継続的かつ安定して行われる見込みです。

その他の国との比較:フィリピン・ネパール・中国など

その他、日本で働く主要国籍としてはフィリピンや中国、ネパールなどが挙げられます。

フィリピン人は介護やサービス業で多く見られます。英語が堪能でコミュニケーション力が高い一方、日本語習得にはあまり積極的でない人もいると言われます。フィリピンも賃金が上昇傾向にありますが、海外出稼ぎ文化が根強く人材供給は安定しています。インドネシア人と比較すると、陽気で自己主張が強いフィリピン人に対し、インドネシア人は控えめで協調的という違いがあります。

中国人技能実習生は一時期非常に多かったものの、近年は減少傾向です。中国国内の経済発展で、日本で低賃金労働をする魅力が薄れたことが原因です。中国人は技術系分野で優秀な人材が多く、日本企業で中核を担っているケースもありますが、今後はその多くが専門的・技術的分野(高度人材)にシフトし、単純労働分野では他国に置き換わっていくでしょう。その意味で、中国人材との競合よりも、インドネシア人はベトナム人やネパール人との「シェア争い」になると予想されます。

ネパール人はここ数年で介護や外食で台頭してきました。ネパール人はまじめですが自国語以外の言語に慣れていない人も多く、日本語習得に苦労する場合があります。しかし仏教・ヒンドゥーの影響で温厚です。インドネシア人との比較では、宗教は違えどおおらかな国民性という点で共通項があります。ネパール国内も政治情勢が不安定になることがあり、ミャンマーほどではないにせよ影響を受けるリスクはあります。

インドネシア人材の強みと安定性

以上を踏まえ、インドネシア人材の相対的な強みとしては以下が挙げられます。

  • 失踪リスクの低さ:政府主導のブローカー排除により、借金苦による失踪がほぼ無くなっている。全体の失踪率から見ても比較的低水準と考えられる。
  • 政情・経済の安定:政治的混乱が少なく、日本への送り出しが途切れにくい。経済成長はしているが国内雇用吸収力は十分でなく、日本との賃金格差もしばらく維持される見込み。政府が積極的に海外就労を支援しており、増員目標を掲げている。
  • 文化的適応力:日本と似た敬語文化や真面目さを持ち、モラルや勤勉さで信頼できる人材が多い。他国に比べ対日好感度が高く、日本社会になじみやすい。
  • 日本語力の高さ:送り出し前の教育充実で、平均的に見て日本語初級レベルが他国より高いと言われる。コミュニケーション上のアドバンテージになる。
  • 人材プールの大きさ:人口が多く若年層も膨大なため、将来にわたり安定した労働供給源となり得る。ベトナムに次ぐ規模の潜在候補者が存在。

逆に課題としては、今後数が増えるにつれ失踪者や問題事例もゼロではなくなる点です。質の維持のため、日本とインドネシア両国で良質な送り出し・受け入れの仕組みを守ることが重要です。また他国に比べ控えめな分、最初は遠慮しすぎて悩みを抱え込む人もいます。そのあたりのフォローも必要でしょう。

総合的に見れば、インドネシア人材はベトナム人材に続く「第二の柱」として非常に有望であり、政府もそれを見越して計画を立てています。

 

 

8. インドネシア側の送り出し制度・政府方針・教育体制・費用負担の取り組み

8. インドネシア側の送り出し制度・政府方針・教育体制・費用負担の取り組み

インドネシア政府および送り出し機関は、近年日本向け人材の送り出しに力を入れています。その制度や方針、教育体制、費用負担に関する取り組みについて説明します。インドネシア側の事情を知ることで、なぜインドネシア人材の質と量が向上しているのかが理解でき、日本企業としても安心材料になるでしょう。

インドネシアの送り出し制度の枠組み

インドネシアでは海外に働きに出る労働者を「PMI(Pekerja Migran Indonesia)」と呼び、国家機関であるインドネシア海外労働者保護庁(BP2MI)が中心となって管理・支援を行っています。以前はBNP2TKIという名称でしたが、2020年に改組され現在のBP2MIとなりました。この機関は出国前後の労働者の保護や情報提供、送り出し許可事業者の監督などを担っています。

日本向けの技能実習生・特定技能候補者の送り出しは、労働省の認可を受けた民間送り出し機関(PPTKIS)が実務を担当します。送り出し機関は全国に多数あり、日本の受入団体(監理団体や登録支援機関)とMOC(協力覚書)に基づいて連携しています。技能実習については、日インドネシア間で送り出し機関リストが相互確認されており、公式リストに載った機関のみが送り出せます。特定技能についても、2019年の協力覚書により手続きが定められました。

送り出しの基本フローは次の通りです。

  1. 日本語学校への入学:多くの候補者はまず地元の日本語学校で数か月~1年学びます。これは送り出し機関が提携している学校で、基礎的な日本語と生活マナー、簡単な日本事情などを教えます。ここで一定の語学力を身につけた者が次のステップに進みます。
  2. 送り出し機関への登録・選抜:日本語学校でN4相当以上になった段階で、送り出し機関に正式登録します。送り出し機関は企業ごとの求人条件に合う候補者をリストアップし、書類選考・面接・技能テスト等で選抜をします。日本の受入企業・団体が現地面接を実施することもあり、その際は送り出し機関が通訳等を手配します。
  3. 事前教育:内定を得た候補者は、出国前に集合研修を受けます。通常2~3か月程度、送り出し機関のトレーニングセンター等で日本語のさらなる向上、専門用語や技能の予習、日本の法制度・文化の学習、健康診断や体力づくりなどを行います。実習生の場合、ここで企業別の技能スキルも叩き込みます。BP2MIの規定で200時間以上の講習が義務づけられています。
  4. 渡航手続き:必要書類(在留資格認定証明書COEや雇用契約書等)が揃ったら査証申請をし、出国の日程を調整します。技能実習生は一括してチャーター機で来日することもあります。BP2MIは出国ゲートでのサポート窓口を設置し、トラブルなく送り出せるよう対応します。
  5. 渡航・入国後:候補者は来日し、技能実習生なら入国後講習(日本で1か月程度)を受けた上で実習実施企業へ配属されます。特定技能の場合は即戦力として就労開始します。送り出し機関は日本側監理団体等と連絡を取り、就労開始後のフォローアップも一定期間行います。

政府の方針と目標数値

インドネシア政府は、日本を含む海外への人材派遣を国家戦略の一つと位置付けています。国内の若年失業率対策や外貨獲得(送金)手段として、海外就労機会を拡大する方針です。特に日本とは経済連携協定(EPA)もあり、伝統的に協力関係が深いため、近年は日本向け送出しを重点強化しています。

2023年には驚くべき目標が発表されました。「日本への労働者派遣目標を現在の10万人から25万人に大幅拡大する」という計画です。これは日本経済新聞の報道によるもので、インドネシア政府が外国人材受入枠拡大の動きを見せる日本に合わせて、自国からの送り出しを倍増以上に増やす意欲を示したものです。背景には、特定技能ビザ枠の拡充でインドネシア人労働者の需要が高まっていることがあります。実際、2023年にはインドネシアから日本への新規就労入国者数が技能実習生を除いて約2万人、そのうち特定技能取得者は約1万5千人に達しました。これは特定技能に限ればインドネシアが日本への最大の供給国になったことを意味します。

こうした数字を踏まえ、インドネシア政府は「5年間で日本に10万人の産業人材を育成・交流する」というビジョンも掲げています。2023年11月にはジャカルタで「日本・インドネシア人材フォーラム」が開催され、両国政府関係者が制度・課題について議論しました。インドネシア労働省高官からは、日本との人材交流強化に向け法律・制度整備や日本語教育の充実を図るとの発言があり、JICAからも支援が表明されています。

要するに、インドネシア側は国を挙げて日本向け人材の送り出しを増やし、質も高めようとしているのです。これは日本企業にとって非常に心強い動きです。

教育体制の強化

上記の目標達成には人材育成が鍵となります。インドネシアでは現在、日本向けに職業訓練校や専門学校との連携が進んでいます。例えば、国営の職業訓練校卒業生を技能実習生として送り出す「IJCプログラム」などがあり、これにはインドネシア政府が補助金を出す仕組みです。日本企業と提携してカリキュラムを設定し、溶接や建築、介護など専門技術と日本語を在学中から教え込むケースも増えています。

また、送り出し機関自身も日本語学校運営や技能トレーニング施設を充実させています。ある大手送り出し機関では、地方都市に寄宿舎付きの訓練センターを建設し、年間数千人規模で日本向け候補者を訓練しています。そこでは模擬工場や模擬病室まで備えて実践的訓練を行い、日本の受け入れ企業担当者を招いて研修の様子を見せるなど質の高さをアピールしています。

日本語教育の普及も重要です。インドネシア国内の日本語学習者数は年々増え、現在約70万人とも言われます(世界で学習者数第2位とも報じられました)。政府も高校生向けに日本語クラスを開設したり、日本企業と連携した日本語コンテストを開催したりと支援しています。送り出し候補生だけでなく、将来的な高度人材や留学生予備軍も含め日本語力底上げを図っています。

BP2MIも技能実習生・特定技能候補者向けの公式ガイドブックやウェブサイトを用意し、日本の制度や生活情報を提供しています。これは渡航前に必ず読ませ、権利義務関係やSOS連絡先などを周知徹底するものです。トラブル未然防止や、違法業者に騙されないための啓発も行っています。

費用負担と手数料の透明化

前述した通り、インドネシア政府は悪質ブローカーの排除に成功しつつあります。さらに近年は、送り出し費用の労働者負担軽減に取り組んでいます。具体的には「Zero Cost Program(ゼロ費用プログラム)」と呼ばれる政策で、技能実習生や特定技能で海外に行く際、候補者が支払う費用を限りなくゼロに近づけようというものです。

インドネシアでは本来、正規の送り出し機関を通じた場合でもパスポート取得費用や国内移動費、研修費用の一部など一定のコストがかかります。ただ、それらは労働者個人ではなく送り出し機関や受入れ企業側が負担する仕組みへの転換が進められています。例えば特定技能では、日本側企業が現地試験費用や渡航費を負担することが多くなってきました。また、BP2MIは低所得層の候補者向けに渡航費無利子ローンを提供する制度も検討しています。

送り出し契約時には必ず費用内訳の説明が行われ、不要な費用を請求しないよう厳しく監督されています。過去には語学研修料名目で過大請求する悪質業者もいましたが、今は許可取消等の処分例もあり、かなり改善しました。

こうした透明化により、インドネシア人候補者はほぼ借金をせずに日本へ行けるようになっています。これは大きな利点であり、ベトナム人が平均数十万円の負債を負って来るケースが多かったのと対照的です。借金が無ければ、失踪して違法に高賃金仕事に移るインセンティブも低下します。インドネシア人材の失踪率の低さは、この費用負担軽減の成果といえるでしょう。

帰国後のキャリア支援

送り出しだけでなく、帰国後のフォローもインドネシア政府は重視しています。技能実習を終えて帰国した元実習生に対し、習得技能に応じた再就職斡旋や起業支援、訓練継続のサポートを行っています。例えば農業実習を修了した帰国者を集めて、地元で農協のような組織を作り日本の農業技術を広める試みや、縫製実習修了者にミシンを支給して縫製工場を立ち上げる援助などです。

また、特定技能で一度帰国した人が再度特定技能で日本に戻ることも奨励しています。日本企業にとっても経験者が戻ってくれるのは有難い話であり、インドネシア側も再送り出しをスムーズにする手続きを整えています。「いつでも日本で得た技能を活かせる」というメッセージを発信することで、候補者の応募意欲を高める効果もあります。

以上のように、インドネシア側では送り出しに関する制度整備・教育・費用の面で様々な努力が払われています。その結果として、インドネシア人材は質が高く安定的に供給され、日本側から見ても信頼できる存在となっています。

 

 

9. インドネシア人材受け入れまでのステップ(送り出し機関→試験→在留資格→渡航→配属まで)

9. インドネシア人材受け入れまでのステップ(送り出し機関→試験→在留資格→渡航→配属まで)

インドネシアから技能実習生や特定技能人材を受け入れる場合、具体的にどのようなプロセスを経る必要があるか、時系列で整理します。送り出しから入国・配属までの主なステップを以下にまとめます。初めて外国人を受け入れる企業の担当者にもわかりやすいよう、一般的な流れを追ってみましょう。

ステップ1:受け入れ計画の立案と求人依頼

  1. 受け入れ人数・職種の決定: まず自社で、どの部署に何名の外国人が必要か、いつ頃から来てもらいたいかを検討します。技能実習の場合は職種・作業が決まっていますので、自社業務に該当するか確認します。特定技能の場合は14分野の中から自社が該当するか確認します。受け入れ形態(技能実習 or 特定技能)、人数、時期、必要なスキル・日本語レベルの目安などを社内決定します。
  2. 監理団体や登録支援機関への相談: 技能実習の場合は監理団体(組合など)に加盟し、その指導のもと計画を進めます。特定技能の場合は自社で直接採用するか、委託する登録支援機関を選定します。経験豊富な団体・支援機関に早めに相談し、全体スケジュールや費用感をつかみます。
  3. 求人票作成と送り出し機関への依頼: 希望条件をまとめた求人票(募集要項)を作成します。これには職種内容、求める技能・資格、日本語レベル、待遇(給与・労働時間・休日など)、受入れ期間などを明記します。それを監理団体経由でインドネシア側の送り出し機関に送ります。送り出し機関はいくつか選択肢がありますが、実績や信用のある機関を選ぶとよいでしょう。

ステップ2:候補者の選抜(面接・試験)

  1. 書類選考: 送り出し機関から複数の候補者の履歴書や日本語能力証明書などが届きます。年齢や学歴、職歴、日本語研修歴などを比較し、面接したい候補者を選びます。
  2. 面接・実技試験: 候補者との面接を実施します。最近はオンライン面接(Zoom等)も一般的ですが、可能なら担当者が現地に赴いて直接面接するとミスマッチが減ります。通訳は送り出し機関が用意します。コミュニケーション力、人柄、日本で働く意欲などを評価しましょう。必要に応じて簡単な実技試験(例えば色覚テスト、工具の扱い確認など職種に応じたもの)を行うこともあります。介護ならおむつ交換のデモ、建設なら腕力測定などを組み合わせる企業もあります。
  3. 内定者の決定: 面接結果を踏まえ採用内定者を決定します。採用人数に対し多少予備合格者を出すこともあります(ビザ取得過程での不測事態に備え)。選考結果は監理団体経由で送り出し機関に伝え、本人にも通知されます。

ステップ3:在留資格取得と受入準備

  1. 雇用契約・実習計画の作成: 内定者と正式な雇用契約を締結します(技能実習の場合は技能実習契約)。勤務条件や給与、勤務地などを書面で取り交わします。また技能実習では監理団体が「技能実習計画書」を作成する必要があります。これは実習内容や指導担当者など詳細を書いた計画で、本人の母国語翻訳も用意します。
  2. 在留資格認定証明書(COE)の申請: 日本の入管(出入国在留管理庁)に対し、内定者ごとの在留資格認定証明書交付申請を行います。技能実習なら監理団体が、特定技能なら受入企業(または支援機関)が代理で行います。必要書類は雇用契約書、技能実習計画書(技能実習の場合)、会社の登記簿・決算書、受入れ理由書など多岐にわたります。入管が審査し問題なければCOEが発行されます。目安として申請から1~3ヶ月程度かかります。
  3. 渡航準備と事前講習: COE交付を待つ間、インドネシア側では候補者の出国前講習を実施しています(第8章で触れたような日本語・技能研修など)。企業側でも社内受入れ体制を整えます。具体的には寮や宿舎の準備、職場内に受入担当のメンター配置、就業規則やマニュアルの多言語化、健康診断手配などです。また、日本での社会保険加入手続きや労働保険手続きの準備もしておきます。
  4. 査証(ビザ)申請: COEが発行されたら、インドネシア側で日本大使館・領事館に査証申請します。送り出し機関が手続きを代行します。COEとパスポート、写真、申請書などを提出し、数日~1週間程度で査証が発給されます。

ステップ4:来日と研修、職場配属

  1. 来日(渡航): 渡航日を決め、航空券を手配します。インドネシア人技能実習生の場合、多くはジャカルタやスラバヤ発の国際線で成田・中部・関西などに到着します。送り出し機関スタッフが空港で見送り、日本側監理団体スタッフが空港で出迎える形になります。入国審査で在留カードが交付されます。そのまま企業に合流する場合もありますが、多くは入国後研修に入ります。
  2. 入国後講習(技能実習の場合): 技能実習1号の場合、法定で最初の1ヶ月間は講習を受けなければなりません。監理団体が研修センター等で実施します。日本語・生活ルール・法令・安全衛生などについて計講習時間132時間以上行います。特定技能の場合はこうした義務講習はありませんが、企業独自で数日間のオリエンテーションを行うケースもあります。
  3. 職場への配属: 研修を終えたら、いよいよ実習実施企業(または就労先企業)での勤務開始です。初日は入社式や辞令交付、安全教育、職場紹介などを行います。職場の同僚に紹介し、簡単な歓迎会など開いて打ち解けてもらうのも良いでしょう。配属後は、先輩社員がマンツーマンで業務指導するなど、OJT体制で仕事を覚えていきます。

ステップ5:在留期間中のフォロー

  1. 定期面談と支援: 配属後も定期的に監理団体(または支援機関)が本人との面談を実施します(少なくとも3ヶ月に1回)。就業状況や生活上の悩みなどをヒアリングし、問題があれば企業と協力して対処します。また、日本語検定の受験支援や、必要に応じ母国語での相談対応も行われます。
  2. 書類手続き: 在留カードの市区町村届出、健康保険・年金加入、銀行口座開設など各種手続きをサポートします。これらは企業の人事担当が一緒に対応することが多いです。また、入国後しばらくしたら技能実習責任者講習(企業側向け)なども開催されます。
  3. 在留延長・変更: 技能実習1号(1年目)から2号(2~3年目)へ進む際や、3号(4~5年目)へ進む場合、また特定技能の更新時には、改めて入管に在留資格延長申請を行います。さらに技能実習から特定技能への切り替えや、特定技能1号から2号への変更なども状況によって発生します。これらの手続きも企業・監理団体が主導し、必要書類を整えて申請します。

以上がインドネシア人材を受け入れてから働き始めるまでの一連の流れです。実際には関係機関との連絡調整など細かな作業も多いですが、監理団体や送り出し機関がリードして進めてくれますので、企業としてはそれらと密に連絡を取りながらスケジュール管理することが大切です。計画から配属まで通常6ヶ月前後かかることを念頭に、早め早めの準備を心がけましょう。

 

 

10. 受け入れ企業が注意すべきポイント(試験難度・費用・言語・文化対応・社内教育体制など)

10. 受け入れ企業が注意すべきポイント(試験難度・費用・言語・文化対応・社内教育体制など)

外国人材の受け入れは、日本人の採用とは異なる留意点が多々あります。ここでは、インドネシア人技能実習生・特定技能人材を受け入れる企業が特に注意すべきポイントを整理します。採用前の準備段階から、実際に受け入れてからのサポート体制まで、失敗しないためのチェックリストとしてお役立てください。

受け入れ前:試験と選考のポイント

  • 必要資格・試験の有無: 特定技能の場合、候補者は日本語試験(例: JLPT N4以上やJFT-Basic A2相当)と分野ごとの技能評価試験に合格している必要があります。インドネシア国内で実施されていますが、その試験難度を把握しておきましょう。例えば介護や外食は比較的合格者が多い一方、建設や製造系はやや難易度が高いです。自社が採用したい人材が試験合格済みか確認し、未合格なら採用までにパスすることを条件にするなど調整が必要です。
  • 現地面接の準備: 候補者選考では、面接時の判断基準を明確に持っておくことが大切です。日本語力、人柄、仕事への熱意、家族の理解度などを見るポイントを事前に共有し、複数で評価すると良いでしょう。通訳を介した面接では細かなニュアンスが伝わりにくいので、簡単な日本語で本人の口から話してもらう場面を作るのも有効です。
  • 採用後のキャンセル防止: 一度内定を出したら、その後辞退されることのないようフォローします。他社からも複数内定をもらって迷っているケースもあります。待遇条件や渡航時期などを明確に提示し、安心して待ってもらえるようにしましょう。場合によっては、内定通知後に親御さんに宛てて会社紹介や感謝の手紙を書くなどの工夫をする企業もあります。

手続き・費用面での注意点

  • 受け入れにかかる費用: 外国人受け入れには、初期費用と継続費用が発生します。初期費用は送り出し手数料、渡航費、日本側登録料などで、技能実習なら1人あたり数十万円程度、特定技能でも仲介業者を使えば同程度かかります。継続費用は監理団体への監理費(毎月数万円/人)や、登録支援機関への委託費用(同程度)が該当します。これらを事前に見積もり、予算化しておきましょう。費用負担の割り振り(企業負担か本人給与天引きか)は制度で細かく定められています(基本的に実習生本人に費用を負担させることは禁止事項が多いです)。違法な控除をしないよう監理団体の指導に従ってください。
  • 助成金の活用: 外国人実習生受け入れ企業向けの助成金制度が国や地方自治体にある場合があります。例えば中小企業向けの人材確保支援助成金(外国人雇用対応コース)などです。これらを利用すると研修費用の補助などが受けられることもあります。要件を満たすかどうか確認し、活用できるものは使いましょう。
  • 書類不備・期限超過の防止: 入管手続き書類や実習計画書などは非常に多く、一つの不備で差し戻しになることもあります。監理団体任せにせず、自社でも内容を理解しチェックする姿勢が重要です。また、在留資格更新手続きは期限管理がシビアです。うっかり期限を逃さないよう、社内でカレンダー管理し、更新月の3ヶ月前には準備に入るようにしましょう。

言語・コミュニケーション対応

  • 社内公用語の工夫: 職場で使う日本語は平易で明確にする意識を社員全員で共有してください。専門用語には指差し確認や実物を見せて教える、略語は使わずフルスペルで言う、あいまい表現(「~しといて」「適当に」など)は避ける、といった配慮が必要です。また、カタカナ英語や方言も伝わりにくい場合があるので注意です。
  • 翻訳ツールの活用: 緊急時やどうしても通じない場合には、スマホの翻訳アプリやポケット翻訳機も役立ちます。ただ、頼り切りでは語学上達しないので、あくまで補助的に使いましょう。簡単なインドネシア語の定型句(「おはよう」「ありがとう」「大丈夫?」など)を日本人側が覚えておくと、相手との距離が縮まることもあります。
  • 定期的な意思疎通: 日本人管理者・指導者は、毎日の朝礼や終業時などに声掛け習慣をつけてください。「困ったことはないか」「今日の作業はどうだったか」など気軽に質問し、双方向のコミュニケーションを図ります。インドネシア人は遠慮深いこともあるので、日本人側から歩み寄り、話しかけやすい雰囲気を作ることが肝心です。

文化・習慣への配慮

  • 食事・宗教への対応: 前述の通り、インドネシア人の多くはイスラム教徒です。社食や寮での食事提供時には豚肉やアルコール成分を避けたメニューを用意するか、自炊できる環境を整えます。ハラル専門食材でなくても、豚肉ゼラチンが入っていないか等に気を配えれば概ね大丈夫です。また、礼拝の時間(1日5回、内2回は就業時間中のことも)については、職場の隅にでも静かにお祈りできるスペースと時間を許容してください。礼拝は1回数分~10分程度ですので、休憩時間内に収まるなら特段問題ないでしょう。ラマダン月の断食中は、昼休みに食事を取らない代わりに休憩させてあげたり、勤務時間を配慮するなどの対応があると望ましいです。
  • 服装・宗教的シンボル: 女性でヒジャブ(スカーフ)着用者もいます。作業に支障がなければ着用を認めましょう。工場等で機械に巻き込まれる恐れがある場合は、安全な形でかぶれるよう指導します。また、宗教や文化に関するからかいや干渉は絶対にしないよう、職場の日本人にも教育します。例えばイスラム教徒に「どうして豚がダメなの?」などと無神経に聞くのはNGです。
  • 上下関係と指導法: インドネシア人は年長者や上司を立てる文化があるため、日本人の上司・先輩にも基本的に従順です。叱責されることにも慣れていない人が多く、人前で強く怒られると萎縮したり落ち込んだりしてしまいます。指導の際は人格を否定しない叱り方を心がけ、良いところはしっかり褒めるメリハリが大切です。もしミスをしても頭ごなしに怒鳴るようなことは避け、なぜミスが起きたのか本人の意見も聞きながら改善策を示します。プライドが高い面もあるので、面子をつぶさない指導が望まれます。
  • やってほしくない作業の伝え方: 日本人特有の遠回し表現は禁物です。例えば「それはあまりやらなくていいよ」と言うと、本人には「やってもいいし、やらなくてもいい」という意味に取られることがあります。本当に禁止したい行為は「これは絶対にしないでください」と明確に伝えます。同様に、お願いも「できれば〇〇してもらえると助かります」ではなく「〇〇してください」と言い切った方が誤解がありません。

社内教育体制とキャリアサポート

  • 指導担当者の選定: 受け入れ企業では必ず現場指導者と生活指導担当を置きます(技能実習では法定で選任が必要)。適任者を選ぶことが成功の鍵です。理想は、面倒見がよく異文化理解に前向きな社員です。年齢が近い先輩社員がメンターになると、兄弟のような関係で良い影響を与える場合もあります。指導担当者には事前に基本的な研修(技能実習責任者・指導員講習など)を受けさせ、日本語が通じにくい場合の教え方などもトレーニングしておきます。
  • 社内教育プログラム: 外国人社員向けに、日本語講習や資格取得支援を行う企業も増えています。インドネシア人材は学習意欲が高いので、例えば週1回日本語教師を招いたクラスを開講すると非常に喜ばれ、定着にもつながります。また、業務に関連する資格(フォークリフト免許や介護職員初任者研修など)を取得させるのも有益です。費用を会社が負担してあげればモチベーションアップにつながります。
  • キャリアパスの提示: 特定技能から更に技術者への登用制度を作ったり、技能実習修了後に正社員登用の道を示したりすると、本人たちの将来展望が開け意欲向上になります。「頑張ればリーダーになれる」「長く働ける」といった見通しがあれば、より積極的に仕事に取り組んでくれるでしょう。インドネシア人材の中には日本で管理職を目指したいという人もいますので、能力次第で登用していく柔軟さも必要です。

トラブル防止とリスク管理

  • 規則の明文化: 社内のルールは最初にはっきり伝えます。就業規則や労働契約書を母国語に翻訳したものを渡し、守るべきルール(遅刻・欠勤連絡方法、安全規則、機密保持など)を説明します。曖昧にすると後々トラブルのもとです。
  • 相談窓口の周知: ハラスメントや不当な扱いを受けた場合の相談先を明示しておきます。社内と社外両方必要です。社内では人事や上長に相談するよう伝え、社外では監理団体やJICAのホットラインなども紹介します。困ったらここに言えばいいという安心感を持たせることが大事です。
  • 緊急時対応: 病気やケガ、災害時の対応計画も事前に立てましょう。誰が付き添って病院に行くか、連絡先リスト、母国大使館との連絡法などを決めて共有しておきます。また、地震や火災訓練も日本人と一緒に行って体験させておくと良いです。
  • 地域の交番・役所との連携: 外国人が住む地域では、地元警察や自治体も協力的です。事前に「○○社の寮にインドネシア人が何名入居予定です」と知らせておくと、何かあった際にスムーズです。自治体によっては外国人相談窓口や日本語教室もあるので、情報提供してあげましょう。

以上のポイントを押さえておけば、インドネシア人材の受け入れは円滑に進み、彼らの能力を十分に発揮してもらえる環境を作れるでしょう。企業にとっても戦力確保と多様化推進のメリットが得られます。

 

 

11. インドネシア人とのコミュニケーションや文化的配慮のポイント(宗教・食事・礼拝など)

11. インドネシア人とのコミュニケーションや文化的配慮のポイント(宗教・食事・礼拝など)

第10章でも触れたように、インドネシア人材を受け入れる際には文化や習慣の違いを理解し、適切なコミュニケーションと配慮を行うことが重要です。ここでは特に宗教・食事・礼拝などに関する具体的な対応策や、日常的なコミュニケーションで気をつけるポイントをまとめます。相互理解を深め、気持ちよく一緒に働ける職場づくりの参考にしてください。

宗教上の配慮ポイント

  • 礼拝時間の確保: イスラム教徒であれば原則1日5回のお祈りを行います。実際には仕事中に全て行うのは難しいため、昼休みや小休憩を利用して礼拝できるようにしましょう。例えば昼休憩の前後5分ずつ早めに解放し、その間に礼拝してから食事を取る、といった運用が考えられます。「礼拝したい時は遠慮なく申し出ていいよ」と伝えておくと、本人も安心します。礼拝スペースは小さくても構いませんので、清潔な場所(できれば東南東のメッカ方角に向ける場所)を提供します。
  • 断食(ラマダン)への理解: 年に一度、約1ヶ月間の断食月(ラマダン)が巡ってきます。この期間、ムスリム社員は日の出から日没まで一切の飲食を断ちます。エネルギーが落ちやすくなるため、作業負荷や勤務時間の調整が有用です。例えば炎天下の重労働は避けさせる、残業を減らす、昼休みに仮眠できるようにする等です。また、昼食を取らないので、本人たちは休憩中静かに過ごすでしょう。周囲の日本人も遠慮して食事を勧めたりせず、いつも通り接すれば大丈夫です。断食明け(レバラン)の祝祭日には、有給休暇を希望することが多いので事前に相談しておきます。
  • 食事(ハラルフード)への配慮: 食堂や仕出し弁当を利用する場合、豚肉・豚由来成分を除いたメニューを選択できるようにします。最近はハラル対応の社食メニューを導入する企業もあります。そこまで厳密でなくとも、豚肉を鶏肉に差し替えるなどで十分です。アルコール成分(料理酒やみりん等)も敬遠する人がいますが、加熱調理で飛んでいることを伝えれば納得する場合もあります。最も確実なのは、「おかずは魚・鶏中心、野菜たっぷりの和食系」にすることです。味噌汁に豚だしが入っていないか程度はチェックしましょう。飲み物ではアルコール飲料は当然NGですが、最近はノンアルコールビールもOKとするムスリムも増えています。ただし会社の飲み会で無理に勧めないよう注意が必要です。
  • 服装・慣習: 女性社員がヒジャブを着用する場合は、企業のユニフォームの上から巻けるよう工夫します。作業帽と併用するなら薄手のインナーキャップ型ヒジャブを支給すると良いでしょう。男性の場合、毎週金曜日の昼にモスク(金曜礼拝)へ行きたがる人もいます。その日は昼休みを少し長めに取らせ、礼拝後に戻ってきてから就業させるなど柔軟に対応します。
  • 宗教行事の休暇: ムスリム最大の祝祭である「レバラン(断食明け大祭)」はインドネシアでは大型連休になります。日本で働く彼らも、この時期に合わせて数日間休暇を取りたがる傾向があります。会社の有給休暇制度の範囲で認めてあげるのが望ましいです。宗教上大切な日なので、できれば反対せず送り出してあげてください。代わりにお盆や年末年始は出勤してもらうなど、調整は可能でしょう。

日常生活でのサポート

  • 住居での注意事項: 社宅や寮で自炊する場合、ムスリムは食器や調理器具の共有に慎重です。豚肉を調理したフライパンで自分の料理を作るのは嫌がるかもしれません。可能なら、彼ら専用の調理器具セットを用意してあげると良いでしょう。冷蔵庫もスペースを分け、ポークハム等が触れないよう配慮します。ゴミ出しルールや騒音マナーなど、日本の生活ルールも丁寧に教えます。特に宗教と関係ありませんが、異文化として四季の過ごし方(冬の防寒や夏の熱中症対策)もアドバイスしましょう。
  • 銀行・携帯電話契約: 生活に必要な口座開設や携帯契約は、日本語が難しい手続きの代表です。人事担当者が同行し、通訳サポートします。近年は外国人対応に慣れた銀行窓口もありますが、印鑑を用意するとかサイン練習などもフォローします。携帯はプリペイドSIMで済ます人もいますが、通信費補助を出す企業も増えています。
  • 家族との連絡: インドネシア人は家族に頻繁に連絡を取ります。Wi-Fi環境は生活の質に直結しますので、寮にインターネットを引いてあげる、会社のWi-Fiを下宿先でも受信できるようにする等の配慮があると喜ばれます。ビデオ通話で家族の顔を見ながら話す時間は、彼らのメンタルヘルスにもプラスです。

職場でのコミュニケーション留意点

  • 報告・連絡・相談の徹底: 日本的な「ほうれんそう」の重要性を繰り返し伝えます。控えめなインドネシア人は自分からトラブル報告をしないこともあるので、上司や先輩から「何か問題あったら必ず教えてね」と繰り返し伝え、相談しやすい雰囲気を作ります。失敗を怒らない姿勢で接すれば徐々に報告してくれるようになります。
  • 雑談での話題選び: 打ち解けてくるとプライベートな話もするでしょう。インドネシア人はサッカーやバドミントンが好きな人が多く、スポーツの話題で盛り上がれます。逆に、宗教的・政治的な話題は避けた方が無難です。特にイスラム教に関する誤解や偏見を感じさせる発言は絶対にNGです。「お酒飲めなくてかわいそう」なども無意識に言わないように注意します。
  • 名前の呼び方: インドネシア人の名前は長かったりニックネーム文化があります。呼びにくい場合は本人に「どう呼んだらいい?」と確認しましょう。たとえば「ムハマド・イルハム・プトラ」さんなら、本人が「プトラと呼んでください」とか「イルハムで」など希望を言うはずです。名字文化は無いに等しいので、基本的にファーストネームで呼ぶか、男性には「~さん」、女性には「~さん」でOKです(ミスター、ミスを付けなくても大丈夫です)。
  • 非言語コミュニケーション: 表情やジェスチャーも意識しましょう。インドネシア人は微笑みを大切にするので、怒っていなくても無表情だと「不機嫌なのか」と誤解されるかもしれません。なるべくニコニコと穏やかな表情で接することで、相手もリラックスできます。また、日本人特有の「空気を読む」間接的表現は伝わりにくいですから、言葉に出して率直に伝える方が親切です。

異文化理解研修の実施

可能であれば、受け入れ企業の日本人従業員向けに簡単な異文化理解研修を行うことをお勧めします。インドネシアの文化・宗教の基本や、コミュニケーションの注意点を人事担当や監理団体から説明してもらいます。たとえば「お祈りしている間は声をかけない」「食事会ではノンアル飲料も用意する」「彼らの前で豚肉を食べても構わないが勧めない」といった具体例を共有します。そうすることで、日本人スタッフも安心して受け入れ、自然にサポートできるようになります。

以上、コミュニケーションや文化面での主な配慮点を挙げました。ポイントは、相手の文化を尊重し、こちらもオープンマインドで接することです。インドネシア人材はそれに十分応えてくれるポテンシャルがあります。お互いの違いを認め合い、職場の一員として迎え入れることで、良好な関係を築くことができるでしょう。

 

 

12. 成功事例(インドネシア人材が活躍している企業の導入事例)

12. 成功事例(インドネシア人材が活躍している企業の導入事例)

インドネシア人技能実習生・特定技能人材を受け入れてうまく活用している企業の事例をいくつかご紹介します。実際の成功例を見ることで、具体的な効果や工夫がイメージしやすくなるでしょう。ここでは業種別に事例を挙げ、インドネシア人材が企業にもたらしたメリットと、その背景にある受け入れ側の取り組みを解説します。

事例1:建設業(鉄筋工事業H社)– 外国人チームの戦力化

東京都のある中堅鉄筋工事会社H社では、2017年からインドネシア人技能実習生の受け入れを開始しました。当初3名の実習生(20代前半男性)を採用し、社長自ら現地面接で人柄を確認して決めました。受け入れ後、彼らは日本人職長について現場で一から技能を学び、3年後には全員技能検定に合格して技能実習を修了。そのままH社は特定技能に移行させ、さらに新たなインドネシア人実習生も受け入れて外国人チームを拡大しました。

成果: H社では慢性的な人手不足で受注制限も検討していましたが、インドネシア人若手の活躍により現場数を増やすことが可能になりました。求人広告費は従来比で50%以上削減され、現場の平均年齢も若返りました。現在ではインドネシア人10名以上が在籍し、その中から作業リーダーが育っています。日本人職長の補佐役として、同郷の後輩たちをまとめる存在になっているとのことです。「コミュニケーションに問題はなく、皆真面目で飲み込みも早い。将来は現場を任せたい」と社長は語っています。

工夫: H社の成功のポイントは、段階的な技能向上と責任付与です。入社1年目はとにかく基礎を叩き込み、2年目には小さな班のリーダーを任せるなど早めに役割を与えました。本人たちのやる気も高まり、自主的に資格取得(玉掛けや足場組立作業主任者など)にも挑戦しました。また、社内にイスラム教徒専用の祈祷室を設け、ハラルのケータリング業者と契約して昼食を提供するなど宗教面のケアも手厚く行いました。地域のモスクとも連携して金曜礼拝への参加を認め、地元のムスリムコミュニティとの交流も支援しています。その結果、インドネシア人たちは会社に強い帰属意識を持ち、SNSでも自社のPRを積極的にしてくれるほどです。

事例2:介護業(老人ホームA施設)– 現場の即戦力とチーム改善

愛知県の特別養護老人ホームAでは、2020年よりEPA介護福祉士候補として来日したインドネシア人2名を受け入れ、続いて2022年から特定技能介護で3名を新規採用しました。計5名のインドネシア人介護スタッフ(20~30代、男女)が現在働いています。

成果: 利用者からは「明るくて優しい外国のスタッフさんが大好き」と好評です。慢性的だった夜勤シフトの穴埋めにも貢献し、人手不足が大幅に緩和しました。インドネシア人職員同士だけでなく日本人職員とも良好な関係を築き、互いに日本語・インドネシア語を教え合うなど、職場の雰囲気も明るくなりました。「彼らが来てから職場が活気づき、離職率も下がった」と施設長は語ります。実際、前年まで毎年数名辞めていた日本人職員の離職がゼロになり、チームワークが向上しました。

工夫:A施設ではメンター制度を導入し、ベテラン介護士が各外国人に1対1で付き添い指導しました。最初の半年間は常に先輩とペアを組み、言葉のフォローやケア技術の確認を丁寧に行っています。インドネシア人スタッフは利用者への接遇がとても丁寧でしたが、声が小さく指示が聞き取りにくい場面がありました。そこで先輩が「利用者様にはもう少しハッキリ声をかけてみようか」と具体的に助言し、徐々に改善していきました。また、日本語研修クラスを週1回施設内で実施し、介護専門用語や敬語表現を学ぶ機会を提供しました。これによりコミュニケーション力が向上し、自信を持って利用者と会話できるようになりました。宗教面では、ラマダン(断食月)期間中の体調に配慮し、夜勤シフトを減らしたり、夕食を持ち帰れるよう手配したりしました。その結果、インドネシア人スタッフは体調を崩すことなく勤務を続け、断食明けの祝祭日には有給休暇取得を認めることでモチベーションも維持できました。施設長は「文化の違いを超えて、いまやなくてはならない仲間」と彼らの存在を評価しています。

事例3:食品製造業(食品加工C社)– 即戦力投入と生産性向上

静岡県の食品加工会社C社は、2021年からインドネシア人技能実習生を毎年5名ずつ受け入れています。主に飲料製造ラインのオペレーターや包装工程を担当させています。

成果:インドネシア人実習生たちは配属後わずか1ヶ月で独り立ちし、日本人と遜色ないペースで作業をこなすようになりました。これにより、繁忙期に発生していた残業が大幅に減り、生産性が約10%向上しました。同時に、日本人パート従業員の負担も軽減され、職場全体の稼働が安定しました。品質面でも問題は起きておらず、むしろ彼らは決められた手順をきちんと守るためミスが少ないという効果が出ています。工場長は「ラインのキーマンとして頼りにしている。彼らなしではもう回らない」と太鼓判を押しています。

工夫:C社では受け入れ前から現地での事前研修に投資しました。監理団体職員と工場の日本人班長をインドネシアに派遣し、送り出し機関の研修センターで実機に近い設備を使ったトレーニングを行ったのです。その結果、実習生たちは来日直後から機械操作に慣れており、即戦力として働けました。言葉の面でも、日本人班長が現地研修時に彼らと打ち解けていたため、来日後のコミュニケーションがスムーズでした。C社はさらに、実習生を正社員登用する制度も整えています。3年間の技能実習を無事に終えた後、希望者は特定技能に切り替え、5年目以降に正社員として登用しています。既に2名のインドネシア人が正社員となり、日本人と同等の待遇で班長補佐として後輩実習生の指導にも当たっています。「将来は母国の工場立ち上げに参加してもらう構想もある」と経営陣は述べており、インドネシア人材をグローバル展開の担い手として育成するビジョンも描いています。

以上のように、インドネシア人材を受け入れ活用している企業は、人手不足解消はもちろん職場環境の改善や事業拡大といった恩恵を受けています。共通する成功要因は、受け入れ企業側が文化理解や教育にしっかり取り組み、彼らの力を引き出している点です。これらの事例から学びつつ、読者の皆様の企業でもインドネシア人材の活躍の場を作っていただければと思います。

 

 

13. 今後の展望(制度改正の方向性、日本・インドネシア間の連携強化の可能性など)

13. 今後の展望(制度改正の方向性、日本・インドネシア間の連携強化の可能性など)

最後に、インドネシア人技能実習生・特定技能人材を取り巻く今後の展望について述べます。日本国内の制度改正の動きや、日・インドネシア両国の協力関係の強化策、将来的な人材交流の可能性など、将来を見据えたポイントを整理します。

技能実習制度の再編と「育成就労制度」への移行

前述したように、日本政府は技能実習制度を廃止し、新たに「育成就労制度」へ移行する方針を固めています。2024年6月に関連法が成立し、詳細設計が進められています。この育成就労制度では、これまでの技能実習の問題点(人権侵害や名目と実態の乖離)を改善し、人材育成と人手確保を両立させることが目指されています。具体的には、受け入れ企業にとってもメリットが大きい制度に刷新される見込みです。例えば最長在留期間の延長、転職の柔軟化、受け入れ手続きの簡素化などが検討されています。また、技能実習と特定技能の一本化も視野に入っており、育成就労制度では最初から一定の就労者待遇を与えつつ技能習得を支援する形になる可能性があります。

インドネシア側から見ると、新制度はますます日本で働きやすくなるチャンスと言えます。送り出しから就労までのプロセスが簡略化されれば、さらに多くの優秀な若者が日本を目指すでしょう。日本としても、技能実習という建前に縛られず堂々と「外国人労働力」を迎え入れられるようになるため、企業の受け入れも拡大することが期待されます。制度改正後は、インドネシア人材の需要がこれまで以上に高まる可能性があり、質・量ともに充実したインドネシア人労働者を受け入れる土壌が整うでしょう。

特定技能の拡充と高度人材への展開

特定技能制度も2023年~2024年にかけて大きな拡充期を迎えています。対象分野の拡大(前述の4分野追加)や受け入れ上限数の引き上げ(5年間で82万人)など、政府の本気度が伺えます。これは外国人材の受け入れが「試行」から「本格運用」へ移行する転換点です。今後、インドネシア人を含む外国人労働者が日本社会の重要な構成員となっていくでしょう。

特定技能2号の拡大も見逃せません。2号では在留期限が無制限となり、家族帯同や永住許可の道も開けます。現在2号認定分野は建設・造船だけですが、将来的には他の分野にも広がる可能性があります。実際、介護分野では既に「介護福祉士資格取得→在留資格『介護』」という形で事実上の2号化が進んでいます。インドネシア人材が長期的に日本でキャリアを築ける環境が整えば、より高度な人材も日本を目指すでしょう。例えばインドネシア国内で看護師資格を持つ人が日本の特定技能介護で来て介護福祉士を取得し、その後看護師国家試験に挑戦する、といったケースも考えられます。最近ではインドネシア労働省が「看護師や介護士の資格認定の相互承認」を日本側に提案しており、インドネシアで取得した資格を日本でも通用させる仕組みを検討しています。これが実現すれば、現地有資格者が日本でスムーズに就業でき、双方にメリットがあります。

また、特定技能を経て将来的に技術・人文知識・国際業務などの在留資格に移行する人も増えるかもしれません。日本語や専門知識を磨いたインドネシア人材が、現場作業員からやがて管理者や通訳、海外事業担当などにステップアップするキャリアパスも現実的になってきています。日本企業にとっては、外国人従業員を将来の海外ビジネスの橋頭堡として育成できる好機と言えるでしょう。

日本とインドネシアの連携強化

日・インドネシア両政府の間では、人材交流に関する協力がますます深まっています。2022年の首脳会談では「人的交流拡大に向けた協力強化」が話し合われ、具体策として前述の資格相互承認や日本語教育支援、制度運用改善などが挙げられました。2023年11月には両国政府共催の大規模フォーラムも開催され、官民のステークホルダーが課題と展望を共有しました。JICAがインドネシアに送り出し専門家を派遣したのもその一環です。

今後考えられる連携強化策としては、送り出しプロセスのデジタル化・一元管理や、悪質業者の排除に向けた情報共有、帰国者の再就職支援での企業連携などが挙げられます。例えば、日本の受入企業が直接インドネシアの人材データベースにアクセスしオンライン面接できる仕組みや、両国政府認定のマッチングプラットフォーム整備などが進むかもしれません。そうなれば仲介コストが下がり、さらにマッチング精度も上がってWIN-WINです。

また、インドネシア国内での日本式人材育成学校の拡充も期待されます。現在でもトヨタやホンダなど日系企業が現地工科大学と協力して人材育成をしていますが、これを介護・建設・農業など他分野にも広げ、日本企業がカリキュラムづくりから関与することで、より実践的な即戦力を育てられます。インドネシア政府も日本企業のこうした投資を歓迎しており、卒業後の日本就職をパッケージ化する動きが出てくるでしょう。

インドネシア人コミュニティの拡大と多文化共生

インドネシア人の在日人口は2023年時点で約66,000人でしたが、今後は10万人、20万人規模へ増えていく可能性があります。2023年には在留インドネシア人数が統計開始以来初めて10万人を超えたとの報道もありました。コミュニティが拡大すると、生活上のサポートネットワークも強化されます。各地にインドネシア人会やムスリム協会ができ、情報交換や互助が活発になるでしょう。受け入れ企業にとっても、地域のインドネシアコミュニティとの連携は従業員の安定就労に役立ちます。

また、日本社会における多文化共生の受け皿も広がります。宗教的配慮に対応した施設(ハラルレストラン、モスク等)が増え、日本人の理解も進んでいくでしょう。すでに都内ではインドネシアの祝祭イベントが毎年開催され、多数の日本人が訪れています。今後、地方都市でもインドネシア人主催のお祭りや交流イベントが定着するかもしれません。こうした異文化交流は地域活性化にもつながり、単なる労働力受け入れを超えた価値を創出します。

インドネシア国内要因と日本への影響

インドネシア国内では、今後も若年人口が増え労働力供給が潤沢です。ただし長期的には自国の産業発展により、国内雇用が吸収できる人材も増えていくでしょう。そのため、日本は魅力ある労働先であり続ける努力が必要です。給与水準はもちろん、安心して働ける環境、多様なキャリアパス、日本で家族を持ち定住できる展望などを提示していくことが、優秀な人材確保には欠かせません。他の先進国や中東諸国との国際的な人材獲得競争も激化する可能性があります。インドネシア政府が計画する「日本へ25万人派遣」という目標達成には、日本側が積極的に受け入れる姿勢を示すことも重要です。

幸い、地理的・文化的に見て日本とインドネシアは非常に友好的な関係にあります。相互に尊重しあう精神が根付いているため、人材交流も円滑です。この強みを活かしつつ、制度面のブラッシュアップを重ねていけば、10年後、20年後には「日本の職場でインドネシア人がリーダーとして活躍する」「インドネシア人社員が日本人社員とともに新規事業を立ち上げる」といった光景が当たり前になっているかもしれません。

 

 

 

おわりに

インドネシア人技能実習生・特定技能人材の需要が急拡大している背景と実務ポイントを幅広く解説してきました。日本の労働力不足という課題に対し、インドネシアという親日国からの若く優秀な人材は極めて頼もしい存在です。制度改革が進み受け入れ環境はさらに整備されつつあり、今まさにインドネシア人材の活用は大きな転換点を迎えています。

もちろん文化や言語の違いからチャレンジもありますが、本記事で述べたように適切な対応策・配慮を取れば大きな問題なく共に働くことができます。むしろインドネシア人の明るさや勤勉さは職場に良い影響を及ぼし、日本人社員にも刺激となって双方が成長する好循環が生まれています。既に多くの成功事例がそれを証明しています。

今後、日本とインドネシアの絆は人材交流を通じて一層深まっていくでしょう。受け入れ企業の皆様には、単なる「労働力」としてではなく、将来の仲間・戦力としてインドネシア人材を迎え入れていただきたいと思います。彼らと共に働き、共に学び、新たな価値を創造していくことが、日本社会全体の活力にもつながります。

少子高齢化が進む日本にとって、若いインドネシア人材との協働は避けて通れない選択であり、同時に大きなチャンスでもあります。本記事がその理解と準備の一助になれば幸いです。ぜひ多くの企業・関係者がインドネシア人材のポテンシャルに目を向け、共に明るい未来を築いていけることを願っています。

 

 

インドネシア人の特定技能人材採用ならLPK Timedoor

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​LPK Timedoorは、インドネシア・バリ島デンパサールに拠点を置く職業訓練校で、日本での就労を目指すインドネシア人に対し、日本語や日本文化、仕事に対する価値観やマインドセットを学ぶ環境を提供しています。お気軽にお問い合わせください。

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本記事で使用した主な専門用語

技能実習制度
1993年に日本で導入された制度で、開発途上国の若者が日本で働きながら技能を学び、母国に持ち帰って活かすことを目的としています。制度上は「実習」であり、転職などは原則できません。

特定技能制度
2019年に導入された新たな在留資格制度で、即戦力となる外国人労働者を受け入れるための仕組み。14分野(2024年から16分野)で、技能試験・日本語試験の合格が必要です。1号(在留5年まで)と2号(熟練者向け、在留無期限・家族帯同可)があります。

育成就労制度(仮称)
2024年に成立した制度改革で、技能実習制度を廃止し、新たに創設される制度。技能習得と人手不足対応を両立させることが目的で、技能実習と特定技能の統合的な仕組みとなる予定です。

送り出し機関
インドネシアなどの外国人労働者を日本に送り出す公認の民間機関。語学研修や技能訓練、日本企業とのマッチングなどを担います。

監理団体
日本で技能実習生を受け入れる企業を監督・支援する非営利団体。受け入れの申請や技能実習計画の作成支援、定期巡回指導などを行います。

登録支援機関
特定技能で来日した外国人をサポートする日本側の機関。生活・就労面での相談対応、日本語教育支援などを提供する役割があります。

EPA(経済連携協定)介護福祉士候補者
日本とインドネシアなどの国との経済連携協定に基づき、日本で介護福祉士資格の取得を目指す候補者。一定の研修と国家試験合格が必要です。

JFT-Basic
「国際交流基金日本語基礎テスト」の略称。特定技能の日本語要件として活用されるテストで、A2レベル(初級程度)を目指します。

レバラン
イスラム教徒にとって最大の祝祭「イドゥル・フィトリ」のインドネシア語名称。断食月(ラマダン)終了後に家族と祝う特別な日。

FAQ(よくある質問)

Q1:インドネシア人材の採用にはどのくらいの期間がかかりますか?
A:送り出し機関との契約、面接、書類準備、在留資格申請などを含め、採用決定から配属までは通常4~6ヶ月程度かかります。早めの計画が重要です。

Q2:インドネシア人は日本語が通じるのですか?
A:来日前に日本語教育を受けており、多くは日常会話レベルの日本語が可能です。特定技能では試験によって日本語能力が証明されています。

Q3:宗教的な配慮が必要ですか?
A:多くのインドネシア人はイスラム教徒で、礼拝や食事(ハラル)、断食などへの配慮が求められます。ただし柔軟に対応する人も多く、事前に相談すれば問題ありません。

Q4:失踪リスクはありますか?
A:ゼロではありませんが、インドネシア人の失踪率は比較的低く抑えられています。理由は、送り出し前の費用が低く、借金を抱えずに来日できる体制が整っているためです。

Q5:企業としてどんな準備が必要ですか?
A:寮や生活環境の整備、社内教育体制、日本語支援、安全管理、宗教・文化配慮などが求められます。監理団体や登録支援機関と連携して体制を整えることが重要です。

Q6:インドネシア人は長く働いてくれますか?
A:特定技能制度を活用すれば最大5年の在留が可能です。今後は「育成就労制度」や「特定技能2号」により、より長期的に活躍できる環境が整備される見込みです。

 

 

インドネシア人技能実習生・特定技能人材シリーズ

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特定技能ビザのインドネシア人「レストラン・飲食店」人材の特徴や採用方法を徹底解説

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