2月 27, 2025 • インドネシア • by Delilah

インドネシアの通信キャリア業界を徹底解説:大手3社の熾烈な争いとスターリンク

インドネシアの通信業界は、私Telkomsel(テレコムセル)、Indosat Ooredoo Hutchison(インドサット・ウーレドゥ・ハッチソン)、XL Axiata(XLアクシアタ)の3大キャリアが市場を支配しており、熾烈な競争が繰り広げられています。2024年にはイーロンマスクのスターリンクが参入しどこからでも通信ができる環境ができつつあります。本記事では、各社の特徴、市場シェア、業界の今後の展望などインドネシアの通信業界について詳細に解説します。

 

インドネシアの通信市場の概要

市場の特徴

  • 人口:約2億8,000万人(世界第4位)
  • スマートフォン普及率:約75%
  • インターネット利用者数:約2億人
  • デジタル経済の成長率:2022年時点で約20%の成長
  • モバイル通信が主流(固定回線の普及率は低い)

インドネシアは広大な国土(約1.9万の島々)を持つため、光ファイバー網の整備が難しく、通信はほぼモバイルインターネットに依存しています。このため、モバイル通信キャリアが市場の中心を担っています。

 

大手3社の概要と競争戦略

① Telkomsel(テレコムセル)

  • 親会社:PT Telekomunikasi Indonesia(Telkom Indonesia、国営企業)
  • 市場シェア:約50%
  • 加入者数:約1.5億人
  • 強み
    • 国内最大の通信インフラ(特に地方・離島部でのカバレッジが強い)
    • 5Gの先行展開
    • 国家プロジェクトとの連携
  • 弱み
    • 価格が高め(特に都市部では価格競争で不利)
    • 民間企業と比べて意思決定が遅い
  • 主な戦略
    • 5Gと光ファイバーインフラの拡大
    • 地方市場のさらなる強化
    • エンタープライズ向けビジネス拡大(B2B市場)

Telkomselは、インドネシア最大の通信会社であり、特に地方・農村部に強いインフラを持つことが最大の強みです。国営企業として政府プロジェクトとも深く関わっており、安定した成長を続けています。

② Indosat Ooredoo Hutchison(インドサット・ウーレドゥ・ハッチソン)

  • 親会社:Ooredoo(カタール国営通信企業) & CK Hutchison(香港)
  • 市場シェア:約30%
  • 加入者数:約9,800万人
  • 強み
    • 都市部での競争力が高い
    • 価格が比較的安価
    • 国際資本による投資力
  • 弱み
    • 地方でのネットワークが弱い
    • Telkomselほどの信頼性がない
  • 主な戦略
    • 都市部向けの5Gと高速インターネットサービスの拡大
    • エンターテインメント事業(NetflixやDisney+などとの提携)
    • 合併によるシナジーを活かしたコスト削減

Indosatは、2022年にHutchison 3 Indonesiaと合併し、規模を拡大しました。都市部の若年層をターゲットにしたマーケティングが強みであり、5G導入にも積極的です。

 

③ XL Axiata(XLアクシアタ)

  • 親会社:Axiata Group(マレーシア)
  • 市場シェア:約18%
  • 加入者数:約5,500万人
  • 強み
    • 価格競争力が高い
    • データ通信プランが充実
    • 企業向けソリューションの強化
  • 弱み
    • TelkomselやIndosatと比べてブランド力がやや弱い
    • インフラ投資額が少なめ
  • 主な戦略
    • 地方都市でのネットワーク強化
    • 企業向けIoT・クラウドサービス拡大
    • 価格競争により若年層を取り込み

XL Axiataは、中価格帯の通信プランとデータ通信の充実度を武器に、市場で一定のシェアを確保しています。

 

 

プリペイド方式「プルサ」が主流

インドネシアでは、多くの人がプリペイド方式(プルサ / Pulsa)を利用して携帯電話やモバイルデータを使用しています。
プルサとは、携帯電話のプリペイド(前払い)式の通話・データ通信クレジットで、以下のような特徴があります。

pulsa

Pulsa(プルサ)の特徴

  • 前払い式の通信料金(使いたい分だけチャージ)
  • コンビニ・屋台・オンラインで簡単に購入可能
  • 月額契約が不要で、低所得層や学生にも利用しやすい
  • データパッケージ(クォータ / Kuota)を購入してインターネットを使用

インドネシアでは、ポストペイド(月額契約)よりも圧倒的にプリペイドが主流で、スマホユーザーの約95%以上がプルサを利用しているとされています。

 

 

スターリンクの正式契約と通信市場への影響

2024年、イーロン・マスク氏がインドネシアを訪問し、政府関係者と直接会談。インドネシアの通信インフラを強化するため、スターリンク(Starlink)の導入契約を正式に締結しました。これにより、地方や離島など、従来の通信キャリアではカバーしきれなかったエリアに高速インターネットが提供されることになります。

スターリンクのインドネシア進出は、国内の通信業界に大きな影響を与えると考えられています。

イーロンマスク インドネシア スターリンク

スターリンクがインドネシア市場にもたらす影響

① 価格競争の激化

スターリンクの登場により、地方のインターネット利用者はより高速で安定した通信サービスを選べるようになり、通信大手も価格戦略を見直す必要に迫られます。Telkomselは地方市場での支配的地位を維持するために価格調整やサービス強化を余儀なくされるでしょう。

② 地方市場の拡大

インドネシア政府は、地方や離島でのインターネット環境の向上を目指しており、スターリンクの導入はこの目標に合致します。これにより、オンライン教育、遠隔医療、農業・漁業のIoT活用など、新たなビジネスの可能性も広がると期待されています。

③ 企業向け通信市場(B2B)への影響

鉱業、観光業、物流業など、遠隔地でのインターネット接続が必要な業界では、スターリンクの導入が進む可能性があります。これにより、TelkomselやIndosatの法人向けサービスが影響を受けることも考えられます。

④ 5Gとの共存

スターリンクはモバイル通信とは異なる技術ですが、都市部では5G、地方ではスターリンクという形で住み分けが進む可能性があります。TelkomselやIndosatは、都市部での5G普及を加速し、スターリンクとの競争に備えると予想されます。

 

 

競争の激化と今後のトレンド

① 価格競争

  • IndosatとXL Axiataは、Telkomselに対抗するために価格を下げる戦略を取っています。
  • 低価格のプリペイドプランや大容量データプランが競争のポイントに。

② 5Gの展開

  • Telkomselが先行して5Gを展開。
  • IndosatとXL Axiataも主要都市での5G導入を加速。

③ デジタルサービスの拡充

  • 各社は単なる通信事業者ではなく、エンタメ・フィンテック・クラウド事業へ進出。
  • 例えば、TelkomselはLinkAja(電子決済)を展開し、IndosatはNetflixとの提携を強化。

④ 地方市場の開拓

  • インドネシアの地方部には依然として通信インフラが未整備のエリアが多い。
  • Telkomselが優位だが、IndosatやXL Axiataも地方拡大を狙う。そこにイーロンマスクのスターリンクの参入。

 

 

インドネシア通信業界の今後の展望

成長の可能性

  • デジタル経済の拡大により通信需要は増加
  • 5G導入による新サービスの創出
  • 地方部のネットワーク拡充で新規ユーザー獲得

課題

  • 価格競争の激化による収益性の低下
  • 規制強化(政府の価格調整介入など)
  • 技術革新への適応(AI・IoT・クラウドの成長に対応できるか)

 

今後、Telkomselはインフラの優位性を活かしながら5Gとエンタープライズ市場を強化し、IndosatとXL Axiataは価格戦略とデジタルサービスでシェアを拡大していくと予想されます。

 

 

まとめ

インドネシアの通信業界は、Telkomsel、Indosat Ooredoo Hutchison、XL Axiataの3大キャリアが市場を支配しており、激しい競争が続いています。2024年にはイーロン・マスクのスターリンクが正式に進出し、特に地方・離島での高速インターネット普及が期待されています。

インドネシアでは、プリペイド方式(プルサ)が主流であり、通信料金を前払いで管理する文化があります。スターリンクは月額契約制のため、この文化にどう適応するかが課題となるでしょう。

今後の市場は、価格競争の激化、地方市場の拡大、5Gの普及、企業向け通信(B2B)の変化が大きなトレンドとなると予想されます。スターリンクの進出が通信業界にどのような影響を及ぼすのか、今後も注目が集まります。

本記事で使用した単語の解説

  • スターリンク(Starlink):SpaceXが提供する低軌道衛星インターネットサービス。地上インフラが不要で、地方・離島でも高速通信が可能。
  • Telkomsel(テレコムセル):インドネシア最大の通信会社。国営企業で地方部のカバレッジが強い。
  • Indosat Ooredoo Hutchison(インドサット・ウーレドゥ・ハッチソン):都市部を中心に展開し、価格競争力が高い通信会社。
  • XL Axiata(XLアクシアタ):マレーシア系の通信会社。中価格帯プランと企業向けサービスが強み。
  • プルサ(Pulsa):インドネシアで主流のプリペイド式通話・データ通信クレジット。コンビニや屋台で購入可能。
  • クォータ(Kuota):インドネシアのモバイルデータパッケージ。一定量のデータを購入して使用する方式。
  • 5G:次世代の高速モバイル通信技術。都市部での展開が進んでいる。
  • B2B市場(Business to Business):企業向けの通信サービス。スターリンクの進出で影響を受ける可能性がある。

FAQ(よくある質問)

Q1. スターリンクのインドネシアでのサービス料金はいくらですか?

A. スターリンクの月額料金は国ごとに異なりますが、インドネシアでは**約100ドル前後(約160万ルピア)**と見込まれています。加えて、専用のアンテナとルーターの初期購入費用がかかります。

Q2. インドネシアの通信キャリアとスターリンクはどちらが良いですか?

A. 都市部ではTelkomselやIndosatの4G/5Gがコストパフォーマンス的に有利ですが、地方・離島ではスターリンクの方が高速で安定したインターネットを提供できる可能性があります。用途や地域によって選択が変わるでしょう。

Q3. インドネシアで5Gはどれくらい普及していますか?

A. 5Gは2021年に正式ローンチされましたが、現在のところ主要都市でのみ利用可能です。地方では4Gの普及が優先されており、完全な5Gカバレッジには数年かかると予想されます。

Q4. インドネシアではなぜプリペイド(プルサ)が主流なのですか?

A. 月額契約(ポストペイド)はクレジットスコアや銀行口座が必要な場合が多いため、利用しにくい層が多いことが理由の一つです。プルサは必要な分だけ前払いで購入できるため、低所得層や学生にも使いやすいのが特徴です。

Q5. スターリンクの参入でTelkomselなどの通信キャリアはどう変わる?

A. 地方部では競争が激化し、通信大手もネットワーク拡大や価格調整を行う可能性があります。一方で、都市部では5Gの展開を強化することで、スターリンクとの差別化を図るでしょう。また、一部のキャリアはスターリンクと提携する可能性もあります。

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