
2月 22, 2025 • スタートアップ, インドネシア
5月 27, 2025 • インドネシア • by Yutaka Tokunaga
目次
インドネシアは、豊富な石油資源を有していながらも、その石油を精製せずにシンガポールから精製された燃料を輸入するという矛盾した状況にあります。なぜ自国の石油を精製せず、外国に頼るのか?調べてみると、その背景には複雑な要因が絡み合っていることが分かりましたが、依然として解決しきれない疑問も多いです。本記事では、インドネシアのエネルギー戦略、汚職の影響、シンガポールとの貿易関係などを考察していきたいと思います。
インドネシアは長い間、石油の主要輸出国として名を馳せてきました。しかし、近年では国内の需要に追いつかず、逆に石油を輸入することが増えています。2024年のデータによると、インドネシアは原油を1日あたり約55万8,000バレル輸出していますが、同時に1日あたり33万2,000バレルを輸入しており、石油の輸出と輸入がほぼ同等の水準に達しています。
この矛盾する状況の背景には、インドネシアの精製能力の不足があります。インドネシアは石油の採掘において豊富な資源を持っていますが、採掘した石油をそのまま使うことはできません。原油は精製(リファイニング)という過程を経て初めて、ガソリンやディーゼル、ジェット燃料、潤滑油などの商業的に使用できる形になります。
インドネシアは自国での精製能力が足りておらず、輸入に依存しています。これには精製施設の数と規模が限られていることが大きな要因です。さらに、精製技術が高度であるため、短期的にはその改善が難しく、シンガポールなどの近隣の精製ハブに依存せざるを得ない状況が続いています。
インドネシアは原油を採掘する能力は高いものの、その精製能力は限られています。石油の精製には高度な技術と設備が必要であり、新たに精製施設を構築するには膨大な投資が求められます。特に、石油精製は単なる機械設備だけでなく、精製プロセスに必要な専門的な知識や技術が求められますが、インドネシア国内ではこれらの技術を持った人材が不足しており、設備投資も十分に行われていない状況です。
加えて、精製設備を更新・拡充するための政治的な意志や財源が不足していることも問題です。精製設備を更新するには長期的な計画と安定した資金投入が必要ですが、政治的不安定さや汚職などの影響で、こうした改革が進んでいません。政治家や企業家の既得権益が関わることも多いため、短期的な利益に偏った意思決定が行われ、結果的にインドネシアは精製した燃料を輸入し続けることになります。
インドネシアの石油業界には、昔から続く汚職の影響が深く根付いていると言われています。スハルト政権下で、石油を支配していたのは限られたエリート層であり、石油取引に関する不正やキックバックが行われていたと言われています。特に、国営石油会社であるプルタミナ(Pertamina)を巡る汚職事件が頻繁に報じられ、その影響が今日まで続いているとされています。プルタミナは、インドネシアの石油産業を支配していた企業であり、その運営に関わる不正行為が大きな問題となりました。
また、精製設備や契約の選定においても、利益誘導が行われていた可能性が指摘されています。政治家や経済エリートによる利益集約が、エネルギー政策の進展を遅らせ、石油精製技術への投資を妨げてきたと言われています。汚職が蔓延することで、国家のリソースが効率的に活用されず、結果的に国内のエネルギー供給の不安定化を招くことになります。
インドネシア政府は、シンガポールからの燃料輸入を削減し、他の供給国への依存を高める方針を示しています。この背景には、シンガポールの価格戦略への不満があるとされています。シンガポールはインドネシアにとって最大の精製燃料供給国でありながら、国際市場価格で燃料を販売しており、インドネシア政府はその価格の高さに疑問を抱いています。
また、米国との貿易関係が深刻な影響を与えています。トランプ政権になった米国政府はインドネシアに対して、貿易不均衡を解消するためにエネルギー輸入を増やすように圧力をかけています。インドネシアは、米国からのエネルギー輸入を増加させることで、貿易不均衡の解消を目指し、これにより米国との関係を改善しようとしています。この動きが、シンガポールからの輸入削減に繋がっています。
インドネシアのエネルギー問題は、単に技術的な問題だけではなく、政治的、経済的な問題が複雑に絡み合っています。自国で採掘した石油を精製せずに輸出し、精製された製品を輸入する現状には、構造的な課題があることが分かります。この問題を解決するためには、まず政治的な改革が必要であり、汚職の撲滅と透明性の確保が不可欠です。
また、石油以外の再生可能エネルギーの導入を加速させることも重要です。インドネシアは再生可能エネルギーの潜在力を大いに持っており、これを活用することでエネルギーの多様化と自給自足が実現できるでしょう。
最後に、インドネシアの石油政策に関しては、国内外の関係者との繊細な交渉と決断が求められます。石油以外のエネルギー資源の導入と技術開発に向けた投資を通じて、持続可能なエネルギー供給体制を築くことも求められています。
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