2月 22, 2025 • インドネシア, スタートアップ • by Delilah

インドネシアの注目スタートアップ企業Grab(グラブ)

インドネシアの注目スタートアップ企業Grab(グラブ)

Grab(グラブ)は、東南アジアを中心に展開する多機能型の「スーパーアプリ」で、配車サービス、フードデリバリー、デジタル決済など、さまざまなサービスを提供しています。本記事ではインドネシアのインフラとなっているユニコーンスタートアップGrabについて詳しく解説します。

 

Grab(グラブ)の会社概要

Grab(グラブ)は、2012年にアンソニー・タン(Anthony Tan)氏とタン・ホーイ・リン(Tan Hooi Ling)氏によって設立されたシンガポールのテクノロジー企業です。当初はマレーシアで「MyTeksi」としてタクシー配車サービスを開始し、その後「Grab」に改名して事業を拡大しました。現在では、東南アジア全域で配車、フードデリバリー、デジタル決済など多岐にわたるサービスを提供するスーパーアプリとして知られています。2021年12月には、特別買収目的会社(SPAC)との合併を通じてNASDAQに上場しました。

  • 会社名:Grab Holdings Inc.(グラブ・ホールディングス)
  • 創業者:アンソニー・タン(Anthony Tan)、タン・ホーリン(Tan Hooi Ling)
  • 創業年:2012年
  • 本社所在地:シンガポール

grab

 

Grab(グラブ)の創業の経緯やストーリー

Grabは、ハーバード・ビジネス・スクール在学中のマレーシア人アンソニー・タン氏(Anthony Tan)とタン・ホーリン氏(Tan Hooi Ling)が、マレーシアのタクシー業界の課題を解決するために立ち上げた「MyTeksi」から始まりました。

 

創業の背景とアイデアの誕生

Grabの創業者であるアンソニー・タン氏は、マレーシアの名門実業家ファミリーに生まれました。彼はハーバード・ビジネス・スクール在学中、友人のAldi Haryopratomo氏からマレーシアのタクシー業界の課題を聞き、タクシー配車サービスのアイデアを思いつきました。同級生のタン・フーイリン氏と共に事業計画を練り、2011年のハーバード・ビジネス・プラン・コンペティションで2位となり、25,000ドルの賞金を獲得しました。この資金を元手に、2012年にマレーシアで「MyTeksi」を設立し、タクシー配車サービスを開始しました。

苦難の連続

サービス開始当初、Grabはタクシー会社との提携やドライバーの獲得に苦労しました。特に、テクノロジーに不慣れなドライバーたちを説得するため、直接会って説明するなどの努力を重ねました。その結果、30台のタクシーを運営するタクシー会社との協力を得ることができました。その後、2013年8月にはフィリピンのマニラ、10月にはシンガポールとタイのバンコクに進出し、サービスを拡大しました。

 

 

孫正義からの出資

Grab(グラブ)は、東南アジアを中心に展開する多機能型の「スーパーアプリ」で、配車サービス、フードデリバリー、デジタル決済など、さまざまなサービスを提供しています。その成長の過程で、ソフトバンクグループの孫正義氏からの出資が重要な役割を果たしました。

初対面と出資のきっかけ

Grabの共同創業者であるアンソニー・タン氏は、ソフトバンクグループの孫正義氏と初めて対面した際、ジャック・マー氏と同じように孫氏の東京の自宅で直接会い、資金調達の話を持ちかけました。この出会いが、後の出資へと繋がりました。

ソフトバンクからの出資

2018年、ソフトバンクグループはGrabに対して30億ドルの出資を行いました。この資金は、Grabの事業拡大やサービス向上に大きく寄与しました。

インドネシアへの投資

2019年7月、Grabはソフトバンクグループから調達した資金の一部である20億ドルを、今後5年間にインドネシアに投資すると発表しました。この投資は、次世代交通網の整備や医療などの重要なサービスのデジタル化を推進することを目的としています。

 

 

Grab(グラブ)の事業内容とサービス内容

Grab(グラブ)は、東南アジアを中心に多岐にわたるサービスを提供する「スーパーアプリ」として知られています。その主な事業内容とサービスを以下に詳述します。

1. 配車サービス

  • GrabCar:自家用車によるオンデマンド配車サービスで、ユーザーはスマートフォンアプリを通じて車両を手配できます。料金は事前に表示され、透明性が確保されています。
  • GrabTaxi:従来のタクシーを利用した配車サービスで、タクシー会社と提携し、ユーザーに安全で信頼性の高い移動手段を提供しています。
  • GrabBike:オートバイによる配車サービスで、渋滞の多い都市部での迅速な移動を可能にします。特にインドネシアやベトナムなどで広く利用されています。

2. フードデリバリー

  • GrabFood:レストランからの食事をユーザーの指定場所に届けるサービスで、多様な料理の選択肢を提供しています。2018年にサービスを開始し、急速に拡大しました。

3. デジタル決済

  • GrabPay:オンラインおよびオフラインでの支払いを可能にする電子ウォレット機能で、ユーザーは現金を持たずに取引を行えます。クレジットカードやデビットカード、銀行口座との連携も可能です。

4. 配送サービス

  • GrabExpress:荷物や書類の即時配送サービスで、ユーザーは小包の配送を迅速に手配できます。特に都市部での利用が増加しています。

5. 金融サービス

  • GrabFinance:中小企業向けの融資サービスや保険商品の提供を通じて、地域経済の発展に寄与しています。これにより、金融サービスへのアクセスが向上しました。

6. その他のサービス

  • GrabAssistant:ユーザーが日常生活で必要とするさまざまなサービスを提供する機能で、例えば公共料金の支払いなどが含まれます。
  • GrabRewards:ユーザーの利用状況に応じてポイントを付与し、さまざまな特典と交換できるロイヤリティプログラムです。

これらのサービスを通じて、Grabはユーザーの日常生活の利便性を高め、東南アジア地域での強固な地位を築いています。

Grab(グラブ)の主要なマイルストーン

  • 2012年:マレーシアで「MyTeksi」を設立。
  • 2013年:「GrabTaxi」と改名し、シンガポールやタイなどへ進出。
  • 2014年:本社をシンガポールに移転。
  • 2015年:「GrabCar」や「GrabBike」を導入し、サービスを多様化。
  • 2016年:「GrabPay」を開始し、デジタル決済サービスを提供。
  • 2017年:「GrabFood」を開始し、フードデリバリーサービスを展開。
  • 2018年:Uberの東南アジア事業を買収し、「GrabFood」や「GrabExpress」を統合。
  • 2019年:「GrabKitchen」を開始し、クラウドキッチン事業に参入。
  • 2020年:シンガポールでデジタル銀行ライセンスを取得。
  • 2021年:米国のナスダック市場に上場。

 

Grab(グラブ)とGojek(ゴジェック)の熾烈な競争

Grab(グラブ)とGojek(ゴジェック)は、東南アジアにおける主要な「スーパーアプリ」として、配車サービス、フードデリバリー、デジタル決済など、多岐にわたるサービスを提供しています。Grabの創業者アンソニー・タン氏(Anthony Tan)、タン・ホーイリン氏(Tan Hooi Ling)とGojekの創業者ナディム・マカリム氏(Nadiem Makarim)は、いずれも米国の名門大学ハーバード・ビジネス・スクールでの同級生として出会い、各自の企業を立ち上げるに至りました。

1. 競争の背景

Gojekは2010年にインドネシアで設立され、バイクタクシー「オジェック」を中心とした配車サービスを開始しました。その後、フードデリバリーやデジタル決済など、サービスの多角化を進めました。一方、Grabは2012年にマレーシアで設立され、シンガポールを拠点に東南アジア全域へと事業を拡大しました。両社は、各国での市場シェア拡大を目指し、激しい競争を繰り広げています。

2. 資金調達と投資家

Grabは、ソフトバンクグループの孫正義氏が率いるソフトバンク・ビジョン・ファンドからの出資を受けており、これが競争優位性の一因とされています。一方、Gojekは、シンガポール国営投資会社テマセク・ホールディングスや中国のテンセントなど、多様な投資家から資金を調達しています。これらの資金調達により、両社はサービスの拡充や市場シェアの拡大を進めています。

3. 市場シェアと競争状況

インドネシア市場では、Gojekが地元企業としての強みを活かし、優位に立っています。例えば、Gojekのフードデリバリーサービス「GoFood」は、インドネシアのフードデリバリー市場で75%の市場シェアを占めていると報告されています。一方、Grabは、シンガポールやマレーシアなど他の東南アジア諸国で強いプレゼンスを持っています。両社は、各国での市場シェア拡大を目指し、戦略的な提携やサービスの多角化を進めています。

4. 統合の可能性

2025年2月、GrabとGojekが統合に向けた交渉を再開したとの報道がありました。この統合が実現すれば、東南アジアにおける配車、デリバリー、電子商取引分野で圧倒的な存在感を持つ巨大企業が誕生することになります。しかし、規制当局の審査をクリアできるかが課題となると見られています。

5. 今後の展望

GrabとGojekの競争は、東南アジアのデジタル経済の発展に大きな影響を与えています。両社は、サービスの多角化や市場拡大を通じて、ユーザーの利便性向上を目指しています。今後の競争の行方や、統合の可能性については、引き続き注目が必要です。

 

Grab(グラブ)の過去に発生した問題

Grab(グラブ)は、東南アジアを中心に多機能型の「スーパーアプリ」として広く利用されていますが、過去にはいくつかの事件や問題が報告されています。以下に主な事例を挙げます。

1. 乗客とドライバー間のトラブル

  • 越南富国島での誘拐未遂事件:2025年2月、香港の女性が越南の富国島でGrabを利用中、ドライバーが目的地と反対方向に進行し、怪しい小道に入ったため、女性は途中で車を飛び降りて逃走しました。この事件は、Grabの安全性に対する懸念を引き起こしました。
  • マレーシアでのドライバーによる乗客の強制降車:2023年4月、マレーシアの女性がGrabを利用中、ドライバーが途中で車を停車させ、女性を強制的に降車させる事件が発生しました。この事件は、Grabのサービス品質とドライバーの行動に対する懸念を引き起こしました。

2. ドライバーによる不正行為

  • シンガポールでのドライバーによる乗客への暴行:2017年3月、シンガポールでGrabのドライバーが乗客を暴行する事件が報告されました。Grabはこの事件を受けて、ドライバーに対する厳格な行動規範を導入しました。
  • シンガポールでのドライバーによる乗客へのセクシャルハラスメント:2016年9月、シンガポールでGrabのドライバーが乗客に対してセクシャルハラスメントを行う事件が発生しました。Grabはこの事件を受けて、ドライバーに対する行動規範を強化しました。

3. ドライバーとタクシー業者間の対立

Grabのサービス開始以来、従来のタクシー業者との間で競争や対立が生じています。特に、ドライバーとタクシー業者間での暴力事件が報告されており、業界全体の調整が求められています。

4. システムの不具合による料金誤請求

2022年、Grabのシステム不具合により、一部の乗客が誤って追加の公道料金を請求される事態が発生しました。Grabはこの問題を認識し、影響を受けた乗客に対して返金を行いました。

 

Grab(グラブ)がインドネシアの社会にもたらした影響

Grab(グラブ)は、インドネシアにおいて多岐にわたるサービスを提供し、社会や経済に多大な影響を与えてきました。以下にその主な影響を解説します。

1. 雇用創出と収入向上

Grabの配車サービスやフードデリバリーは、多くのドライバーやパートナーを雇用し、彼らの収入向上に寄与しています。特に、フードデリバリーのパートナーは、サービス開始前の月収360万ルピアから920万ルピアへと増加し、約2.5倍の収入増となっています。

2. 生活の利便性向上

Grabのサービスは、都市部での移動や食事の手配を容易にし、ユーザーの生活の質を向上させました。特に、交通渋滞が激しい都市では、GrabBikeなどのバイクタクシーが迅速な移動手段として重宝されています。

3. 経済活動の活性化

Grabのプラットフォームを通じて、多くの中小企業や店舗がデジタル化し、新たな顧客層を獲得しました。これにより、地域経済の活性化が促進されています。

4. デジタル化の推進

Grabは、デジタル決済やオンラインサービスの普及を促進し、インドネシアのデジタル化を加速させました。これにより、金融サービスへのアクセスが向上し、経済全体のデジタル化が進展しています。

5. 競争と課題

一方で、Grabの急成長により、ドライバー間の競争が激化し、収入の不安定化や過当競争が問題となっています。2024年8月には、ドライバーが低賃金や不公平な慣行に抗議してストライキを行うなど、労働環境に関する課題も浮き彫りとなっています。

 

 

まとめ

Grab(グラブ)は、東南アジアを中心に展開する多機能型の「スーパーアプリ」で、配車サービス、フードデリバリー、デジタル決済など、さまざまなサービスを提供しています。2012年にマレーシアで「MyTeksi」として設立され、その後「GrabTaxi」と改名し、シンガポールやタイなどへ進出しました。2018年にはUberの東南アジア事業を買収し、「GrabFood」や「GrabExpress」を統合し、サービスを多様化しました。また、ソフトバンクグループからの出資を受け、インドネシア市場への投資を強化しています。現在では、配車サービス、フードデリバリー、デジタル決済、金融サービスなど、多岐にわたるサービスを提供し、東南アジア地域での強固な地位を築いています。

 

 

本記事で使用した単語の解説

  • スーパーアプリ:複数のサービスを一つのアプリで提供するプラットフォーム。Grabは、配車サービス、フードデリバリー、デジタル決済などを統合したスーパーアプリです。
  • 配車サービス:スマートフォンアプリを通じて、タクシーや自家用車、バイクなどの移動手段を手配するサービス。Grabの「GrabCar」や「GrabBike」が該当します。
  • フードデリバリー:レストランや店舗から食事を注文し、指定の場所に届けてもらうサービス。Grabの「GrabFood」がこのサービスを提供しています。
  • デジタル決済:現金を使わず、スマートフォンやカードを通じて支払いを行う電子的な決済手段。Grabの「GrabPay」がこの機能を担っています。
  • 金融サービス:融資、保険、投資など、金融関連のサービス。Grabは「GrabFinance」を通じて中小企業向けの融資サービスや保険商品を提供しています。

 

 

FAQ(よくある質問)

  1. Grabのサービスはどの国で利用できますか?
    Grabは、シンガポール、マレーシア、インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナム、カンボジア、ミャンマーなど、東南アジアの主要8か国でサービスを提供しています。
  2. Grabの支払い方法は何ですか?
    Grabでは、現金、クレジットカード、デビットカード、GrabPayのいずれかの方法で支払いが可能です。
  3. Grabのアプリはどのようにダウンロードできますか?
    Grabのアプリは、iOSおよびAndroidの各アプリストアから無料でダウンロードできます。インストール後、アカウントを作成し、サービスを利用開始できます。
  4. Grabの配車サービスはどのように利用できますか?
    アプリを開き、目的地を入力して配車をリクエストします。近くのドライバーがマッチングされ、車両情報や到着時間が表示されます。乗車後、目的地に到着したら、選択した支払い方法で料金を支払います。
  5. GrabFoodの注文方法は?
    アプリ内の「GrabFood」セクションから、近隣のレストランや店舗を検索し、メニューから食事を選択します。注文確定後、配達パートナーが指定の場所に届けてくれます。
  6. GrabPayの利用方法は?
    GrabPayは、アプリ内でデジタルウォレットとして機能し、Grabの各種サービスの支払いに使用できます。また、加盟店での支払いにも利用可能です。
  7. Grabのカスタマーサポートへの連絡方法は?
    アプリ内の「ヘルプセンター」から、問題や質問を報告できます。また、公式ウェブサイトのFAQセクションでもよくある質問への回答が掲載されています。

 

 

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