2月 20, 2025 • by Delilah

インドネシアの巨大財閥バリト・パシフィックグループ(Barito Pacific)を徹底解説

バリト・パシフィックグループの概要

バリト・パシフィック・グループ（Barito Pacific Group）は、インドネシアを拠点とする多角的かつ統合的なエネルギー企業グループであり、石油化学製品の製造や地熱エネルギーの開発など、多様な事業を展開しています。その使命は、ステークホルダーや地域社会に対して、財務的な利益を超えた持続可能な価値を提供することです。

創業者： プラジョゴ・パンゲストゥ（Prajogo Pangestu）氏

創業年： 1979年

本拠地： インドネシア、ジャカルタ

主な事業：

石油化学事業： 子会社であるPT Chandra Asri Petrochemical Tbkを通じて、エチレン、プロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンモノマー、ブタジエンなどの製品を製造しています。
エネルギー・資源事業： Star Energy Geothermalを傘下に持ち、インドネシア国内で地熱発電事業を展開し、総発電容量は875MWに達しています。
不動産事業： PT Griya Idolaを通じて、ジャカルタの「Wisma Barito Pacific」やタンゲラン州チクパの工業団地などの運営を行っています。

代表企業：

PT Chandra Asri Petrochemical Tbk（チャンドラ・アスリ・ペトロケミカル）： インドネシア最大の石油化学メーカーであり、エチレンやプロピレンなどの製品を製造しています。
Star Energy Geothermal： インドネシア国内で地熱発電事業を手がける企業で、総発電容量は875MWに達しています。

従業員数： 2025年2月時点で、約3,325名

売上規模： 2024年第3四半期までの売上高は16億6,700万米ドル、純利益は2,700万米ドル、総資産は1,019万米ドルとなっています。

バリト・パシフィック・グループは、エネルギー安全保障の強化や持続可能な成長を目指し、国内外での事業拡大や戦略的パートナーシップの構築に積極的に取り組んでいます。

バリト・パシフィックグループのグループの歴史

バリト・パシフィック・グループ（Barito Pacific Group）は、インドネシアを代表する多角的企業グループであり、その歴史は以下のように展開されています。

1970年代：

バリト・パシフィック・ティンバーの設立
創業者のプラジョゴ・パンゲストゥ（Prajogo Pangestu）氏は、1970年代に木材加工会社であるバリト・パシフィック・ティンバーを設立しました。これが現在のバリト・パシフィック・グループの前身となります。

1990年：

チャンドラ・アスリ・ペトロケミカルの設立
バリト・パシフィック・グループは、1990年にインドネシア最大の石油化学メーカーであるPT Chandra Asri Petrochemical Tbkを設立し、石油化学分野に参入しました。

1993年：

インドネシア証券取引所への上場
バリト・パシフィック・グループは、1993年にインドネシア証券取引所に上場し、公開企業としての地位を確立しました。

2007年：

チャンドラ・アスリ・ペトロケミカルの買収
バリト・パシフィック・グループは、2007年にPT Chandra Asri Petrochemical Tbkを買収し、石油化学分野での事業を強化しました。

2008年：

トリ・ポリタの買収
バリト・パシフィック・グループは、2008年にポリプロピレン樹脂メーカーであるトリ・ポリタ（Tri Polyta）を買収し、石油化学製品のラインナップを拡充しました。

2021年：

売上高の大幅増加
2021年、バリト・パシフィック・グループは45兆ルピア（約4,270億円）の売上高を達成し、チャンドラ・アスリ・ペトロケミカルとスター・エナジー・ジオサーマルの地熱発電事業が好調な業績に大きく貢献しました。

バリト・パシフィック・グループは、木材加工業から始まり、石油化学、不動産、プランテーション運営、地熱発電など多岐にわたる事業分野へと拡大し、インドネシアの経済発展に寄与しています。

バリト・パシフィックグループの主要事業

バリト・パシフィック・グループ（Barito Pacific Group）は、インドネシアを代表する多角的企業グループであり、以下の主要事業を展開しています。

1. 石油化学事業： 子会社であるPT Chandra Asri Petrochemical Tbkを通じて、エチレン、プロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンモノマー、ブタジエンなどの製品を製造しています。

同社は、インドネシア最大の石油化学メーカーとして、国内のプラスチック産業や関連産業に原材料を供給しています。

2. エネルギー・資源事業： Star Energy Geothermalを傘下に持ち、インドネシア国内で地熱発電事業を展開しています。同社は、総設備容量約885メガワットの地熱資産を保有し、持続可能なエネルギー供給に貢献しています。

3. 不動産事業： PT Griya Idolaを通じて、西ジャカルタのスリピ地区に位置する「ウィスマ・バリト・パシフィック」や「ウィスマ・バリト・パシフィックII」などの不動産資産を管理・運営しています。

これらの施設は、オフィスビルや商業施設として利用され、地域の経済活動を支えています。

バリト・パシフィック・グループは、これらの主要事業を通じて、インドネシアの経済発展と持続可能な社会の実現に寄与しています。

バリト・パシフィックグループのインドネシアへの影響力

バリト・パシフィック・グループ（Barito Pacific Group）は、インドネシアにおいて多角的な事業展開を通じて、経済成長と持続可能なエネルギー供給に大きく貢献しています。特に、石油化学、エネルギー、インフラストラクチャーの分野で重要な役割を果たしています。

石油化学分野： 子会社であるPT Chandra Asri Petrochemical Tbkを通じて、インドネシア最大の石油化学製品の供給を担っています。同社は、エチレン、プロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの基礎化学品を生産し、国内のプラスチック産業や関連産業に原材料を提供しています。これにより、国内の製造業の発展とインフラ整備に不可欠な素材の安定供給を実現しています。

エネルギー分野： バリト・パシフィック・グループは、Star Energy Geothermalを通じて、インドネシア国内で地熱発電事業を展開しています。同社は、西ジャワ州で総発電容量約886メガワットの地熱発電所を運営しており、再生可能エネルギーの供給を通じて、国内のエネルギー安全保障と持続可能な発展に寄与しています。

インフラストラクチャー分野： 不動産開発やプランテーション運営など、多岐にわたる事業を展開しています。特に、ジャカルタの「ウィスマ・バリト・パシフィック・タワーズ」などの不動産開発を手掛け、都市部のインフラ整備と経済活動の活性化に貢献しています。

さらに、同グループは新エネルギーや再生可能エネルギーへの移行を支援することで、インドネシアの経済目標達成にコミットしています。具体的には、2025年までに1ギガワットの発電容量を運転することを目指し、104メガワットの新たな再生可能エネルギー容量の開発を計画しています。

これらの取り組みにより、バリト・パシフィック・グループはインドネシアの経済成長、エネルギー安全保障、インフラ整備、そして持続可能な社会の実現に向けて、重要な役割を果たしています。

バリト・パシフィックグループの過去の事件

バリト・パシフィック・グループ（Barito Pacific Group）は、インドネシアにおいて多角的な事業を展開する大手企業グループですが、その活動に関連していくつかの批判や懸念が報告されています。以下に主な事例を挙げます。

1. 環境への影響： 同グループは、インドネシアのバンテン州スララヤ地区で複数の石炭火力発電所を運営しています。現地住民からは、これらの発電所が公衆衛生、農業、水質汚染などに悪影響を及ぼしているとの訴えがあり、特に新たに建設中の9号機と10号機に対する反対運動が起こっています。

2. 森林伐採に関する懸念： バリト・パシフィック・ティンバー・グループは、インドネシア最大の合板生産企業であり、政府との密接な関係を持つとされています。同社は、スリナムでの油ヤシ生産への投資を検討しており、これにより現地の森林伐採が進むのではないかとの懸念が国際的に指摘されています。

3. 株価の高い変動性： 2023年以降、子会社であるPT Barito Renewables Energyの株価が急激な上昇と大幅な下落を繰り返し、投資家や市場関係者の間で混乱を招いています。この異常な株価変動に対し、インドネシア証券取引所は同社を監視リストに追加し、取引制限を設けるなどの対応を行いました。

これらの事例は、バリト・パシフィック・グループの事業活動に関連する批判や懸念を示しています。同グループは、環境保護や持続可能な経営、透明性の向上などの課題に直面しており、これらの問題に対する適切な対応が求められています。

バリト・パシフィックグループと日本企業との協業事例

バリト・パシフィック・グループ（Barito Pacific Group）は、インドネシアにおいて多角的な事業を展開する大手企業グループであり、日本企業との協業も積極的に行っています。以下に、主な日本企業との協業事例を挙げます。

1. 東洋エンジニアリング株式会社（Toyo Engineering Corporation）との協業： 2024年10月、東洋エンジニアリングの子会社であるインティ・カルヤ・プルサダ・テクニック（IKPT）は、バリト・パシフィック・グループ傘下のスターエナジー・ジオサーマル社から地熱発電所の建設プロジェクトを受注しました。このプロジェクトは、インドネシアにおける再生可能エネルギーの供給拡大に寄与するものと期待されています。

2. 丸紅株式会社との協業： 1990年代、バリト・パシフィック・グループは、丸紅株式会社と共同で南スマトラ州におけるパルプ工場建設プロジェクト「タンジュン・エニム・レスタリ（TEL）」を推進しました。このプロジェクトでは、植林事業とパルプ生産を一体化し、環境に配慮した事業運営が行われました。

これらの協業を通じて、バリト・パシフィック・グループと日本企業は、インドネシアの産業発展や環境保全に寄与するプロジェクトを共同で推進しています。

まとめ

バリト・パシフィック・グループ（Barito Pacific Group）は、インドネシアを拠点に多角的な事業を展開している企業グループで、特に石油化学、エネルギー（地熱発電）、不動産分野において大きな影響力を持っています。1979年に創業された同グループは、持続可能な成長を目指し、エネルギー安全保障の強化や再生可能エネルギーの供給に積極的に取り組んでいます。また、インフラ整備や環境への配慮を重視し、社会貢献にも力を入れています。グループの成長は、インドネシア国内の経済発展や社会的価値の向上に大いに寄与しています。

本記事で使用した単語の解説

バリト・パシフィック・グループ（Barito Pacific Group）
インドネシアの多角的企業グループで、石油化学、エネルギー、建設、不動産などの事業を展開しています。
PT Chandra Asri Petrochemical Tbk
バリト・パシフィック・グループの子会社で、インドネシア最大の石油化学メーカーとして、エチレンやポリエチレンなどの化学製品を製造しています。
Star Energy Geothermal
バリト・パシフィック・グループの傘下にある企業で、インドネシア国内で地熱発電事業を展開し、875MWの総発電容量を有しています。
エネルギー安全保障
国家や地域が安定的にエネルギーを供給できる状態を指し、バリト・パシフィック・グループは地熱エネルギーなどの再生可能エネルギーの供給を強化しています。
持続可能な発展
将来の世代が必要とする資源を損なうことなく、現代のニーズを満たす発展を目指す考え方。バリト・パシフィック・グループは、この概念に基づいて事業を展開しています。