2月 20, 2025 • インドネシア, 財閥 • by Delilah

インドネシアの巨大財閥アストラグループ(Astra)を徹底解説

インドネシアの巨大財閥アストラグループ(Astra)を徹底解説

アストラグループの概要

アストラグループ(Astra Group)は、インドネシアを代表する多国籍コングロマリットであり、幅広い事業分野で活動しています。その中核企業であるPT Astra International Tbkは、1957年に設立され、現在では自動車、金融サービス、重機、農業、インフラ整備など、多岐にわたる事業を展開しています。特に、自動車産業においては、トヨタ、ダイハツ、ホンダなどの日本企業と提携し、インドネシア国内で最大の自動車生産・販売シェアを誇っています。

概要: アストラグループは、インドネシア全土で286の子会社・合弁会社・関連会社を展開し、200,713人の従業員を雇用しています(2024年2月時点)。自動車産業を中心に、金融サービス、重機、農業、インフラ整備など多様な事業を手掛け、インドネシア経済に大きな影響力を持つ企業グループです。

創業者: アストラグループの創業者は、華人実業家のウィリアム・スリヤジャヤ(William Soeryadjaya)氏です。彼は1957年に小規模な貿易会社としてアストラ・インターナショナルを設立しました。

創業年: 1957年

本拠地: インドネシア、ジャカルタ

主な事業:

  • 自動車:トヨタ、ダイハツ、ホンダなどの日本企業と提携し、自動車・二輪車の生産・販売・アフターサービスを展開しています。2023年には、インドネシア国内の自動車販売台数の56%を占めました。
  • 金融サービス:消費者金融、自動車・二輪車ファイナンス、重機ファイナンス、損害保険などを提供しています。2023年の金融サービス部門の売上高は29兆7,650億ルピアでした。
  • 重機:重機・鉱業・建設業・エネルギー分野で活動し、2023年の売上高は128兆2,570億ルピアに達しました。
  • 農業:パーム油の製造・販売やプランテーションの運営を行い、2023年の売上高は20兆7,450億ルピアでした。
  • インフラ整備:有料道路の運営・管理や物流サービスを提供し、2023年の売上高は8兆3,880億ルピアでした。

代表企業: PT Astra International Tbk

従業員数: 200,713人(2024年2月時点)

売上規模: 2023年のグループ全体の売上高は316兆5,650億ルピア(約3兆1,656億円)

アストラグループは、インドネシアの経済発展に寄与するだけでなく、環境・社会への配慮を重視し、持続可能な成長を目指しています。その中長期経営戦略「Astra Triple-P strategy」では、温室効果ガスの削減や再生可能エネルギーの活用、多様性と包括性の推進など、10項目の目標を掲げています。

 

アストラグループのグループの歴史

アストラグループ(Astra Group)は、インドネシアを代表する多国籍コングロマリットであり、その歴史は以下の通りです。

1957年:ウィリアム・スリヤジャヤ(William Soeryadjaya)氏と彼の弟であるTjia Kian Tie氏が、ジャカルタで小規模な貿易会社としてPT Astra International Inc.を設立しました。

1969年:アストラはトヨタ自動車のインドネシアにおける販売代理店となり、自動車事業に参入しました。

1970年:ホンダの二輪車の総代理店に任命され、翌年にはPT Federal Motor(現在のPT Astra Honda Motor)を設立し、二輪車の組み立てを開始しました。

1972年:重機・鉱業・建設業・エネルギー分野で活動するPT United Tractorsを設立し、重機事業に進出しました。

1990年:PT Astra Internationalはジャカルタ証券取引所に上場し、社名をPT Astra International Tbkに変更しました。

1992年:創業者のウィリアム・スリヤジャヤ氏は、息子が経営していたBank Summaの救済のため、アストラの株式を売却し、グループの経営から退きました。

2000年:シンガポールを拠点とするJardine Cycle & Carriageがアストラの株式の過半数を取得し、同社の傘下に入りました。

2023年:アストラグループは、インドネシア全土で286の子会社・合弁会社・関連会社を展開し、200,713人の従業員を雇用するまでに成長しました。

このように、アストラグループは多様な事業分野での拡大と戦略的パートナーシップを通じて、インドネシアを代表する企業グループへと成長してきました。

 

アストラグループの主要事業

アストラグループ(Astra Group)は、インドネシアを代表する多角的なコングロマリットであり、以下の主要事業を展開しています。

1. 自動車事業: アストラは、東南アジア最大の独立系自動車グループとして、自動車および二輪車の製造、組立、輸入、販売、アフターサービスを手掛けています。トヨタ、ダイハツ、いすゞ、UDトラックス、プジョー、BMW、ホンダ(オートバイ)などのブランドと提携し、インドネシア国内での販売を行っています。

2. 金融サービス: 自動車・二輪車の販売を支援するため、消費者金融、重機ファイナンス、銀行業務、生命保険・損害保険など、多岐にわたる金融サービスを提供しています。

3. 重機・鉱業・建設・エネルギー: コマツ、UDトラックス、スカニア、ボーマグ、タダノなどの重機の独占販売代理店として、重機の供給とアフターサービスを提供しています。また、鉱業サービス、鉱山所有、火力発電資産の運営、金やニッケルなどの非石炭鉱物および再生可能エネルギーへの投資も行っています。

4. 農業ビジネス: インドネシア有数のパーム油企業として、パーム油の栽培、収穫、加工を手掛けています。持続可能性ポリシーに基づき、森林破壊の防止、泥炭地の保全、人権の尊重などに取り組んでいます。

5. インフラ・物流: 総延長396kmの有料道路の開発・管理を行い、ジャワ島の交通網の改善に貢献しています。また、港湾運営や物流サービスも展開しています。

6. 情報技術(IT): 情報技術分野では、印刷およびデジタルサービスに注力し、インドネシアにおける富士フイルムビジネスイノベーションの独占販売代理店として活動しています。

7. 不動産: ジャカルタを中心に、Menara AstraやAnandamaya Residences、Asya、The Arumaya Complexなどの商業・住宅プロジェクトを開発しています。2023年には、タンゲランでAmmaia Ecoforestという住宅開発を開始し、ジャカルタ中心部のMandarin Oriental Hotelの敷地を所有するJaya Mandarin Agungの株式96.9%を取得しました。

アストラグループは、これらの多岐にわたる事業を通じて、インドネシアの経済発展と社会的価値の向上に寄与しています。

 

アストラグループのインドネシアへの影響力

アストラグループ(Astra Group)は、インドネシア最大級のコングロマリットとして、同国の経済・社会に多大な影響力を持っています。その影響力は以下の主要な側面に及びます。

1. 経済への貢献:

  • 多角的事業展開:アストラは、自動車、金融サービス、重機・鉱業、農業、インフラ・物流、情報技術、不動産など、多岐にわたる事業を展開しています。これにより、インドネシアの主要産業セクターにおいて重要な役割を果たしています。
  • 雇用創出:アストラは、約19万人の従業員を擁し、インドネシア国内での大規模な雇用を提供しています。

2. 自動車産業への影響:

  • 市場シェア:アストラは、トヨタ、ダイハツ、ホンダなどの主要ブランドと提携し、インドネシアの自動車市場で圧倒的なシェアを占めています。
  • 産業基盤の強化:自動車の製造・販売からアフターサービス、部品供給に至るまで、包括的なバリューチェーンを構築し、国内の自動車産業の発展に寄与しています。

3. インフラ整備と物流の推進:

  • 有料道路の開発・管理:アストラは、ジャワ島を中心に総延長396kmの有料道路の開発・管理を行い、国内の交通インフラの改善に大きく貢献しています。
  • 物流サービスの提供:港湾運営や物流サービスを展開し、国内外の物流ネットワークの強化に寄与しています。

4. 金融サービスの提供:

  • 多様な金融商品:消費者金融、車両・重機ファイナンス、保険、銀行業務など、多岐にわたる金融サービスを提供し、個人や企業の資金調達を支援しています。

5. 社会的責任と持続可能性への取り組み:

  • 環境・社会への配慮:アストラは、持続可能な事業運営を目指し、環境保護や社会貢献活動に積極的に取り組んでいます。

これらの活動を通じて、アストラグループはインドネシアの経済成長と社会発展に多大な影響を与え続けています。

 

アストラグループの過去の事件

アストラグループ(Astra Group)は、インドネシアを代表する大手コングロマリットとして、多岐にわたる事業を展開していますが、その一部の活動に関して以下のような批判や懸念が報告されています。

1. 環境問題:

  • 森林破壊と泥炭地開発:アストラグループの子会社であるPT Astra Agro Lestariは、パーム油プランテーションの拡大に伴い、森林破壊や泥炭地の開発に関与しているとの指摘があります。これにより、生態系の破壊や温室効果ガスの排出増加が懸念されています。

2. 社会問題:

  • 土地紛争:プランテーション開発に関連して、地元コミュニティとの土地所有権を巡る紛争が報告されています。これらの紛争は、地域社会との対立や人権侵害の問題を引き起こしています。

これらの問題に対して、環境保護団体や人権団体からの批判が高まっており、アストラグループには持続可能な事業運営と地域社会との協調が求められています。

 

アストラグループと日本企業との協業事例

アストラグループ(Astra Group)は、インドネシアを代表する多国籍コングロマリットであり、複数の日本企業と協業関係を築いています。特に、自動車産業においては、以下の日本企業と密接なパートナーシップを結んでいます。

1. トヨタ自動車株式会社(Toyota Motor Corporation)

  • 協業内容:アストラグループは、トヨタ自動車と提携し、インドネシア国内でトヨタ車の生産・販売を行っています。この協業により、トヨタブランドの車両がインドネシア市場で広く普及しています。

2. ダイハツ工業株式会社(Daihatsu Motor Co., Ltd.)

  • 協業内容:ダイハツ工業とアストラグループは、インドネシアにおけるダイハツ車の製造・販売で協力しています。このパートナーシップにより、ダイハツブランドの小型車がインドネシア市場で高い人気を博しています。

3. 本田技研工業株式会社(Honda Motor Co., Ltd.)

  • 協業内容:アストラグループは、本田技研工業と共同で、インドネシア国内でホンダの二輪車の生産・販売を手掛けています。この協業により、ホンダのオートバイがインドネシアの主要な交通手段として広く利用されています。

4. いすゞ自動車株式会社(Isuzu Motors Limited)

  • 協業内容:いすゞ自動車とアストラグループは、商用車の分野で協力し、インドネシア市場向けにいすゞブランドのトラックやバスの生産・販売を行っています。

5. 日野自動車株式会社(Hino Motors, Ltd.)

  • 協業内容:日野自動車とアストラグループは、インドネシアにおける日野ブランドの商用車の組立・販売で提携しています。この協業により、日野のトラックやバスがインドネシアの物流・交通インフラを支えています。

これらの協業を通じて、アストラグループと日本企業は、インドネシアの自動車産業の発展と市場拡大に大きく貢献しています。

 

まとめ

アストラグループ(Astra Group)は、インドネシアを代表する多国籍コングロマリットであり、自動車、金融サービス、重機、農業、インフラ整備など、多岐にわたる事業を展開しています。1957年に設立されて以来、アストラは国内経済に多大な影響を与え、特に自動車産業においてはトヨタ、ダイハツ、ホンダなどの日本企業と強力な提携を結び、インドネシア国内で圧倒的な市場シェアを誇っています。また、アストラは持続可能な成長を目指し、環境問題への対応や地域社会との協調にも力を入れています。アストラグループは、インドネシアの経済成長と社会的発展に貢献し続けています。

 

 

本記事で使用した単語の解説

  1. アストラグループ(Astra Group)
    インドネシアの多国籍コングロマリットで、主に自動車、金融、重機、農業、インフラ整備などを展開する企業グループ。
  2. PT Astra International Tbk
    アストラグループの中核企業で、1957年に設立され、同グループの事業全体を牽引する重要な役割を果たしています。
  3. Astra Triple-P strategy
    アストラグループの中長期経営戦略で、温室効果ガス削減、再生可能エネルギー活用、多様性と包括性の推進を目指す目標を掲げています。
  4. 自動車事業
    トヨタ、ダイハツ、ホンダなどと提携し、自動車と二輪車の製造、組立、販売、アフターサービスを提供するアストラグループの主力事業。
  5. 金融サービス
    自動車ファイナンス、保険、銀行業務などを提供し、消費者や企業の資金調達を支援するアストラグループの事業。

 

FAQ(よくある質問)

Q1: アストラグループの主な事業は何ですか?

A1: アストラグループは、自動車、金融サービス、重機・鉱業、農業、インフラ整備、IT、不動産など多岐にわたる事業を展開しています。

Q2: アストラグループの創業年はいつですか?

A2: アストラグループは1957年に、ウィリアム・スリヤジャヤ氏によって設立されました。

Q3: アストラグループが提供する自動車事業にはどのようなものがありますか?

A3: アストラグループは、トヨタ、ダイハツ、ホンダなどの日本企業と提携し、自動車・二輪車の製造、販売、アフターサービスを手掛けています。

Q4: アストラグループの金融サービス部門の売上はどれくらいですか?

A4: 2023年のアストラグループの金融サービス部門の売上高は29兆7,650億ルピアでした。

Q5: アストラグループはどのような社会貢献活動を行っていますか?

A5: アストラグループは、環境保護や社会貢献活動に積極的に取り組み、持続可能な事業運営を目指しています。特に、温室効果ガス削減や再生可能エネルギーの活用、地域社会との協調に力を入れています。

 

 

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