4月 4, 2025 • インドネシア • by Erika Okada

インドネシアの宗教行事で会社が停止する?ラマダンやレバラン時期の働き方

インドネシアの宗教行事で会社が停止する?ラマダンやレバラン時期の働き方

インドネシアは、世界最大のイスラム教徒人口を抱える国であり、イスラム教の宗教行事は社会やビジネスに深い影響を与えます。 特に、ラマダン(断食月)とその後のレバラン(断食明け大祭)は、企業の運営や労働環境に大きな変化をもたらします。本記事では、これらの宗教行事がインドネシアのビジネス環境にどのような影響を与えるのか、また、その時期の働き方について詳しく解説します。

 

イスラム教のラマダンとは

イスラム教のラマダンとは

ラマダンは、イスラム暦(ヒジュラ暦)の第9月にあたる約30日間の断食期間です。 この期間、イスラム教徒は日の出から日没まで飲食、喫煙、性行為を控え、精神的な浄化と自己修養を行います。 断食はイスラム教の「五行」の一つであり、信仰生活において非常に重要な位置を占めています。

ラマダンの目的と意義

ラマダンの主な目的は、自己抑制と精神的な浄化を通じて、神(アッラー)への信仰を深めることです。 また、飢えや渇きを経験することで、貧しい人々の苦しみを理解し、共感する機会ともなります。 これにより、慈善活動や寄付(ザカート)への意識が高まります。

2025年のラマダン日程

2025年のラマダンは、2月28日(金)から3月30日(日)まで実施されます。 その後、3月31日(月)と4月1日(火)に「レバラン(断食明け大祭)」が行われます。 政府は前後に有給休暇の取得を奨励しており、3月28日(金)から4月7日(月)までの最大11連休となる可能性があります。

 

 

イスラム教のレバランとは

イスラム教のレバランとは

レバラン(イドゥル・フィトリ)は、ラマダン終了後の祝祭で、断食明けを祝うイスラム教の重要な行事です。 家族や親戚、友人と集まり、食事や交流を楽しむ日本のお正月に類似した文化的イベントです。

レバラン期間中の習慣

レバランでは、新しい衣服を着用し、家族や友人を訪問して謝罪と感謝の意を伝える習慣があります。 また、遠方の故郷へ帰省する「ムディック(Mudik)」が一般的で、これにより国内の移動が活発化します。 この時期、交通機関や道路は非常に混雑し、特に主要都市から地方への移動が集中します。

ラマダンとレバランが企業活動に与える影響

これらの宗教行事は、インドネシアの企業活動や労働環境に多大な影響を及ぼします。以下に主な影響と対策をまとめます。

勤務時間の変更

ラマダン期間中、多くの企業では勤務時間の短縮やシフト変更が行われます。 例えば、始業時間を早め、終業時間を繰り上げることで、従業員が日没後の食事(イフタール)に間に合うよう配慮します。 具体的には、通常の8:00~17:00の勤務時間を7:30~16:30に変更するケースなどがあります。

生産活動の調整

製造業などでは、ラマダン期間中の生産計画を見直す必要があります。 従業員の多くがイスラム教徒である場合、断食による体力低下や集中力の減退が予想されるため、生産目標やスケジュールの調整が求められます。 また、レバラン前後の長期休暇を考慮し、在庫の積み増しや出荷計画の前倒しを行う企業も少なくありません。

ボーナス(THR)の支給

レバラン前には、全従業員に対して「THR(Tunjangan Hari Raya)」と呼ばれる宗教手当の支給が法律で義務付けられています。 これは固定給の1か月分が一般的で、レバラン開始の少なくとも1週間前までに支給する必要があります。 支給の遅延や未払いは罰則の対象となるため、企業は計画的な財務管理が求められます。

帰省(ムディック)への対応

レバラン期間中、多くの従業員が故郷へ帰省します。これにより、企業は一時的な人員不足に直面する可能性があります。事前に休暇申請を受け付け、業務に支障が出ないよう人員配置を調整することが重要です。また、帰省ラッシュによる交通渋滞や輸送遅延も予想されるため、物流計画の見直しも必要です。

 

 

まとめ

インドネシアにおけるラマダンとレバランは、単なる宗教的なイベントにとどまらず、社会全体の行動や経済活動に大きな影響を与える重要な期間です。この時期は、企業の運営スケジュールや従業員の働き方、物流・生産体制、さらには財務戦略(THR支給など)にも大きく関わってきます。インドネシアで事業を行う企業やマネージャーは、これらの行事がもたらす変化を十分に理解し、現地文化への尊重と実務的な対策の両立を図る必要があります。計画的な人員配置、柔軟な勤務制度の設計、物流調整、法的義務への対応などを早めに進めておくことで、ラマダン・レバラン期間中でも事業を円滑に運営することが可能となります。

 

 

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本記事で使用した用語解説

ラマダン(Ramadan)
イスラム教徒が1年に1度、約1か月間にわたって断食を行う神聖な月。日の出から日没まで飲食や嗜好品を断ち、信仰心を高める。

レバラン(Lebaran) / イドゥル・フィトリ(Idul Fitri)
ラマダン明けの大祭で、日本のお正月に近い祝祭。家族で集まり、親族や近隣と交流し、贈り物や謝罪・感謝の言葉を交わす。

THR(Tunjangan Hari Raya)
レバラン前に支給が義務付けられている「宗教手当」。多くの場合、1か月分の給与に相当する額が支給される。

ムディック(Mudik)
レバラン前に地方の実家や故郷へ帰省するインドネシアの慣習。大規模な人の移動が起きるため、物流や交通に大きな影響を与える。

イフタール(Iftar)
ラマダン中に日没後最初に取る食事。家族や同僚と一緒に食事をとることが多く、社会的なつながりの強化にもつながる。

FAQ(よくある質問)

Q1. ラマダン期間中に営業を継続することは可能ですか?
可能です。ただし、営業時間の短縮やスタッフの勤務時間変更が一般的になるため、事前のスケジュール調整が必要です。サービス業などでは夕方以降の需要が増加するケースもあります。

Q2. THR(宗教手当)の支給は外国企業にも義務がありますか?
はい。インドネシアで登記されている企業であれば、すべての従業員に対してTHRの支給が義務付けられています。支給はレバラン開始の少なくとも7日前までに完了させる必要があります。

Q3. ラマダン中の従業員の生産性が低下するのは本当ですか?
個人差はありますが、断食によって体力や集中力が一時的に低下する傾向があります。そのため、重要業務のスケジュールを事前に調整したり、負荷を分散させる工夫が求められます。

Q4. レバラン期間中の物流への影響は?
レバラン期間中は物流業者も休業、または人手不足となる場合が多く、配送遅延や在庫補充の遅れが発生する可能性があります。レバランの2週間前には出荷計画を完了させておくのが理想です。

Q5. ムディックによる帰省が企業に与える影響は?
多くの従業員が同時期に休暇を取るため、人手不足が発生します。企業は早めに従業員の休暇希望を確認し、必要に応じてパートタイムや契約社員の活用を検討する必要があります。

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