2月 22, 2025 • スタートアップ, インドネシア • by Delilah

インドネシアの注目スタートアップ企業Tokopedia(トコぺディア)

Tokopedia（トコペディア）は、インドネシアを代表するオンラインマーケットプレイスであり、国内外の多くのユーザーに利用されています。その成功の背景には、革新的なビジネスモデルと戦略的なパートナーシップがあります。本記事では、インドネシアのEコマースマーケットプレイス最大手Tokopediaについて詳しく解説します。

Tokopedia（トコペディア）の会社概要

Tokopedia（トコペディア）は、2009年にインドネシアで設立されたオンラインマーケットプレイスで、個人や中小企業が商品やサービスを販売・購入できるプラットフォームを提供しています。その後、急速な成長を遂げ、インドネシアのデジタル経済に大きな影響を与えました。

会社名: PT Tokopedia
創業者: ウィリアム・タヌウィジャヤ（William Tanuwijaya）
創業年: 2009年
本社所在地: インドネシア、ジャカルタ

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Tokopedia（トコペディア）の創業の経緯やストーリー

Tokopedia（トコペディア）は、インドネシアのデジタル経済を牽引する主要なオンラインマーケットプレイスとして知られています。その創業の背景には、共同創業者であるウィリアム・タヌウィジャヤ氏とレオンティヌス・アルファ・エジソン氏の情熱と努力がありました。

創業者ウィリアム・タヌウィジャヤ（William Tanuwijaya）

1981年11月11日、北スマトラ州プマタングシアンタルで生まれたウィリアム氏は、大学進学のためジャカルタに移り住みました。ビヌス大学（BINUS University）で情報技術を学ぶ傍ら、学費を賄うためにインターネットカフェで12時間のシフトをこなしていました。2003年の卒業後、ソフトウェア開発者としてのキャリアをスタートさせ、TelkomsigmaやSqiva Sistemなどの企業で経験を積みました。その後、Bolehnetでゲーム開発者として勤務し、2006年にはIndocom MediatamaでITおよびビジネス開発マネージャーを務めました。

共同創業者レオンティヌス・アルファ・エジソン（Leontinus Alpha Edison）

1981年3月19日、西カリマンタン州ポンティアナックで生まれたレオン氏は、ジョグジャカルタのアートマジャヤ大学で情報技術を専攻し、2003年に卒業しました。卒業後、PT Signet PratamaやPT Sqiva Sistem、PT Semesta Tirta Antara Rayaなどの企業でウェブ開発者として勤務しました。2006年から2008年までは、PT Indocom Mediatamaでゼネラルマネージャーを務め、通信会社との関係構築や戦略的計画に携わりました。

Tokopedia設立の経緯

2007年、ウィリアム氏はインドネシアの中小企業や個人がオンラインで商品を販売できるプラットフォームの必要性を痛感し、Tokopediaの構想を練り始めました。同年、彼の父親が癌と診断され、家族を支える責任を負うことになりました。この困難な時期にもかかわらず、ウィリアム氏は友人であるレオン氏に共同創業を持ちかけ、二人でTokopediaの設立に向けて動き出しました。

資金調達の面では、多くの困難がありましたが、彼らの情熱とビジョンが投資家の共感を呼び、2009年2月6日にTokopediaを正式に設立しました。同年8月17日、インドネシア独立記念日に合わせてプラットフォームを一般公開し、個人や中小企業が無料でオンラインストアを開設できるサービスを提供し始めました。

成長と発展

設立当初から、TokopediaはインドネシアのEコマース市場で急速に成長を遂げました。2014年10月、ソフトバンク・インターネット・アンド・メディア（SoftBank Internet and Media, Inc.）およびセコイア・キャピタル（Sequoia Capital）から総額1億ドルの出資を受け、さらなる事業拡大とサービス向上を図りました。

その後も、Tokopediaはユーザーエクスペリエンスの向上や新機能の追加、物流や決済システムの強化など、多方面での革新を続け、インドネシアのデジタル経済の発展に大きく貢献しています。ウィリアム氏とレオン氏のビジョンと努力により、Tokopediaは単なるオンラインマーケットプレイスを超え、インドネシアの中小企業や個人事業主にとって不可欠なビジネスプラットフォームとしての地位を確立しています。

ソフトバンク孫正義からの出資

2017年、ソフトバンクはTokopediaに対して約11億ドルの投資を行いました。この投資により、Tokopediaはプラットフォームの拡充、技術革新、そしてサービスの多様化を進めることができました。特に、物流や決済システムの強化が進み、ユーザーエクスペリエンスの向上に繋がりました。

ウィリアム氏は、2014年10月に8年間付き合っていた彼女との婚約旅行として日本を訪れる予定でした。その際、偶然にもソフトバンクの孫正義から面談の依頼を受け、大阪でプロポーズを行った後に急遽スケジュールを調整して面会の機会を得ました。この面談を通じて、孫氏からTokopediaへの出資の意向が示され、後に約1億ドルの投資が実現しました。

孫正義は、Tokopediaへの投資について次のように述べています。

「インドネシアは、世界で最も急速に成長しているデジタル経済の一つであり、Tokopediaはその中心的な存在です。私たちは、Tokopediaがインドネシアのデジタル経済をさらに発展させると確信しています。」

Tokopedia（トコペディア）の事業内容とサービス内容

Tokopediaは、以下のような多岐にわたるサービスを提供しています。

オンラインマーケットプレイス

Tokopediaは、個人や中小企業が無料でオンラインストアを開設し、商品を販売できるプラットフォームを提供しています。商品カテゴリーは多岐にわたり、ファッション、電子機器、家庭用品、食品、手工芸品など、インドネシア特有の商品も豊富に取り揃えています。

デジタル製品とサービス

ユーザーは、携帯電話のクレジット、電気料金の支払い、ゲームバウチャーなどのデジタル商品やサービスを購入することができます。これにより、日常生活のさまざまなニーズをオンラインで完結させることが可能です。

金融サービス

Tokopediaは、電子ウォレット「OVO」との連携により、キャッシュレス決済サービスを提供しています。また、ローンや投資商品などの金融サービスも展開し、ユーザーの経済活動をサポートしています。

物流サービス

全国各地への商品配送をサポートするため、複数の物流パートナーと提携し、迅速かつ信頼性の高い配送サービスを提供しています。これにより、セラーとバイヤーの双方にとって利便性の高い取引環境を実現しています。

教育・研究開発

将来のデジタル人材を育成するための学習プラットフォーム「Tokopedia Academy」を開設し、インドネシア大学内に「Tokopedia AI Center」を設置するなど、教育・研究、技術開発にも積極的に取り組んでいます。

公式ストア（Official Store）

2019年に導入された「Official Store」では、国内外の約2000の厳選された公式ストアが参加しており、ユーザーは信頼性の高い商品を安心して購入することができます。日本企業のSenka（専科）やCezanne（セザンヌ）なども出店しています。

セールイベント

ラマダン期間中などの特定の時期には、大規模なセールイベントを開催し、最大90％の割引や送料無料キャンペーンを実施しています。これにより、ユーザーの購買意欲を高め、セラーの売上増加にも寄与しています。

スマートフルフィルメントサービス

「TokoCabang」は、セラーがインドネシア全土でビジネスを拡大するためのスマートフルフィルメントサービスであり、在庫管理や配送などの物流面でのサポートを提供しています。

シャリア対応サービス

「Tokopedia Salam」は、シャリア市場のニーズに対応するサービスであり、ウムラ（巡礼）サービスの提供や、ムスリム向けの商品・サービスの販売を行っています。また、シャリアに準拠した支払い方法や投資商品も提供しています。

これらの多岐にわたるサービスを通じて、Tokopediaはインドネシアのデジタル経済の発展に大きく貢献しています。

Tokopedia（トコペディア）の主要なマイルストーン

Tokopediaは、設立以来、多くの重要なマイルストーンを達成してきました。以下に、その詳細を時系列で紹介します。

2009年: ウィリアム・タヌウィジャヤ氏とレオナルド・カマジャヤ氏によって設立。
2010年: インドネシアのベンチャーキャピタル会社、East Venturesから初の資金調達を実施。
2011年: CyberAgent VenturesやNetPriceから追加の資金調達を受け、プラットフォームの機能拡充とマーケティングを強化。
2012年: SoftBank Ventures KoreaとSequoia CapitalからシリーズBの資金調達を実施し、事業拡大を加速。
2014年: SoftBank Internet and Media, Inc.（SIMI）とSequoia Capitalから1億ドルの資金調達を受け、インドネシア初のユニコーン企業となる。
2015年: 電子ウォレットサービス「TokoCash」を導入し、キャッシュレス決済の普及に貢献。
2017年: 中国のAlibaba Groupから11億ドルの投資を受け、技術力と市場シェアを大幅に強化。
2018年: 「TokoCash」を「OVO」と統合し、ユーザーにより便利な決済手段を提供。
2019年: 設立10周年を迎え、月間アクティブユーザー数が9,000万人を突破。
2021年: 配車サービス大手のGojekと合併し、新たに「GoTo」グループを設立。これにより、インドネシア最大のテクノロジープラットフォームが誕生。
2022年: GoToグループがインドネシア証券取引所に上場し、時価総額約280億ドルで取引を開始。
2023年12月: ByteDance（TikTokの親会社）がGoToからTokopediaの75.01%の株式を約15億ドルで取得し、Tokopediaの主要株主となる。

Tokopedia（トコペディア）の競合企業

インドネシアのEコマース市場は急速に成長しており、Tokopediaの主な競合企業として以下が挙げられます。

Bukalapak（ブカラパック）
インドネシアの大手ECプラットフォームで、特に小規模店舗やニッチな商品に焦点を当てています。2025年1月、競争激化により物理的な商品の販売を停止し、デジタル商品に特化する方針を発表しました。

Shopee（ショッピー）
シンガポール発のECプラットフォームで、インドネシア市場でも強い存在感を持っています。特にコロナ禍以降、急速にシェアを拡大し、Tokopediaの主要な競合となっています。

Lazada（ラザダ）
アリババグループ傘下のECプラットフォームで、東南アジア全体で展開しています。インドネシア市場でも一定のシェアを持ち、Tokopediaと競合しています。

Blibli（ブリブリ）
インドネシアのECプラットフォームで、総合型のオンラインショッピングサイトとして知られています。月間PV数は約4,593万回で、Tokopediaの主要な競合の一つです。

Tokopedia（トコペディア）とShopee(ショッピー)の熾烈な争い

Shopeeの戦略と影響

Shopeeは、インドネシア市場で積極的なプロモーション活動を展開し、ユーザー数と取引量の増加を実現しています。その結果、2023年のインドネシアのネット通販市場におけるShopeeのシェアは40%に達し、Tokopediaの30%を上回っています。

Tokopediaの対応と課題

Tokopediaは、Shopeeの台頭に対抗するため、物流ネットワークの強化やプロモーション活動の強化などの戦略を講じています。しかし、競争の激化により、利益率の低下やサービス品質の維持が課題となっています。

Gojekとの合併

Shopeeにシェアを奪われたTokopediaはGojekと合併しGoToとなり、物流や決済の連携で対抗し何とか地場であるインドネシアでのマーケットシェアをキープしています。

市場全体の競争状況

インドネシアのEコマース市場は急速に成長しており、ShopeeとTokopediaの競争はその象徴的な例です。他のプラットフォームも市場シェアを拡大しつつあり、競争はますます激化しています。

このような競争環境の中で、各企業は独自の戦略を展開し、市場での優位性を確立しようとしています。

Gojek(ゴジェック)との合併劇とGoToの誕生

Gojek（ゴジェック）とTokopedia（トコペディア）は、インドネシアの主要なテクノロジー企業として、それぞれ配車サービスとEコマースプラットフォームを提供していました。2021年5月17日に両社は合併し、新たな持株会社GoTo（ゴートゥ）を設立しました。この合併により、GoToは配車、フードデリバリー、Eコマース、金融サービスなど、多岐にわたるサービスを統合した「スーパープラットフォーム」となりました。

合併の背景と目的

Gojekは、シンガポールのGrabとの合併を検討していましたが、インドネシア市場での戦略的な方向性の違いから交渉が決裂しました。その後、Tokopediaとの合併交渉が進展し、両社の事業が相互補完的であることから合併が決定されました。

合併後の展開

合併後、GoToは2022年4月11日にインドネシア証券取引所に上場し、時価総額約280億ドルで取引を開始しました。その後、2023年12月にはByteDance（バイトダンス）がTokopediaの75.01%の株式を約15億ドルで取得し、TikTokとの連携が強化されました。

現在の状況

2024年第2四半期の決算では、GoToは70億ルピアの調整後の損失を計上し、前四半期の139億ルピアから改善しました。また、ネット収益は前年同期比で3%増の3.66兆ルピアとなり、プロフォーマベースでは115%の増加を記録しました。

GoToは合併後も積極的な事業展開と財務改善を進めており、インドネシアのデジタル経済における重要なプレイヤーとしての地位を確立しています。

Tiktok(バイトダンス)のTokopedia買収劇

TikTok（ティックトック）の親会社であるByteDance（バイトダンス）は、2023年12月にインドネシアの主要なEコマースプラットフォームであるTokopedia（トコペディア）の75.01%の株式を約15億ドル（約23.4兆ルピア）で取得しました。この取引により、ByteDanceはTokopediaの支配権を掌握し、インドネシアのデジタル経済における影響力を一層強化しました。

背景と経緯

この買収は、インドネシア政府がソーシャルメディアプラットフォーム上での直接的なオンラインショッピングを禁止したことを受けて行われました。TikTokは規制に適応するため、既存のEコマースプラットフォームとの統合を選択し、Tokopediaとの合併を決定しました。

取引の詳細

ByteDanceは、Tokopediaの新規発行株式38,198,745株を1株あたり345,246ルピアで取得しました。この価格は、2022年4月の親会社GoToの上場時の株価338ルピアや、2023年12月の取引時の86ルピアと比較して大幅に高い評価となっています。

影響と展望

この買収により、ByteDanceはインドネシアのEコマース市場でのプレゼンスを強化し、TikTok Shopの再開を可能にしました。また、GoToはTokopediaの24.99%の株式を保持し、引き続きEコマースサービス料金を通じて収益を得ることができます。

この戦略的な買収は、インドネシアのデジタル経済における競争環境を大きく変化させ、他のEコマースプラットフォームとの競争を一層激化させると予想されます。

Tokopedia（トコペディア）の過去に発生した問題

Tokopedia（トコペディア）は、インドネシアの主要なオンラインマーケットプレイスとして知られていますが、過去にはいくつかの課題や問題が報告されています。以下に主な事例を挙げます。

データ漏洩事件

2020年5月、Tokopediaはサイバー攻撃を受け、約1,500万人のユーザーの個人情報が漏洩しました。漏洩した情報には、性別、所在地、ユーザー名、氏名、メールアドレス、電話番号、ハッシュ化されたパスワードなどが含まれていました。攻撃者は、約9,100万件のデータを5,000ドルで販売すると主張していました。この事件を受けて、Tokopediaはパスワードなどの重要なデータは暗号化されており、決済情報は影響を受けていないと強調しました。また、政府機関やサイバーセキュリティ専門機関と連携し、セキュリティ強化に取り組んでいます。

模倣品の取り扱い

Tokopediaは、2018年から米国通商代表部（USTR）によって「模倣品市場」としてリストアップされています。これは、プラットフォーム上で模倣品や海賊版商品の取引が多いとされているためです。この状況は、ブランドオーナーや消費者からの信頼性に影響を与える可能性があります。

Tokopedia（トコペディア）がインドネシアの社会に与えた影響

経済のデジタル化促進

Tokopediaは、オンラインショッピングの普及を通じて、インドネシアの経済のデジタル化を加速させました。これにより、消費者と企業の取引が効率化され、経済活動の活性化に寄与しています。

中小企業の成長支援

中小企業や個人事業主がオンラインで商品を販売できるプラットフォームを提供することで、Tokopediaはこれらのビジネスの成長を支援しています。特に、地方の事業者が広範な市場にアクセスできるようになり、経済の多様化と地域経済の発展に貢献しています。

雇用創出とスキル向上

Tokopediaの成長に伴い、物流、カスタマーサービス、IT開発などの分野で新たな雇用機会が創出されました。また、デジタルスキルの向上を促進する教育プログラムを提供し、労働力のスキルアップにも寄与しています。

消費者行動の変革

オンラインショッピングの普及により、消費者の購買行動が変化しました。特に、若年層を中心に、デジタルプラットフォームを活用した購買が一般化し、消費文化の変革が進んでいます。

デジタル決済の普及

Tokopediaは、電子ウォレットやデジタル決済サービスの導入を通じて、キャッシュレス社会の実現を促進しました。これにより、金融包摂が進み、経済活動の効率化が図られています。

まとめ

設立から数年で、Tokopediaは数百万の中小企業と1億以上の商品を取り扱うまでに成長し、インドネシア全域にサービスを提供しています。特に、2014年にはソフトバンク・インターネット・アンド・メディア（SIMI）とセコイア・キャピタルから1億ドルの資金調達を受け、インドネシア初のユニコーン企業となりました。その後も、アリババグループからの11億ドルの投資を受けるなど、国内外の大手企業からの支援を受けて事業を拡大しています。

2021年5月には、配車サービス大手のGojekと合併し、新たに「GoTo」グループを設立しました。これにより、Eコマース、配車、フードデリバリー、金融サービスなど、多岐にわたるサービスを統合した「スーパープラットフォーム」となり、インドネシアのデジタル経済における地位を一層強化しました。

さらに、2023年12月にはByteDance（TikTokの親会社）がTokopediaの75.01%の株式を約15億ドルで取得し、TikTokとの連携が強化されました。これにより、TokopediaはTikTok Shopの再開を可能にし、インドネシアのEコマース市場での競争力を一層高めています。

これらの戦略的な提携と投資により、Tokopediaはインドネシアのデジタル経済の発展に大きく貢献し、今後もその成長と革新が期待されています。