9月 21, 2025 • インドネシア • by Erika Okada

インドネシアで広がりを見せる日本の牛丼YOSHINOYA(吉野家)

インドネシアで広がりを見せる日本の牛丼YOSHINOYA(吉野家)

有名日本食チェーンの東南アジア進出

近年、インドネシアを含む東南アジアでは、日本食飲食チェーンの拡大が顕著です。寿司、ラーメン、讃岐うどん、焼き鳥など、日本ならではの“手軽で高品質な和食”が、都市部の中間層層を中心に人気を博しています。日本での知名度と品質の信頼感を活かしつつ、ローカライズ・適応力を兼ね備えた企業が成功してきました。

こうした流れの中で、牛丼チェーンの王者・吉野家(YOSHINOYA) がインドネシアで再び存在感を強めています。なぜ今、吉野家が注目されるのか、どのように事業を進めているのかを、このブログ記事では詳しく見ていきます。

対象読者は、インドネシアに進出済み、または進出を検討している日本企業経営者やマネージャー、そのご家族です。現地の商習慣、成功要因、リスク、今後の展望まで、できるだけ具体的に記します。

 

吉野家(YOSHINOYA)の基本情報とインドネシア史

吉野家(YOSHINOYA)の基本情報とインドネシア史

吉野家の概要と国際展開

  • 吉野家は 1899年に東京・日本橋(魚市場近辺)で創業された牛丼専門店で、その迅速な提供方式と味付けが特徴でした。

  • 日本国内だけでなく、海外にも早期から展開し、香港、台湾、東南アジア、アメリカなど複数国で店舗を展開しています。

  • 吉野家ホールディングスの統合報告書(2022年版)では、インドネシアにおいても「100店舗超え」を達成し、着実な増加傾向にあることが言及されています。

  • 海外展開においては、現地人材の育成、メニューの地域適応、日本品質維持とのバランス、直営店舗とフランチャイズ展開のハイブリッド運営などが重要な方針とされています。

インドネシア市場への最初の試みと撤退、再進出

吉野家のインドネシアにおける歴史は、必ずしも順風満帆ではありません。

初回参入 → 撤退

  • 吉野家は 1990年代にインドネシアとフランチャイズ契約を結び、当初はジャカルタ・ポンドック・インダ(Pondok Indah Mall)で店舗を出しました。

  • しかし、1998年にその契約を終了・撤退したという記録があります。

  • 1990年代末には、アジア経済危機や現地運営上の課題が影響した可能性が考えられます。

再進出/本格拡大

  • 吉野家は 2009年に、インドネシア市場へ改めて参入する動きを始めます。

  • 2010年10月、ジャカルタのグランドインドネシア(Grand Indonesia Shopping Town)に第1号店をオープンしました。

  • 以後、都市部を中心に拡大を続け、2024年時点でインドネシア国内に 169 店舗を構えるまでに至っています。

  • インドネシア各地(ジャカルタ、スラバヤ、バンドン、デンパサール、スマラン、ジョグジャ、メダン、マランなど)に出店しています。

現時点では、インドネシア国内での存在感はかなり強くなっており、「日本の牛丼を手軽に食べられるチェーン店」として知名度を獲得しています。

PT. Multirasa Nusantara という現地運営会社

吉野家インドネシアの店舗運営を担っているのは、PT. Multirasa Nusantara という現地法人です。この会社は、インドネシア大手の飲食グループ PT. Eka Bogainti (Bakmi GM) の傘下にあり、吉野家のマスターフランチャイズ権を保有しています。
同社はジャカルタを中心に複数の外食ブランドを展開しており、強固な物流網・人材管理体制・商業施設とのネットワークを持っています。これにより、吉野家の店舗拡大をスムーズに進められる基盤を提供していると言えます。

価格帯とターゲット顧客層

  • 価格帯
     インドネシアの吉野家で提供される牛丼の価格は、1杯あたり 35,000〜55,000ルピア(約350〜550円相当) が中心帯です。セットメニュー(飲み物や揚げ物付き)にすると 60,000〜80,000ルピア(約600〜800円程度) になる場合もあります。これは、現地の平均的なワルン(大衆食堂)に比べると高めですが、ショッピングモールやチェーン系ファストフード店と比べると競争力のある価格設定です。

  • ターゲット層
     主なターゲットは、都市部に住む中間層以上の若者・ファミリー層・ホワイトカラー層 です。
    特に以下の層を意識していると考えられます。

    • ショッピングモールで休日を過ごすファミリー層

    • 学生や若手社会人(手軽に“日本の味”を楽しみたい層)

    • 日本ブランドに対して好感・安心感を持つ中間層以上の消費者

    • ファストフードよりは少し上の体験を求める外食ユーザー

価格帯とターゲティングを総合すると、吉野家は「高級和食店」ではなく「日常的に利用可能な外食の選択肢」として位置づけられていることが分かります。

吉野家インドネシアの現状:数字と展開状況

  • 2024年時点で 169 店舗。

  • ジャカルタ、スラバヤ、バンドン、メダンなど主要都市に展開。

  • 新規出店も続き、ジャカルタ東部や地方都市でも積極展開中。

 

インドネシア市場での吉野家(YOSHINOYA)の戦略と工夫

単に日本と同じ業態を持ち込むだけでは通用しないのが海外飲食事業。吉野家がインドネシアで成功を重ねている背景には、いくつかの戦略と工夫があります。

1. ハラール認証とイスラム慣習への対応

インドネシアは世界最大級のムスリム(イスラム教徒)人口を抱える国です。そのため、飲食業において「ハラール(halal=イスラム法に基づく食材・製法)」対応は必須条件のひとつと言えます。

  • インドネシアの吉野家では、材料と調理工程をハラールに準拠させることで、ムスリム消費者の信頼を得ています。

  • また、インドネシア政府・宗教機関(MUI = Majelis Ulama Indonesia)などとの協調や認証取得も重要な要素になっていると見られています。

  • ハラール対応だけでなく、現地の味覚・食文化を多少取り入れる(たとえば辛味、ペッパー系のメニュー導入など)ことでローカライズを図っています。

このように、宗教・文化の前提を無視せず、かつ日本的品質を損ねない形でハラール適合を実現している点が、吉野家成功の大きな鍵です。

2. メニューの最適化・限定メニュー導入

日本ですべての原型メニューをそのまま持ってきても、価格・食材調達・現地顧客の嗜好という壁にぶつかります。吉野家はインドネシアで以下のような「ローカル化」と「付加価値深化」を行っています。

  • 一部メニューの追加・変形
     たとえば、インドネシアの支店では、日本にはない揚げ物やシーフード系サイドメニューを組み込むことがあります。

  • 辛味やペッパーを活かしたメニュー
     比較的スパイス・胡椒を好む東南アジア圏向けに、ブラックペッパービーフなどの味付けが導入されています。

  • 飲料やサイド・付加価値商品の強化
     グリーンティーの無制限提供や揚げ物セットなどを拡充することで客単価アップを図る工夫もあります。

  • 店舗形態のバリエーション
     基本の牛丼屋スタイルだけでなく、「Cooking & Comfort(C&C)」という改装型モデルや、讃岐うどん「Hanamaru」ブランドによる展開も視野に入れています。

  • SNS映え・店舗体験重視型の内装
     日本風+写真映えを意識した空間づくりでSNS拡散を促す戦略も取られています。

これらの工夫により、「ただ日本の牛丼を出す店」から、「現地消費者に受け入れられる、新しい日本風飲食ブランド」へと進化しています。

3. フランチャイズ戦略と拡張モデル

マスターフランチャイズ形式

  • 吉野家は通常、国別にマスターフランチャイズ契約を結び、現地法人が権利を持つ形を取ります。

  • この方式ではブランド管理をしやすい反面、現地パートナーの経営能力と資金力が成功の鍵となります。

自社運営と直営店舗のバランス

  • フランチャイズ店だけでなく直営店も併用することで品質管理を維持しています。

  • 直営店で確立したノウハウをフランチャイズ店へ横展開しています。

出店ロケーションと展開ペース

  • モール内や交通の便が良い場所を優先しつつ、郊外都市にも拡大。

  • 急速に店舗数を増やすことで知名度とブランド力を強化しています。

4. サプライチェーン構築と現地調達

  • ローカル食材を積極的に活用し、輸入食材に依存しすぎない体制を整備。

  • 牛肉や調味料など一部は輸入を維持しつつ、検疫・通関リスクを管理。

  • 冷凍・冷蔵物流網を確立して品質を維持しています。

5. マーケティング戦略とブランド構築

  • 「日本発・牛丼ナンバーワン」ブランド訴求

  • SNS誘発施策とインフルエンサー活用

  • ショッピングモール立地戦略

  • 現地企業とのコラボや共同開発

こうした施策により、吉野家は「単なる海外チェーン」ではなく「信頼できる日本ブランド」として浸透を目指しています。

 

まとめ

吉野家は1899年の創業以来、日本国内だけでなく、海外にも広がりを見せてきました。特にインドネシア市場においては、2009年の再進出以降、順調に店舗数を増加させています。その成功の理由は、インドネシアという文化的に多様な市場に適応し、ハラール認証やローカライズされたメニューの提供など、現地の消費者に親しまれる形でサービスを展開している点にあります。また、フランチャイズを活用しつつ直営店も維持し、品質とブランド力を保ちながら拡大を進めています。

今後、吉野家は更なる地域拡大と新たな商品開発を進め、インドネシア市場での存在感をより一層強化することが予測されます。しかし、競争が激化する中で持続的な成長を遂げるためには、常に消費者ニーズの変化に対応し、革新を続ける必要があるでしょう。

 

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本記事で使用した単語の解説

  • ハラール(Halal): イスラム法に基づき、ムスリムが食べてよいとされる食べ物や製品。インドネシアは世界最大のムスリム人口を抱える国であり、飲食店においてハラール対応は必須である。

  • ローカライズ(Localization): 商品やサービスを現地の文化や嗜好に合わせて適応させること。吉野家では、現地の消費者に合わせたメニューや店舗デザインを採用している。

  • フランチャイズ(Franchise): 一定のブランドやノウハウを提供し、現地の事業者に運営を任せるビジネスモデル。吉野家はインドネシアにおいてマスターフランチャイズ方式を採用している。

  • 直営店舗: 企業が直接運営している店舗。吉野家は、フランチャイズ店舗と並行して直営店も展開している。

 

FAQ(よくある質問)

1. 吉野家がインドネシア市場で成功した理由は何ですか?

吉野家がインドネシア市場で成功した主な理由は、現地の文化や食習慣に合わせたローカライズと、ハラール対応によるムスリム層への配慮です。また、競争力のある価格設定や店舗の立地選定、さらにフランチャイズと直営店舗のバランスを取った経営戦略が功を奏しました。

2. 吉野家のインドネシアでの価格帯はどのくらいですか?

吉野家のインドネシアにおける牛丼は、1杯あたり 35,000〜55,000ルピア(約350〜550円) が一般的な価格帯です。セットメニュー(飲み物や揚げ物付き)は 60,000〜80,000ルピア(約600〜800円) となります。現地の大衆食堂に比べるとやや高めですが、ファストフードチェーンと比べると手頃な価格です。

3. 吉野家はどのような顧客層をターゲットにしていますか?

吉野家の主なターゲットは、都市部に住む中間層以上の若者、ファミリー層、ホワイトカラー層です。特に、ショッピングモールで過ごすファミリー層や、仕事の合間に手軽に日本の味を楽しみたい若手社会人を意識したメニュー展開をしています。

4. 吉野家のインドネシア市場での展開はどこにありますか?

吉野家はインドネシア国内で ジャカルタ、スラバヤ、バンドン、メダン など主要都市に展開しています。また、地方都市や新興地域にも積極的に店舗を拡大しており、今後もさらなる出店が期待されています。

5. 吉野家はインドネシアでどのような商品を提供していますか?

吉野家は基本的な牛丼メニューに加え、揚げ物やシーフードのサイドメニューや、ブラックペッパービーフなど現地の嗜好に合わせた商品も提供しています。また、無制限グリーンティーや特定メニューのセットなど、付加価値を高める商品展開も行っています。

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