9月 14, 2025 • インドネシア • by Erika Okada

インドネシアで圧倒的な存在感を見せる日本のエアコンDAIKIN

インドネシアで圧倒的な存在感を見せる日本のエアコンDAIKIN

インドネシアでエアコン市場が拡大する中、日本のダイキン(DAIKIN)は現地生産・省エネ技術・全国規模のアフターサービスを武器に、住宅から商業施設まで幅広い領域で存在感を強めています。本記事では、インドネシアの市場環境、製品カテゴリ別の動向、ダイキンの競争優位、規制や冷媒転換といった制度面、そして進出企業が実務で押さえるべきポイントをまとめました。

 

1 インドネシアAC市場のいま

エアコン市場シェアと競合の視界

1-1 市場規模と成長ドライバー

インドネシアのAC市場はこの数年で確実に「量と質」を伴って拡大しています。調査各社の測定レンジ(家庭用/業務用、HVAC全体/AC単体、売上/台数など)は異なりますが、総じて「堅調な成長」が共通した見立てです。ドライバーは明瞭です。

  • 熱帯気候と都市ヒートアイランドの深刻化

  • 都市部の集合住宅・商業施設の新増設

  • 中間層の拡大と可処分所得の上昇

  • 効率規制・省エネ志向の浸透

  • 送配電インフラの改善と電化の進展

住宅ではスプリット型の普及が進み、商業ではVRF/マルチ、チラーなどの案件が伸びています。家計側の「快適性」志向と、法人側の「省エネ・LCC(ライフサイクルコスト)」志向が同時進行している、というのが現在地です。

1-2 製品カテゴリと技術トレンド

  • 住宅:壁掛けスプリット(インバータ)中心。R-32等の低GWP冷媒、静音、空気清浄・除湿の付加機能、スマホ連携が差別化軸。

  • 商業:VRF/マルチ、天カセ、ダクト、パッケージ。部分負荷効率、BEMS連携、保守運用の見える化が評価軸。

  • 共通潮流:省エネ、冷媒転換、IoT/遠隔監視、予知保全、長期保証・定期点検のサブスク化。

 

 

2 ダイキンの「強さ」の源泉

ダイキンの「強さ」の源泉

2-1 半世紀の蓄積から現地生産へ

ダイキンは長年インドネシアで販売・サービスを展開してきましたが、2022年に住宅用ACの現地工場建設を決定。ジャカルタ近郊のGIIC(グリーンランド・インターナショナル・インダストリアル・センター)に生産拠点を置き、2025年5月に量産を正式稼働させました。現地生産は輸送・為替・関税のコスト感応度を下げ、リードタイムと品揃え柔軟性を高める打ち手です。さらにASEAN域内輸出のハブ化も織り込み、ボリューム・コスト・スピードを同時に取りにいく設計になっています。

2-2 技術・ブランド・サービスの三位一体

  • 技術:インバータ、高効率熱交換、騒音低減、快適制御、R-32などの冷媒対応。

  • ブランド:日本品質への信頼、長期運用での実績。

  • サービス:全国に広がる施工・修理・部品供給網と保証制度。

ACは「買って終わり」ではありません。設置品質、初期不良対応、定期洗浄、修理パーツ供給、故障時の駆け付け速度——こうした地味だが本質的な運用要素が、口コミと指名買いを生みます。ダイキンの強みはプロダクト単体ではなく、この三位一体の総合力にあります。

2-3 現地工場の意味——価格競争だけではない

現地生産は単に安く作るためではありません。

  1. 調達の現地化でサプライチェーンの弾力性を高める

  2. 需要変動に合わせた短サイクルの生産計画

  3. ローカル市場向け仕様の迅速な反映(電圧・湿度・塩害・粉塵など)

  4. 政策適合(SNI等の国内標準、TKDN、効率基準、冷媒規制)への先回り対応

これらが重なることで、価格以外の競争軸(納期・適合性・アフターサービス一体化)を強くできます。

 

3 エアコン市場シェアと競合の視界

エアコン市場シェアと競合の視界

3-1 前提:なぜ「単一のシェア数字」に飛びつかない方がよいのか

インドネシアのAC市場は「地域」「価格帯」「用途(住宅/商業)」「台数ベース/金額ベース」「新設/置換」「販売チャネル(リテール/プロジェクト)」で姿が大きく変わります。よって「全国シェア=1つの数字」で意思決定するのは危険です。まずは切り口を分解し、目的(販路開拓/機種戦略/パートナー選定/入札)に合わせて見る――これが実務のコツです。

3-2 最新の“見取り図”:ダイキンの現在地

  • 住宅用スプリット中心のマス市場では、ダイキンは「日本品質×省エネ(インバータ)×アフターサービス」で中~中高価格帯を厚く取る戦術が基本線。近年は現地生産の本格稼働により供給の安定・納期・価格柔軟性が増し、量の土台が強化されました。

  • 報道ベースでは、国内シェアおおむね4分の1前後という水準が語られています(年・ソースで振れあり)。一方、商業案件(VRF/パッケージ/チラー)では、設計・施工網・保守品質の「面」で競り、案件ごとの波が出やすいのが実態です。

  • 製品力×サービス網×現地生産の三点セットが揃ったことで、「価格競争だけに引きずられない」ポジションを確保しつつ、地方・プロジェクト領域の取り合いで増分を狙う構図になっています。

3-3 カテゴリ別:どこで勝ち、どこが拮抗か

住宅(ルームAC/スプリット)

  • 量の主戦場。都市部の新築・改装、地方の初導入・置換えが同時進行。

  • 差別化軸:インバータ効率、静音・除湿、空気清浄、耐環境性(塩害・粉塵)、清掃・洗浄性、Wi-Fi連携。

  • ダイキンの強み:省エネ・快適制御と据付品質、保証・保守メニュー。弱点になりやすい点は“最安値帯”の価格勝負ゾーンで中国・ローカル勢の攻勢。

商業(VRF/マルチ、パッケージ、チラー)

  • 設計・施工・BEMS連携・保守運用まで長いバリューチェーンで戦う領域。

  • ダイキンはグローバルの施工知見・機種層の厚みで競う。競合(日韓勢)は案件パートナー連携や価格・保守SLAで対抗。

  • 勝ち筋:部分負荷効率、予知保全、SLA(駆け付け・一次解決率)、備品・部品供給の“詰め”。

3-4 地域別:ジャワ中心から“多島国家”全土へ

  • ジャワ島(Jabodetabek 等):リテールもプロジェクトも案件厚い。競争も最激戦区。

  • スマトラ/カリマンタン/スラウェシ:普及余地が大きく、販売・保守拠点の実効性がシェアに直結。

  • 海沿い・工業地帯:塩害・粉塵・高湿度への耐性が選定基準を左右し、実機寿命と保守性が口コミを作る。

3-5 価格帯別:ミドル~ミドルハイでの厚み

  • エントリー~低価格帯:新興・ローカル・中国系の専業が強く、販促・インセンティブ厚め。

  • ミドル帯:ダイキンの主戦場。高効率×体感快適×運用コストの説得力で選ばれやすい。

  • プレミアム帯:高付加価値機能・静音・デザインで選定。台数は少なくとも金額シェアで効いてくる。

3-6 チャネル別:リテール vs. プロジェクト

  • リテール(家電量販・専門店・EC):設置品質と初期不良対応の速さが“星”と口コミに反映。延長保証・定期洗浄の提案力も重要。

  • プロジェクト(デベロッパー・EPC・設計事務所・設備会社):図面フェーズからの伴走、代替案提示、施工性・保守性の説明責任。コストだけでなくLCC(ライフサイクルコスト)での比較資料が必須。

3-7 競合マップと各社の打ち手

  • 日本勢(Panasonic/Mitsubishi Electric/Sharp):品質・信頼・据付の堅実さ。VRFや業務用で強い案件筋を多数保有。

  • 韓国勢(LG/Samsung):家電横断のブランド力、IoT連携・UI体験での訴求、プロモーションの巧さ。

  • 中国勢・ローカル価格攻勢と在庫機動力、設置込みパッケージのバリュー。地方での食い込みが速い。

  • ダイキン:現地生産で供給・納期・価格柔軟性が上がり、SLA・保守部材の安心感で中長期満足を取りに行く。

 
 

まとめ

インドネシアのAC市場は、熱帯気候と都市化、所得上昇、送配電インフラの改善を背景に中期的な拡大が見込まれ、住宅のスプリット型から商業のVRF・チラーまで需要の裾野が広がっている。こうした環境下でダイキンは、長年の販売・サービス基盤に現地工場の量産体制を重ねることで、供給安定・短納期・価格柔軟性を獲得し、技術・ブランド・アフターサービスを束ねた総合力で競争優位を築いている。市場シェアは単一の全国値よりも、地域・用途・価格帯・チャネルで分解して捉えるのが実務的であり、マス市場では省エネ性と据付品質、商業案件では部分負荷効率やBEMS連携、SLAといった運用価値が採否を左右する。さらにSNIや効率ラベル、TKDN、低GWP冷媒への移行など制度面の要請が強まるなか、設計・施工・保守を一体にした先回り対応が、入札競争力や長期満足度の差となる。設備選定では初期費用にとどまらずLCCを軸に電力費・点検修理・ダウンタイムまで含めて比較し、帯同家族の住環境においても遮熱・断熱、室外機の設置条件、定期メンテナンスを意識することで、快適性と省エネを両立できる。総じて、ダイキンは「価格だけに依存しない価値提案」を現地化によって強めつつあり、インドネシア市場での存在感は今後も厚みを増していくと見通される。

 

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本記事で使用した単語の解説

  • AC(Air Conditioner)
    空調機(主に冷房機)を指す一般語。本記事では家庭用・業務用を含む。

  • スプリット型
    室内機と室外機が分かれた一般的な家庭用エアコン。設置自由度と静音性が高い。

  • インバータ
    圧縮機の回転数を可変制御し、必要出力に合わせて運転する方式。省エネ・快適性・静音性に優れる。

  • VRF(Variable Refrigerant Flow)/ マルチ
    1台の室外機で複数室内機を制御する商業向けシステム。部分負荷効率が高く、ビル用途に多い。

  • チラー
    冷水を作り各フロアや機器へ循環させる中央空調。大規模施設向け。

  • BEMS(Building Energy Management System)
    建物の空調・照明等のエネルギーを計測・制御するシステム。省エネ・ピーク抑制に有効。

  • LCC(Life Cycle Cost)
    初期費・電力費・点検・修理・更新・停止損失など、導入から廃棄までの総費用。設備選定の基準。

  • 低GWP冷媒(例:R-32)
    地球温暖化係数が相対的に低い冷媒。規制・環境対応で採用が進む。

  • SNI(Standar Nasional Indonesia)
    インドネシア国家規格。適合性や効率基準の順守が求められる。

  • TKDN(Tingkat Komponen Dalam Negeri)
    国内調達比率。政府・準公共案件で要件化されることがある。

  • SLA(Service Level Agreement)
    駆け付け時間や一次解決率など、保守サービスの品質基準を定めた取り決め。

  • 予知保全
    センサーや運転データを使って異常を早期検知し、故障前に整備する保全手法。

 
 

FAQ(よくある質問)

Q1:インドネシアでダイキンが選ばれる主な理由は何ですか。
A:省エネ性と快適制御などの技術力、日本品質への信頼、全国的なアフターサービス、そして現地工場の量産化による供給安定・納期短縮が重なり、総合力で選ばれています。

Q2:最安価格帯を狙うならダイキン以外が有利ですか。
A:極端なエントリー価格帯は他社が強い場合もあります。ただし長時間運転が前提のインドネシアでは、電力費や保守費まで含めたLCCで比較すると、ダイキンの高効率機が有利になるケースが多くあります。

Q3:商業施設やオフィスでの採用ポイントは。
A:VRFやチラーの場合、部分負荷効率、BEMS連携、予知保全、SLA、部品在庫体制など、運用フェーズの信頼性が鍵です。設計段階からベンダーと連携し、LCCで比較しましょう。

Q4:規制対応で注意すべきことは。
A:SNI適合と効率ラベル、低GWP冷媒への対応、TKDN要件の確認が重要です。制度変更のリードタイムを見越し、機種切替と施工・保守の教育計画を前広に準備してください。

Q5:帯同家族が住まい選びで見るべきACの観点は。
A:遮熱・断熱、直射の当たり方、室外機の設置環境(塩害・粉塵・騒音)、契約電力、そして清掃・洗浄のしやすさです。月1回のフィルタ水洗い、年1回のプロ洗浄が快適と省エネに効きます。

Q6:ダイキンの現地生産は価格以外にどんなメリットがありますか。
A:短納期化、需要変動への追従、ローカル仕様の迅速反映、規制適合の先回り、サプライチェーンの弾力化など、運用面の価値が大きいです。

Q7:地方や沿岸部での耐久性はどう確保すべきですか。
A:塩害・粉塵・高湿度対策の仕様選定、室外機の設置環境配慮、定期点検サイクルの短縮、部品在庫と駆け付けSLAの確認が効果的です。

Q8:最終的な設備選定の決め手は何ですか。
A:単価ではなく、LCCと運用リスク(停止損失、故障率、復旧時間)まで含めた総合評価です。設計・施工・保守を一体で比較し、社内の省エネ・保全KPIに結び付けると失敗が減ります。

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