4月 12, 2025 • 特定技能・技能実習, インドネシア
7月 11, 2026 • インドネシア • by Yutaka Tokunaga
目次
官民ファンド「クールジャパン機構」は2015年、SKY Perfect JSATとともに、海外向け日本専門チャンネル「WAKUWAKU JAPAN」の拡大に向けて投資を決定しました。
当時の計画では、総投資額は110億円。そのうちCool Japan Fundが44億円、SKY Perfect JSATが66億円を出資する形でした。
この金額だけを見ると、かなり本気の国家的プロジェクトだったことがわかります。
しかし、そのWAKUWAKU JAPANは、2022年3月31日に放送を終了しました。
インドネシアで長くビジネスをしている方の中にも、「そういえば、あれ終わっていたのか」と思う人は少なくないかもしれません。
今回は、インドネシアのWAKUWAKU JAPANとは何だったのか、なぜうまくいかなかったのか、そしてクールジャパン政策の失敗から何を学べるのかを整理してみます。
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WAKUWAKU JAPANは、日本のテレビ番組や日本文化を海外に届けるための日本専門チャンネルでした。
日本のドラマ、アニメ、映画、音楽、スポーツ、旅行番組、文化紹介番組などを、現地語字幕や吹き替えで放送していました。
インドネシアでは2014年に放送が始まり、MNCグループ系の有料テレビサービスなどを通じて視聴できる形でした。
狙いはわかりやすいものでした。
日本の番組を見てもらう。日本への関心を高める。日本旅行、日本食、日本の商品、日本の地方、日本企業への興味につなげる。
つまり、テレビ番組を入口にして、日本全体のファンを増やそうとしたわけです。
構想としては、決しておかしくありません。
問題は、その方法がインドネシア市場に合っていたのか、という点です。
インドネシアは、WAKUWAKU JAPANにとって重要な初期市場でした。
理由は明確です。
人口が多い。若年層が多い。経済成長が期待されている。日本に対する好感度も比較的高い。アニメ、特撮、日本食、日本旅行、日本語学習に関心を持つ人もいる。
日本側から見れば、インドネシアは日本コンテンツを広げる有望市場に見えたはずです。
しかし、ここに大きな落とし穴があります。
「日本に興味がある人がいる」、「日本が好きな人が多い」ことと、「日本専門の有料テレビチャンネルが継続的に見られ、事業として成立する」ことは、まったく別の話です。
日本が好きな人がいるから、日本の番組専門チャンネルも見られるはず。
この考え方は、少し甘かったようです。
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WAKUWAKU JAPANの一番大きな問題は、有料テレビチャンネルを中心にしたモデルだったことです。
2014年当時は、有料テレビにもまだ成長の余地がありました。
しかし、その後のインドネシアでは、スマートフォンとインターネットが一気に普及しました。
YouTube、TikTok、Instagram、Netflix、Viu、Disney+ Hotstar、Vidioなどが広がり、視聴者はテレビの前でチャンネルを選ぶより、スマートフォンで好きな動画を見るようになりました。
WAKUWAKU JAPANは、テレビ時代の発想で作られた事業でした。
しかし、インドネシアの視聴者は、すでにスマートフォン時代へ移っていました。
テレビチャンネルは、視聴者に自分で探してもらう必要があります。
決まった時間に見る必要があります。
一方、YouTubeやTikTokは、アルゴリズムが勝手に動画を視聴者の前に運んできます。
自分の好きな時に好きな動画を見れます。
この差はかなり大きかったと言えるでしょう。
WAKUWAKU JAPANには、日本側によくある考え方が見えます。
日本には良いコンテンツがある。日本には良い文化がある。だから、それを海外に届ければ、海外の人も好きになってくれる。
この考え方は、半分正しく、半分危険です。
日本のアニメ、漫画、ゲーム、日本食、観光には確かに魅力があります。
しかし、海外市場では「良いもの」だけでは売れません。
現地の生活に合っているか。価格が合っているか。見つけやすいか。買いやすいか。SNSで話題にしやすいか。友人に共有したくなるか。
ここまで設計しなければ、市場には広がりません。
日本の良さを見せるだけでは足りないのです。
WAKUWAKU JAPANは、日本番組をインドネシア語で届けました。
これは重要です。
しかし、本当のローカライズは翻訳だけではありません。
インドネシア人がどのようなテンポの番組を好むのか。どのような出演者に共感するのか。どのSNSで話題になるのか。家族で見るのか、一人でスマホで見るのか。宗教的・文化的にどのような配慮が必要なのか。日本の番組に字幕を付けて流すだけでは、インドネシア人の生活の中に深く入り込むのは難しかったのだと思います。
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WAKUWAKU JAPANは、単なるテレビチャンネルの失敗ではありません。
クールジャパン政策の弱さをよく表した事例でもあります。
クールジャパンとは、日本の文化、食、観光、コンテンツ、商品、サービスなどを海外に広げようとする政策です。
方向性そのものは間違っていません。
実際、日本のアニメ、漫画、ゲーム、日本食、訪日観光には大きな力があります。
問題は、日本側が「日本の魅力」を自分たちで定義し、それを海外に届ければ受け入れられると考えてしまうことです。
ここを間違えると、Cool Japanは「日本の良いものを見せてあげる」政策になってしまいます。
しかし、海外の消費者は日本を応援するためにお金を払うわけではありません。
自分にとって便利か、楽しいか、安いか、かっこいいか、かわいいか、信頼できるかで判断します。
WAKUWAKU JAPANだけでなく、Cool Japan Fund全体も厳しい評価を受けています。
報道では、2026年にはCool Japan Fundの累積損失が540億円規模に達し、廃止や統合が検討されているとも報じられています。
もちろん、投資ファンドである以上、すべての案件が成功するわけではありません。
しかし、問題は「失敗した投資があった」ことではありません。
市場理解が甘いまま大きな資金を入れたこと。日本ブランドへの期待が強すぎたこと。
現地で本当に売れる仕組みを作り切れなかったこと。
撤退判断や改善サイクルが遅くなりやすかったこと。
様々な問題があります。
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クールジャパンの失敗例としてよく挙げられるのが、マレーシアのIsetan The Japan Storeです。
これは、クアラルンプールに日本のライフスタイルを発信する商業施設を作る構想でした。
Cool Japan Fundは、Isetan Mitsukoshi Holdingsとともに、約970000000円を投資する計画を発表しました。
日本の食品、ファッション、化粧品、雑貨、インテリア、伝統工芸などを紹介し、日本企業の海外展開を支援する狙いがありました。
しかし、需要は十分に伸びませんでした。
報道では、同店は2017年に約4500000ドルの損失を出し、Cool Japan Fundは最終的に株式をIsetan Mitsukoshi側へ売却したとされています。
この事例が示しているのは、「日本らしいものを集めれば売れる」という考え方の限界です。
現地の消費者にとって、価格は合っていたのか。日常的に買う理由はあったのか。ハラル対応や商品構成は十分だったのか。ローカル競合と比べて選ばれる理由はあったのか。
そこまで詰めなければ、どれだけ日本らしい空間を作っても、商売としては厳しくなります。
Anime Consortium Japanも、Cool Japan関連の象徴的な案件の一つです。
日本のアニメを海外に公式配信し、海賊版対策や海外市場拡大につなげることを目指したプロジェクトでした。
日本アニメは海外で強いコンテンツです。方向性としては理解できます。
しかし、これも簡単ではありませんでした。
海外の動画配信市場には、Netflix、Crunchyroll、YouTube、各国ローカル配信サービスなど、多くの競合があります。
重要なのは、作品の強さだけではありません。アプリの使いやすさ、価格、字幕品質、配信スピード、決済のしやすさ、コミュニティ、マーケティングも必要です。
日本側が「公式配信です」と言っても、ユーザーは便利で見やすい場所を選びます。
正しいだけでは勝てません。
市場は道徳の授業ではなく、ユーザー体験の競争です。
WAKUWAKU JAPAN、Isetan The Japan Store、Anime Consortium Japanには、共通する問題があります。
日本側が「日本の良いもの」を中心に考えすぎたことです。
日本の番組だから見られる。日本の商品だから買われる。日本のアニメだから使われる。日本の百貨店だから信頼される。
この考え方は、入口としては間違っていません。
しかし、実際にビジネスとして成立させるには
現地の人が自分のお金と時間を使う理由を作らなければなりません。
日本ブランドは確かに強みになります。しかし、それはスタート地点であって、ゴールではありません。
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インドネシアでは、日本に対する信頼や好感はあります。
しかし、それだけでは売れません。
インドネシアの消費者には無料と百円では大きな違いがあります。
日本ブランドは入口にはなりますが、決定打にはなりません。
WAKUWAKU JAPANも、「日本の番組です」だけでは不十分でした。
日本企業が海外進出で失敗しやすい理由の一つは、日本で成功したものをそのまま持ってくることです。
日本でうまくいった商品やサービスでも、インドネシアではそのまま通用しないことがあります。
価格を変える。広告表現を変える。販売チャネルを変える。決済方法を変える。宗教や文化に配慮する。
全て現地の方の目線で見直すところから始める必要があるでしょう。
WAKUWAKU JAPANや一部のCool Japan案件のような大きな構想は、見た目は魅力的です。
しかし、インドネシア市場では、最初から大きく張るより、小さく試し、数字を見て改善する方が現実的です。
まず小さなターゲットに絞る。SNSで反応を見る。広告表現を試す。価格をテストする。顧客の行動を確認する。うまくいったものだけ拡大する。
このような仮説検証型の進出が重要です。
実際に私も子供向けのITスクールを70拠点以上インドネシアで展開していますが
まずは無料のボランティアでトライアルをして
その後に有料の教室を小さな投資額でスタートし
自社の教室の取り組みがうまく行ってからフランチャイズ展開
というように小さな成功と失敗を繰り返しながら広げていきました。
Timedoorアカデミー教室で子供たちと
システム開発、IT教育事業、日本語教育および人材送り出し事業、進出支援事業
WAKUWAKU JAPAN
日本のテレビ番組や日本文化を海外向けに放送していた日本専門チャンネルです。インドネシアでは2014年に始まり、2022年に終了しました。
Cool Japan
日本の文化、食、観光、コンテンツ、商品、サービスなどを海外に広げようとする政策や考え方です。
Cool Japan Fund
Cool Japan関連事業に投資する官民ファンドです。日本の商品やサービスの海外展開を支援する目的で設立されました。
累積損失
過去から現在までに積み上がった損失の合計です。単年度の赤字ではなく、複数年にわたる損失の累計を指します。
OTT
インターネットを通じて動画コンテンツを提供するサービスのことです。Netflix、Viu、Disney+ Hotstar、Vidioなどが代表例です。
ローカライズ
商品やサービスを現地市場に合わせることです。翻訳だけでなく、文化、価格、販売方法、広告表現、ユーザー体験まで含みます。
WAKUWAKU JAPANは今もインドネシアで見られますか?
現在は見られません。WAKUWAKU JAPANは2022年3月31日に放送とライブ配信を終了しました。
Cool Japan FundはWAKUWAKU JAPANにいくら投資したのですか?
2015年の計画では、WAKUWAKU JAPANへの総投資額は110億円で、そのうちCool Japan Fundが44億円、SKY Perfect JSATが66億円を出資する予定でした。
WAKUWAKU JAPANの最大の敗因は何ですか?
有料テレビチャンネルを中心にしたモデルが、スマートフォン、SNS、OTTの時代に合わなくなったことです。加えて、現地化不足や収益モデルの重さも影響しました。
Cool Japan Fundはどれくらい損失を出しているのですか?
英語報道では、Cool Japan Fundの累積損失は2024年度末時点で383億円、2026年には540億円規模に達したと報じられています。
WAKUWAKU JAPAN以外の失敗例はありますか?
代表例として、マレーシアのIsetan The Japan StoreやAnime Consortium Japanがあります。どちらも日本の文化やコンテンツを海外に広げる狙いはありましたが、現地需要や収益性に課題がありました。
日本コンテンツはインドネシアでまだ可能性がありますか?
可能性はあります。アニメ、漫画、ゲーム、日本語学習、日本旅行、日本食などには今も需要があります。ただし、テレビチャンネル型ではなく、SNS、動画配信、イベント、EC、コミュニティを組み合わせる必要があります。