4月 20, 2025 • インドネシア • by Yutaka Tokunaga

#KaburAjaDuluムーブメントは良いことか?若者の“脱出”がインドネシアの飛躍を導く鍵になる可能性

#KaburAjaDuluムーブメントは良いことか?若者の“脱出”がインドネシアの飛躍を導く鍵になる可能性

Kabur ajaムーブメントは良いことか?若者の“脱出”がインドネシアの飛躍を導く鍵になる可能性

 

#KaburAjaDuluとは何か?

いま、インドネシアの若者の間で広がっている言葉が「Kabur aja(逃げちゃえ)」です。就職難、教育の質の低さ、政治への不信、経済格差——これら複合的な理由から、「この国にいても未来がない」と感じ、海外への移住や就労を志す人が増え続けています。

しかし、「逃げる」ことは本当に悪いことなのでしょうか?

これを単なる「ブレイン・ドレイン(頭脳流出)」として悲観したり嘲笑するのはよくありません。このムーブメントを“逆手”に取ることこそ、インドネシアが次のステージに進む鍵かもしれません。私はKabur ajaは、絶望の合図ではなく、未来を開く入口になりと考えています。

 

1:「なぜ若者は逃げたがるのか?」——国内の構造的問題

インドネシア国内には、確かに若者が「残りたい」と思えるだけの環境が整っていません。

  • 多くの仕事は低賃金かつ単純労働に集中しており、その層の人材は大量にいるので賃金が上がらない。
  • 教育と実務スキルのミスマッチにより、企業も「使える人材がいない」と感じている
  • 政府の政策に効果を感じられるものがなく、汚職やbureaucracyも強く、若者の不信感が高まっている。

結果として、「やる気や能力のある人ほど報われない」構造が広がり、優秀な若者が国外に目を向けるのは当然とも言えます。

 

 

2:「逃げる」は学びの旅でもある——中国・インドの先行事例

中国やインドも、かつては今のインドネシアと同じように、多くの若者が「この国にはチャンスがない」と海外に飛び出していきました。

しかし、彼らはただ逃げただけではありません。

  • 海外で学び、スキルを身につけ
  • 世界での価値観やシステムを理解し
  • 帰国後に社会を変える存在へと成長したのです。

中国では、こうした人材を「海亀(Hai Gui)」と呼び、国家が帰国を支援し、イノベーションの担い手として迎え入れました。

インドでは、シリコンバレーで働いたエンジニアや起業家たちが帰国し、バンガロールやハイデラバードをアジア屈指のITハブへと成長させました。また、帰国せずとも海外と自国をつなぐ架け橋として国際ビジネスを創出する人材も多数誕生しています。

私はいつも言っています。インドネシアを平均1000ドル/monthの給料がもらえる国にしていきたい。しかし1000ドルの仕事をするには1000ドル分の能力や生産性 = 価値が必要です。

その価値を上げるには海外で修行することがとても有効な手段だと考えています。

 

 

3:世界は“逃げた”インドネシア人を歓迎している

インドネシア人技能実習生・特定技能人材需要急増の背景と採用のポイント

日本、ドイツ、イタリア、韓国など、人口減少と高齢化に悩む先進国では、すでに「外国人労働力の受け入れ」が国家戦略となっています。

  • 日本では、介護・建設・IT・農業などでインドネシア人の就労ビザが拡大。
  • ドイツでは、エンジニアや医療従事者としての就職機会が増加。
  • 先進国の多くが、“若くて意欲のあるアジア人”を必要とするムードにシフトしています。

つまり、世界の一部の国々は「逃げたい若者」を“望ましい労働力”として積極的に受け入れているのです。

 

 

4:「Kabur aja」から「帰国」そして「架け橋」へ

インドネシアは、いま「Kabur aja」を単なる流出ではなく、未来の成長モデルとして捉える必要があります。

以下の2つのルートに注目すべきです:

1. 帰国して変える「海亀」型

  • 海外で得た知識・ネットワーク・資金を活用して起業や社会貢献。
  • 教育・行政・産業改革の中核となる存在。
  • 中国やインドで多数成功しているルート。

2. 海外に残りつつ貢献する「架け橋」型

  • 海外に住みながら、祖国とビジネスや教育でつながる。
  • BPO、越境EC、リモート教育、越境スタートアップなどの起点。
  • 「帰らない=裏切り」ではなく「つながる=貢献」であるという価値観の転換が必要。
  • 中国は華僑、インドは印僑を色んな国で広げている。

 

 

5:インドネシアが今こそやるべきこと

インドネシアが中国・インドのように飛躍するには、以下のような国家戦略が不可欠です。

世界に羽ばたくことを前提にした教育と制度

  • 留学・海外研修・技能実習の支援拡充
  • インドネシア人を必要とする国の言語や文化を若いうちから学べる環境づくり
  • LPDP(奨学金)に頼らなくても海外に行ける方法を周知させる(ドイツの奨学金や日本の技能実習制度)

帰国後のインセンティブ

  • 帰国起業家への資金支援や税制優遇
  • 公的機関での採用枠や研究プロジェクトへの参加機会

「つながる人材」への支援

  • 海外でのインドネシア人ネットワーク、コミュニティの強化
  • 海外にいるインドネシア人との貿易や税制の優遇制度

 

 

6:母国に帰ってきた海亀たちが活躍し始めている

母国に帰ってきた海亀たちが活躍し始めている

  • 日本で技能実習を経験した若者が、母国で工場や農園を立ち上げ始めている。
  • ドイツ帰りの技術者が再生可能エネルギーのスタートアップを創業。
  • 韓国で美容技術を学び、ジャワで自らのサロンを開業。
  • オーストラリアの大学を卒業後、遠隔地に住みながらインドネシア企業の輸出支援を行う越境マーケター。

彼らは、「逃げた」のではありません。
世界で学び、世界を知り、インドネシアと世界をつなげている存在です。

 

 

Kabur ajaは終わりではなく、始まりに

いま必要なのは、「Kabur aja=裏切り」と見るのではなく、「Kabur aja=未来への投資」と捉える社会の視点ではないでしょうか。

外に逃げることで見える世界がある。
外で学ぶことで育つ視点がある。
外とつながることで動く未来がある。

Kabur aja、外に出て行くことをポジティブに考えていきましょう。

 

 

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