7月 21, 2025 • インドネシア, 特定技能・技能実習 • by Erika Okada

今、日本でインドネシア人が急増している理由を徹底解説

今、日本でインドネシア人が急増している理由を徹底解説

ここ数年、日本で働くインドネシア人の数が急激に伸びています。2024年末時点の在留インドネシア人数は 約19万9,000人。わずか1年間で5万人以上増えた計算になります。国籍別増加率ではアジア諸国の中でもトップクラス。特に「特定技能」「技能実習」「留学後の就職」など就労系在留資格がけん引しており、製造業・介護・外食・宿泊といった人手不足産業を支えています。

本稿では、「日本側の構造的要因」と「インドネシア側の送り出し要因」を軸に、制度・データ・企業事例を交えて詳しく解説します。

 

1. 日本側の背景:深刻化する人手不足と制度整備

5. 日本側の受け入れ事情(少子高齢化・人手不足・業種別ニーズ・地方と都市部の違い)

1‑1 労働人口の急減と地域偏在

  • 2024年の日本の生産年齢人口(15〜64歳)は 7,228万人とピーク時から約900万人減少。

  • 地方部では若者流出が続き、製造ラインやサービス現場の維持が困難。

  • コロナ禍を経て採用が再開したものの、求人倍率は製造業や福祉分野で全国平均を大きく上回る。

1‑2 特定技能制度の拡充

  • 2019年創設時は14分野・上限34万人とされたが、2023年の法改正で実質無期限化(特定技能2号拡張)が決定。

  • 2024年末の「特定技能」在留者は28万人超。そのうちインドネシア国籍は約5万人で、前年から1.9倍。

  • 月額給与は技能実習より高い水準が多く、企業側のマインドシフトを後押し。

1‑3 産業別の受入れニーズ

産業分野 特定技能インドネシア人数(2024年末概数) 主な受入れ理由
介護 約11,000人 圧倒的な人手不足/EPA帰国者の再来日
飲食料品製造 約9,500人 交替制ラインでの即戦力
外食 約4,000人 コミュニケーション力とホスピタリティ
宿泊 約3,500人 イスラム圏ゲスト対応ノウハウ

 

2. インドネシア側の背景:若年人口と政府の送り出し政策

インドネシアの経済成長と安定性

2‑1 圧倒的な若年人口

総人口約2.7億人のうち50%超が30歳未満。国内では大卒者でも就職まで平均9か月以上を要するとの調査もあり、海外就労に対する関心が高い。

2‑2 国内賃金水準と為替要因

  • 地方都市の新卒初任給は月3〜4万円相当。日本での特定技能平均月収はその3〜4倍。

  • 円安ルピア高のトレンドにより、海外送金メリットが大きい。

2‑3 政府主導の「海外就労奨励政策」

  • BP2MI(国家海外就労庁)が送り出し機関の認可・管理を一元化。

  • 2023年改正大統領令により、違法ブローカー排除と候補者保護を強化。

  • 送り出し前訓練に日本語N4/N3相当のカリキュラムを導入。

2‑4 教育機関と民間スクールの台頭

大学・職業訓練校(SMK)に日本語専攻が500以上。民間ITスクールも日本市場向け人材を輩出しており、多様なバックグラウンドの人材供給源となっている。

 

3. 日イ二国間協定と制度整備

日イ二国間協定と制度整備

 

3‑1 EPAの成果と課題

  • 2008年開始以来、介護候補者累計約3,700人が来日。

  • 離職要因の多くは「N1取得ハードル」と「長時間労働」。

  • EPA経験者が特定技能2号へ移行するケースが増加し、“循環型キャリア”を形成。

3‑2 2023年MoU改定のポイント

項目 改定前 改定後
手数料上限 機関ごとにバラツキ 渡航前費用一律約25万円上限
言語要件 機関独自 日本語能力試験N4相当必須
トラブル窓口 双方に重複 共同ホットラインを創設
情報共有 年次レポート 四半期レポートに強化

3‑3 受入企業のメリット

  • コスト透明化により見積りが容易。

  • 不当請求や賃金未払いが発生した際の行政連携が迅速。

 

 

4. 文化・宗教的親和性

4‑1 国民性と日本的職場文化

穏やかで協調性を重んじる価値観は、報連相・チームワークを重視する日本の現場で高評価。年功序列や先輩後輩文化にも適応しやすい。

4‑2 ハラール・礼拝対応の進化

  • 給食会社がハラール専用ラインを開設。

  • 寮や休憩室に簡易礼拝スペースを設置する企業が増加。

  • 断食月(ラマダン)に配慮したシフト設計事例も浸透。

4‑3 コミュニケーション習慣

敬語文化が似ており、相手を正面から否定しない「遠回し表現」が共有しやすい。これにより職場の摩擦が少なく、離職トラブルの発生率も低いとされる。

 

5. 他国との比較:ベトナム・フィリピン・ミャンマー

観点 ベトナム フィリピン ミャンマー インドネシア
海外就労インセンティブ 国内賃金上昇で低下 英語圏志向 政情不安で変動 安定して高い
語学適性 日本語学校多 英語優位 N5レベル中心 日本語学習ブーム
送り出し費用 高騰傾向 比較的安定 上下動 上限規制で安定
定着率 実習→留学転換で低下 欧米転職希望 在留継続動機弱 長期就労志向

インドネシアは諸条件のバランス点が良く、送り出し国として最適解に近いと評価されている。

 

6. データで見るインドネシア人急増の実態

インドネシア人技能実習生の性格・職業観と製造業への適性

6‑1 都道府県別分布

都道府県別インドネシア人数 TOP10(2024年末)

順位 都道府県 人数 インドネシア全国比 コメント(主な受入産業イメージ)
1 愛知県 14,112 7.1% 自動車・製造ライン、飲食料品加工、介護拡大中。
2 東京都 11,215 5.6% 外食・宿泊・ビルクリーニング・専門職混在の多様市場。
3 大阪府 10,063 5.0% サービス業+製造下請け+介護。都市圏需要で増勢。
4 茨城県 9,348 4.7% 農業・食品工場・製造実習の伝統的受入地。
5 神奈川県 9,322 4.7% 首都圏近郊サービス+介護・製造拠点。
6 埼玉県 9,150 4.6% 倉庫・食品・外食チェーン後方センター需要。
7 千葉県 8,798 4.4% 工場労働・農業・空港関連サービスが混在。
8 北海道 7,676 3.8% 農畜産・水産加工・観光リゾート。伸び率高め。
9 静岡県 6,579 3.3% 食品・機械系製造、介護施設も増。
10 群馬県 5,741 2.9% 製造サプライチェーン・農業・介護。

 

各地域の受入れ産業マッピング

地域ブロック 主な受入れ分野(インドネシア人が多い / 増えている) 備考
北海道 農業、畜産、水産加工、観光リゾート、外食 季節・繁忙波動対応需要が大きく、特定技能試験合格者の受入れが増勢。
北関東(茨城・群馬) 農業、食品工場、製造ライン、介護 大規模農業法人と食品メーカーでの実習→特定技能移行が典型。
首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉) 外食、宿泊、ビルクリーニング、介護、物流・製造後方 多業種展開でキャリア転換余地が大きく、定着率改善策を講じる企業が増加。
中京(愛知・静岡) 自動車系・機械製造、飲食料品製造、介護 技能実習歴のある工場が特定技能枠を拡張。
関西(大阪) サービス+製造複合、介護需要強 都市型就労と地域コミュニティ支援が受入れを後押し。
中国・四国(広島など) 造船・製造・介護 造船人材でインドネシアの存在感上昇。

 

6‑2 在留資格別推移(2022→2024)

技能実習 62,000 → 72,000

特定技能1号 11,000 → 50,000

留学・就職 6,800 → 12,400

永住・定住 8,300 → 10,500

6‑3 5年間の増加率

+135%(2019年10万人 → 2024年約20万人)

 

7. 日本企業が得られる4つのメリットと課題

1. 若く健康な労働力:平均年齢25歳前後。渡航前に厳格な健康診断を通過しており、体力仕事でも離脱が少ない。

2. 高い定着率:3年以上働き続ける人が65%。貯蓄目的が明確で長期就労志向が強い。

3. ダイバーシティ推進:ムスリム対応を整えることで多文化共生やSDGsの実績を示せる。社内の国際化にも好影響。

4. 政府間連携によるリスク低減:日イ覚書によりトラブル時の行政調整が迅速。送り出し費用上限で借金リスクも低い。

 

課題と解決策

課題 企業側の対処策 支援機関・行政のサポート
日本語能力のばらつき 作業手順書を多言語化/ピクトグラム活用 eラーニング提供・教材費補助
生活面の不安 先輩社員メンター制度 生活オリエンテーションの義務化
宗教行事の配慮 勤務シフト柔軟化 礼拝室設置ガイドライン策定
キャリア停滞 資格取得支援/昇格ルート提示 特定技能2号移行手続きの簡素化

 

8. 採用プロセスと実務フロー

インドネシア人技能実習生(機械・金属)の採用方法と受け入れの流れ

1. ニーズ定義:職種・人数・期間を洗い出す

2. 送り出し機関・登録支援機関の選定

3. 候補者面接(オンライン可)/内定

4. 事前ガイダンス・雇用契約締結

5. 在留資格申請→許可→渡航(平均3〜4か月)

6. 入国後講習・社会保険加入

7. 職場配属&定着フォロー(月次面談・相談窓口)

 

 

9. 2025年以降の展望

インドネシア人材が向いている特定技能ビザの業種とは

9‑1 育成就労制度への一本化

技能実習の課題を解消する新制度案が国会で審議中。特定技能と統合され、“日本語学習+技能習得+長期就労”が一本化される見通し。

9‑2 分野拡張とデジタル人材

  • ITサービス、農業DXなど新分野追加が検討。

  • インドネシア政府も「デジタル人材100万人育成計画」を推進。

9‑3 キャリア循環モデル

帰国後に日系企業の現地法人でマネージャーやトレーナーとして再雇用されるケースが増加。双方にとって人材のバリューチェーンが形成されつつある。

 

まとめ

日本で働くインドネシア人は、若年人口の豊富さと政府の海外就労促進政策を背景に急増しています。2024年末には約19万9,000人に達し、製造業・介護・外食など人手不足産業を支える中心的な存在となりました。日本側では少子高齢化による労働力不足と特定技能制度の拡充が受け皿となり、日イ政府間の覚書改定で費用透明化とトラブル対応が整備されたことも追い風です。さらに、ムスリム文化への配慮を進めることで企業のダイバーシティ施策が強化され、SDGsや人的資本開示の観点でも評価が高まります。インドネシア人材は今後も特定技能2号や育成就労制度への移行・拡張によって長期就労が見込まれ、企業は早期に受け入れ体制を整えることで持続的な戦力を確保できます。

 

 

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本記事で使用した単語の解説

特定技能:2019年に創設された在留資格。即戦力の外国人が14分野で就労できる。
技能実習:開発途上国人材が技能移転を目的に最長5年働ける実習制度。
EPA(経済連携協定):日本と相手国が人材交流を含む経済協力を定めた協定。インドネシアとは2008年発効。
MoU(覚書):日イ両政府が送り出し・受入れ条件をまとめた合意文書。2023年に改定。
BP2MI:インドネシア国家海外就労庁。送り出し機関の認可・管理を担当。
ハラール:イスラム法で許可された食品や工程。食堂や給食での対応が重要。
ラマダン:イスラム教の断食月。昼間の食事・勤務配慮が必要。
Fit‑to‑Work:渡航前健康診断で就労適格と判定された証明書。
育成就労制度:技能実習を統合し、長期就労と技能向上を両立させる新制度案。
SDGs8:国連の持続可能な開発目標の一つ。「働きがいも経済成長も」を掲げる。

FAQ

Q. インドネシア人を採用するまでにどのくらい時間がかかりますか?
A. 特定技能の場合、面接から入国まで平均3〜4か月です。技能実習より書類が簡素で、経験者ならさらに短縮できます。

Q. 採用コストはどの程度見込めばよいですか?
A. 渡航前費用はMoUで上限約25万円に統一されています。企業側の支援費用(登録支援機関委託料など)を含めても40〜50万円が目安です。

Q. 日本語レベルはどのくらいですか?
A. 渡航時点で日本語能力試験N4相当が必須です。単純作業なら問題なく、接客や介護では入国後の研修でN3を目指すケースが一般的です。

Q. 宗教対応が心配ですが何を準備すればよいですか?
A. ハラール食の確保(弁当持参可)と小規模な礼拝スペース確保が基本です。ラマダン中はシフトを柔軟に調整すると定着率が上がります。

Q. 途中退職やトラブルのリスクは?
A. インドネシア人の3年以上定着率は65%と高く、MoUの共同ホットラインによって賃金未払いなどの問題も早期解決が可能です。

Q. 受け入れ後のキャリアパスはどう設計すべきですか?
A. 特定技能1号で入国後、技能試験と日本語試験をクリアすれば2号に移行して無期限就労が可能です。社内昇格や資格取得支援を提示すると長期定着につながります。

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