
4月 13, 2025 • インドネシア, 特定技能・技能実習
7月 21, 2025 • インドネシア, 特定技能・技能実習 • by Erika Okada
目次
ここ数年、日本で働くインドネシア人の数が急激に伸びています。2024年末時点の在留インドネシア人数は 約19万9,000人。わずか1年間で5万人以上増えた計算になります。国籍別増加率ではアジア諸国の中でもトップクラス。特に「特定技能」「技能実習」「留学後の就職」など就労系在留資格がけん引しており、製造業・介護・外食・宿泊といった人手不足産業を支えています。
本稿では、「日本側の構造的要因」と「インドネシア側の送り出し要因」を軸に、制度・データ・企業事例を交えて詳しく解説します。
2024年の日本の生産年齢人口(15〜64歳)は 7,228万人とピーク時から約900万人減少。
地方部では若者流出が続き、製造ラインやサービス現場の維持が困難。
コロナ禍を経て採用が再開したものの、求人倍率は製造業や福祉分野で全国平均を大きく上回る。
2019年創設時は14分野・上限34万人とされたが、2023年の法改正で実質無期限化(特定技能2号拡張)が決定。
2024年末の「特定技能」在留者は28万人超。そのうちインドネシア国籍は約5万人で、前年から1.9倍。
月額給与は技能実習より高い水準が多く、企業側のマインドシフトを後押し。
産業分野 | 特定技能インドネシア人数(2024年末概数) | 主な受入れ理由 |
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介護 | 約11,000人 | 圧倒的な人手不足/EPA帰国者の再来日 |
飲食料品製造 | 約9,500人 | 交替制ラインでの即戦力 |
外食 | 約4,000人 | コミュニケーション力とホスピタリティ |
宿泊 | 約3,500人 | イスラム圏ゲスト対応ノウハウ |
総人口約2.7億人のうち50%超が30歳未満。国内では大卒者でも就職まで平均9か月以上を要するとの調査もあり、海外就労に対する関心が高い。
地方都市の新卒初任給は月3〜4万円相当。日本での特定技能平均月収はその3〜4倍。
円安ルピア高のトレンドにより、海外送金メリットが大きい。
BP2MI(国家海外就労庁)が送り出し機関の認可・管理を一元化。
2023年改正大統領令により、違法ブローカー排除と候補者保護を強化。
送り出し前訓練に日本語N4/N3相当のカリキュラムを導入。
大学・職業訓練校(SMK)に日本語専攻が500以上。民間ITスクールも日本市場向け人材を輩出しており、多様なバックグラウンドの人材供給源となっている。
2008年開始以来、介護候補者累計約3,700人が来日。
離職要因の多くは「N1取得ハードル」と「長時間労働」。
EPA経験者が特定技能2号へ移行するケースが増加し、“循環型キャリア”を形成。
項目 | 改定前 | 改定後 |
---|---|---|
手数料上限 | 機関ごとにバラツキ | 渡航前費用一律約25万円上限 |
言語要件 | 機関独自 | 日本語能力試験N4相当必須 |
トラブル窓口 | 双方に重複 | 共同ホットラインを創設 |
情報共有 | 年次レポート | 四半期レポートに強化 |
コスト透明化により見積りが容易。
不当請求や賃金未払いが発生した際の行政連携が迅速。
穏やかで協調性を重んじる価値観は、報連相・チームワークを重視する日本の現場で高評価。年功序列や先輩後輩文化にも適応しやすい。
給食会社がハラール専用ラインを開設。
寮や休憩室に簡易礼拝スペースを設置する企業が増加。
断食月(ラマダン)に配慮したシフト設計事例も浸透。
敬語文化が似ており、相手を正面から否定しない「遠回し表現」が共有しやすい。これにより職場の摩擦が少なく、離職トラブルの発生率も低いとされる。
観点 | ベトナム | フィリピン | ミャンマー | インドネシア |
---|---|---|---|---|
海外就労インセンティブ | 国内賃金上昇で低下 | 英語圏志向 | 政情不安で変動 | 安定して高い |
語学適性 | 日本語学校多 | 英語優位 | N5レベル中心 | 日本語学習ブーム |
送り出し費用 | 高騰傾向 | 比較的安定 | 上下動 | 上限規制で安定 |
定着率 | 実習→留学転換で低下 | 欧米転職希望 | 在留継続動機弱 | 長期就労志向 |
インドネシアは諸条件のバランス点が良く、送り出し国として最適解に近いと評価されている。
順位 | 都道府県 | 人数 | インドネシア全国比 | コメント(主な受入産業イメージ) |
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1 | 愛知県 | 14,112 | 7.1% | 自動車・製造ライン、飲食料品加工、介護拡大中。 |
2 | 東京都 | 11,215 | 5.6% | 外食・宿泊・ビルクリーニング・専門職混在の多様市場。 |
3 | 大阪府 | 10,063 | 5.0% | サービス業+製造下請け+介護。都市圏需要で増勢。 |
4 | 茨城県 | 9,348 | 4.7% | 農業・食品工場・製造実習の伝統的受入地。 |
5 | 神奈川県 | 9,322 | 4.7% | 首都圏近郊サービス+介護・製造拠点。 |
6 | 埼玉県 | 9,150 | 4.6% | 倉庫・食品・外食チェーン後方センター需要。 |
7 | 千葉県 | 8,798 | 4.4% | 工場労働・農業・空港関連サービスが混在。 |
8 | 北海道 | 7,676 | 3.8% | 農畜産・水産加工・観光リゾート。伸び率高め。 |
9 | 静岡県 | 6,579 | 3.3% | 食品・機械系製造、介護施設も増。 |
10 | 群馬県 | 5,741 | 2.9% | 製造サプライチェーン・農業・介護。 |
地域ブロック | 主な受入れ分野(インドネシア人が多い / 増えている) | 備考 |
---|---|---|
北海道 | 農業、畜産、水産加工、観光リゾート、外食 | 季節・繁忙波動対応需要が大きく、特定技能試験合格者の受入れが増勢。 |
北関東(茨城・群馬) | 農業、食品工場、製造ライン、介護 | 大規模農業法人と食品メーカーでの実習→特定技能移行が典型。 |
首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉) | 外食、宿泊、ビルクリーニング、介護、物流・製造後方 | 多業種展開でキャリア転換余地が大きく、定着率改善策を講じる企業が増加。 |
中京(愛知・静岡) | 自動車系・機械製造、飲食料品製造、介護 | 技能実習歴のある工場が特定技能枠を拡張。 |
関西(大阪) | サービス+製造複合、介護需要強 | 都市型就労と地域コミュニティ支援が受入れを後押し。 |
中国・四国(広島など) | 造船・製造・介護 | 造船人材でインドネシアの存在感上昇。 |
+135%(2019年10万人 → 2024年約20万人)
1. 若く健康な労働力:平均年齢25歳前後。渡航前に厳格な健康診断を通過しており、体力仕事でも離脱が少ない。
2. 高い定着率:3年以上働き続ける人が65%。貯蓄目的が明確で長期就労志向が強い。
3. ダイバーシティ推進:ムスリム対応を整えることで多文化共生やSDGsの実績を示せる。社内の国際化にも好影響。
4. 政府間連携によるリスク低減:日イ覚書によりトラブル時の行政調整が迅速。送り出し費用上限で借金リスクも低い。
課題 | 企業側の対処策 | 支援機関・行政のサポート |
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日本語能力のばらつき | 作業手順書を多言語化/ピクトグラム活用 | eラーニング提供・教材費補助 |
生活面の不安 | 先輩社員メンター制度 | 生活オリエンテーションの義務化 |
宗教行事の配慮 | 勤務シフト柔軟化 | 礼拝室設置ガイドライン策定 |
キャリア停滞 | 資格取得支援/昇格ルート提示 | 特定技能2号移行手続きの簡素化 |
1. ニーズ定義:職種・人数・期間を洗い出す
2. 送り出し機関・登録支援機関の選定
3. 候補者面接(オンライン可)/内定
4. 事前ガイダンス・雇用契約締結
5. 在留資格申請→許可→渡航(平均3〜4か月)
6. 入国後講習・社会保険加入
7. 職場配属&定着フォロー(月次面談・相談窓口)
技能実習の課題を解消する新制度案が国会で審議中。特定技能と統合され、“日本語学習+技能習得+長期就労”が一本化される見通し。
ITサービス、農業DXなど新分野追加が検討。
インドネシア政府も「デジタル人材100万人育成計画」を推進。
帰国後に日系企業の現地法人でマネージャーやトレーナーとして再雇用されるケースが増加。双方にとって人材のバリューチェーンが形成されつつある。
日本で働くインドネシア人は、若年人口の豊富さと政府の海外就労促進政策を背景に急増しています。2024年末には約19万9,000人に達し、製造業・介護・外食など人手不足産業を支える中心的な存在となりました。日本側では少子高齢化による労働力不足と特定技能制度の拡充が受け皿となり、日イ政府間の覚書改定で費用透明化とトラブル対応が整備されたことも追い風です。さらに、ムスリム文化への配慮を進めることで企業のダイバーシティ施策が強化され、SDGsや人的資本開示の観点でも評価が高まります。インドネシア人材は今後も特定技能2号や育成就労制度への移行・拡張によって長期就労が見込まれ、企業は早期に受け入れ体制を整えることで持続的な戦力を確保できます。
LPK Timedoorは、インドネシア・バリ島デンパサールに拠点を置く職業訓練校で、日本での就労を目指すインドネシア人に対し、日本語や日本文化、仕事に対する価値観やマインドセットを学ぶ環境を提供しています。お気軽にお問い合わせください。
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本記事で使用した単語の解説
特定技能:2019年に創設された在留資格。即戦力の外国人が14分野で就労できる。
技能実習:開発途上国人材が技能移転を目的に最長5年働ける実習制度。
EPA(経済連携協定):日本と相手国が人材交流を含む経済協力を定めた協定。インドネシアとは2008年発効。
MoU(覚書):日イ両政府が送り出し・受入れ条件をまとめた合意文書。2023年に改定。
BP2MI:インドネシア国家海外就労庁。送り出し機関の認可・管理を担当。
ハラール:イスラム法で許可された食品や工程。食堂や給食での対応が重要。
ラマダン:イスラム教の断食月。昼間の食事・勤務配慮が必要。
Fit‑to‑Work:渡航前健康診断で就労適格と判定された証明書。
育成就労制度:技能実習を統合し、長期就労と技能向上を両立させる新制度案。
SDGs8:国連の持続可能な開発目標の一つ。「働きがいも経済成長も」を掲げる。
FAQ
Q. インドネシア人を採用するまでにどのくらい時間がかかりますか?
A. 特定技能の場合、面接から入国まで平均3〜4か月です。技能実習より書類が簡素で、経験者ならさらに短縮できます。
Q. 採用コストはどの程度見込めばよいですか?
A. 渡航前費用はMoUで上限約25万円に統一されています。企業側の支援費用(登録支援機関委託料など)を含めても40〜50万円が目安です。
Q. 日本語レベルはどのくらいですか?
A. 渡航時点で日本語能力試験N4相当が必須です。単純作業なら問題なく、接客や介護では入国後の研修でN3を目指すケースが一般的です。
Q. 宗教対応が心配ですが何を準備すればよいですか?
A. ハラール食の確保(弁当持参可)と小規模な礼拝スペース確保が基本です。ラマダン中はシフトを柔軟に調整すると定着率が上がります。
Q. 途中退職やトラブルのリスクは?
A. インドネシア人の3年以上定着率は65%と高く、MoUの共同ホットラインによって賃金未払いなどの問題も早期解決が可能です。
Q. 受け入れ後のキャリアパスはどう設計すべきですか?
A. 特定技能1号で入国後、技能試験と日本語試験をクリアすれば2号に移行して無期限就労が可能です。社内昇格や資格取得支援を提示すると長期定着につながります。