9月 9, 2025 • インドネシア, 特定技能・技能実習 • by Reina Ohno

外国人雇用を考える企業が「技能実習」と「特定技能」のどちらを選ぶべきか?

外国人雇用を考える企業が「技能実習」と「特定技能」のどちらを選ぶべきか?

日本の企業にとって、外国人材の雇用はもはや一時的な対策ではなく、長期的な経営戦略の一部となりつつあります。少子高齢化が進み、人手不足が深刻化するなかで、多くの経営者や人事担当者が「外国人材をどの制度で受け入れるべきか」という選択に直面しています。代表的な制度が「技能実習」と「特定技能」です。

両者は一見似ていますが、目的や仕組み、在留期間、雇用の安定性、転職可否などに大きな違いがあります。そのため、制度選択を誤ると「せっかく育てた人材がすぐに辞めてしまった」「長期的に定着してもらえなかった」といった問題につながりかねません。

本記事では、技能実習と特定技能の違いを徹底的に比較し、それぞれのメリット・デメリットを整理したうえで、企業のタイプや目的に応じてどちらを選ぶべきかを詳しく解説します。これから外国人材の採用を検討している企業の方、すでに受け入れているものの制度の見直しを考えている方にとって、具体的な判断材料となる内容です。

 

1. 制度設立の背景と目的の違い

どの国がいい?国籍別に見る外国人技能実習生・特定技能人材の性格と特徴徹底比較

技能実習:国際貢献としての技術移転

技能実習制度は1993年に創設され、当初は「開発途上国の人材に日本の技能や知識を移転すること」が最大の目的でした。つまり、企業の人手不足を直接解消するための制度ではなく、「一定期間日本で働きながら技能を習得し、その後母国に戻って活かす」ことが前提に置かれていたのです。

このため制度の設計も、日本側企業が単に労働力を確保するのではなく、技能移転のために教育や訓練を行うことが中心でした。監理団体を通じた厳格なチェックが求められ、受け入れ企業には「実習計画」を策定し、その進捗を毎年報告する義務があります。

しかし現実には、日本の深刻な労働力不足に対応する「労働力受け入れ制度」として活用されてきた側面も強く、結果として「目的と実態の乖離」が長年問題視されてきました。そのため政府は改善策を繰り返し打ち出し、監理体制の強化や不正防止の取り組みを行ってきました。

特定技能:日本の人手不足への直接対応

これに対して特定技能は、2019年に新たに導入された制度です。背景には、日本の少子高齢化による労働人口減少がありました。建設業や介護、農業、外食など、人手不足が特に深刻な分野において「即戦力」となる外国人材を直接的に確保することを目的としています。

特定技能では、日本語能力試験や技能試験に合格することが前提条件とされているため、採用時点である程度の言語力や職務遂行能力を持つ人材が確保できます。これは「教育を前提とする技能実習」との大きな違いであり、企業にとっては導入初期から現場での即戦力として期待できるという点が非常に大きな魅力です。

 

2. 在留期間と安定性の比較

技能実習:最長5年間の枠組み

技能実習生は原則3年、優良な受け入れ企業であれば最長5年まで在留が認められます。この期間は比較的長いように感じますが、実際に人材育成を前提とすると「即戦力として働ける期間」は限定的です。最初の半年から1年は研修や日本語適応に時間がかかり、現場に馴染んで戦力化するのは2年目以降です。そのため、ようやく戦力になった頃に帰国が迫ってしまう、という課題を抱える企業も少なくありません。

また、原則として在留資格を更新して延長することはできず、制度上は「母国へ帰る」ことが基本となっています。企業にとっては、せっかく育てた人材を継続的に雇用できないという点が大きなデメリットになります。

特定技能:長期定着が可能

特定技能は1号と2号に分かれており、1号では最長5年間の在留が可能です。しかし特定技能2号へ移行できれば、在留期間の更新が無制限となり、事実上「永続的な雇用」も可能になります。さらに2号では家族帯同も認められているため、長期的に日本で生活基盤を築く人材が増え、企業にとっても安定的な雇用が見込めます。

つまり、企業側が「一時的な人員確保」を目的とするなら技能実習でも対応可能ですが、「長期にわたって戦力化した人材を維持したい」と考える場合には特定技能の方が明らかに適しています。

 

3. 対象業種・職種の違い

失敗しない「インドネシアの特定技能人材」と「登録支援機関」の選び方ガイド

技能実習:幅広い職種だが実習前提

技能実習では91職種167作業が対象とされています。農業や漁業、縫製、建設、食品製造といった分野が中心です。ただし注意点として「教育・訓練の要素」が強いため、必ずしも企業の人手不足解消ニーズに直結しないケースもあります。

例えば、製造業で単純作業に従事してもらう場合も「技能を学ぶ」という枠組みが必要であり、雇用関係は労働契約でありながらも“実習生”としての位置づけになります。そのため、担当業務や就労時間、作業範囲が厳格に制限されることもあります。

特定技能:即戦力業務に直結

特定技能は16分野で導入されています。介護、建設、農業、外食業など、日本の労働力不足が顕著な分野です。対象分野の選定は「深刻な人手不足が社会問題化しているかどうか」が基準とされており、まさに現場で求められる人材を確保するための仕組みになっています。

企業にとっては「求めている業務にダイレクトに人材を投入できる」点が最大の利点であり、技能実習と比べて制約が少なく、現場の生産性向上に直結します。

 

4. 採用から雇用までのフローと負担

技能実習:監理団体主導の手続き

技能実習を受け入れる場合、企業単独で直接採用することはできず、監理団体を通じての手続きが必須です。監理団体は、受け入れ企業に代わって実習計画の作成支援や行政とのやり取りを行い、さらに実習生の生活指導や相談対応なども担います。

そのため、企業側の事務負担は軽減されますが、一方で監理団体に対する手数料や管理費用が発生します。また、受け入れまでに半年以上の準備期間が必要となることも多く、スピード感を持った人材確保には向きません。

特定技能:企業・支援機関の責任が大きい

特定技能では、企業が直接採用を行い、支援計画を策定しなければなりません。具体的には、日本語学習の機会提供や生活支援、転職時のサポートなどが含まれます。これらを自社で実施することも可能ですが、多くの企業は「登録支援機関」に委託して運用しています。

ただし、支援計画の提出や更新の手続きは企業責任となるため、制度運用に関する知識や準備が不可欠です。これが中小企業にとっては大きなハードルになることもあります。

 

5. 転職可否と定着性

失敗しない「インドネシアの特定技能人材」と「登録支援機関」の選び方ガイド

技能実習:基本的に転職はできない

技能実習制度では、受け入れ時点で定められた実習先企業で働き続けることが原則です。これは「技能を学ぶ」ことを前提とした制度設計のためであり、職場を自由に変えることは想定されていません。
唯一例外として、受け入れ企業が倒産した場合や、労働環境に重大な問題があると認定された場合に限り、別の受け入れ企業へ移行することが可能です。しかしその場合も監理団体や行政の審査を経る必要があり、簡単ではありません。

このため、企業側から見ると「途中で辞められてしまうリスクが低い」という安心感につながります。特に単純労働が中心の現場では、一定期間の安定した労働力を確保できることが大きなメリットです。
一方で、実習生側にとっては「選択肢がない」という不満が生まれやすく、労働環境に不満を持った場合に失踪や不法滞在につながるリスクがある点には注意が必要です。

特定技能:転職可能だが流出リスクあり

特定技能は「労働者」としての位置づけが明確で、日本人と同様に転職が認められています。これは労働市場の健全性という観点からも自然な仕組みですが、企業側にとっては「せっかく採用・教育した人材が、条件の良い企業へ流れてしまう」可能性を常に考慮しなければなりません。

例えば、建設業や介護業界では給与水準や労働環境に差があるため、研修や生活支援を充実させていたにもかかわらず、他社へ移られてしまうケースも報告されています。
そのため、特定技能人材を定着させるには、給与面だけでなく「働きやすい環境づくり」や「キャリアパスの提示」「生活サポートの充実」などが欠かせません。

結論として、技能実習は「安定した人材供給」に強みがあり、特定技能は「柔軟性」と「即戦力性」に優れる一方で、企業側のマネジメント力が試される制度と言えるでしょう。

 

6. コスト・採用までのスピード感

技能実習:採用まで半年以上かかることも

技能実習制度では、監理団体を通じて計画を策定し、送り出し機関との調整、書類審査や講習などの準備を経る必要があります。そのため、受け入れ開始までに通常6か月前後、場合によっては1年近くかかることもあります。

また、初期費用として監理団体への手数料や、実習生の渡航費用、講習費用などが発生します。さらに月々の監理費用も必要です。企業によってはこの費用負担がネックとなり、採用に踏み切れないケースもあります。
ただし一度受け入れが始まれば、転職リスクが低いため、結果的には「安定して人材を確保できる」というメリットが得られます。

特定技能:比較的短期間で雇用可能

特定技能の場合、すでに技能試験や日本語試験をクリアしている候補者を採用することが前提です。そのため、採用から入社までの期間は2〜5か月程度と比較的短いのが特徴です。
特に人手不足が逼迫している業界では、このスピード感は非常に魅力的です。

ただし、企業は人材に対して日本人と同等以上の待遇を保障する必要があり、最低賃金を大きく下回るような給与設定はできません。さらに生活支援や教育サポートを提供するためのコストも発生します。そのため、採用スピードは速くても、総合的な費用負担は技能実習より高くなる可能性もあります。

 

7. メリット・デメリットまとめ

自動車整備分野の特定技能人材とは?

技能実習のメリット

  • 転職リスクが低く、安定した人材確保が可能
  • 監理団体のサポートにより企業の負担が軽減される
  • 「技能移転」という国際貢献の側面があり、企業の社会的評価向上にもつながる

技能実習のデメリット

  • 最長5年で帰国するため、長期的な定着は望めない
  • 初期費用や監理費用がかかり、採用までの準備期間も長い
  • 実習計画に沿った業務に限定されるため、柔軟性に欠ける

特定技能のメリット

  • 日本語・技能試験を通過した即戦力を採用できる
  • 採用から就労開始までが比較的短期間で済む
  • 特定技能2号へ移行すれば、長期定着や家族帯同も可能

特定技能のデメリット

  • 転職が認められているため、定着率は企業努力に依存する
  • 生活支援や教育支援の提供が企業責任となり、負担が大きい
  • 解雇やトラブル対応を誤ると、受け入れ許可に影響するリスクもある

 

8. どちらを選ぶべきか?企業タイプ別アドバイス

即戦力を求める企業 → 特定技能

建設業や介護業界など、人手不足が深刻かつ専門性を要する分野では特定技能が適しています。採用から就労までのスピード感が早く、現場で即座に戦力として働ける点が魅力です。

安定した労働力を長期間確保したい企業 → 技能実習

農業や製造業など、比較的単純作業が中心で、教育コストを抑えて安定した人材を確保したい企業には技能実習が向いています。転職リスクが低いため、定着率も高めやすいのが特徴です。

長期定着を前提とした企業 → 特定技能2号

中堅・大企業で、将来的に幹部候補やリーダー人材を育てたいと考えるなら、特定技能2号への移行を視野に入れるのが最適です。家族帯同も可能になり、人材が生活基盤を日本に置くことで長期的な定着が見込めます。

手続きや支援にリソースを割けない企業 → 技能実習

中小企業で社内に外国人材管理の専門部署がない場合は、監理団体のサポートを受けられる技能実習の方が負担が軽く済みます。

 

9. まとめ:貴社にとっての最良の選択を

技能実習と特定技能は、いずれも日本企業が外国人材を活用するうえで重要な制度ですが、その役割や活用方法には大きな違いがあります。

技能実習は「技能移転を目的とした教育制度」であり、企業にとっては安定した一定期間の人材確保が可能です。転職リスクが低いため安心感がありますが、最長5年で帰国しなければならない点、制度の制約が多い点がデメリットです。

一方の特定技能は「即戦力を確保する労働制度」として設計されており、日本語や技能試験に合格した人材を採用できるのが強みです。転職が認められているため流出リスクはあるものの、待遇や支援体制を整えることで長期的な定着も十分に可能です。さらに特定技能2号への移行によって、在留の無期限化や家族帯同といった長期的な雇用基盤を築くこともできます。

最適な選択肢は企業の業種や規模、求める人材像によって変わります。農業や製造業のように安定性を重視するなら技能実習、介護や建設のように即戦力を求めるなら特定技能が適しています。将来的な定着を前提とするなら、特定技能2号を見据えた採用戦略も有効です。

結局のところ「どちらが優れているか」ではなく「自社に合っているか」が最も重要です。制度を正しく理解し、企業の状況に合わせて使い分けることで、外国人材の採用を成功へと導くことができます。

 

インドネシアの人材育成・採用ならLPK Timedoor

インドネシア人の特定技能人材採用ならLPK Timedoor

​LPK Timedoorは、インドネシア・バリ島デンパサールに拠点を置く職業訓練校で、日本での就労を目指すインドネシア人に対し、日本語や日本文化、仕事に対する価値観やマインドセットを学ぶ環境を提供しています。お気軽にお問い合わせください。

所在地と連絡先:

 

 

 

インドネシアでのビジネスなら創業10周年のTimedoor 

システム開発、IT教育事業、日本語教育および人材送り出し事業、進出支援事業

お問い合わせはこちら

 

 

弊社代表のTimedoor CEO徳永へ直接相談する

Timedoor CEO 徳永 裕の紹介はこちら

 

本記事で使用した単語の解説

  • 技能実習制度
    開発途上国の人材に日本の技能や知識を移転することを目的とした制度。原則3年、最長5年の在留が可能。

  • 特定技能制度
    2019年に創設された新制度。人手不足が深刻な16分野で即戦力となる外国人材を受け入れるための仕組み。1号は最長5年、2号は在留無期限。

  • 監理団体
    技能実習生の受け入れを監督する非営利法人。企業と送り出し機関の間に入り、実習計画の作成や生活指導を行う。

  • 登録支援機関
    特定技能外国人を雇用する際、企業が委託できる機関。生活支援や書類手続きを代行する。

  • 在留資格
    外国人が日本に滞在するために必要な法的資格。就労や滞在の条件が定められている。

  • 特定技能1号
    在留期間は最長5年。即戦力として現場で働ける人材を対象とする。

  • 特定技能2号
    在留期間の更新が無制限。家族帯同も認められ、長期的な日本滞在が可能。

 

 

FAQ

Q1. 技能実習と特定技能はどちらがコストが安いですか?
A. 初期費用や監理費用の面では技能実習の方が負担が少ないように見えます。ただし監理団体への費用や渡航準備費用が必要です。特定技能は生活支援や待遇面の整備にコストがかかりますが、採用までのスピードが速く即戦力を確保できるため、総合的なコストは企業の状況によって変わります。

Q2. 技能実習から特定技能に移行することはできますか?
A. はい、可能です。技能実習を修了した外国人が、同一分野であれば特定技能の在留資格へ移行できる仕組みがあります。この流れを活用することで、既に日本の生活や職場に適応した人材を継続雇用できます。

Q3. 特定技能人材は本当に転職してしまうのでしょうか?
A. 転職は制度上可能ですが、必ずしもすぐに転職するわけではありません。給与や待遇だけでなく、職場環境や生活サポートが充実していれば長期的に定着するケースも多くあります。企業側の努力次第で転職リスクを大きく下げることができます。

Q4. どちらの制度も外国人材を受け入れられる業種は同じですか?
A. いいえ。技能実習は91職種167作業が対象で、教育要素の強い制度です。特定技能は16分野に限定されますが、人手不足が深刻な産業を中心に現場業務に直結しています。

Q5. 外国人材の受け入れで一番気をつけるべき点は何ですか?
A. 制度の違いを正しく理解することに加えて、受け入れ後のサポート体制をどう整えるかが最も重要です。言語や文化の違いによるトラブルを防ぐために、生活支援・相談体制を整え、安心して働ける環境を作ることが定着につながります。

 

Testing