2月 22, 2025 • インドネシア, スタートアップ
7月 18, 2026 • インドネシア, 特定技能・技能実習 • by Ayako Yamamoto
目次
インドネシア人の特定技能人材を日本で受け入れる際、入国前または在留資格変更前に行う事前ガイダンスは、単なる説明会ではありません。雇用条件、仕事内容、生活費、入国手続き、保証金や違約金の有無、相談先、日本での生活ルールなどを本人が理解できる言語で説明し、来日後のミスマッチやトラブルを防ぐための重要なプロセスです。
特定技能制度では、企業が外国人材を受け入れるだけでなく、その人が日本で安定して働き、生活できるように支援することが求められています。特に特定技能1号では、受入れ企業または登録支援機関による支援計画の実施が必要となります。その中でも事前ガイダンスは、本人が日本へ行く前、または在留資格を変更する前に、日本での労働と生活の現実を正しく理解する入口になります。
インドネシア人材の場合、日本への期待が大きい一方で、給与、残業、寮費、宗教上の配慮、日本語での報連相、家族への送金、借入金、送出機関への費用など、来日前に丁寧に確認すべきポイントが多くあります。日本側が「契約書に書いてあるから大丈夫」と考えていても、本人が実際に理解していなければ、後になって「聞いていなかった」「思っていた話と違う」という問題につながります。契約書を渡しただけで理解が成立するなら、世の中の労務トラブルはもう絶滅しているはずですが、残念ながらそんな便利な世界ではありません。
本記事では、インドネシア人特定技能人材の事前ガイダンスで伝えるべき内容を、企業や登録支援機関が実務で使いやすいように整理して解説します。
![]()
事前ガイダンスとは、特定技能1号の外国人が日本で働き始める前に、受入れ企業または登録支援機関が、本人に対して労働条件や活動内容、入国手続き、費用負担、保証金や違約金の有無などを説明するものです。特定技能1号では、外国人材が日本で安定して働き、生活できるように、職業生活、日常生活、社会生活に関する支援を行う必要があります。
事前ガイダンスは、その支援の最初の段階にあたります。来日後に生活オリエンテーションを行うだけでは不十分で、来日前または在留資格変更前の段階で、本人が日本での働き方や生活条件を理解していることが重要です。
事前ガイダンスは、原則として在留資格認定証明書交付申請の前、または在留資格変更許可申請の前に実施します。つまり、海外から新たにインドネシア人材を呼び寄せる場合は、在留資格認定証明書の申請前に行います。すでに日本にいる留学生、技能実習修了者、他社からの転職者などが特定技能へ変更する場合は、在留資格変更許可申請の前に実施します。
ここで注意すべきなのは、単に内定を出す前の会社説明会とは違うという点です。雇用契約の内容や実際の支援内容に基づいて説明する必要があるため、採用候補者向けの一般的な説明だけでは、事前ガイダンスとしては不十分です。
事前ガイダンスは、受入れ企業が自社で実施することもできますし、登録支援機関に委託することもできます。特定技能1号の支援計画を登録支援機関に全部委託している場合、事前ガイダンスもその一部として登録支援機関が実施するケースが多くなります。
ただし、登録支援機関に任せたからといって、受入れ企業が何も知らなくてよいわけではありません。労働条件、仕事内容、勤務場所、寮、シフト、給与控除、残業の見込みなどは、企業側が最も正確に把握しています。登録支援機関が説明する場合でも、企業側が情報を正確に提供しなければ、本人への説明が曖昧になります。曖昧な説明は、後からだいたい高くつきます。
![]()
インドネシアでは、日本は給与水準が高く、治安がよく、技術やマナーを学べる国というイメージを持たれています。そのため、特定技能で日本へ行く人材の中には、「日本に行けば必ず十分に稼げる」「数年で大きな貯金ができる」と考えている人もいます。
もちろん、日本での就労は大きなチャンスになります。しかし、給与から税金、社会保険料、家賃、光熱費、食費、携帯代、交通費などが差し引かれると、手取り額は本人が想像していたより少なく感じられることがあります。特にインドネシアの地方出身者の場合、日本の生活費の高さを実感しにくいことがあります。
そのため、事前ガイダンスでは、額面給与だけでなく、実際の手取り見込み、生活費、送金可能額の現実的な目安を説明することが重要です。
インドネシア人材の中には、本人だけでなく家族全体の期待を背負って来日する人も少なくありません。両親、兄弟、配偶者、子どもへの仕送りを前提としている場合、本人は日本での生活費を極端に削ってでも送金しようとすることがあります。
しかし、無理な節約は健康悪化、ストレス、職場での集中力低下につながります。また、家族に対して事前に過大な送金額を約束していると、来日後に心理的なプレッシャーが強くなります。
事前ガイダンスでは、「毎月いくら送金できるか」は給与額だけでは決まらないこと、生活費や予備費を残す必要があること、最初の数か月は準備費用や生活立ち上げ費用がかかることを説明しておくべきです。
インドネシアはイスラム教徒が多い国です。もちろん全員がイスラム教徒ではなく、キリスト教、ヒンドゥー教、仏教などの信仰を持つ人もいますが、特にムスリム人材を受け入れる場合は、食事、礼拝、断食月、豚肉やアルコールへの接触などについて、事前に確認が必要です。
ただし、宗教配慮は「特別扱い」ではなく、本人が安心して働き続けるための基本的な確認事項です。たとえば、昼休みに短時間の礼拝が可能か、職場近くに礼拝できる場所があるか、社員食堂や寮で食事をどうするか、ラマダン中の体調管理をどう考えるかなどは、来日前に説明しておくとよいでしょう。
企業側がすべての希望に対応できるとは限りません。しかし、対応できること、できないことを事前に伝えるだけでも、本人の不安は大きく減ります。
特定技能1号では、日本語能力試験N4以上または国際交流基金日本語基礎テストなどが要件になる場合があります。しかし、N4レベルで労働条件、社会保険、税金、控除、契約解除、転職、行政手続きまで正確に理解するのは簡単ではありません。
「日本語で少し会話できる」ことと、「雇用契約や生活ルールを正しく理解できる」ことは別です。この区別を雑に扱うと、あとで人類おなじみの「言った、言わない」の泥沼が始まります。
インドネシア人材向けの事前ガイダンスでは、できるだけインドネシア語を使う、またはインドネシア語で補足資料を用意することが望ましいです。日本語で説明する場合でも、重要事項は本人の母語で確認し、理解度を質問形式で確認することが大切です。
![]()
最初に伝えるべきことは、本人が日本で実際に従事する業務の内容です。職種名だけでは不十分です。たとえば「介護」と言っても、食事介助、入浴介助、排泄介助、清掃、記録、レクリエーション補助、夜勤の有無など、業務内容は施設によって異なります。「外食業」と言っても、接客中心なのか、調理補助中心なのか、洗い場や清掃も含むのかで印象は大きく変わります。
インドネシア人材に対しては、業務の良い面だけでなく、体力的に大変な部分、衛生管理が厳しい部分、日本語での報告が必要な部分も説明する必要があります。特に介護、製造、農業、外食、宿泊などでは、本人が想像している仕事内容と実際の現場に差が出やすいです。
「最初は補助業務から始める」「一定期間後に任せる業務が増える」「日本語力や習熟度により担当範囲が変わる」など、成長段階も含めて説明すると、本人が働くイメージを持ちやすくなります。
勤務場所は、住所だけでなく、地域の特徴も説明した方がよいです。東京、大阪、名古屋のような都市部と、地方都市、農村部、山間部、離島では生活環境が大きく異なります。インドネシアの若者の中には、日本と聞くと東京のような都市生活をイメージしている人もいます。しかし実際の勤務先が地方であれば、交通手段、買い物、病院、インドネシア食材店、モスクや礼拝場所の有無などが異なります。
また、同じ会社内で複数拠点がある場合、転勤や配置変更の可能性も説明しておくべきです。特定技能では在留資格上の活動範囲や分野が関係するため、自由にどこでも働けるわけではありません。勤務場所が変わる場合の手続きや、本人への説明の必要性も含めて、最初から透明にしておくことが重要です。
労働時間については、始業時刻、終業時刻、休憩時間、休日、週休の取り方、シフト制の有無を具体的に説明します。特にシフト制の職場では、「土日休みではない」「早番・遅番がある」「夜勤がある」「繁忙期は勤務時間が変わる」などを明確に伝える必要があります。
インドネシアでは宗教行事や家族行事を重視する人が多いため、休日の取り方に関する理解も重要です。日本では希望休を出せる場合でも、必ず希望通りになるとは限りません。年末年始、ゴールデンウィーク、お盆など、日本独自の繁忙期もあります。
また、残業については「残業があるかもしれない」ではなく、平均的な残業時間、繁忙期の残業、残業代の計算方法、残業を命じる場合のルールを説明します。残業代を含めて収入を期待している人もいれば、逆に長時間労働に不安を持つ人もいます。ここを曖昧にすると、双方にとって面倒です。
給与説明では、月給や時給だけでなく、基本給、各種手当、残業代、深夜手当、休日手当、賞与の有無、昇給の可能性を分けて説明します。そして、最も重要なのは手取り額です。
額面給与からは、所得税、住民税、健康保険、厚生年金、雇用保険、寮費、光熱費、食費、制服代、その他の控除が発生する場合があります。本人が受け取る実際の金額を理解していなければ、来日後に不満が出ます。
インドネシア人材には、給与明細の見方も簡単に説明しておくとよいでしょう。日本の給与明細には、支給項目と控除項目が分かれて記載されます。控除が「会社に取られているお金」と誤解されることもあるため、社会保険や税金の意味を事前に説明しておくことが大切です。
日本で働く場合、健康保険、厚生年金、雇用保険などの社会保険に加入することになります。これらは給与から控除されるため、本人から見ると手取りが減ったように感じられます。しかし、病気やけが、失業、将来の年金などに関わる制度であり、単なる会社の手数料ではありません。
特に厚生年金については、インドネシア人材から質問が出やすい項目です。日本に長く住む予定がない人にとって、「なぜ年金を払うのか」と感じるのは自然です。脱退一時金の制度に触れる場合は、制度の概要だけでなく、申請には条件や手続きがあること、将来変更される可能性があることも説明すべきです。
税金については、所得税と住民税の違いを簡単に説明します。特に住民税は前年所得に基づいて翌年に発生するため、来日直後には少なくても、翌年以降に負担が増える場合があります。この点を説明しておかないと、2年目に「急に給料が減った」と感じることがあります。
住居については、寮や社宅の有無、家賃、初期費用、光熱費、家具家電、インターネット、通勤距離、同居人数、部屋のルールを説明します。寮が相部屋なのか個室なのかは、本人にとって非常に重要です。日本側が「普通の寮です」と言っても、本人の想像する普通と一致する保証はありません。人間の「普通」は国境を越えるとだいたい壊れます。
生活費については、食費、交通費、携帯電話、日用品、医療費、衣類、冬服、送金手数料などを含めて説明します。特に寒冷地に配属される場合、冬服や暖房費が必要になることも伝えるべきです。インドネシアの多くの地域では、日本の冬の寒さを体感したことがないため、防寒具の準備は現実的な問題になります。
海外から来日する場合、在留資格認定証明書、査証申請、航空券、入国時の手続き、在留カードの受け取り、住民登録などの流れを説明します。本人がどの書類を準備し、どのタイミングで何をするのかを理解していないと、手続きが止まることがあります。
在留カードは、日本で生活する上で非常に重要な身分証明書です。住所変更、転職、在留期間更新などにも関係します。紛失しないこと、他人に預けないこと、コピーを求められる場面があること、期限を確認することを説明します。
事前ガイダンスで特に重要なのが、保証金や違約金、本人負担費用の確認です。特定技能制度では、本人や家族などが、保証金を徴収されたり、雇用契約の不履行に関して違約金を定められたり、不当に金銭や財産を管理されたりすることが問題になります。
インドネシアでは、日本で働くために教育機関、送出機関、仲介者、親族、知人などに費用を支払っているケースがあります。費用そのものがすべて問題というわけではありませんが、本人が金額と内訳を理解しているか、不当な保証金や違約金がないか、借金の返済負担が過大でないかは確認する必要があります。
特に注意すべきなのは、本人が「大丈夫です」と言っていても、実際には家族が借金している、パスポートや証明書を誰かに預けている、途中帰国したら違約金を払う約束をしている、といったケースです。聞き方を工夫しないと、本人が本当の状況を話せない場合もあります。
特定技能1号の支援に必要な費用については、原則として本人に直接または間接的に負担させないことが求められます。事前ガイダンス、生活オリエンテーション、相談対応、日本語学習機会の情報提供など、義務的支援に関する費用を、名目を変えて本人から徴収することは避けなければなりません。
たとえば「サポート費」「管理費」「支援手数料」などの名目で、本人の給与から控除する場合は非常に注意が必要です。適法性や説明責任を確認せずに行うと、後で大きな問題になります。
![]()
日本での生活では、ゴミ出し、騒音、近隣住民との関係、公共交通機関の利用、喫煙ルール、自転車の乗り方、交通ルールなど、細かい生活ルールがあります。日本人にとっては当たり前でも、外国人材にとっては初めて知ることが多いです。
特にゴミ出しは、地域ごとに分別方法や曜日が違います。燃えるゴミ、燃えないゴミ、資源ゴミ、ペットボトル、缶、ビン、粗大ゴミなど、分類が細かい地域もあります。日本人ですら引っ越すたびに混乱する制度を、外国人が初日から完璧に理解できるはずがありません。だからこそ、事前に大枠を説明し、来日後に地域別ルールを再確認する必要があります。
日本の職場では、時間厳守、報連相、あいさつ、清掃、チームワーク、安全確認、記録、上司への確認などが重視されます。インドネシア人材の多くは協調性があり、人間関係を大切にしますが、日本の職場文化とは違う部分もあります。
たとえば、インドネシアでは相手に失礼にならないように、分からなくても「はい」と答えることがあります。日本の職場では、分からないことを分からないと言わないまま作業すると、安全事故や品質問題につながります。そのため、事前ガイダンスでは「分からない時は必ず聞く」「ミスを隠さない」「体調不良を早めに伝える」という点を強調する必要があります。
遅刻や欠勤の連絡方法は、必ず具体的に説明します。誰に、何時までに、どの方法で、何を伝えるのかを決めておく必要があります。LINE、電話、社内アプリ、メールなど、職場によって連絡手段は異なります。
「体調が悪いので休みます」だけでは不十分な場合もあります。発熱、腹痛、けが、交通遅延、家族事情など、理由に応じて必要な対応が変わるため、連絡例文をインドネシア語と日本語で用意しておくと実務的です。
日本で病気やけがをした場合、どの病院に行くのか、健康保険証またはマイナ保険証をどう使うのか、救急車を呼ぶべき状況はどのような場合かを説明します。インドネシアでは薬局で薬を買って済ませる人も多いため、日本の医療機関の使い方に慣れていない場合があります。
また、労災に関する説明も重要です。仕事中や通勤中のけがは、通常の病気とは扱いが異なる場合があります。けがをしたらすぐに上司へ報告すること、自己判断で隠さないことを伝えるべきです。
日本は地震、台風、大雨、大雪、津波などの自然災害が多い国です。インドネシアも地震や火山、洪水などの災害がある国ですが、日本の避難ルールや自治体の防災情報は別途理解が必要です。
事前ガイダンスでは、緊急地震速報、避難場所、災害時の連絡方法、非常持ち出し品、会社や寮での避難ルールを説明します。特に地方配属の場合、災害時に日本語の情報しか得られないこともあるため、多言語対応アプリや自治体の情報ページを案内しておくとよいでしょう。
地方では、通勤や買い物に自転車を使うことがあります。日本では自転車も交通ルールの対象であり、信号、車道と歩道、夜間ライト、飲酒運転、二人乗り、傘差し運転などに注意が必要です。
インドネシアではバイク移動に慣れている人が多いですが、日本で自動車やバイクを運転するには免許や手続きが必要です。無免許運転は重大な問題になります。事前に「インドネシアで運転できるから日本でも運転できる」わけではないことを説明しておきます。
![]()
来日直後は、生活用品、寝具、調理器具、通勤用品、冬服、携帯電話、交通系ICカード、食材など、細かな出費が重なります。初月給与が満額でない場合もあり、最初の1〜2か月は送金できる金額が少なくなることがあります。
この点を本人と家族に説明しておかないと、来日直後から過度な送金プレッシャーが発生します。企業や登録支援機関としては、初期費用の目安、給与支払日、前払いの可否、生活立ち上げ支援の範囲を明確にしておくとよいでしょう。
インドネシア人材にとって、家族への送金は大きな目的の一つです。しかし、毎月の送金額を高く設定しすぎると、本人の生活が苦しくなります。食費を削りすぎる、病院に行かない、必要な衣類を買わない、休みの日に外出できないなど、生活の質が下がると、長期的な就労継続にも影響します。
事前ガイダンスでは、手取り額から家賃、光熱費、食費、通信費、交通費、貯金、緊急費を差し引いた上で、送金可能額を考えるように伝えます。できれば、簡単な月間収支シミュレーションを一緒に作ると効果的です。
インドネシアから日本へ働きに行くために、本人が教育費、試験費用、渡航準備費、紹介料などを支払っている場合があります。問題は、本人がその金額や内訳を正確に理解していない場合、または不当に高額な費用を背負っている場合です。
企業や登録支援機関は、本人がどの機関に、いくら、何のために支払ったのかを確認し、本人が理解して合意しているかを確認すべきです。特に、途中退職時の違約金、保証金、パスポート保管、家族への請求などがないかは慎重に確認する必要があります。
ムスリムのインドネシア人材の場合、1日数回の礼拝を行う人がいます。ただし、実践の程度は人によって異なります。全員が同じように礼拝時間を求めるわけではありません。そのため、事前ガイダンスでは本人に希望を確認し、職場として対応できる範囲を説明します。
たとえば、休憩時間内で礼拝できるか、空きスペースを一時的に使えるか、勤務中の対応はどうなるかなどを確認します。企業側が無理に宗教対応を約束する必要はありませんが、できないことを曖昧にするのは避けるべきです。
ムスリム人材の場合、豚肉やアルコールを避ける人が多くいます。社員食堂、寮の食事、弁当、外食、職場の懇親会などで、食べられるものと食べられないものを本人が判断できるように説明します。
日本では、スープ、調味料、ゼラチン、揚げ油などに豚由来成分やアルコールが含まれる場合もあります。すべてを企業側が管理するのは難しい場合でも、本人が確認しやすい環境を作ることはできます。食品表示の見方や、近隣のスーパーで買いやすい食材を教えるだけでも、生活の不安は減ります。
ラマダン中は、日の出から日没まで飲食を控える人がいます。日本で働きながら断食を行う場合、体力仕事、夜勤、夏場の勤務では体調管理が重要になります。
事前ガイダンスでは、ラマダン中でも安全確認や業務品質は必要であること、体調が悪い時は早めに相談すること、勤務調整が可能かどうかは職場ルールによることを説明します。本人の信仰を尊重しつつ、職場の安全を守るというバランスが必要です。
![]()
パスポートや在留カードは、本人にとって非常に重要な書類です。会社、寮の管理者、知人、仲介者などが本人の同意なく保管することは避けるべきです。本人にも、これらの書類を安易に他人に預けないように伝えます。
書類のコピーが必要な場面はありますが、原本の管理は本人が行うのが基本です。紛失した場合の再発行手続きや、住所変更時の届出についても説明しておくと安心です。
インドネシア人材は、WhatsApp、Instagram、TikTok、Facebookなどを日常的に使う人が多いです。SNSは家族や友人との連絡に便利ですが、職場の写真、利用者や顧客の情報、会社の内部情報を投稿すると、重大なトラブルになる可能性があります。
事前ガイダンスでは、職場内の撮影ルール、個人情報、顧客情報、利用者の写真、制服での投稿、会社名を出した投稿などについて説明します。特に介護、宿泊、外食、製造現場では、写真や動画の投稿が信用問題につながります。
特定技能の在留資格では、許可された活動範囲に基づいて働きます。収入を増やしたいからといって、自由に副業やアルバイトができるわけではありません。資格外活動や在留資格違反につながる可能性があります。
インドネシア人材の中には、休みの日に別の仕事をすればもっと稼げると考える人もいます。事前に、許可されていない就労は本人の在留資格に影響すること、会社にも問題が及ぶことを説明しておくべきです。
特定技能では、一定の条件のもとで転職が可能です。ただし、同じ分野や業務区分、技能水準、在留手続きなどの確認が必要であり、単に「嫌になったから明日から別の会社で働く」というものではありません。
本人には、転職を考える場合はまず相談すること、無断退職や失踪は自分の将来に不利になること、正しい手続きを踏めば選択肢があることを伝える必要があります。ここを説明しないと、問題が起きた時に本人が逃げる選択をしやすくなります。逃げるより相談する方が得だと、来日前から理解してもらうことが重要です。
本人が困った時に、誰に相談すればよいのかを明確にします。直属の上司、人事担当者、登録支援機関の担当者、母語対応可能なスタッフなど、相談先を複数示すとよいでしょう。
インドネシア人材は、人間関係を壊したくないという気持ちから、不満や困りごとを我慢することがあります。特に上司に直接言いにくい場合もあるため、職場以外の相談先も用意しておくことが重要です。
登録支援機関に支援を委託している場合は、担当者名、連絡先、対応可能時間、使用可能言語を説明します。WhatsAppやLINEなど、本人が使いやすい連絡手段を設定しておくと相談しやすくなります。
ただし、24時間何でも対応できると誤解されないように、緊急時と通常相談の違いも説明します。夜中に「Wi-Fiが遅い」と連絡されても困るわけで、そこは人間同士の文明的な線引きが必要です。
職場や登録支援機関に相談しにくい内容については、行政機関や外国人向け相談窓口があることも伝えます。労働条件、賃金未払い、暴力、ハラスメント、在留資格、生活上の困りごとなど、内容によって相談先が異なります。
本人にとって重要なのは、「困った時に相談してよい」という理解です。問題を隠したまま放置すると、失踪、無断欠勤、メンタル不調、早期退職につながることがあります。相談先を知っているだけで、深刻化を防げる場合があります。
![]()
可能であれば、事前ガイダンス資料はインドネシア語で用意します。最低でも、労働条件、給与控除、住居、相談先、禁止事項、緊急連絡先については、インドネシア語の資料を準備することが望ましいです。
日本語の資料を機械翻訳しただけでは、法律用語や労務用語が不自然になることがあります。特に、社会保険、控除、在留資格、違約金、保証金、資格外活動などは誤訳が起きやすい分野です。専門用語はやさしい表現に言い換え、本人が理解できる形にする必要があります。
給与シミュレーションは、インドネシア人材向けの事前ガイダンスで非常に効果的です。額面給与、残業見込み、控除、寮費、生活費、送金可能額を具体的に示します。
ただし、残業代や手取り額を保証するような書き方は避けるべきです。残業時間は月によって変わり、税金や社会保険料も条件により変動します。あくまで目安として示し、変動する可能性があることを説明します。
勤務先や寮の周辺マップを用意し、スーパー、病院、駅、バス停、市役所、銀行、郵便局、コンビニ、インドネシア食材店、礼拝可能な場所などを案内すると、本人の不安が減ります。
日本に来る前の本人は、勤務先周辺の生活を具体的にイメージできません。写真や地図を使って説明すると、地方配属であっても安心感を持ちやすくなります。
来日後すぐに使える緊急連絡カードも準備しておくとよいでしょう。会社の連絡先、登録支援機関の連絡先、寮の住所、勤務先住所、緊急時の電話番号、最寄り病院などを記載します。
スマートフォンに保存するだけでなく、紙でも持たせると安心です。スマートフォンの電池が切れた時に文明が急停止するのは、現代人の悲しい弱点です。
事前ガイダンスでは、説明者が一方的に話して終わるのではなく、本人に質問しながら理解度を確認します。「分かりましたか」と聞くと、多くの人は「分かりました」と答えます。これは理解確認としては弱いです。
たとえば、「毎月の給与から何が引かれますか」「病気になったら誰に連絡しますか」「副業をしたい時はどうしますか」「寮のルールで注意することは何ですか」といった形で、本人に説明してもらう方が理解度を確認できます。
インドネシア人材の場合、家族が来日判断に大きく関わっていることがあります。本人だけでなく、家族が給与や送金額に過大な期待を持っている場合、来日後に本人へ強いプレッシャーがかかります。
必要に応じて、本人の同意を得た上で、家族にも給与、生活費、送金可能額、契約期間、仕事内容を説明する機会を設けるとよいでしょう。特に若年層や地方出身者の場合、家族の理解は定着に影響します。
事前ガイダンスを実施したら、実施日、実施方法、使用言語、説明者、参加者、説明内容、本人の理解確認、質問内容などを記録します。また、事前ガイダンスの確認書を作成し、本人の署名を得て保管します。
記録が残っていないと、後からトラブルが起きた時に、企業や登録支援機関が適切に説明したことを示しにくくなります。人間の記憶は都合よく編集されるので、記録という退屈な道具が結局いちばん強いです。
![]()
採用を進めたいからといって、日本での収入を過度に魅力的に見せるのは危険です。額面給与だけを強調し、控除や生活費を説明しないと、来日後に不満が出ます。
特にインドネシアルピアに換算すると、日本の給与は大きく見えます。しかし、日本で生活する以上、日本の物価で支出が発生します。ルピア換算の夢だけ見せる説明は避けるべきです。
残業代は収入に関わるため、本人にとって関心が高い項目です。しかし、残業は常にあるとは限らず、会社が自由に無制限で命じられるものでもありません。残業を前提に借金返済や送金計画を立てると、実際の残業が少なかった時に生活が苦しくなります。
残業については、過去実績や繁忙期の傾向を説明しつつ、保証ではないことを明確にする必要があります。
礼拝、食事、ラマダン対応について、実際には職場で対応が難しいにもかかわらず「何とかなる」と言うのは避けるべきです。対応できること、本人の工夫が必要なこと、会社として対応できないことを分けて説明します。
曖昧な期待を持たせるより、最初から現実を伝えた方が定着につながります。優しさのつもりで曖昧にするのは、だいたい後で不親切になります。
相談体制を説明する時に、「困ったら相談してください」だけでは不十分です。誰に、どの方法で、何語で、何時に、どのような内容を相談できるのかを具体的に伝える必要があります。
また、相談したことで評価が下がったり、怒られたりしないことも伝えるべきです。外国人材の中には、相談すること自体を「迷惑をかけること」と感じる人もいます。相談は問題解決のための通常の行動であると説明しておくことが大切です。
事前ガイダンス後、本人が自分の仕事内容を自分の言葉で説明できるかを確認します。職種名だけでなく、具体的な作業、勤務場所、シフト、注意点を説明できるかが重要です。
額面給与、控除、寮費、生活費、送金可能額の関係を理解しているか確認します。特に「毎月いくら家族に送れると思っているか」を聞くと、期待値のズレが見えやすくなります。
本人が日本へ行くために支払った費用、借入金、家族の負担、紹介者への支払いなどを確認します。本人が話しにくい内容でもあるため、責めるような聞き方ではなく、保護のために確認していることを伝える必要があります。
困った時の相談先を本人が覚えているか確認します。会社、登録支援機関、行政窓口、緊急時の連絡先を区別できることが重要です。
事前ガイダンスは、書類上の義務を満たすためだけに行うものではありません。むしろ、採用後の定着率を左右する重要なコミュニケーションです。日本での仕事や生活について、良い面も大変な面も正直に伝えることで、本人は現実的な準備ができます。
インドネシア人材は、家族思いで協調性があり、学習意欲が高い人も多く、日本の人手不足分野で大きな力になる可能性があります。しかし、その力を発揮してもらうには、来日前の説明、来日直後の支援、職場での継続的なフォローが必要です。
事前ガイダンスを丁寧に行う企業は、単に制度を守っているだけでなく、外国人材との信頼関係を早い段階で作っています。逆に、説明を雑に済ませる企業は、後でトラブル対応に時間を取られます。最初に丁寧に説明するか、後から混乱を処理するか。どちらが楽かは、わざわざAIに聞かなくても本当は分かるはずです。
インドネシア人特定技能人材の事前ガイダンスでは、労働条件、仕事内容、入国手続き、給与、控除、住居、生活費、保証金や違約金の有無、本人負担費用、相談先、日本での生活ルールなどを、本人が理解できる言語で具体的に説明することが重要です。
特にインドネシア人材の場合、家族への送金、宗教・食事・礼拝、日本語理解度、送出費用、地方での生活環境など、来日前に確認すべき点が多くあります。日本側が当然と思っていることでも、本人にとっては初めて聞く内容かもしれません。
事前ガイダンスは、採用手続きの一部であると同時に、定着支援の第一歩です。本人が日本で働く現実を理解し、企業側も本人の背景や不安を把握することで、入国後のミスマッチを減らすことができます。
インドネシア人材を長く安定して受け入れたいのであれば、事前ガイダンスを形式的な説明で終わらせるべきではありません。本人が理解し、納得し、困った時に相談できる状態を作ることが、結果的に企業にとっても最も実務的なリスク管理になります。
![]()
LPK Timedoorは、インドネシア・バリ島デンパサールに拠点を置く職業訓練校で、日本での就労を目指すインドネシア人に対し、日本語や日本文化、仕事に対する価値観やマインドセットを学ぶ環境を提供しています。お気軽にお問い合わせください。
所在地と連絡先:
住所: Jl. Tukad Yeh Aya IX No.46, Renon, Denpasar, Bali, Indonesia 80226
電話番号: +81 80-2399-8776(日本人直通)
メール: [email protected]
Website: lpktimedoor.com
Instagram: https://www.instagram.com/lpk_timedoor/
システム開発、IT教育事業、日本語教育および人材送り出し事業、進出支援事業
特定技能
日本の人手不足分野で、一定の技能や日本語能力を持つ外国人が働くための在留資格です。特定技能1号と特定技能2号があります。
特定技能1号
相当程度の知識または経験を必要とする業務に従事する外国人向けの在留資格です。受入れ企業または登録支援機関による支援計画の実施が必要です。
特定技能2号
熟練した技能を必要とする業務に従事する外国人向けの在留資格です。特定技能1号と異なり、支援計画の義務はありません。
事前ガイダンス
特定技能1号人材に対して、在留資格申請前に、労働条件、活動内容、入国手続き、保証金や違約金の有無などを説明する手続きです。
登録支援機関
受入れ企業から委託を受けて、特定技能1号外国人への支援を実施する機関です。出入国在留管理庁に登録された機関が該当します。
支援計画
特定技能1号外国人が日本で安定して働き、生活できるように、受入れ企業が作成する支援内容の計画です。事前ガイダンス、生活オリエンテーション、相談対応などが含まれます。
在留資格認定証明書
海外にいる外国人が日本へ入国するために、事前に日本側で取得する証明書です。これをもとに在外公館で査証申請を行います。
在留資格変更許可申請
すでに日本にいる外国人が、現在の在留資格から別の在留資格へ変更するための申請です。留学生や技能実習修了者が特定技能へ変更する場合などに行います。
保証金
日本で働くことに関連して、本人や家族などから預け金のような形で徴収される金銭を指します。特定技能では、不当な保証金徴収がないか確認する必要があります。
違約金
契約に違反した場合に支払うと定められた金銭です。途中退職や契約不履行に関して不当な違約金契約がある場合、問題になります。
事前ガイダンスはインドネシア語で行う必要がありますか?
必ずインドネシア語でなければならないという意味ではありませんが、本人が十分に理解できる言語で行う必要があります。日本語能力が高くない場合は、インドネシア語で説明するか、インドネシア語の補足資料を用意するのが実務上は安全です。
事前ガイダンスはどのくらいの時間をかけるべきですか?
重要なのは時間の長さそのものではなく、本人が内容を理解しているかです。ただし、海外から初めて来日する人材の場合、仕事、生活、費用、手続き、相談先など説明すべき内容が多いため、短時間で済ませるのは現実的ではありません。技能実習修了者など日本での生活経験がある人でも、転職先や特定技能としての条件は改めて説明する必要があります。
登録支援機関に委託していれば、企業は事前ガイダンスに関与しなくてもよいですか?
登録支援機関に実施を委託することはできますが、企業が関与しなくてよいわけではありません。仕事内容、給与、勤務場所、シフト、寮、職場ルールなどは企業側が正確に情報提供する必要があります。登録支援機関だけでは分からない現場情報も多いため、企業と登録支援機関の連携が重要です。
インドネシア人材には給与のどこを重点的に説明すべきですか?
額面給与だけでなく、控除後の手取り額、生活費、寮費、送金可能額を説明することが重要です。インドネシアルピアに換算した給与だけを見ると大きく感じられますが、日本での生活費を差し引いた現実的な収支を理解してもらう必要があります。
宗教対応はどこまで企業が行うべきですか?
企業がすべての希望に対応する義務があるわけではありません。ただし、礼拝、食事、ラマダン中の体調管理などについて、対応できることとできないことを事前に説明することが重要です。曖昧な期待を持たせるより、現実的な対応範囲を伝える方がトラブル防止につながります。
本人が借金や紹介料について話したがらない場合はどうすべきですか?
責めるように聞くのではなく、本人を守るために確認していると説明することが大切です。支払先、金額、内訳、返済条件、違約金の有無、パスポートや証明書を預けていないかなどを丁寧に確認します。必要に応じて、登録支援機関や専門家と連携して確認することも検討します。
事前ガイダンス後に確認書は必要ですか?
実施した内容を記録し、本人が説明を受けて理解したことを確認する書類を残すことが重要です。実施日、実施方法、使用言語、説明者、本人からの質問、理解確認の結果なども記録しておくと、後日の確認やトラブル対応に役立ちます。
事前ガイダンスで一番避けるべきことは何ですか?
最も避けるべきなのは、良い情報だけを伝えて、本人に都合の悪い情報を曖昧にすることです。給与の手取り、生活費、仕事内容の大変さ、宗教対応の限界、残業の変動、転職や副業のルールなどを正直に伝えることが、結果的に定着率を高めます。