7月 12, 2024 • インドネシア
3月 31, 2025 • インドネシア • by Delilah
目次
インドネシアは世界第4位の人口を誇る巨大市場であり、若年層を中心に美容やコスメへの関心が年々高まっています。特に女性の間では、美に対する価値観が多様化し、SNSを通じた自己表現や美容情報の共有が活発化しています。それに伴い、美容クリニックやスキンケア商品、メイクアップアイテムへの需要が急速に拡大しており、外資系ブランドの参入も相次いでいます。本記事では、インドネシア人女性の美意識の変遷、美容・コスメ市場の現状、クリニックでの先端美容技術、そして市場参入のための実践的なポイントまで、包括的に解説します。
![]()
● 白い肌と細身の体型が理想
インドネシアでは長年、「白く透き通るような肌」と「華奢な体型」が美の象徴とされてきました。これは、農村部で日焼けした肌が「労働階級」を連想させる一方、白い肌は都市部の裕福な女性や貴族階級の象徴とされていたことに由来します。
また、伝統衣装のケバヤ(Kebaya)を美しく着こなすにはスリムな体型が求められたことも、この価値観に影響しています。
● 髪や化粧は「控えめ」が主流
化粧は主に伝統行事や結婚式など特別な場面に限られ、日常では控えめなナチュラルメイクが主流でした。派手なメイクや奇抜な髪色は、「恥ずかしい」「教育レベルが低い」とされ、社会的に好まれませんでした。
● 韓流・欧米の影響で美の基準が多様化
2000年代以降、テレビ・雑誌・YouTubeなどのメディアを通じて、韓国や欧米のトレンドがインドネシアにも広く浸透。K-POPアイドルのような「陶器肌」「涙袋」「小顔」などの新たな美の要素が、若い世代を中心に広まりました。
一方で、欧米風の「立体的な顔立ち」や「豊かな曲線美」に憧れる層も現れ、これまでの「白くて細い=美しい」という一元的な価値観は次第に揺らぎ始めました。
● 美容クリニック・エステの普及
都市部では美容クリニックやスキンケア専門店が急増し、美白やアンチエイジング、脱毛、ボトックスなどに対する抵抗感が薄れ始めました。
この時代から、美容が「特別な人のもの」から「日常のセルフケア」へとシフトし始めます。
● 自己肯定感と「自分らしさ」を重視
インドネシアのZ世代(1997年以降生まれ)は、美しさを「他人からの評価」ではなく、「自分がどう感じるか」に重きを置く傾向があります。
多くの若い女性がInstagramやTikTokで自分のスキンケアルーティン、メイク方法、日常の姿を共有し、「リアルな美しさ」「ありのままの自分」に自信を持つようになっています。
これは、以下のようなトレンドにも表れています:
● メンタルヘルスとの関連
近年の調査によると、Z世代の83%が「メンタルヘルスは美しさにとって重要な要素である」と考えており、内面の健康や感情の安定が“真の美”であると認識され始めています。
● 伝統文化との共存
最近では、ジャワ・バリ・スンダなど、それぞれの民族固有の美しさを再評価する動きも出てきています。
たとえば:
これにより、インドネシア国内の「多様な美」を肯定する機運が高まっています。
● 「インドネシア人らしさ」への誇り
かつては欧米・韓国風の美意識が崇拝されがちでしたが、最近では「自分たちの文化や特徴を大事にしよう」というローカリズムも強くなってきています。ナチュラルな肌色、黒髪、ローカルブランドのコスメ使用などが見直されつつあります。
![]()
インドネシアの美容ビジネス市場は、経済成長や中間所得層の増加、消費者の美容意識の高まりを背景に、近年著しい成長を遂げています。
インドネシアの美容市場は、2020年に約69億5,400万米ドルの規模を記録し、2019年からわずかに増加しました。 今後も年平均成長率(CAGR)約4%で成長し、2025年には約95億7,900万米ドルに達すると予測されています。
スキンケア市場は特に注目されるセグメントで、2021年には前年比5%増の17億米ドルに達しました。 2026年までには26億米ドルに拡大すると予測されています。 この成長は、消費者が自宅で過ごす時間が増え、美容に関する情報収集や製品購入が増加したことが一因とされています。
機能性と美容効果の重視
インドネシアの消費者は、製品の機能性や美容効果を重視する傾向が強まっています。 2024年に発売されたカラーメイクアップ製品のうち、美容効果を訴求するものは77%、機能性を強調するものは76%を占めています。
敏感肌向け製品の需要増加
敏感肌向けのスキンケア製品も注目されており、2022年から2024年にかけて、「敏感肌」対応を謳う製品の割合が30%から38%に増加しています。 特に18~24歳の若年層では89%が年齢に特化した美容製品に関心を示しています。
ハラール認証製品の重要性
イスラム教徒が多数を占めるインドネシアでは、化粧品に対するハラール認証の需要が高まっています。 政府規定により、国内で流通する製品はハラール認証を取得する必要があり、これは消費者の安心感や信頼性向上に寄与しています。
デジタルプラットフォームの活用
オンライン販売の割合も増加しており、2020年には14%だったオンライン販売比率が、2021年には21%に伸びています。 SNSやeコマースプラットフォームを活用したマーケティングが重要性を増しています。
外資系ブランドの参入状況
インドネシアの化粧品市場では、国内ブランド、韓国ブランド、日本ブランドが主要なシェアを占めています。 韓国製品は低価格帯から高価格帯まで幅広い価格設定で市場を拡大しており、日本製品は高品質で安全性が高いと評価され、富裕層を中心に支持を得ています。
![]()
キーワード:自己表現・パーソナライズ・肌にやさしい・透明感・ツヤ肌(グロウスキン)
人気カテゴリ
|
カテゴリ |
詳細 |
|
スキンケア |
化粧水、セラム、保湿クリーム、美白クリーム、日焼け止めなど。敏感肌用が人気。 |
|
メイクアップ |
クッションファンデ、リップティント、アイブロウ、マスカラ。韓国の影響強し。 |
|
パーソナルケア |
デオドラント、ボディスクラブ、フェイスマスクなど。香りつき商品が好まれる。 |
|
メンズコスメ |
顔用洗顔料、ヘアスタイリング剤。まだ小さい市場だが成長中。 |
● SNS活用(特にTikTokとInstagram)
● ECモール事情
● ローカルブランドの急成長
● 外資系ブランドの立ち位置
![]()
インドネシアでは、都市部を中心に美容クリニック(aesthetic clinic)の需要が急速に拡大しています。経済成長や中間層の増加、美意識の向上、SNSの影響によって、かつては富裕層や芸能人だけのものであった美容医療が、一般層にまで広がってきました。
● 需要が加速する背景
● ボトックス・フィラー(Botox, Filler)
● IPL(Intense Pulsed Light)・レーザー治療
● HIFU(高密度焦点式超音波)
● ボディ・コントゥアリング(脂肪減少・痩身治療)
● DNAスキンケア(遺伝子分析型パーソナル美容)
● AIを使った肌分析・診断
● AR(拡張現実)を使ったビフォーアフターシミュレーション
● 現地チェーン vs 外資系クリニック
|
項目 |
ローカルクリニック |
外資系(日・韓・シンガポール等) |
|
価格 |
比較的安価 |
高価格帯 |
|
ターゲット層 |
中間層~富裕層 |
富裕層・外国人層 |
|
特徴 |
アクセスしやすい、都市部に集中 |
高度な技術・日本品質・安全性訴求 |
![]()
インドネシアの美容市場は、経済成長、若年人口の多さ、SNSによる美意識の向上、そして中間層の拡大により、国内外のブランドにとって非常に魅力的な市場となっています。
しかし、文化的・宗教的背景、ローカル競合、消費者行動の違いなど、参入における独特のハードルも存在します。
ここでは、日本企業・外資系企業がこの市場に参入し、成功するために押さえるべき主要ポイントを解説します。
● 価格感度の高い市場
インドネシアでは、「安くて良いもの」が好まれる傾向が強く、高価格帯の商品は一部の富裕層しか購入しません。中間層をターゲットにする場合、コスパ重視の戦略が重要です。
● 成功の鍵は「プレミアム・バリュー」
● 気候と肌質に合わせる
● 宗教的配慮(ハラール認証)
● 「Made in Japan」の強み
● 例:効果的な伝え方
● SNSマーケティングの活用
● オンライン販売(eコマース)の強化
● 体験型のポップアップ展開
● ローカルディストリビューターの活用
● 文化理解・言語対応
● BPOM登録(国家食品薬品監督庁)
● ハラール認証の取得(必要に応じて)
● ジャカルタ・バリに集中しがちな競合
インドネシアの美容・コスメ市場は、若年人口の多さ、SNS文化の発展、経済成長に支えられ、今まさに大きな飛躍を見せています。白い肌や細身といった一元的な美の基準から、個性や健康を重視する多様な価値観へと移り変わる中で、消費者のニーズもより複雑かつ高度になっています。また、ハラール認証の重要性、ECやSNSを活用したマーケティング、価格と品質のバランスなど、他国とは異なる市場特性を理解することが成功の鍵です。今後、インドネシアにおける美容市場の可能性はさらに広がっていくと予想されており、日本企業を含む外資系企業にとっても新たな成長のチャンスとなるでしょう。
インドネシアでのビジネスなら創業10周年のTimedoor
システム開発、IT教育事業、日本語教育および人材送り出し事業、進出支援事業
本記事で使用した用語解説
ハラール認証
イスラム教の戒律に基づいた製品であることを認定する制度。化粧品にも適用され、インドネシアでは消費者の安心材料として重視されている。
Z世代
1997年以降に生まれた若い世代。SNSを駆使し、自己表現や情報発信に積極的な消費者層。
グロウスキン
健康的で内側から光るようなツヤのある肌。美白信仰とは異なる新しい美のトレンド。
BPOM登録
インドネシア国家食品薬品監督庁(BPOM)による製品承認手続き。化粧品・医薬品などの輸入・販売に必須。
O2O戦略
オンラインとオフラインを連携させたマーケティング戦略。ECと実店舗の相乗効果を狙う取り組み。
Selebgram
Instagramで影響力を持つインドネシアのインフルエンサー。マーケティングでの活用が盛ん。
よくある質問(FAQ)
Q1. インドネシアで美容商品を販売するには何が必要ですか?
A1. 基本的にはBPOM登録が必要で、さらに市場によってはハラール認証の取得も推奨されます。ラベルや広告はインドネシア語表記が求められます。
Q2. 日本の化粧品ブランドはインドネシアで通用しますか?
A2. 高品質・安心というイメージから一定の信頼を得ており、富裕層や中間層の女性に人気があります。ただし、価格や現地のニーズに合わせたローカライズが成功の鍵です。
Q3. ECと店舗販売、どちらが効果的ですか?
A3.両方を組み合わせたO2O戦略が効果的です。特にShopeeやTokopediaといったECモールでの販売は重要で、SNSと連携したプロモーションも成果を上げています。
Q4. インドネシアの女性はどのような美容商品を好みますか?
A4.オイリー肌に対応したスキンケアや高SPFの日焼け止め、敏感肌用の商品などが人気です。また、軽いテクスチャーやナチュラルな仕上がりのコスメも支持されています。
Q5. 美容クリニックの市場は今後も伸びますか?
A5.都市部を中心に継続的な成長が予想されており、Z世代や男性客の増加、最新技術の導入によってさらなる市場拡大が見込まれています。