
2月 20, 2025 • 財閥, インドネシア
8月 24, 2025 • インドネシア • by Erika Okada
目次
インドネシアは「物価が安い」と言われがちですが、実際に住んでみると「高い領域」と「安い領域」がはっきり分かれています。特に住宅と外食は、選ぶスタイルによって生活費が大きく変わります。駐在員や外国人経営者が住むマンション・高級レストランは日本に近い水準、時にそれ以上。一方、ローカルの食堂や下宿(コス)を利用すれば、日本の数分の一に抑えられるケースもあります。
ここでは、生活をする上で欠かせないいくつかの項目をインドネシアと日本を比較して解説していきます。
高級レストラン(ホテル内や西洋料理店)
コース料理+ワインを頼めば、1人あたり300,000〜600,000ルピア(約2,700〜5,400円)。東京のフレンチ・イタリアンと大きな差はありません。
ワルン(ローカル食堂)
ナシゴレンやミーゴレンなどの1品料理は 20,000〜35,000ルピア(約180〜320円)。飲み物をつけても500円を超えることは少なく、人口の大半のインドネシア人はこのようなローカルワルンで食事をすることが多いです。社員食堂や福利厚生として利用する企業もあります。
高級レストランでは1人1万円を超えることも珍しくなく、ジャカルタの2倍以上になるケースが多い。
大衆食堂や牛丼チェーンではワンコイン(500円台)で食べられますが、ジャカルタのワルンには敵いません。
ジャカルタ:一般的な中級米は 1kgあたり約14,668ルピア(約134円)。
東京:5kgで約2,650円(=1kgあたり530円)。
→ 米はインドネシアが約1/4の価格。ただし、日本米のような高級銘柄はむしろ輸入コストで割高です。
高級マンション(中心部・家具付き85㎡)
月 約21,118,700ルピア(約191,900円)。外国人駐在員に人気。セキュリティやプール、ジム完備。
ローカルコス(簡易下宿・個室)
1部屋 1,500,000〜3,000,000ルピア(約13,600〜27,200円)/月。トイレ・シャワーは共用の場合も多く、学生や単身労働者が利用。
高級マンション:同条件で月 約447,961円 とジャカルタの2.3倍。
学生用ワンルームや下宿:最低でも5〜6万円は必要で、ジャカルタのコスの倍以上。
ジャカルタ:1,300〜2,200VA契約で 1,444〜1,699ルピア/kWh(約13〜15円/kWh)。
東京:20〜30円/kWh程度。
→ 単価はインドネシアの方が安いですが、ジャカルタはエアコン必須なので使用量は日本より多め。
ジャカルタ:レギュラーガソリン 約13,107ルピア/L(約119円/L)。
東京:約165円/L。
→ ジャカルタは約40%安い。
ジャカルタ(8km走行):62,466ルピア(約565円)。
東京(8km走行):約4,868円。
→ 東京はジャカルタの9倍近く。さらにジャカルタではGojekやGrabなど配車アプリが普及しており、バイクタクシーならさらに安価で移動可能。
Jakarta Intercultural School(高等部):508,000,000ルピア(約462万円/年)。
日本の私立大学:年間100〜200万円程度。
東京のインターナショナルスクール:年間300万円超。
→ インドネシアの国際校は、日本の大学より高額。駐在員や外国人家庭にとって最大の出費項目です。
インドネシアの経済を理解する上で欠かせないのが「消費者物価指数(CPI)」です。CPIは一般家庭が購入する商品やサービスの価格変動を示すもので、生活コストや購買力、さらには企業経営におけるコスト構造に直結します。特にインドネシアは「物価が安い国」と言われる一方、為替・天候・政策補助によって物価が上下する特徴を持ちます。本稿では、この過去10年ほどのCPIの推移を振り返り、現在と将来を見通すための視点を整理します。
2014年当時、インドネシアのインフレ率は8%前後に達しており、エネルギー補助金削減が大きな要因となっていました。ガソリン価格の補助金を縮小した結果、生活必需品の価格に波及し、庶民の体感インフレはさらに強いものでした。
その後2015〜2016年にかけては、補助金改革の定着や国際エネルギー価格の下落により、インフレ率は3〜4%台に収まりました。
この期間は、CPIがおおむね3%前後で安定。経済成長率も5%前後を維持し、投資家や駐在員にとっては「予測しやすい環境」が続きました。
特に2019年は3%弱と低水準で、インドネシア経済においてインフレ懸念がほとんどない時期でした。
パンデミックの影響で消費が冷え込み、2020年と2021年はインフレ率が2%を下回る局面もありました。2021年は1.6%と過去数十年で最低水準の一つとなり、「インフレを心配する必要がない」時期でした。
この頃は企業にとって人件費やオフィスコストの伸びも限定的で、むしろ需要減少が大きな課題でした。
世界的な原油価格高騰やサプライチェーン混乱を背景に、インドネシアでも物価上昇が加速。2022年のインフレ率は4.2%に跳ね上がりました。特に燃料価格の上昇が庶民生活に大きな打撃を与え、食料や交通費も連鎖的に値上がりしました。
2023年には物価上昇圧力がやや収まり、インフレ率は3.7%程度。政府の食料備蓄放出や燃料価格調整が効果を上げ、消費者物価は中央銀行の目標レンジ(2〜4%)に収まりました。
2024年には特殊要因が重なり、インフレ率は一時0.7%台にまで低下。電気料金の一部値下げ、航空運賃の抑制などが背景にありました。ただし、4月には燃料や電気料金の調整で一時的に月間インフレが急上昇する場面もあり、「政策次第で変動が激しい」という特徴が改めて表れました。
2025年に入ると、CPIは再び2〜3%台に戻り、長期的には「安定的な低インフレ」基調にあります。特に7月の年率インフレは2.37%で、中央銀行の想定通りの水準でした。
短期的には米価や気候要因による変動はありますが、構造的に見れば「管理された安定インフレ」と評価できます。
インドネシアと日本の物価を比較すると、明確な二極構造が浮かび上がります。日常生活に関わる食費や交通費、光熱費はインドネシアの方が大幅に安く抑えられます。ワルンでの食事やコスでの生活、タクシーやガソリンなどは日本の数分の一の水準です。一方で、外国人が利用する高級レストランやマンション、そして国際教育は日本と同等かそれ以上の費用がかかります。
つまり、インドネシアは「全てが安い国」ではなく、選択次第で生活コストが大きく変わる国です。進出企業は社員にどの水準の生活を提供するのかを明確にし、福利厚生や給与設計を行うことが、持続可能な経営に直結します。
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本記事で使用した単語の解説
ルピア(IDR):インドネシアの通貨単位。為替相場により日本円との換算レートは変動する。
ワルン:庶民的な食堂や屋台を指すインドネシア語。ナシゴレンやミーゴレンなどのシンプルな料理を安価に提供する。
コス(Kost):インドネシアに多い下宿形式の住まい。学生や単身労働者が利用し、家具付き・共用設備が一般的。
マンション:日本で言う「分譲マンション」よりも広い意味で、外国人駐在員向けの高級集合住宅も含む。
kWh(キロワットアワー):電気料金の単位。消費電力量1kWhは「1000ワットの電力を1時間使用した場合」の量。
国際校:インドネシアにあるインターナショナルスクール。授業は英語など外国語で行われ、学費は非常に高額。
タクシーアプリ(Grab, Gojek):東南アジアで主流の配車アプリ。車だけでなくバイクタクシーも呼べるため、低コストでの移動手段として普及している。
FAQ
Q1. インドネシアは本当に「物価が安い国」と考えていいのですか?
A. 一部正しいですが、全てが安いわけではありません。日用品や交通費は安価ですが、住宅や教育など外国人が利用するサービスは日本並み、あるいはそれ以上の費用がかかります。
Q2. 駐在員の住宅費はどれくらい見込むべきですか?
A. 中心部の高級マンションなら月20万円前後、日本と比べれば安いですが、現地感覚では高額です。ローカルコスを利用すれば1〜3万円程度で済みますが、駐在員向けには現実的ではありません。
Q3. 外食はどのくらいの差がありますか?
A. ワルンなら1食200〜300円程度ですが、ホテル内や西洋料理レストランでは3,000〜5,000円ほどで、東京とほぼ同等です。食事の場所選びで生活費は大きく変わります。
Q4. 教育費はどの程度違いますか?
A. インドネシアの国際校は年間400万〜500万円と、日本の私立大学を上回る場合もあります。国立・私立大学に進学する現地学生の費用は日本の1/10程度に抑えられるため、外国人と現地人で大きな格差があります。
Q5. ビジネスに直結する費用差はどこにありますか?
A. 人件費・交通費・日用品コストは圧倒的に安く、競争優位につながります。一方で、教育・住宅・外資系サービスは高コスト要因になり得るため、福利厚生制度や赴任手当の設計に注意が必要です。