4月 1, 2025 • インドネシア • by Erika Okada

現地で働く人が知っておくべきインドネシアの祝日や有給の特徴

現地で働く人が知っておくべきインドネシアの祝日や有給の特徴

インドネシアでビジネスを展開する企業や現地に赴任するマネージャーにとって、現地の祝日制度や有給休暇制度を正しく理解しておくことは、人事管理や業務計画において非常に重要です。とくにインドネシアはイスラム教を中心とした宗教的行事が社会に大きな影響を与える国であり、そのスケジュールや文化を知らずに業務を進めると、思わぬトラブルや信頼の損失につながることもあります。本記事では、2025年の祝日カレンダーをベースに、労働法に基づく有給制度、そして現地特有のTHR(宗教祭日手当)制度について詳細に解説し、海外駐在者や現地法人の運営担当者が押さえておくべきポイントをまとめました。

 

 

インドネシアの主要な祝日

インドネシアの主要な祝日

インドネシアでは、宗教的・歴史的な背景から、多様な祝日が設定されています。以下に、2025年の主要な祝日をまとめます。

日付

曜日

祝日名(日本語)

祝日名(インドネシア語)

11

水曜

新年

Tahun Baru 2025 Masehi

127

月曜

ムハマッド昇天祭

Isra Mikraj Nabi Muhammad S.A.W.

129

水曜

旧暦新年(春節)

Tahun Baru Imlek 2576 Kongzili

329

土曜

サカ暦新年(ニュピ)

Hari Suci Nyepi Tahun Baru Saka 1947

331日~41

月曜~火曜

断食明け大祭(レバラン)

Hari Raya Idul Fitri 1446 Hijriah

418

金曜

キリスト受難日

Wafat Yesus Kristus

420

日曜

復活祭(イースター)

Kebangkitan Yesus Kristus (Paskah)

51

木曜

メーデー

Hari Buruh Internasional

512

月曜

仏教祭(ワイサック)

Hari Raya Waisak 2569 BE

529

木曜

キリスト昇天祭

Kenaikan Yesus Kristus

61

日曜

パンチャシラの日

Hari Lahir Pancasila

66

金曜

犠牲祭(イドゥル・アドハ)

Hari Raya Idul Adha 1446 Hijriah

627

金曜

イスラム暦新年

1 Muharam Tahun Baru Islam 1447 Hijriah

817

日曜

独立記念日

Proklamasi Kemerdekaan

95

金曜

ムハマッド誕生日

Maulid Nabi Muhammad S.A.W.

1225

木曜

クリスマス

Kelahiran Yesus Kristus

 

これらの祝日は、政府によって毎年発表され、日付が変動する場合があります。 特に宗教的な祝日は、各宗教の暦に基づいて決定されるため、毎年の日付が異なります。

有給休暇の特徴

インドネシアの労働法では、労働者の権利として以下のような有給休暇が定められています。

年次有給休暇

  • 取得条件: 12か月間連続して勤務した後、最低12日の有給休暇が与えられます。

病気休暇

  • 給与保証: 医師の診断書がある場合、以下の割合で給与が支払われます。
    • 最初の4か月: 100%
    • 5~8か月目: 75%
    • 9~12か月目: 50%
    • 13か月目以降: 25%

産前産後休暇

  • 期間: 出産の前後でそれぞれ1.5か月間の有給休暇が認められています。

慶弔休暇

  • 結婚: 3日間
  • 子どもの結婚: 2日間
  • 子どもの洗礼や割礼: 2日間
  • 妻の出産または流産: 2日間
  • 家族の死亡: 2日間
  • 同居家族の死亡: 1日間

有給休暇取得奨励日(Cuti Bersama)

インドネシア政府は、祝日の前後に「有給休暇取得奨励日(Cuti Bersama)」を設定し、労働者に有給休暇の取得を促進しています。 これにより、連休が長くなり、帰省や旅行がしやすくなります。 政府機関は原則として休業となり、一般企業もこれに従うことが多いです。

 

 

宗教祭日手当(Tunjangan Hari Raya, THR)

インドネシアでは、Tunjangan Hari Raya(THR)と呼ばれる「宗教祭日手当」が、すべての正社員や契約社員に対して支給されることが労働法で義務付けられています。これは特定の宗教行事(主にレバラン=断食明け大祭)の前に、労働者の生活を支援するための重要な制度です。

支給対象者

  • 最低1か月以上勤務している労働者
  • 正社員・契約社員・派遣社員すべてが対象
  • 試用期間中の労働者にも適用される(※ただし勤務1か月未満の場合は対象外)

支給金額の目安

  • 1年以上勤務している場合:基本給+固定手当の1か月分相当
  • 1年未満勤務の者:在籍期間に応じて比例配分される
    • たとえば6か月勤務の場合は、1か月給与の50%

支給時期

  • 各従業員の信仰している宗教の重要な祝日の7日前までに支給することが義務づけられています。
    • 多くの場合、イスラム教徒に対してはレバラン(Idul Fitri)前
    • キリスト教徒にはクリスマス前
    • 仏教徒にはワイサック(Waisak)前
    • ヒンドゥー教徒にはニュピ(Nyepi)前

法的根拠と罰則

  • 労働省規定(Permenaker No. 6 Tahun 2016) に基づき、雇用主はTHRを必ず支給しなければならない。
  • 支給が遅れた場合、5%の遅延利息の追加支払いが課される。
  • 支給しない企業に対しては、行政制裁や事業許可の停止などの罰則も規定されている。

THRを巡る企業対応と課題

近年では、景気や企業の財政状態を理由にTHRの支払いを遅延・分割する企業が問題視されることもあります。とくに2020年〜2021年のパンデミック時には、「労使協議の上で分割支払いを認める」特別通達が政府から発出されました。

ただし2022年以降は原則に戻り、一括支払いが基本とされており、労働省はこれを厳格に監督しています。

ポイントまとめ

内容

詳細

支給義務

法律で義務づけられている(宗教に関係なく)

支給金額

1か月分の基本給+固定手当(勤続1年未満は按分)

支給タイミング

各宗教祝日の7日前までに

遅延・未払い

罰則あり。遅延利息(5%)+行政制裁の可能性

最近の傾向

分割支払いは原則不可。企業財政の健全性が問われる

 

経営者・マネージャーが知っておくべき運用ポイント

THRの支給は、企業にとってコスト負担が大きい一方、従業員の忠誠心・モチベーション向上に直結する制度でもあります。以下の観点から戦略的に運用することが重要です。

  1. 年間の財務計画に必ずTHRコストを含めること
  2. 宗教行事に合わせて部署ごとに事前にスケジューリングする
  3. THR支払い証明書を従業員に発行して透明性を保つ
  4. 契約社員・パートタイマーにも法的義務がある点を再確認
  5. 政府の労働省ポータルで毎年更新されるガイドラインをチェックする

 

 

まとめ

インドネシアでのビジネス運営においては、宗教や文化に根差した祝日制度と、それに基づいた休暇管理を理解しておくことが不可欠です。特にTHR(宗教祭日手当)など、独自の慣習に基づく制度が労働者の生活や会社の信用に大きな影響を及ぼすことから、経営者やマネージャーは制度の詳細と法的責任を理解し、適切に対応する必要があります。本記事を通じて、インドネシアでの労務管理の基本を押さえ、現地スタッフとの信頼関係の構築や安定した運営の一助となれば幸いです。

 

 

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本記事で使用した単語の解説

  • THR(Tunjangan Hari Raya):宗教祭日前に支払われる特別手当。法律により義務付けられている。
  • Cuti Bersama:政府が推奨する有給奨励日。祝日と連続するように設定され、企業によっては有給扱いとなる。
  • パンチャシラ:インドネシアの建国5原則。6月1日はパンチャシラの日として祝日。
  • ニュピ(Nyepi):ヒンドゥー教のサカ暦新年。バリ島では一切の外出や電気使用が禁じられる。
  • レバラン(Lebaran):イスラム教の断食月明け(Idul Fitri)の祝祭。大量の帰省と休暇が発生する。

 

 

FAQ(よくある質問)

Q1: THRは全社員に支払う必要がありますか? A1: はい。インドネシア労働法では、1か月以上勤務した全ての正社員・契約社員に対してTHRの支給が義務付けられています。

Q2: THRの支給タイミングはいつですか? A2: 各従業員の宗教的祝日の少なくとも7日前までに支給する必要があります。

Q3: Cuti Bersamaは強制参加ですか? A3: 法的には強制ではありませんが、多くの企業では有給休暇としてこの日に合わせて休暇を取得するよう促しています。

Q4: 年次有給休暇はいつから取得できますか? A4: 同一の会社で12か月間連続して勤務した場合に、最低12日の年次有給休暇の権利が発生します。

Q5: パートタイマーや派遣社員もTHRを受け取る権利がありますか? A5: はい、契約期間や勤務状況によっては、パートや派遣社員もTHRの支給対象となります。

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