4月 18, 2025 • インドネシア, 特定技能・技能実習 • by Reina Ohno

日本の飲食料品製造業で深刻化する人手不足の実態と外国人食品製造人材の活用

日本の飲食料品製造業で深刻化する人手不足の実態と外国人食品製造人材の活用

日本の食を支える飲食料品製造業は、少子高齢化による労働力人口の減少に加え、「3K」イメージや低賃金といった業界固有の課題が重なり、かつてない人手不足に直面しています。製造ラインが止まりかねない現場では、採用難・定着難が深刻化し、品質トラブルや物流停滞、さらには事業縮小・倒産リスクまで波及し始めました。本記事では、人手不足の現状・要因から企業が抱える具体的な痛点、そして行政・業界・企業が取り組む解決策や技能実習や特定技能ビザの外国人材の活用までを多角的に整理し、食品メーカーが生き残るための道筋を提示します。

 

飲食料品製造業の人手不足の現状とその背景

飲食料品製造業の人手不足の現状とその背景

まず、飲食料品製造業における人手不足の現状と、そうなっている背景について見ていきましょう。日本全体で少子高齢化が進み労働力が減少する中、この業界特有の要因も重なり、人材不足が深刻化しています。

労働力人口の減少(少子高齢化)

日本全体の人口構造の変化が、製造業の労働力不足に直結しています。少子高齢化によって若年層の人口が減り、生産年齢人口(15~64歳の労働力人口)は年々縮小しています。実際、総人口は2010年をピークに減少に転じ、2023年には約1億2,471万人とピーク時より減少しました。さらに今後も減り続ける見通しで、2050年には日本の総人口が1億人を下回ると予測されています。

労働力の中心である若い世代が減少する一方で、高齢者の割合は増加しています。製造業全体でも若手就業者数の減少傾向が続き、高齢就業者が増えているものの、他産業と比べると製造業で働く高齢者の割合は低めです。これは、製造現場の重労働を高齢者が担うのが難しいケースも多いためで、若い労働力の補充が追いつかない現状につながっています。こうした人口動態の変化が、日本中の産業で人手不足を引き起こしていますが、特に食品製造業はその影響を強く受けています。

業界特有の要因(3K職場・低賃金など)

食品製造業界には、人手不足を一層深刻にする業界特有の構造的な要因もあります。代表的なのは労働環境や待遇面の課題です。この業界は昔から「3K」(きつい、汚い、危険)と形容されることがあり、重労働や衛生管理の厳しさ、工場内作業の単調さなどが敬遠されがちです。

また賃金水準の低さも指摘されています。他産業と比べて食品製造業の給与はやや低い傾向にあり、このため「給料が安い割に大変な仕事」というイメージが求職者の間に浸透してしまっています。実際に、食品製造業は非正規雇用(アルバイトやパート)の比率が高く、人件費抑制の側面もあって待遇が十分でない場合も多いとされています。加えて、工場の立地が地方や郊外に多く、都心に比べて通勤しづらい環境であったり、若者が地元に定着しにくいことも、人材確保を難しくする一因です。

長時間労働や休みづらさも問題視されています。慢性的な人手不足の職場では一人ひとりの負担が大きくなりがちで、残業や休日出勤が常態化しやすい傾向があります。近年、働き方改革で労働時間の是正や有給休暇取得促進が叫ばれていますが、十分行き届いていない現場も残っています。こうした職場環境だと、新しく人を採用しても早期離職につながりやすく、採用しては辞められるという悪循環に陥っている企業も少なくありません。

求職者の志向変化と需要ギャップ

昨今の若者や求職者の志向も、食品製造業の人手不足に影響しています。IT業界などテレワークが可能で柔軟な働き方ができる仕事や、オフィスワークで清潔な環境の仕事に人気が集まりがちで、一方で工場での立ち仕事やライン作業は敬遠される傾向があります。

いわゆる「きれいな仕事」に人材が集中し、「きつい仕事」に人が集まらないという需要のミスマッチが起きています。食品工場ではリアルタイムでモノづくりを行うためリモートワークは難しく、勤務体系もシフト制など拘束が多いケースが一般的です。このように他業種に比べ働き方の柔軟性に欠ける点も、若年層から不人気となる理由の一つです。

さらに、食品製造業は中小企業や家族経営の工場も多く、後継者不足も深刻です。事業主の高齢化に対して、後を継ぐ人材が見つからず廃業に至るケースも指摘されています。廃業が増えると業界全体の雇用規模も縮小してしまい、残った企業にさらに負荷がかかるという連鎖も懸念されます。

地域差と深刻なケース

人手不足の深刻さには地域差もあります。全国平均では求人倍率(求職者に対する求人件数の比率)が高水準ですが、地方の食品工場ではさらに人が集まりにくい状況です。例えば福井県では、飲食料品製造業の有効求人倍率が5.61倍にも達しています。これは求職者1人に対し求人が5件以上ある計算で、地元では全く人材が足りず、求人を出しても充足できない様子がうかがえます。全国平均でも2021年度時点で2.19倍と、1人の求職者に2件以上の求人がある状態でした。

そして直近ではこの倍率がさらに上昇傾向にあります。厚生労働省の統計によれば、2024年初頭(1~3月)の時点で飲食料品製造業の有効求人倍率は約3.05倍に達しており、全産業平均の1.33倍を大きく上回っています。このように地方ほど人材確保が難しく、都市部でも他業種に比べて求人難という状況が続いています。

コロナ禍と外国人労働力の動向

人手不足の背景として、新型コロナ禍による影響も触れておく必要があります。2020年前後はコロナの影響で外国人労働者が一時大幅に減少しました。入国制限や帰国の増加により、2021年には在留外国人労働者数が156万人まで落ち込んでいます(2020年は約182万人でした)。食品工場でも技能実習生や留学生アルバイトなど外国人に依存していた職場ほど、この時期に人手不足が顕在化しました。

しかしコロナ禍が落ち着いた2022年以降、外国人労働者は再び増加傾向に転じます。2023年には在留外国人労働者数が過去最多の200万人超となり、前年比+12.4%という急増を記録しました。これに伴い、外国人を雇用する事業所数も過去最高を更新しています。

飲食料品製造業もその例外ではなく、外国人材への依存度が高まりつつある業界です。厚生労働省の集計では、2021年時点で食品製造業に従事する労働者のうち外国人の占める割合が年々上昇しています。とりわけ2019年に始まった特定技能制度(後述)によって、新たに工場で働く外国人が増えています。このように、国内の若手人材が減少する一方で、海外からの労働力を受け入れる動きが人手不足の穴を埋める重要な要因となっています。

 

 

飲食料品製造業界・企業が直面している具体的な課題

飲食料品製造業界・企業が直面している具体的な課題

では、人手不足に直面する食品メーカーや工場では具体的にどんな問題が起きているのでしょうか。現場レベルでの課題を整理します。

採用難と定着率の低下

まず人材の採用そのものが難しいという課題があります。求人を出しても応募が集まらない、人材紹介会社に依頼しても適任者が見つからない、といった声が各企業から聞かれます。前述のように求人倍率が非常に高いため、企業間で人材の奪い合い状態です。特に中小の食品メーカーは大手に比べ知名度も低く、応募者から選ばれにくいという不利があります。

ようやく採用できても定着しない問題も深刻です。せっかく新人を雇っても、仕事がきつかったり労働時間が長かったりで「思っていたのと違う」と感じ、短期間で辞めてしまうケースが後を絶ちません。アルバイトや派遣社員など非正規の割合が高い職場では、契約満了や人間関係の希薄さもあって離職率が高くなりがちです。その結果、常にどこかの部署で人手が足りない状態が慢性化し、現場社員の士気低下にもつながっています。

技術・ノウハウの継承も課題です。例えばベテランの職人が長年培った製造技術や勘所を若手に教える余裕がなく、属人的なスキルが引き継がれないまま退職されてしまうケースがあります。これは品質や生産効率の低下につながるだけでなく、若手が成長する機会を失い人材育成が停滞する要因にもなります。人が足りないと教育担当者を置けず、新人教育がおろそかになってしまう問題もあります。

人件費高騰とコスト負担

人手不足は企業のコスト面にも影響を与えています。人材確保のために求人広告費や紹介手数料といった採用コストが膨らみ、さらに人手をつなぎとめるために賃金アップを行わざるを得ないケースも増えています。昨今は物価高騰で原材料費やエネルギー費も上昇していますが、それに加えて人件費まで増加すると、中小企業ほど経営を圧迫されます。

ある企業では、品質トラブル増加に対応するため人材育成に投資したものの、給与引き上げによるコスト増で経営が立ち行かず倒産に至ったという報告もあります。

また2024年から最低賃金が全国平均で時給1,000円を超える水準に引き上げられ、各社でパートや契約社員の時給見直しが必要になっています。食品製造業は薄利多売の業態が多く、価格競争も激しいため、コスト上昇分を製品価格に転嫁しにくいという事情があります。結果として、人件費アップ分を会社が抱え込む形となり、利益率が低下してしまう企業が出ています。大企業であれば賃上げによる人材確保を図る余裕がありますが、中小ではそれも難しく、資金力の差が人材確保力の差となって現れる傾向も見られます。

現場負担の増大と労務管理上のリスク

慢性的な人手不足下では、現有社員への負荷集中が避けられません。一人ひとりが担う業務範囲が広がり、残業の増加や休日出勤でしのぐ場面も出てきます。しかしこれでは従業員の疲弊を招き、労働災害やミスのリスクも高まります。特に食品工場では衛生管理や品質管理に気を遣う必要がありますが、疲労から注意力が落ちると異物混入や分量ミスなど品質トラブルの可能性も増えてしまいます。

さらに、過重労働による健康被害やメンタル不調が問題化すると、企業は労働基準法違反など法的リスクにも晒されます。慢性的な長時間労働は法令で是正が求められており、「36協定」の範囲を超える残業は許されません。人が足りず現場が回らないからといって、社員に無理をさせ続けると違法残業となり行政指導の対象になります。こうした労務管理上の難しさも、人手不足企業が抱える悩みの一つです。

外国人材受け入れに伴う課題

人手不足を補うため、多くの企業が外国人労働者の受け入れを進めています。しかし外国人材の活用には独自の課題もあります。例えば言葉の壁です。日本語での業務指示やコミュニケーションが十分取れず、生産現場で誤解やミスが起きるケースがあります。また文化や習慣の違いから職場に溶け込むまで時間がかかったり、生活上のサポートが必要な場面もあります。

さらに、近年は食品製造分野で外国人を積極採用する企業が増えたため、外国人材の獲得競争も起きています。ベトナムやインドネシアなどアジア各国から技能実習生や特定技能人材が来日しますが、受け入れ枠には限りがあり、送り出し国での人気も相まって、人材エージェント費用の高騰や人材の取り合いにつながっています。特定技能の試験に合格した外国人は複数の求人から条件を比較して就職先を選ぶため、待遇が悪いとせっかく来ても他社に移る、ということも起こりえます。

また、技能実習制度では受け入れ企業に対し研修や生活支援など一定の責務があり、中小企業にはそれが負担になる面もあります。行政手続きの複雑さ(ビザ申請や在留管理)も指摘されています。ただでさえ人手不足で忙しい人事担当者にとって、外国人受け入れの事務手続きは煩雑で、専門の管理団体に委託するにも費用がかかります。こうした課題を乗り越えつつ、各社は戦力として外国人材を育成・活用していく必要に迫られています。

 

 

飲食料品製造業の人手不足が生産・品質・物流にもたらす影響

飲食料品製造業の人手不足が生産・品質・物流にもたらす影響

人手不足が企業内部にとどまらず、事業活動全般に深刻な影響を及ぼし始めています。ここでは、生産量や製品品質、流通・物流面で現れている具体的な影響について解説します。

生産ラインの稼働低下と生産量の減少

生産現場への直接的な影響としてまず挙げられるのは、ライン稼働率の低下による生産量減少です。製造工程に必要な人数が確保できないと、機械設備があってもフル稼働させられず、生産計画通りに製造できなくなります。例えば本来5人で回すラインを3人で回せば、処理能力が落ちるのは避けられません。納期に間に合わず受注機会を逃すことも出てきます。

実際、2021年には食品製造業の生産量が前年比0.5%減少したとのデータもあり、人手不足が一因と指摘されています。人員不足を補うため、やむを得ず生産工程の簡略化を行うことも考えられます。例えば通常は二人体制でチェックしていたところを一人に減らす、手間のかかる作業を省略する、といった措置です。しかしその結果、品質管理が甘くなってしまうリスクがあります。次第に生産計画の縮小を余儀なくされ、最終的には事業規模の縮小や特定製品ラインの休止などに追い込まれる場合もあります。

製品品質の低下とクレーム増加

人手不足は製品の品質にも影響します。十分な人員がいないために、検品(検査)工程に時間をかけられなかったり、熟練者ではない人が無理に担当したりすると、どうしても品質にばらつきが出やすくなります。前述のように工程を省略した結果、異物検出や重量チェックの精度が落ちるかもしれません。現場に余裕がないと機械のメンテナンスも後回しになり、小さな不具合を見逃して製品に影響するケースもあります。

実際に食品事故(品質不良や異物混入など)の件数は近年増加傾向にあるとの指摘もあります。品質トラブルが起これば、顧客からのクレーム対応に追われます。人手不足の中でクレーム対応をすること自体さらに負担となり、他の業務が滞るという悪循環です。品質低下は顧客満足度の低下につながり、ブランド信頼の失墜を招きかねません。特に食品は安全・安心が重視されるため、一度信用を落とすと回復に時間がかかります。

品質問題が頻発すれば取引先からの受注が減ったり、最悪の場合は契約解除に至ることもあります。そうなると売上が減少し、利益悪化にも直結します。良品を安定供給できない会社との評価が広がれば、市場での地位が脅かされ、事業継続にも影響しかねません。

物流への支障と「2024年問題」

人手不足は物流の領域にも波及しています。食品業界では原材料の調達から製品の配送まで、物流の安定が欠かせませんが、近年はトラックドライバーや倉庫作業員の不足が深刻です。特に話題となっているのが「物流の2024年問題」です。これは働き方改革関連法により2024年4月からトラック運転手の残業時間が年間960時間に制限されることを受けて、輸送力不足が懸念されている問題です。もともとドライバー不足が進んでいた物流業界に労働時間規制が加わることで、「荷物が届けられない」事態が現実味を帯びています。

食品業界では、生鮮食品の配送やスーパー・コンビニへの納品が滞るリスクが指摘されています。すでに一部の食品や日用品では、物流コスト増を理由に価格改定(値上げ)を発表する動きもあります。また共同配送網を構築するなど業界内で対応策が模索されています。例えば大手食品メーカー数社は、物流子会社を統合して共同の配送プラットフォームを設立し、トラックを融通し合う取り組みを始めました。これは、複数社の商品をまとめて運ぶことで効率を上げ、人手不足に対処しようという試みです。

それでも中小の食品卸やメーカーでは、自前の物流を確保できず納期遅延が発生する事例も出ています。納品が遅れれば取引先の販売計画に穴を開けることになり、信用問題となります。食品は賞味期限もあるため、物流停滞はフードロス(食品廃棄)の増加にもつながりかねません。こうした物流の課題は、製造現場の人手不足と相まって業界全体のサプライチェーンを揺るがす懸念があります。

事業縮小・倒産のリスク増大

生産・品質・物流の各方面にわたる問題が顕在化すると、企業の経営そのものが危機に陥ります。人手不足が引き金となって業績悪化、事業縮小、倒産という連鎖も現実に起き始めています。例えば人手不足で納品遅延や品質クレームが重なり、重要顧客を失って売上が激減し、事業継続を断念したケースがあります。また先述したように、人件費の急増で設備投資や運転資金が捻出できなくなり倒産する企業も出ています。

2023年は「人手不足倒産」(従業員確保難が主因の倒産)が月次ベースで過去最多ペースで発生しています。食品製造業も例外でなく、原材料高だけでなく人手不足が重なったことで倒産に追い込まれる事例が報告されています。特に中小零細の企業ほど、人がいなければ事業が立ちゆかないため影響がダイレクトです。

倒産とまではいかなくても、規模縮小や撤退に追い込まれるケースも増えています。人手を確保できない工場ラインを閉鎖したり、受注を絞って供給エリアを縮小したりといった動きです。これは企業にとって苦渋の選択ですが、人がいなければ操業できない以上やむを得ません。結果的に国内の生産能力そのものが低下し、海外生産への依存が高まる恐れも指摘されています。長期的には、日本の食料品供給の安定性にも関わる問題として懸念されています。

従業員の士気低下と負のスパイラル

人手不足はそこで働く従業員の士気や職場環境にも悪影響を及ぼします。常に人手が足りない状態では、残っている従業員の負担が増え続けます。その結果、疲弊した従業員のモチベーション低下や不満の蓄積が起こります。休みも取りづらく、有給休暇も使えないような職場ではワークライフバランスが崩れ、優秀な人材ほど見切りをつけて転職してしまう傾向があります。こうしてさらに人手が減り、残った人に一層負荷が集中するという負のスパイラルに陥る恐れがあります。

職場の雰囲気も悪化しがちです。常にギリギリの人数で回していると、社員同士が助け合う余裕もなくなり、ピリピリした空気になりがちです。コミュニケーション不足からミスやトラブルが起これば互いに責めるようなムードになり、職場全体がぎすぎすしてしまうこともあります。このような環境では新しく入った人も定着しにくく、「人手不足→職場環境悪化→さらなる人手不足」という悪循環に拍車がかかります。

また従業員の心身への影響も無視できません。過労による体調不良やメンタルヘルス不調が増えれば、休職・離職者が出てさらに戦力ダウンとなります。安全より生産優先の空気が広がると事故のリスクも高まり、労災につながれば当人の人生だけでなく会社の信用も揺らぎます。人は企業の財産ですが、人手不足はその財産を傷つける大きな要因と言えるでしょう。

以上のように、人手不足は単に「人が足りない」だけの問題ではなく、企業経営から働く人の健康、安全、ひいては食品の安定供給にまで影響を及ぼす深刻な問題となっています。

 

 

飲食料品製造業の人手不足解決に向けた主な解決策

飲食料品製造分野の特定技能人材とは?

深刻化する人手不足に対応するため、業界・企業、そして行政もさまざまな解決策に取り組んでいます。ここからは、人手不足を解消・緩和するための具体的な施策を紹介します。労働環境の改善や働き方改革、外国人材の受け入れ拡大、DX(デジタルトランスフォーメーション)による省人化、そして新たな人材シフトの可能性まで、多角的なアプローチが試みられています。

業界・企業による取り組み

まずは食品製造業界や各企業レベルでの自主的な取り組みです。人手不足は今後も継続すると見られるため、企業側でも知恵を絞って魅力ある職場づくりを進めることが求められています。主な取り組み例をいくつか挙げます。

  • 労働環境の改善
    働きやすい環境を整えることは、人材確保と定着に直結します。具体的には、長時間労働の是正や休暇取得の奨励です。交代制勤務の見直しや、繁忙期・閑散期の人員配置の工夫、短時間勤務制度やフレックスタイム制の導入など、柔軟な働き方を実現する動きが広がっています。
  • 賃金・待遇の向上
    人材流出を防ぐため、賃上げに踏み切る企業も増えています。昇給・昇格の仕組みを明確にし、キャリアパスを示すことも重要です。福利厚生の充実や表彰制度の整備も「働き続けたい職場づくり」につながっています。
  • 雇用形態の多様化
    正社員に限らず、シニア人材、主婦層、留学生など多様な働き手を受け入れる動きも活発です。副業人材やフリーランスの活用も始まり、柔軟な人材戦略が注目されています。
  • 業界団体や他企業との協力
    単独企業では対応が難しい課題に対し、業界内で研修の共催、人材のシェア、物流の共同化、情報交換などの取り組みも見られます。

政府・自治体による施策

人手不足は社会全体の課題として、政府や自治体も以下のような多方面から対応を進めています。

  • 外国人材の受け入れ制度拡充
    特定技能制度や技能実習制度を通じて、海外からの労働力を積極的に受け入れています。制度の対象職種拡大や、生活支援の充実も進められています。
  • 働き方改革関連法の施行
    時間外労働の上限規制や年次有給休暇の取得義務化により、企業の労務管理改善が進んでいます。食品製造業も長時間労働の是正に取り組む必要に迫られています。
  • 最低賃金の引き上げ
    毎年引き上げが進み、賃金水準の底上げが図られています。中小企業への税制優遇策など、賃上げの負担軽減支援も行われています。
  • 生産性向上・省力化投資への支援
    補助金や助成金を活用して、工場の自動化、IT化を支援する制度が整備されています。国・自治体・経済産業省・厚生労働省などが連携しています。
  • 高齢者・女性の就業促進
    就業機会の拡大や、保育・育児支援などを通じ、潜在的な労働力の掘り起こしが進められています。

外国人材の活用(技能実習・特定技能 等)

食品製造業では、ベトナムやインドネシアなどからの外国人技能実習生や特定技能人材の受け入れが進んでいます。特に特定技能制度は、試験合格者が直接現場で働ける制度として急速に拡大しています。受け入れ国では日本語教育や試験サポートも充実してきており、日本企業とのマッチング機会も増えています。

インドネシア人特定技能者は過去2年で約6倍に増え、飲食料品製造業の重要な戦力となりつつあります。多国籍な職場づくりによる文化的多様性の促進や、外国人の定着支援、キャリアアップの仕組みづくりも重要な課題です。弊社でもインドネシア人の特定技能人材を現地で教育し、日本の企業様にご紹介させていただいております。

DX・省人化技術の導入

DXの推進は、今や人手不足対策の柱となりつつあります。

  • 協働ロボットの導入
    作業の一部をロボットに任せ、人間は付加価値の高い業務に集中するという考え方が浸透しています。
  • AIの活用
    品質検査や需要予測、生産管理などの領域でAI技術が導入されつつあります。属人的な技術をシステムに置き換え、安定的な生産を実現する取り組みが加速しています。
  • IoTによる見える化
    工場設備の状態や稼働データを可視化することで、生産効率を向上させ、トラブルを未然に防ぐ試みも広がっています。
  • 社内のIT人材育成
    現場出身の若手をDX担当に抜擢し、研修を通じて育成する動きも活発になっています。

AI時代におけるホワイトカラー人材の再活用可能性

生成AIの普及により、ホワイトカラー職が減少していく可能性が高まる中で、余剰人材をエッセンシャルワークに再配置する動きも注目されています。リスキリング(学び直し)によって現場業務への転換を進めたり、現場とITをつなぐ橋渡し役として活用したりすることで、労働市場全体の最適化が期待されています。

スキルや待遇のミスマッチといった課題はあるものの、これからの時代には「人材の移動力」や「柔軟な職務転換」が重要となります。AIに代替された人材を現場へと導く制度整備や支援体制も、今後の日本にとって重要な施策といえるでしょう。

 

 

まとめ

日本の飲食料品製造業における人手不足は、少子高齢化や労働環境の問題を背景に、深刻化の一途をたどっています。業界・企業・行政が連携し、多角的な施策を講じているものの、特効薬はありません。国内人材の定着支援、外国人材の受け入れ、DXによる省人化、そして余剰人材の再活用といった多面的な解決策を、組み合わせて実行していく必要があります。

労働力を「増やす」ことが難しい現代においては、既存の人材をどう活かすかが最大の鍵となります。人材の流動性、学び直しの機会提供、技術導入による負担軽減など、あらゆる選択肢を積極的に取り入れていくことで、日本の食品製造業は次の時代へと進むことができるでしょう。

 

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本記事で使用した単語の解説

飲食料品製造業
食品や飲料を加工・製造する産業。コンビニのお惣菜、冷凍食品、加工野菜、調味料などを工場で製造する分野を含む。

3K
「きつい・汚い・危険」の略。労働環境が過酷であるとされ、若者に敬遠されやすい職場を指す。

有効求人倍率
1人の求職者に対してどれだけの求人があるかを示す指標。1を超えると人手不足とされる。

特定技能制度
一定の技能と日本語能力を持つ外国人が日本で働くことを認める在留資格制度。2019年より導入。

技能実習制度
開発途上国の若者に日本で技能を学ばせることを目的とした制度。実態として労働力供給源となっている。

DX(デジタルトランスフォーメーション)
ITやAI、IoTなどのデジタル技術を活用して、業務やビジネスモデルを変革し、効率化や新しい価値を創出する取り組み。

リスキリング
働き手が新しい分野で活躍できるように、新たな知識・技能を学び直すこと。

 

 

 

FAQ(よくある質問)

Q1. 飲食料品製造業の人手不足はなぜ深刻なのですか?
A. 少子高齢化で若年層の労働力が減る一方で、職場環境が3Kとされており敬遠されがちだからです。また、賃金の低さや通勤の不便さも影響しています。

Q2. 外国人を雇うことで解決できるのでは?
A. 一部の企業では実際に解決の一助となっていますが、言語や文化の壁、制度の複雑さなどの課題もあり、受け入れには準備が必要です。

Q3. DXやロボット化は現場で本当に進んでいますか?
A. 少しずつ進んでいますが、初期投資の負担や食材の扱いの難しさなど、完全な自動化には時間と技術的ハードルがあります。

Q4. 中小企業でもできる対策はありますか?
A. 労働時間の見直しや福利厚生の充実、副業人材の活用、外国人支援体制の整備など、低コストで始められる施策も多くあります。

Q5. 今後の人材確保のカギは何ですか?
A. 多様な人材の受け入れと育成、ITを活用した効率化、そしてAI・DX時代に合わせた柔軟な人材戦略が重要になります。

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