
4月 18, 2025 • インドネシア, 特定技能・技能実習
4月 26, 2025 • インドネシア, 特定技能・技能実習 • by Reina Ohno
目次
日本の介護業界は、少子高齢化が進む中で介護需要が急増する一方、労働環境の厳しさや賃金の低さが影響し、人手不足が深刻な問題となっています。基幹的介護従事者の数は近年、減少の一途をたどり、介護現場では定着率の低下や採用難が続いています。本記事では、介護職の人手不足の現状とその背景を整理し、現場で直面する様々な課題、さらに外国人技能実習生や特定技能ビザでの外国人介護人材の活用やテクノロジーを取り入れた省力化策など、多角的な解決策について解説します。
労働力人口の減少(少子高齢化)
日本全体の少子高齢化は介護業界においても顕著に現れています。基幹的な介護従事者の多くは中高年となっており、若い世代の参入が相対的に少ない状況です。今後、介護サービスを必要とする高齢者が増加する中で、担い手となる若年層の不足はより一層の深刻さを増すと予想されます。
業界特有の要因(過酷な労働環境・低賃金・シフト制の影響)
介護現場は、利用者の健康と安全を守るために常時高い責任感が求められるとともに、シフト勤務や夜勤、早朝勤務など、不規則な労働時間が日常的です。また、利用者との密接なコミュニケーションや体力的な介護負担、精神的なストレスといった側面が、職業選択において魅力を薄めています。これに加え、賃金水準が他業種に比べて低いことも、求職者が他分野を選ぶ要因となっています。
求職者の志向変化と需要ギャップ
現代の就職市場では、働きやすさやライフワークバランスを重視する傾向が強まっています。安定した収入や働きやすい職場環境を求める若年層にとって、介護職は身体的・精神的な負担が大きいことから敬遠されがちです。このため、介護施設が求人を出しても、応募数が少なく、採用後も早期離職が頻発するという現状が続いています。
地域差と深刻なケース
全国的な平均ではあるものの、地域によっては介護職の求人倍率が非常に高くなっているケースも見られます。大都市圏では他産業への転職先が豊富なため、介護現場の求人倍率は比較的低い傾向にありますが、地方では人口減少や限られた職業選択の中で求人倍率が急上昇し、採用難が一層顕著となっています。
コロナ禍と外国人介護人材の動向
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、介護現場でも業務負担が増すとともに、外国人労働者の受け入れが一時的に制約される状況が続きました。しかし、渡航制限の緩和とともに、外国人介護人材の受け入れが徐々に拡大し、現場の労働力補填として期待されています。特に特定技能制度などを通じた外国人の受け入れは、今後の介護業界にとって重要な柱となり得るとされています。
日本の介護業界は、今後も拡大する高齢者需要に応えるため、職場環境の改善や待遇の見直し、さらには多様な人材の受け入れによる人手不足対策が急務です。業界全体で働きやすい環境を整備する取り組みと、外国人介護人材の活用を含む多角的な戦略が、持続可能な介護サービスの提供につながることが期待されます。
人手不足が深刻化する介護現場では、具体的にどのような問題が起きているのでしょうか。現場レベルでの課題を以下に整理します。
介護職人材の高齢化
介護現場では、従事者自体の高齢化も深刻な問題となっています。介護職員の平均年齢は年々上昇しており、60代以上の職員が現場の大きな戦力となっている施設も珍しくありません。体力や健康面での負担が増える中、高齢の介護職員が支える構造は、今後さらに人員不足や労働災害リスクを高める要因となります。若年層の新規参入が少ない現状では、高齢化が進む現場をどう維持・支援していくかが、喫緊の課題となっています。
採用難と定着率の低下
まず最大の課題は、新たな人材の採用そのものが難しいという点です。求人を出しても応募が集まらず、紹介会社を通しても適任者が見つからない、といった声が各地の老人ホームから聞かれます。介護施設は地方にも多く立地しており、都市部から離れている場合は応募数がさらに限られる傾向があります。さらに、賃金水準や労働環境の厳しさがネガティブなイメージとなり、若い人材から選ばれにくい現実もあります。
せっかく採用できても、数ヶ月で離職してしまうケースが少なくありません。「思ったより体力的にきつい」「夜勤が辛い」「プライベートとの両立が難しい」といった理由で、短期離職が繰り返されます。非常勤やシフト勤務者が多い介護現場では、人間関係の構築が難しく、職場定着の阻害要因になることもあります。さらに、採用と教育にかけた時間やコストが無駄になってしまう側面もあり、長期的に人材が定着する仕組みづくりが課題となっています。
また、高齢のベテラン職員が退職する際に、利用者対応のノウハウや現場感覚が若手に引き継がれずに失われるケースも見られます。人手不足のために十分な教育・研修ができず、次世代育成が難しいという悪循環が続いています。
人件費高騰とコスト負担
介護業界でも、人材確保のための費用が経営を圧迫しています。募集広告費や紹介料が高騰し、さらに採用後も定着率向上のために賃金を引き上げざるを得ない場面が増えています。近年の物価高騰も重なり、施設の運営費全体が上昇する中で、人件費負担はますます重くなっています。
2024年には最低賃金の引き上げにより、パート職員や非常勤スタッフの時給見直しを迫られた老人ホームも多く見られました。しかし、介護報酬は国によって定められており、自由に価格転嫁できないため、コスト増加を売上に反映しづらい事情があります。結果として、収益性が悪化し、設備更新やサービス向上のための投資が難しくなるケースも増えています。特に中小規模の介護施設では経営維持自体が困難になるリスクも高まっています。
現場負担の増大と労務管理上のリスク
人手が足りない状況では、現場にいる職員一人ひとりの負担が増大します。少ない人数で多くの利用者をケアしなければならず、体力的・精神的な負荷が極めて大きくなっています。このような状況では、腰痛や精神的ストレスによる健康障害、さらには事故や医療ミスのリスクも高まります。
また、休日が取りづらい、夜勤と日勤の繰り返しによる生活リズムの乱れといった働き方が、若者の離職を加速させる要因にもなっています。長時間労働や残業が常態化している現場もあり、労働基準法違反によるリスクも無視できません。介護事業者にとって、現場の労務管理とコンプライアンス対応は、ますます重要な課題となっています。
外国人材受け入れに伴う課題
人材不足を補う手段として、多くの老人ホームが外国人介護人材の受け入れを進めています。特定技能制度や介護福祉士養成プログラムを活用する動きが拡大していますが、現場では様々な課題も浮上しています。
まず、日本語での業務指示や利用者とのコミュニケーションに支障が生じる場合があります。文化的背景の違いから、職場に馴染みにくいと感じる外国人職員も多く、孤立しやすい状況が問題となることもあります。
また、施設が郊外に立地している場合、生活基盤(住居、交通手段など)の整備が必要ですが、これを施設側が担う負担も無視できません。技能実習や特定技能の手続きは煩雑で、制度理解にも専門知識が求められるため、外部支援団体に依存するケースが多くなり、これもコスト増につながっています。
さらに近年では、条件の良い職場を求めて外国人介護人材が施設間を移動するケースも増えています。このため、単に外国人を受け入れるだけでなく、教育・生活支援・キャリアアップ支援を一体的に行う体制が不可欠となっています。介護という分野では、職場環境と生活環境の両方を整備しなければ定着は難しいという現実があります。
人手不足は介護施設の内部運営だけでなく、利用者サービスや地域の福祉ネットワーク全体にまで深刻な影響を及ぼし始めています。ここでは、実際に生じているサービス品質、運営、地域社会への具体的な影響について見ていきます。
ケア提供の遅延とサービス量の低下
最も直接的な影響は、ケア提供の遅延やサービス提供量の減少です。人手が足りないと、食事介助や入浴介助、排泄介助といった基本ケアが予定通りに行えず、利用者の生活リズムに悪影響を及ぼすケースが増えています。
また、レクリエーション活動や個別リハビリなど、QOL向上に直結するサービスが削減されることもあります。利用者一人ひとりに割ける時間が減るため、細やかな対応が難しくなり、施設全体のケア品質が低下するリスクが高まっています。
一部では、新規利用者の受け入れを停止したり、ショートステイやデイサービスの受け入れ人数を絞ったりする施設も出てきています。結果として、地域全体の介護ニーズに対応できず、在宅介護を担う家族への負担増にもつながっています。
サービス品質のばらつきと事故リスクの増加
人手が足りない状況では、利用者ごとのケアの質にばらつきが生じやすくなります。本来なら必要な見守りや声かけが行き届かず、転倒事故や誤嚥事故などのリスクが高まります。
また、経験豊富な職員の退職が続くと、介護技術や緊急対応スキルの継承がうまくいかず、施設全体のケアレベルが低下する懸念もあります。感染症対策や医療的ケアが必要な場面での判断ミスも起こりやすくなり、利用者本人のみならず、施設の信用にも影響を及ぼしかねません。
現代の利用者やその家族は、介護サービスに対して「安全・安心・質の高いケア」を求める意識が高まっています。サービスの質が不安定になれば、利用控えや退所につながり、施設経営にも直結するリスクとなります。
運営負荷の増大とスタッフ疲弊
介護施設の人手不足は、運営面にも大きな負荷を与えています。現場職員が少ない中で、食事・排泄・入浴などの基本的なケアだけでなく、記録業務や家族対応、医療機関との連携まで担わなければならず、一人ひとりの業務量が過重になっています。
このような状況では、長時間労働が常態化し、心身の疲弊やモチベーション低下を引き起こしやすくなります。疲労が蓄積すれば、ケアミスやヒューマンエラーが発生しやすくなり、施設全体のリスクマネジメントにも影響を及ぼします。
さらに、労働基準法違反リスクが高まることで、行政からの指導や監査対応の負担も増し、経営者層にも大きなストレスがかかる構造になっています。
外国人介護人材の受け入れによる課題
人手不足を補う手段として、外国人介護人材の受け入れが進められていますが、現場には多くの課題も存在します。まず、日本語での細かな業務指示がうまく伝わらない、文化背景の違いから利用者とのコミュニケーションに苦労する、といった問題が起きています。
また、外国人職員をサポートするために、生活指導、住居手配、日本語教育支援などの負担が施設側にのしかかっています。技能実習や特定技能などの受け入れ制度に関しても、複雑な手続きや法律遵守が求められるため、専門知識や外部支援の確保が欠かせません。
さらに、条件の良い職場を求めて外国人介護人材が転職するケースも増えており、採用後の定着支援が不可欠な状況です。介護業界では、単なる「労働力」としてではなく、「チームの一員」として育成し、キャリアパスを支援する体制づくりが求められています。
施設規模縮小・閉鎖・地域福祉ネットワークの脆弱化リスク
人手不足が慢性化することで、介護施設の規模縮小や、最悪の場合には閉鎖に至るケースも出ています。職員が確保できずにユニットを閉鎖したり、夜勤体制が維持できずに受け入れを停止したりする例が報告されています。
特に地方では、ひとつの施設の閉鎖が地域福祉全体に与える影響が大きく、高齢者の生活の質や安全確保に直結します。地元で介護サービスが受けられない場合、家族介護の負担が増加し、地域コミュニティ全体の疲弊にもつながりかねません。
施設閉鎖が続けば、地域の高齢者福祉の基盤が揺らぎ、日本全体の高齢化社会対応にも大きな課題を残すことになります。
働く人の負担増加とモチベーションの低下
人手不足は、現場で働く介護職員の精神面・身体面にも大きな悪影響を与えます。一人ひとりの担当利用者数が増え、十分なケアができないことへのジレンマや無力感に苦しむケースも多く見られます。
また、休日が取れない、夜勤と日勤を繰り返す生活リズムの乱れなどにより、バーンアウト(燃え尽き症候群)に陥る職員も後を絶ちません。こうしたストレス環境では、新人教育もままならず、若手職員が早期に離職するという悪循環が生じやすくなります。
介護は本来、社会に不可欠な尊い仕事ですが、人手不足が続くことでその本来のやりがいや誇りが感じられにくくなっているのが現状です。
このように、介護業界における人手不足は単に「労働力が足りない」という話にとどまらず、サービス品質、経営、地域社会、そして現場で働く人々の心身の状態にまで、広範かつ深刻な影響を及ぼしています。
深刻化する介護分野の人手不足に対して、老人ホーム、地域、そして政府がさまざまな対策に取り組んでいます。ここでは、介護現場における労働力不足を緩和・解消するための具体的なアプローチを紹介します。働き方改革や労働環境の整備、外国人介護人材の活用、テクノロジーによる省力化、そして新たな人材活用の可能性まで、複合的に施策が進められています。
老人ホーム・地域による取り組み
まずは介護事業者や地域団体による自助的な工夫です。介護需要が増す中でも持続可能な運営を実現するため、さまざまな実践が始まっています。
政府・自治体による支援策
介護分野の人手不足は国家的課題として認識されており、各種制度・助成制度が整備されています。
外国人介護人材の活用(技能実習・特定技能)
介護分野では、技能実習生や特定技能外国人の活用が定着しつつあります。介護は「特定技能1号」の対象職種の一つであり、日本語能力試験と介護技能試験に合格した外国人が、現場の即戦力として働くことができます。
インドネシアからの特定技能介護人材も年々増加しており、介護現場の重要な担い手となっています。一方で、言語・文化の壁に配慮した支援体制づくり、メンタルサポート、キャリアパス形成支援が不可欠であり、地域社会全体で受け入れる姿勢が問われています。
介護ロボット・ICT技術の導入
人手不足に対応するためには、機械化・IT化による作業効率の向上が重要です。最近では以下のような取り組みが注目されています。
ホワイトカラー人材の再配置とリスキリング
AIや自動化技術の進展により、都市部のオフィスワークの一部は縮小していくと見られています。その中で、介護業界への人材還流も期待されています。
ビジネス経験を持つ人材が、リスキリングを通じて介護現場のマネジメント、事務管理、IT支援などの分野で活躍できる可能性が注目されています。こうした人材の受け入れを進めることで、介護業界は新たな働き方の受け皿となり、業界の多様化と持続可能性向上につながることが期待されています。
日本の介護業界は、少子高齢化の進行と労働環境の厳しさから深刻な人手不足に直面しています。採用難と定着率の低下、人件費高騰、サービス品質のばらつきといった課題が施設運営を圧迫し、現場で働く職員の負担も増大しています。
これに対応するため、介護事業者、地域社会、そして政府は、労働環境の改善、外国人介護人材の受け入れ促進、ICTや介護ロボットの導入など、多角的な対策を進めています。
今後は、単なる労働力確保だけでなく、職場環境やキャリア支援体制を整えることで、介護の現場に安心して働き続けられる仕組み作りが求められます。介護は社会を支える重要な仕事であり、持続可能な福祉社会の実現には、より柔軟で戦略的な人材確保策が不可欠です。
LPK Timedoorは、インドネシア・バリ島デンパサールに拠点を置く職業訓練校で、日本での就労を目指すインドネシア人に対し、日本語や日本文化、仕事に対する価値観やマインドセットを学ぶ環境を提供しています。お気軽にお問い合わせください。
所在地と連絡先:
住所: Jl. Tukad Yeh Aya IX No.46, Renon, Denpasar, Bali, Indonesia 80226
電話番号: +81 80-2399-8776(日本人直通)
メール: [email protected]
Website: lpktimedoor.com
Instagram: https://www.instagram.com/lpk_timedoor/
インドネシアでのビジネスなら創業10周年のTimedoor
システム開発、IT教育事業、日本語教育および人材送り出し事業、進出支援事業
本記事で使用した単語の解説
基幹的介護従事者
施設の中心的な役割を担い、日常的に介護業務に従事している職員のこと。常勤スタッフや経験豊富な職員が該当する。
特定技能制度
外国人が一定の試験に合格することで、日本国内の介護業界などで就労できる制度。技能実習とは異なり、より実践的な即戦力人材を対象とする。
地域包括ケアシステム
高齢者が住み慣れた地域で必要な医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスを一体的に受けられる体制のこと。
介護ロボット
移乗支援、見守り支援、排泄支援などを行う機械やシステム。介護職員の負担軽減と利用者の安全確保を目的として導入が進められている。
リスキリング
新しいスキルを学び直して、別の職種や業務に適応できるようにすること。介護業界では異業種からの人材受け入れ促進に活用されている。
FAQ(よくある質問)
Q1. 介護業界の人手不足はいつから深刻になったのですか?
A1. 介護業界では2000年代後半から人手不足が指摘されていましたが、特に高齢化が加速した2010年代以降、問題が深刻化しています。近年は少子化の影響も重なり、さらに状況が悪化しています。
Q2. 外国人介護人材はどのように受け入れられていますか?
A2. 主に技能実習制度や特定技能制度を通じて受け入れられています。来日前に日本語や介護技術の教育を受け、試験に合格した人材が施設で即戦力として働いています。
Q3. 介護ロボットを導入すれば人手不足は解消されるのでしょうか?
A3. 介護ロボットは作業負担を軽減する有効な手段ですが、すべての業務を代替できるわけではありません。あくまで人のサポート役として活用し、職員と併用する形が基本です。
Q4. 介護業界に未経験で転職するのは難しいですか?
A4. 未経験でも参入可能な制度や研修が整っており、ハードルは高くありません。特にリスキリング支援や短期間の資格取得コースなどを活用すれば、スムーズな転職も可能です。
Q5. 今後、介護業界に求められる人材像はどう変わりますか?
A5. これからは、単なる体力だけでなく、ICTスキル、マネジメント力、多文化共生の理解力を備えた人材がより求められると予想されています。チームワークと柔軟な対応力も重要です。