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2月 21, 2025 • インドネシア
4月 8, 2025 • インドネシア • by Erika Okada
目次
インドネシアは東南アジア最大の経済大国であり、多くの外資企業が進出を試みています。しかし、その全てが成功しているわけではなく、撤退を余儀なくされた企業も少なくありません。本記事では、インドネシア市場から撤退した企業の事例を分析し、共通する課題や教訓を探ります。これからインドネシア進出を検討している経営者やマネージャーの皆様にとって、有益な情報となれば幸いです。
インドネシアは約2億8,000万人の人口を有し、若年層が多いことから消費市場としてのポテンシャルが高いとされています。 また、経済成長率も安定しており、中間層の拡大が期待されています。 しかし、一方で法規制の複雑さ、インフラの未整備、文化的な違いなど、ビジネス展開における課題も多く存在します。
楽天株式会社
進出と撤退の概要
楽天は2011年にインドネシアのEC市場に参入しましたが、現地の強力な競合他社や消費者の購買行動の違いにより、2016年に撤退を決定しました。
主な課題
* 市場理解の不足: インドネシアではSNS上での直接取引が一般的であり、楽天のプラットフォーム型ECモデルは現地の消費者に受け入れられませんでした。
* 競合他社の存在: トコペディアなどの現地企業が既に市場をリードしており、後発の楽天はシェア獲得に苦戦しました。
セブン-イレブン
進出と撤退の概要
セブン-イレブンは2009年にインドネシア市場に参入し、都市部を中心に店舗展開を行いました。しかし、現地の法規制や競合他社との競争激化により、2017年に全店舗を閉鎖しました。
主な課題
* 法規制の影響: インドネシア政府は小規模店舗の外資参入を制限しており、セブン-イレブンは直営での経営が困難でした。
* 競合他社との競争: 現地のコンビニエンスストアであるアルファマートやインドマレットが既に強固な市場基盤を築いており、セブン-イレブンは市場シェアの拡大に苦戦しました。
昭和電工
進出と撤退の概要
昭和電工は2005年にインドネシアに進出し、現地での工場運営を開始しましたが、2019年に撤退を決定しました。
主な課題
* 人材確保と育成の難しさ: 現地での優秀な人材の確保や育成に苦戦し、事業運営に支障をきたしました。
* コスト増加: 人件費の高騰や労働環境の改善に必要な投資が増加し、収益性が低下しました。
フランスの小売大手「Carrefour(カルフール)」
カルフールは2000年代初期にインドネシアへ進出し、大型スーパーマーケット業態を展開しましたが、2012年にインドネシア市場から完全撤退しました(店舗はTransmartへ売却)。
主な理由は以下の通りです:
* ローカル消費者が求める「小型店」「便利な立地」とミスマッチ
* インドネシアの地方都市への拡大戦略に課題
* 法制度の変化や外資規制の対応力の不足
Uberの撤退とGoJekの勝利
世界的配車アプリのUberも2018年にインドネシア市場から撤退し、現地のGoJekに吸収される形で事業を終えました。
敗因としてよく言及されるのは:
* GoJekがローカルパートナーや政府との連携を重視したのに対し、Uberは一方的なサービス展開
* 現地事情を無視した価格政策(プロモ依存型)
* 配送や金融など周辺サービスを含めたGoJekの「スーパーアプリ化」に出遅れた
インドネシア市場は独自の消費者行動や文化的背景を持っています。 楽天の事例のように、日本で成功したビジネスモデルをそのまま持ち込んでも、現地の消費者に受け入れられない場合があります。 進出前に徹底的な市場調査を行い、現地のニーズや嗜好を理解し、それに適したビジネスモデルを構築することが重要です。
インドネシアでは法規制が複雑で、頻繁に変更されることがあります。 セブン-イレブンの事例では、小規模店舗の外資参入制限やアルコール販売の規制強化が撤退の一因となりました。 進出前に現地の法規制を十分に調査し、遵守する体制を整えることが不可欠です。
現地での優秀な人材の確保や育成は、多くの企業にとって大きな課題となっています。 昭和電工の事例では、人材確保や育成の難しさが撤退の要因となりました。 現地の労働市場や文化を理解し、適切な人材戦略を策定することが求められます。
インドネシア市場では、特にデジタル・リテール・飲食・物流といった分野において、現地プレイヤーの成長スピードが非常に速く、しばしば外国企業のスピードを凌駕しています。
例えば、Tokopedia や Bukalapak といったECプラットフォームは、地場のニーズに合わせた柔軟なサービス展開とアグレッシブなマーケティングで急成長し、楽天のような海外大手が参入する余地を狭めました。また、GoTo(Gojek x Tokopedia) グループなどは、インドネシア人の生活に深く根ざしたスーパーアプリとして、配車、配達、金融サービスまで幅広く提供しており、外国企業にとっては極めて手強い存在です。
つまり、単に「日本で成功したビジネスを持ってくる」のではなく、現地でのポジショニングをどう確保するか、差別化できる領域がどこにあるのかを冷静に見極める必要があります。
インドネシアでは、現地法人設立の際にインドネシア人パートナーとの提携が求められるケースも多く、信頼できるローカルパートナーの存在が成功のカギを握ります。
しかし、多くの撤退企業のケースを調べていくと、ローカルパートナーとの意見対立や利益相反、経営方針のズレが原因となって経営が破綻した例が見受けられます。
たとえば、飲食チェーンやサービス業では、フランチャイズ契約の理解不足、商習慣の違い、レポートや運営体制の甘さにより、ブランドの毀損やサービス品質の低下を招き、結果的に顧客離れが加速するケースが少なくありません。
教訓としては、パートナー選びを「資金があるか」「知名度があるか」だけで決めず、経営理念の一致、実行力、透明性あるコミュニケーションが取れるかを見極めることが不可欠です。
現地法人が設立された後、日本側の本社が意思決定権をすべて握ってしまい、現地の経営陣が柔軟な判断を下せないという事例も多く見受けられます。
これは特に、日本企業特有の「稟議文化」が原因となり、変化の早いインドネシア市場で即時の対応が求められる際に、意思決定の遅さがビジネスチャンスを逃す要因となってしまいます。
一方で、過度な権限委譲を行い、現地マネジメントを本社がまったくコントロールできない状態にしてしまうことも、ブランド毀損や社内不正、クオリティ低下につながるリスクがあります。
したがって、日本本社と現地マネジメントの明確な役割分担と、定期的なコミュニケーションが重要です。信頼できる現地責任者の育成・配置が成功の鍵となります。
インドネシアの消費者は、日本の消費者とは異なる価値観と期待を持っています。たとえば、「スピード」「親しみやすさ」「モバイル対応力」などがより重視される傾向にあり、日本で通用する「丁寧だが時間がかかる対応」や「形式的なマナー」がかえって顧客満足度を下げることもあります。
近年の失敗例では、日本のある家電メーカーが進出後、オンラインでのカスタマーサポートやレビュー対応が遅く、競合に顧客を奪われたケースが報告されています。
現地の顧客インサイトを理解し、インドネシア人のユーザー体験を最優先に設計されたカスタマージャーニーを構築する必要があります。たとえば、WhatsAppでのサポート対応やGoPayなどのローカル決済導入は、いまや標準化していないと競争にすらならない状況です。
インドネシア市場は、人口構成や経済成長率、デジタル化の進展といった側面から見ても、大きな可能性を秘めています。しかし、文化、法制度、消費者行動、人材マネジメントなど、ビジネス環境には日本とは大きな違いがあります。楽天やセブン-イレブン、昭和電工、ミニストップ、サントリーといった企業が撤退を決めた背景には、いずれも「市場理解の浅さ」「ローカル事情への対応不足」「パートナー選定の甘さ」など、共通した要因が存在します。単に優れた製品やサービスを持ち込むだけでは成功できないインドネシア市場においては、徹底した事前調査と現地に根ざした戦略の策定が不可欠です。日本的なやり方や成功体験にこだわらず、謙虚に現地の価値観を理解し、現地パートナーや人材を信じて任せる姿勢が、長期的な成功に繋がるでしょう。
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本記事で使用した単語の解説
ローカライズ:
特定の国や地域の文化、言語、商習慣に合わせて製品・サービスを最適化すること。インドネシア市場では、価格設定、接客スタイル、UXなどの調整が重要とされる。
スーパーアプリ:
1つのアプリ内で複数の機能(配車、決済、フードデリバリー、送金など)を提供する総合型アプリ。GoJekやGrabなどが代表例。
外資規制:
外国企業による株式保有の上限や参入制限などを定めたインドネシア政府の規制。業種によって異なり、定期的に改訂されることもある。
カスタマージャーニー:
顧客が商品やサービスを知り、興味を持ち、購入し、リピートするまでの一連の体験の流れ。UXや顧客対応を最適化するために設計される。
稟議文化:
日本企業における意思決定プロセスの一つ。複数の管理職が順番に承認する形式であり、スピードよりも合意形成を重視する傾向がある。
フランチャイズ契約:
本部と加盟店の間で結ばれる契約形式で、ブランドやノウハウの使用許諾とロイヤリティの支払いを伴う。現地の理解不足が失敗の要因となることもある。
FAQ(よくある質問)
Q1. インドネシア進出前にまず何を準備すべきですか?
A. 現地の法制度、文化、消費者動向に関する徹底的な調査が必要です。また、信頼できるローカルパートナー候補の選定と、法務・税務アドバイザーの確保も重要です。
Q2. どの業種で撤退が多く見られますか?
A. 小売、飲食、EC、製造業など幅広い業種で撤退例がありますが、特にローカル化の難易度が高いBtoC業種に多く見られます。
Q3. 現地パートナー選定で気を付けるべきことは?
A. 資金力や人脈の有無だけでなく、経営理念の一致、透明性のある情報共有ができるかを重視してください。実績や第三者評価も参考にしましょう。
Q4. なぜ多くの企業が市場調査をしても失敗するのですか?
A. 表面的なデータだけでなく、現地消費者の“感覚的価値観”や“非言語的文化”への理解が不十分なまま参入するためです。現地での試験展開や仮説検証のプロセスを設けることが有効です。
Q5. インドネシアで成功している日系企業はどんな特徴がありますか?
A. ユニクロ、ヤクルト、ダイキンなどは、徹底したローカライズ、品質管理、現地人材の育成を重視しています。トップダウンではなく現地責任者に裁量を与えた運営も共通点です。