3月 31, 2025 • インドネシア • by Reina Ohno

叱る vs 褒める:インドネシア人と仕事をする際に効果的なのは?

叱る vs 褒める:インドネシア人と仕事をする際に効果的なのは?

インドネシアで日本人がビジネスを行う際、現地スタッフとのコミュニケーションやマネジメントに戸惑うことは少なくありません。特に、部下やチームメンバーに対して「叱る」べきか「褒める」べきか、どのようなフィードバックが効果的か悩む経営者・マネージャーも多いでしょう。本記事では、インドネシア人の性格や文化的背景をふまえ、職場での効果的なフィードバック方法を詳しく解説します。叱責が逆効果になるケースや、称賛が大きなモチベーションにつながる理由、実際の現場で役立つフィードバックのコツなど、現地経験に基づいた実践的な内容です。

 

 

インドネシアの文化的背景と価値観

インドネシアの文化的背景と価値観

集団主義と協調性の重視

インドネシア社会は集団主義的な価値観が強く、個人の利益よりもチームやコミュニティ全体の調和を優先する傾向があります。 対立を避け、和を尊ぶ姿勢が見られ、職場でもチームワークや協力が重視されます。

礼儀と尊重の文化

インドネシア人は礼儀正しさや他者への配慮を非常に重視します。 相手を立てるコミュニケーションが一般的であり、直接的な対立や否定的な表現を避ける傾向があります。

宗教的価値観の影響

イスラム教が多数派を占めるインドネシアでは、宗教的な価値観が日常生活や仕事観に大きな影響を与えています。 怒りや感情的な行動は好ましくないとされ、穏やかで協調的な態度が求められます。

 

 

叱責に対するインドネシア人の反応:避けたい3つのポイント

叱責に対するインドネシア人の反応:避けたい3つのポイント

インドネシア人は、マネジメントのヒント:「人前で恥をかくこと」マネジメントのヒント:に非常に敏感です。これは、文化的・宗教的な価値観、そして「集団主義」と「面子(メンツ)を重んじる文化」から来ています。

人前での叱責は“恥”と捉えられる

  • インドネシア人は「メンツ」を非常に大切にします。
  • 公の場で叱ると、恥をかかされたと感じ、心に深い傷を負います。
  • 結果として、モチベーションの低下上司への不信感仕事への熱意喪失につながりかねません。

例)会議中に「これは君のミスだ」と言うと、本人は黙り込むか、表面上は笑顔でも内心では深く傷ついています。

直接的な否定表現に萎縮する傾向

  • 「なぜできないの?」「何度言ったらわかるの?」といった言葉は、受け手にとって攻撃的・屈辱的に感じられます。
  • インドネシアでは「怒る=コントロールできない人」「品位がない人」と思われやすいため、怒る上司はむしろ敬遠されがちです。

表面的に“はい”と答えても納得していないことがある

  • 表情や言葉で「わかりました」と言っても、本心では納得しておらず、誤解やすれ違いを生むリスクがあります。
  • 「tidak enak(相手に嫌な思いをさせたくない)」文化が背景にあるため、否定や反論を避ける傾向があります。

 

 

称賛に対するインドネシア人の反応:モチベーションを爆上げする3つのコツ

称賛に対するインドネシア人の反応:モチベーションを爆上げする3つのコツ

称賛はインドネシア人にとって、マネジメントのヒント:「認められた」「信頼されている」マネジメントのヒント:という実感につながり、大きなモチベーション源になります。

人前での賞賛は“誇り”になる

  • 特にチームミーティングやグループチャットでの称賛は、本人だけでなく周囲にも良い影響を与えます。
  • 「〇〇さんの資料、すごくわかりやすかったです」など、具体的かつ感謝を込めた称賛は効果抜群。

例)SlackやWhatsAppグループで「今日のクライアント対応、さすがだった!」と投稿するだけで、士気が高まります。

努力やプロセスを褒めると信頼が深まる

  • インドネシア人は、結果よりも「頑張っていたこと」「成長している姿勢」を認められることを非常に喜びます。
  • 「この前よりよくなってるね」「日々成長してるのが伝わるよ」といったフィードバックが心に刺さります。

上司からの一言が強力なインパクトを持つ

  • インドネシア人にとって、上司=権威と人格を兼ね備えた存在であるべきです。
  • 尊敬する上司からの一言は、自信を育て、さらに忠誠心を高める効果があります。

 

 

効果的なフィードバックの方法

効果的なフィードバックの方法

個別かつ非公開でのフィードバック

背景と理由
インドネシアでは、人前で叱られることは「恥をかかされた」と感じられやすく、信頼関係の悪化やモチベーションの低下につながります。

実践ポイント

  • 注意や指摘は、必ず1対1で静かな場所で行う。
  • まず感謝や良い点を伝えてから、改善点を伝える。
  • 声のトーンや表情も穏やかに。

例文
「この前の報告書、よくまとめられていて助かりました。一点だけ、数値の確認で見落としがあったので、次回はそこに注意してもらえるとさらに良くなります。」

具体的で明確な指示

背景と理由
インドネシアでは、あいまいな表現だと誤解を生みやすく、思った通りに動いてもらえないことがあります。

実践ポイント

  • 何を・いつまでに・どうやって、を具体的に伝える。
  • 「なるはや」「適当に」といった表現は避ける。
  • できれば、口頭だけでなくチャットや文書で残す。

例文
「この資料を、明日13時までに英語で10ページにまとめてください。クライアント提出用なので、見やすさにも注意してください。」

公の場での称賛

背景と理由
インドネシア人は「周囲から認められること」を大切にしており、努力を称えられるとやる気が大きく高まります。

実践ポイント

  • チームミーティングやグループチャットで称賛を伝える。
  • 結果だけでなく、努力や姿勢も具体的に褒める。
  • 形式的な「グッジョブ」ではなく、理由を添える。

例文
「先日のプレゼン、とても分かりやすかったです。質問にも落ち着いて対応してくれて、クライアントの印象も良くなったと思います。」

継続的なコミュニケーション

背景と理由
信頼関係を築かないと、本音や悩みを話してもらえない傾向があります。1回のフィードバックより、日常的な対話が大切です。

実践ポイント

  • 月1回程度は1対1で雑談も交えた面談を行う。
  • 会話では「最近どう?」と気軽に聞くのが効果的。
  • 困っていることがないか、具体的に尋ねてみる。

例文
「最近忙しそうだけど、何か仕事で困っていることはある?もし何かあれば、遠慮なく相談してほしい。」

 

 

インドネシア人の性格を読み解く

インドネシア人の性格を読み解く

インドネシア人の性格は、宗教・歴史・教育・家庭・社会構造など、さまざまな要素が複雑に影響し合って形成されています。特にビジネスシーンでは、その性格的傾向を理解しておくことが、円滑な人間関係やチームマネジメントにおいて非常に重要です。

協調性が高く、対立を避ける

インドネシア人は非常に協調性を重視します。これは「集団主義」の文化的背景が強く、チームやコミュニティの和を乱さないことが善とされているためです。

マネジメントのヒント:

  • 会議で意見を求めても、率直な反対意見は出にくいです。
  • 本音を引き出すには、1対1の対話や非公式な場の活用が効果的です。

礼儀正しく、相手に敬意を示す

多くのインドネシア人は穏やかで丁寧な言動を好みます。年上や上司への敬意を払うことは非常に重要視されます。

マネジメントのヒント:

  • フィードバックや注意をする際には、相手のメンツを守る表現を心がけましょう。
  • 礼儀を持って接すれば、信頼関係が築きやすくなります。

ポジティブで人懐っこい

フレンドリーで明るい性格の人が多く、笑顔やジョークを交えた会話が好まれます。職場でも和やかな雰囲気を大切にします。

マネジメントのヒント:

  • 厳しい態度より、温かい雰囲気で接する方が成果につながりやすいです。
  • 人間関係の構築には、雑談や冗談も効果的です。

“Tidak Enak” の文化(相手に嫌な思いをさせたくない)

インドネシア人の性格を語るうえで欠かせないのが「“tidak enak”(気まずい・悪いと思う)」という感情です。誰かを傷つけたり怒らせたりしたくないという気持ちが強く、遠回しな表現が多くなります。

マネジメントのヒント:

  • 「できません」とはっきり言わず、「たぶん大丈夫です」と言われたら要注意。
  • 約束を真に受けず、確認や再確認をする習慣が重要です。

我慢強く、忍耐力がある

イスラム教の教えや農耕文化の影響もあり、急かされたり怒られたりしても忍耐強く耐える性格の人が多いです。

マネジメントのヒント:

  • 表面的に「問題なさそう」に見えても、実は我慢しているケースも。
  • フィードバックやヒアリングを定期的に行い、内面を把握する努力を。

時間にルーズになりがち(ジャム・カレット)

いわゆる「ジャム・カレット(ゴムのように伸びる時間)」という言葉に象徴されるように、時間に対する感覚が日本や欧米とは異なります。

マネジメントのヒント:

  • 会議や納期には余裕を持たせたスケジューリングを。
  • 遅刻があっても感情的に責めず、仕組みで解決する工夫を。

義理堅く、情に厚い

一度信頼関係を築くと、非常に義理堅く、助け合いの精神を持って接してくれるのもインドネシア人の特徴です。

マネジメントのヒント:

  • 一度信頼を得れば、長期的で安定した関係が築けます。
  • 単なる上下関係よりも、仲間意識を持って接すると効果的です。

 

 

まとめ

インドネシアにおけるマネジメントでは、「叱る」よりも「褒める」ことを重視したコミュニケーションが有効です。人前での叱責は本人のメンツを潰し、やる気や信頼を損なう原因になりやすいため、ネガティブな指摘は個別・非公開で行いましょう。一方、称賛はチームの前で行うことで本人のモチベーションだけでなく、チーム全体の雰囲気も高まります。また、明確で具体的な指示を出すこと、継続的な対話を通して信頼関係を築くことも大切です。インドネシア人の文化や性格を理解し、それに合った関わり方を実践することで、組織の成果向上と良好な人間関係の構築が可能になります。

 

 

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本記事で使用した用語の解説

フィードバック
部下や同僚に対して、仕事の成果や行動について評価やアドバイスを伝える行為。ポジティブなもの(称賛)とネガティブなもの(叱責)がある。

叱責(しっせき)
相手のミスや行動を厳しく注意すること。インドネシア文化では、人前での叱責は極力避けるべきとされている。

称賛(しょうさん)
努力や成果をほめて認めること。インドネシア人にとって称賛は大きなモチベーションの源になる。

tidak enak
インドネシア語で「気まずい」「申し訳ない」という意味。相手を不快にさせたくないという気持ちから、本音を言わずに曖昧な表現をする傾向がある。

ジャム・カレット(Jam Karet)
直訳すると「ゴムの時間」。時間に対して柔軟な感覚を持つインドネシア独自の表現で、遅刻や納期の遅延をやわらかく表す言葉。

 

 

FAQ(よくある質問)

Q1. インドネシア人は本当に叱られるのが苦手なのですか?
はい。特に人前での叱責は「恥をかかされた」と感じる傾向が強く、信頼関係を損ねる原因になります。叱る場合は、必ず個別に静かな環境で伝えるようにしましょう。

Q2. インドネシア人に対しては、褒めすぎても問題ありませんか?
基本的には問題ありません。称賛は本人のやる気を高め、チームの雰囲気を良くする効果があります。ただし、明らかに不公平な褒め方は避け、努力や成果に基づいた正当な評価を心がけましょう。

Q3. 明確な指示とは具体的にどういうことですか?
「何を」「いつまでに」「どのように」行うかを具体的に伝えることです。例えば、「資料を作成しておいて」ではなく、「明日13時までに、10ページ以内の英語の提案資料を仕上げてください」といった伝え方が望ましいです。

Q4. 文化の違いを意識したマネジメントには、他にどんな工夫が必要ですか?
まずは相手の文化を尊重し、頭ごなしに否定しないことが大前提です。また、定期的な1on1ミーティングや雑談を通して、信頼関係を築くことが非常に重要です。信頼があると、本音を話してもらいやすくなります。

 

 

 

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