3月 8, 2025 • インドネシア • by Reina Ohno

システム開発の手法と特徴 – ウォーターフォール型開発, アジャイル型開発, プロトタイピング型開発

システム開発には、プロジェクトの特性や目的に応じてさまざまな手法が存在します。 以下に、代表的な開発手法であるウォーターフォール型開発、アジャイル型開発、プロトタイピング型開発の特徴を詳しく解説します。

 

 

ウォーターフォール型開発とは

ウォーターフォール型開発とは

ウォーターフォール型開発は、 システム開発における伝統的な手法の一つで、上流工程から下流工程へと順序立てて進める特徴があります。 「ウォーターフォール(滝)」という名称は、工程が滝のように一方向へ流れることに由来しています。

主な工程

ウォーターフォール型開発は、以下のような段階的な工程で構成されています。

  1. 要件定義: システムが満たすべき機能や性能、制約条件を明確に定義します。
  2. 外部設計: ユーザーインターフェースやシステム全体の構造を設計します。
  3. 内部設計: 各コンポーネントの詳細な動作やデータ構造を設計します。
  4. 実装: 設計に基づき、プログラムのコーディングを行います。
  5. テスト: 単体テスト、結合テスト、システムテストなどを実施し、品質を確認します。
  6. 運用・保守: システムの導入後、安定稼働のための運用と必要に応じた保守を行います。

各工程は順次進行し、一度完了した工程には基本的に戻らないことが前提となっています。

メリット

  • 計画と進捗管理が容易: 全体のスケジュールや予算、人員配置が明確になり、管理がしやすい。
  • 品質の担保: 各工程でのレビューやテストを通じて、最終的な製品の品質を高めることができる。
  • ドキュメントの充実: 詳細な設計書や仕様書が作成されるため、プロジェクトの引き継ぎや保守が容易になる。

デメリット

  • 柔軟性の欠如: 開発途中での仕様変更や要件追加が難しく、対応する場合は大きな手戻りが発生する可能性がある。
  • 顧客のフィードバック反映の遅れ: 全工程が完了するまでユーザーがシステムを確認できないため、期待と異なる結果となるリスクがある。
  • リリースまでの時間が長い: 全ての工程を順次進めるため、最終的なリリースまでに時間がかかる。

 

ウォーターフォール型開発の注意点

ウォーターフォール型開発は、各工程を順次進める計画的な手法であり、全体のスケジュールや予算、人員配置が明確になるというメリットがあります。しかし、オフショア開発でこの手法を採用する際には、以下の点に注意が必要です。

  • コミュニケーションの課題:​オフショア開発では、時差や言語の違いによりコミュニケーションが円滑に進まないことがあります。ウォーターフォール型開発は、各工程が明確に定義されているため、初期段階での要件定義や設計において、詳細かつ正確な情報共有が不可欠です。これを怠ると、後戻りが難しく、修正に多大なコストと工数がかかる可能性があります。

  • 仕様変更への対応:​ウォーターフォール型開発は、基本的に「手戻りが発生しない」前提で進行します。そのため、開発途中での仕様変更が生じた場合、対応が難しく、プロジェクト全体の遅延や追加コストの発生リスクがあります。

 

ウォーターフォール型開発は、要件が明確で変更の少ない大規模プロジェクトや、品質が重視されるシステム開発に適しています。 しかし、近年のビジネス環境の変化やユーザー要求の多様化により、柔軟性の高いアジャイル開発などの手法も注目されています。

 

 

アジャイル型開発とは

アジャイル型開発とは

アジャイル型開発は、ソフトウェアやシステム開発における手法の一つで、短期間の反復(イテレーション)を繰り返しながら、柔軟かつ迅速に開発を進めることを特徴としています。 「アジャイル(agile)」とは、「素早い」「機敏な」という意味を持ち、その名の通り、変化に対応しやすい開発手法です。

アジャイル開発の背景

2001年、17名の技術者やプログラマーが集まり、ソフトウェア開発の新しい価値観として「アジャイルソフトウェア開発宣言」を発表しました。 この宣言では、以下の4つの価値が強調されています。

  • 個人と対話: プロセスやツールよりも、人間同士のコミュニケーションを重視する。
  • 動くソフトウェア: 包括的なドキュメントよりも、実際に動作するソフトウェアを重視する。
  • 顧客との協調: 契約交渉よりも、顧客との協力関係を重視する。
  • 変化への対応: 計画に従うことよりも、変化に柔軟に対応することを重視する。

アジャイル開発の主な手法

アジャイル開発にはさまざまな手法がありますが、以下の2つが代表的です。

  • スクラム: チーム全員で短期間のスプリントと呼ばれる開発サイクルを繰り返し、定期的に成果物をリリースしていく手法です。 プロダクトオーナー、スクラムマスター、開発チームといった明確な役割分担が特徴です。
  • エクストリーム・プログラミング(XP): 顧客の要求に迅速に対応するため、テスト駆動開発やペアプログラミングなどの実践を重視する手法です。 コードの品質向上と開発速度のバランスを図ります。

アジャイル開発のメリット

  • 柔軟性: 開発途中での仕様変更や追加要求に迅速に対応できます。
  • 早期リリース: 優先度の高い機能から順に開発・リリースするため、市場投入までの時間を短縮できます。
  • 品質向上: 短いサイクルでテストとフィードバックを繰り返すことで、製品の品質を高めることができます。
  • 顧客満足度の向上: 定期的なリリースとフィードバックにより、顧客の要望を適切に反映した製品を提供できます。

アジャイル開発のデメリット

  • スケジュール管理の難しさ: 柔軟性が高い分、全体のスケジュールや進捗状況の把握が難しくなることがあります。
  • ドキュメント不足: 動くソフトウェアを重視するため、ドキュメントが不足しがちで、後の保守や引き継ぎに影響を及ぼす可能性があります。
  • チームの熟練度依存: 自己組織化されたチームでの開発が求められるため、メンバーのスキルや経験に大きく依存します。

アジャイル開発が向いているプロジェクト

  • 市場の変化が激しいプロジェクト: トレンドやユーザーのニーズが頻繁に変わる分野での開発。
  • 不確定要素が多いプロジェクト: 要件が明確でない、または開発途中で大きく変わる可能性がある場合。
  • 早期リリースが求められるプロジェクト: 競合他社よりも早く市場に製品を投入する必要がある場合。

 

アジャイル型開発の注意点

アジャイル型開発は、短期間の反復作業で開発を進める柔軟な手法であり、変化の激しいプロジェクトや要件が明確でない場合に適しています。オフショア開発でアジャイル型開発を採用する際の注意点は以下の通りです。

  • コミュニケーションの工夫:​アジャイル開発では、チーム間の密なコミュニケーションが求められます。オフショア開発においては、物理的距離や文化的差異を克服するために、オンライン会議ツールやチャットツールを活用し、同期・非同期両面でのコミュニケーションを強化する必要があります。

  • ブリッジSEの起用:​言語や文化の違いを調整し、プロジェクトの円滑な進行を支援するブリッジSE(システムエンジニア)の存在が重要です。彼らは、依頼者と開発者の間の仲介役として、ミスコミュニケーションの防止やプロジェクトのサポートを行います。

  • 開発ルールの明確化:​アジャイル開発では、共通のコーディング標準やソース管理、バグ追跡、設計パターンなどの手法が重要となります。オフショア開発チームでは、対面でのコミュニケーションが減少するため、これらの手法を明確に定義し、遵守することが求められます。

  • 契約形態の工夫:​アジャイル型開発をオフショアで行う場合、柔軟な対応が可能な準委任契約(ラボ型契約)を採用することが一般的です。これにより、仕様変更や追加要件に迅速に対応できる体制を構築できます。

 

アジャイル開発は、その柔軟性と迅速性から、多くの企業やプロジェクトで採用されています。 しかし、プロジェクトの特性やチームの状況に応じて、適切な開発手法を選択することが重要です。

 

 

プロトタイピング型開発とは

プロトタイピング型開発とは

プロトタイピング型開発は、システム開発の初期段階で試作品(プロトタイプ)を作成し、ユーザーやクライアントからのフィードバックを基に改良を重ねていく開発手法です。 このアプローチにより、完成品のイメージを早期に共有し、要件の明確化や品質向上を図ることができます。

プロトタイピングの種類

プロトタイピングには、以下のような種類があります。

  • ペーパープロトタイピング: 紙とペンを使って、画面レイアウトや操作フローを簡易的に描き出す方法です。 初期段階でのアイデア出しやコンセプト確認に適しています。
  • ワイヤーフレーム: 線や図形を用いて、画面の構成要素やレイアウトを視覚化する手法です。 デジタルツールを使って作成することが多く、UI/UXデザインの基礎となります。
  • デジタルプロトタイピング: グラフィックソフトを使用して、より詳細でリアルなプロトタイプを作成する方法です。 ユーザーインターフェースやデザインの検証に役立ちます。
  • コードプロトタイピング: 実際にコードを書いて、動作するプログラムを作成する手法です。 機能の動作確認や技術的な検証に適しています。

プロトタイピングのプロセス

プロトタイピング型開発は、以下のプロセスで進行します。

  1. 要件定義: ユーザーやクライアントの要求や期待を整理し、プロトタイプで検証すべき項目を明確にします。
  2. 設計: 要件に基づき、プロトタイプの基本設計を行います。 この段階では、詳細な設計よりも迅速なプロトタイプ作成を重視します。
  3. プロトタイプ開発: 選択した手法でプロトタイプを作成します。 必要最低限の機能やデザインを実装し、検証に必要な部分に焦点を当てます。
  4. テスト・評価: ユーザーやクライアントにプロトタイプを実際に使用してもらい、フィードバックを収集します。 操作性や機能性、デザインなど、多角的に評価します。
  5. 改善: 得られたフィードバックを基に、プロトタイプを修正・改良します。 このプロセスを繰り返し、最終的な製品の完成度を高めていきます。

プロトタイピングのメリットとデメリット

メリット

  • 早期の問題発見: 初期段階でユーザーのフィードバックを得ることで、潜在的な問題や改善点を早期に発見できます。
  • ユーザー満足度の向上: ユーザーの意見を反映しながら開発を進めるため、最終的な製品の満足度が高まります。
  • コミュニケーションの円滑化: 具体的なプロトタイプを共有することで、開発チーム内やクライアントとの意思疎通がスムーズになります。

デメリット

  • コストと時間の増加: プロトタイプの作成や評価に追加のリソースが必要となるため、全体のコストや開発期間が延びる可能性があります。
  • スコープの拡大: フィードバックを取り入れる過程で、当初の計画よりも機能や仕様が膨らむリスクがあります。
  • 品質のばらつき: プロトタイプの品質や精度によっては、誤ったフィードバックを招く可能性があります。

 

プロトタイピング型開発の注意点

プロトタイピング型開発は、試作品を作成し、ユーザーのフィードバックを基に改良を重ねる手法で、ユーザー中心の設計に適しています。オフショア開発でこの手法を採用する際の注意点は以下の通りです。

  • フィードバックの遅延:​オフショア開発では、時差やコミュニケーション手段の制約により、ユーザーからのフィードバックが遅延する可能性があります。これにより、プロトタイプの改良サイクルが遅れ、開発全体の進行に影響を及ぼすことがあります。

  • 認識のズレ:​文化や言語の違いから、ユーザーの要求やフィードバックの解釈にズレが生じる可能性があります。これを防ぐために、詳細なドキュメントやビジュアル資料を活用し、共通の理解を促進する工夫が必要です。

  • コストと時間の管理:​プロトタイピング型開発は、試作品の作成や評価に追加のリソースが必要となるため、全体のコストや開発期間が延びる可能性があります。オフショア開発では、これらのリソース管理を適切に行い、予算やスケジュールの超過を防ぐことが重要です。

 

他の開発手法との比較

  • ウォーターフォール型開発: 各工程を順次進める手法で、後戻りが難しいのが特徴です。 プロトタイピング型開発は、試作品を通じて柔軟に要件を見直す点で異なります。
  • アジャイル型開発: 短期間の反復作業で開発を進める手法です。 プロトタイピング型開発は、試作品を用いて具体的なフィードバックを得る点で、アジャイル開発と共通する部分がありますが、プロトタイプの活用方法や目的に違いがあります。

プロトタイピング型開発は、ユーザー中心の設計や迅速なフィードバックループを重視するプロジェクトに適しています。 ただし、プロジェクトの規模や性質によっては、他の開発手法との組み合わせや選択が必要となる場合もあります。

 

 

 

 

 

まとめ

ウォーターフォール型開発は、​各工程を順次進める計画的な手法で、大規模プロジェクトに適しています。しかし、仕様変更への対応が難しいというデメリットがあります。

アジャイル型開発は、​短期間の反復作業で柔軟に開発を進める手法で、変化の激しいプロジェクトに向いています。ただし、進捗管理が難しくなる可能性があります。

プロトタイピング型開発は、​試作品を作成し、ユーザーのフィードバックを基に改良を重ねる手法で、ユーザー中心の設計に適しています。一方、コストや時間が増加するリスクがあります。

プロジェクトの特性や要件に応じて、最適な開発手法を選択することが重要です。

本記事で使用した単語の解説

  • 要件定義:​システムが満たすべき機能や性能、制約条件を明確にする工程。

  • 外部設計:​ユーザーインターフェースやシステム全体の構造を設計する工程。

  • 内部設計:​各コンポーネントの詳細な動作やデータ構造を設計する工程。

  • 実装:​設計に基づき、プログラムのコーディングを行う工程。

  • テスト:​単体テスト、結合テスト、システムテストなどを実施し、品質を確認する工程。

  • 運用・保守:​システムの導入後、安定稼働のための運用と必要に応じた保守を行う工程。

  • イテレーション:​短期間の反復作業のこと。アジャイル開発で用いられる。

  • スクラム:​アジャイル開発の手法の一つで、短期間のスプリントと呼ばれる開発サイクルを繰り返す。

  • エクストリーム・プログラミング(XP):​アジャイル開発の手法の一つで、テスト駆動開発やペアプログラミングなどの実践を重視する。

  • プロトタイプ:​試作品のこと。プロトタイピング型開発で用いられる。

  • ペーパープロトタイピング:​紙とペンを使って、画面レイアウトや操作フローを簡易的に描き出す方法。

  • ワイヤーフレーム:​線や図形を用いて、画面の構成要素やレイアウトを視覚化する手法。

  • デジタルプロトタイピング:​グラフィックソフトを使用して、より詳細でリアルなプロトタイプを作成する方法。

  • コードプロトタイピング:​実際にコードを書いて、動作するプログラムを作成する手法。

FAQ

Q1. ウォーターフォール型開発とアジャイル型開発の違いは何ですか?

A1. ウォーターフォール型開発は、各工程を順次進める計画的な手法で、全体のスケジュールや予算、人員配置が明確になり、管理がしやすい特徴があります。一方、アジャイル型開発は、短期間の反復作業で開発を進める柔軟な手法で、変化の激しいプロジェクトや要件が明確でない場合に適しています。

Q2. プロトタイピング型開発はどのようなプロジェクトに適していますか?

A2. プロトタイピング型開発は、ユーザー中心の設計や迅速なフィードバックループを重視するプロジェクトに適しています。具体的には、ユーザーの要望や期待が明確でない場合や、視覚的なデザインやユーザーインターフェースの確認が重要なプロジェクトに向いています。

Q3. 各開発手法のメリットとデメリットを教えてください。

A3. ウォーターフォール型開発のメリットは、計画と進捗管理が容易であり、品質の担保やドキュメントの充実が挙げられます。デメリットは、柔軟性の欠如や顧客のフィードバック反映の遅れ、リリースまでの時間が長い点です。アジャイル型開発のメリットは、柔軟性や早期リリース、品質向上、顧客満足度の向上が挙げられます。デメリットは、スケジュール管理の難しさやドキュメント不足、チームの熟練度依存が挙げられます。プロトタイピング型開発のメリットは、早期の問題発見やユーザー満足度の向上、コミュニケーションの円滑化が挙げられます。

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