
2月 20, 2025 • インドネシア, 財閥
3月 30, 2025 • インドネシア • by Erika Okada
目次
インドネシアに進出して現地法人(PT PMA)を設立する経営者・マネージャーの皆様に向けて、インドネシアの税制に関する詳しい解説をお届けします。本記事では、法人税(Pajak Penghasilan Badan)を中心に、付加価値税(VAT/PPN)、輸入に関わる関税や税金、サービスに対する地方税、派遣社員の税務などを解説します。各トピックごとに現地の制度や手続き、注意点を整理していますので、インドネシアでの事業運営にお役立てください。
税率と課税対象: インドネシアの法人税(PPh Badan)の標準税率は2022年以降、一律で 22% に設定されています。これは内国法人(インドネシアに設立された会社)および恒久的施設(PE、外国企業の支店等)に適用される基本税率です。上場企業で一定の要件(発行株式の40%以上がインドネシア証券取引所で公開されている等)を満たす場合には、一般税率より3%軽減された 19% の税率が適用されます。一方、課税所得(後述)年間4.8億ルピア以下の中小法人については、課税所得の一部に対して税率を50%軽減(実質的に11%相当)する優遇措置が認められています。例えば、売上高4.8億ルピア以下の法人は、課税所得の全額に11%の税率を適用できます。4.8億ルピアを超え50億ルピア以下の場合には、4.8億ルピアまでの部分に軽減税率(11%)を適用し、それを超える部分は通常税率22%が適用されます。なお、一定要件を満たす小規模法人については売上高の0.5%を最長3~4年間納める最終税(Final Tax)方式も存在します。これは中小零細事業者向けの簡便税制で、PT形式の法人は設立から3年間適用可能ですが、多くの進出企業では標準的な22%課税を選択するケースが一般的です。
課税所得の定義: インドネシア法人税の課税対象となる所得は、原則としてその法人の全世界所得です。課税所得(Penghasilan Kena Pajak)とは、会計上の純利益に各種調整を加えた額で、課税上認められる収入から必要経費・損失控除を差し引いたものを指します。具体的には、売上などの総収入から業務上の費用を差し引いた営業利益に、課税対象となる営業外収入を加え、さらに非課税所得や損金不算入項目を調整します。また、繰越欠損金がある場合は最大5年間にわたり利益と相殺(控除)することが可能です。こうして算出された課税所得に税率(22%など)を乗じて法人税額を計算します。インドネシア税法上、収入とはインドネシア国内外から得たあらゆる経済的利益を指し、原則として寄付や相続など一部の非課税所得を除きすべて課税対象となります。
会計年度と申告義務: インドネシアの法人税の課税年度(Tahun Pajak)は、特別の届け出をしない限り暦年(1月~12月)になります。現地法人を設立する際には事業年度を定め、通常は暦年を採用しますが、会社の都合で別の12ヶ月期間を事業年度(Tahun Buku)とすることも可能です。その場合、税務当局への申請と承認が必要です。いずれにせよ、法人は正規の複式簿記による帳簿の作成と保存が義務付けられており、事業年度終了後にはインドネシアの会計基準と税法に従って財務諸表を作成します。帳簿はインドネシア語(または許可を受けた場合は英語)でルピア建てで記録する必要があります。また、インドネシアの法人税法では、関連当事者間取引に対する移転価格税制も整備されていますが、詳細な説明は割愛します。以上がインドネシア法人税の基本制度の概要です。
納税スケジュール: インドネシアの法人税は、年度末に一括で納めるだけでなく、年間を通じた分割前払い(仮払)制度が採用されています。具体的には、前年の納税実績に基づき算定された月次見積額を、PPh Pasal 25(法人税第25条)と呼ばれる月次の予定納税として納付します。原則として各月分の予定納税額を翌月15日までに納めることになっており、15日が週末・祝日に当たる場合は翌営業日が期限となります。例えば1月分の予定納税は2月15日まで、2月分は3月15日まで、といった具合です。この予定納税は金融機関や税務当局のオンラインシステムで納付し、その際発行される納付番号(NTPN)が月次申告の代替となるため、別途の月次申告書提出は不要です。年間の決算が終了したら、法人税の年次確定申告(SPT Tahunan PPh Badan)を作成し、年度内の実際の税額と前年からの仮払・源泉徴収税額を精算します。年次申告は事業年度終了後 4ヶ月以内(暦年なら4月末まで)に提出・納税する必要があります。つまり、1月~12月決算の法人は原則として翌年4月30日までに確定申告と納税を完了しなければなりません。なお、止むを得ない事情で申告が間に合わない場合、所定の届出(法人税申告期限延長届)を行うことで 最長2ヶ月の申告期限延長(例えば暦年法人なら6月末まで)が認められます。ただし延長が認められるのは申告書提出期限のみで、納税そのものの延長は認められません。延長申請をする場合でも期限(通常は4月末)までに納付すべき税額の見積納税が必要となり、不足があれば延滞利息が課されます。
納付手続きとオンラインシステム: インドネシアでは近年、税金の支払い・申告は電子システムで行うのが一般的です。納税者は法人設立後に税務ID(NPWP)を取得し、「DJPオンライン」(DJP Online)と呼ばれる税務総局の公式サイトに登録します。納税の際は電子納税システム(e-Billing)を利用して納付コードを発行し、これを使って銀行送金やオンライン決済で税金を納めます。たとえば、DJPオンラインにログインして「BAYAR(支払い)」メニューからe-Billingを選択し、税目や期間など必要事項を入力すると16桁のBilling ID(Kode Billing)が生成されます。このコードを使い、対応する銀行や電子決済サービスで納税額を支払うと納付が完了します。支払い後にはNTPN(納付受付番号)が発行され、これは税務上の正式な領収番号となります。一方、申告については電子申告システム(e-Filing)やe-Formを利用します。法人税の年次申告書(様式1771)は電子フォームに必要事項を入力し、財務諸表等の添付書類PDFとともにオンライン送信します。DJPオンライン上で提供されるe-Filing機能や、認定税務ソフトウェアを使った申告も可能です。初回の電子申告前には納税者番号に紐づく電子フィリング識別番号(e-FIN)の取得が必要ですが、これは税務署で手続きできます。なお、法人は給与支払に伴う源泉徴収税(PPh21)や付加価値税の月次申告もオンラインで行う義務があります。総じて、インドネシアでは納税・申告手続きはオンライン化が進んでおり、現地法人設立後は速やかにこれら電子システムの利用環境を整えることが重要です。
法人税の不遵守に対する罰則・延滞金
インドネシア税法では、申告漏れや納税遅延に対して厳格な行政罰則が定められています。主なものを以下にまとめます。
以上のように、インドネシアでは申告義務の不履行や納税遅延に対するペナルティが明確に法律で規定されています。不注意や手続き遅延による罰金・延滞利息は積み重なると多額になるため、期限管理と正確な申告・納税が肝要です。万一支払いが遅れる場合でもできるだけ早く納付することで利息の増加を抑えられます。また、政府が特別な事情により罰則免除措置を取るケース(天災時の申告期限延長など)もありますが、通常は罰則適用が厳格に運用されます。現地専門家(税理士や会計士)と連携し、コンプライアンスを徹底しましょう。
VATの基本概要: インドネシアの付加価値税(Pajak Pertambahan Nilai, PPN)は、日本の消費税に相当する間接税で、物品およびサービスのほとんどの商取引に課されます。標準税率は11%で、これは2022年4月1日に従来の10%から引き上げられたものです。さらに法律上は2025年1月1日までに12%へ引き上げることが定められており、政府の裁量で2025年前後に12%への税率改定が予定されています(※記事執筆時点では11%で運用中、一部報道では12%への引上げ検討が言及されています)。VATは売上に対して事業者が預かり納める仕組みで、インドネシア国内で課税対象となる財・サービスの提供、輸入取引などに課税されます。一方、輸出取引については税率0%(ゼロ税率)を適用し、輸出産業の競争力維持を図っています。また、特定の必需品(生鮮食品や教育・医療等)や金融サービスなど一部の財・サービスはVATの非課税もしくは免税対象と法律で定められています。例えば「ホテルやレストランで提供される飲食物」はVAT法上課税対象外とされており、その代わり地方税で課税されます。
PKP登録義務: インドネシアでは、一定規模以上の事業者はVATの課税事業者(Pengusaha Kena Pajak, PKP)として税務当局への登録が義務付けられます。現在、その判定基準は「年間売上高が 4.8億ルピア を超える事業者」です。年商がこの閾値を超えた場合、原則として所轄税務署に申請してPKPに認定(Pengukuhan)される必要があります。PKPに登録されると、お客様に対してVATを付加した請求書(Faktur Pajak)を発行しVATを預り金として納付する義務が生じます。逆に言えば、売上高が4.8億ルピア以下の中小事業者は「非PKP」として登録免除されますが、その場合自社の売上にVATは課さない代わりに、仕入れ時に支払ったVAT(仕入税額控除)が受けられないという不利益もあります。日本企業の現地法人であれば、たとえ初年度売上が小規模でも取引先からVATインボイスを要求されるケースも多いため、任意で早期にPKP登録するケースもあります。なお、PKP事業者は毎月末までに当月分のVAT申告(SPT Masa PPN)を行い、翌月末までに納税する義務があります。例えば1月分のVATは2月末までに申告・納付します。申告内容は売上に係る課税売上高(DPP)およびVAT(アウトプット税額)と、仕入に係る課税仕入高および支払VAT(インプット税額)を計上し、その差額(アウトプット超過なら納税、インプット超過なら繰越または還付請求)を算定します。
VATの電子インボイスと報告: PKP事業者はVATインボイス(Faktur Pajak)を電子的に発行・報告することが義務付けられています。インドネシア税務当局は電子インボイスシステム(e-Faktur)を提供しており、各取引ごとにVATインボイスを発行・登録します。これにより、税務当局は売上側・仕入側双方の申告整合性をリアルタイムで把握します。VATインボイスにはシリアル番号管理があり、不備や未報告があると仕入側は税額控除を認められないため、正確な発行・報告が重要です。また、VAT申告において期間内に過大な仕入超過(還付請求)が発生した場合、税務調査の対象となることもあります。特に初年度や大きな設備投資の際にはVAT還付が発生しやすいので、手続き(tax auditによる確認)に時間を要する点に留意が必要です。
以上がインドネシアVAT制度の概要です。税率改定のタイミングやPKP登録要件については法改正や政策による変更もあり得るため、最新情報の確認をお勧めします。
インドネシアで事業を行う際、機械や原材料、製品を輸入する場合には関税および輸入時課税に留意が必要です。外国からインドネシアに物品を輸入する際に課される主な税・費用は以下のとおりです。
以上が輸入時に関わる主な税負担です。輸入通関手続きでは、上記税金の他に通関手数料(書類審査料や倉庫保管料など)が発生することもあります。また、インドネシア政府は一定の条件を満たす投資プロジェクトに対し、機械設備や原材料の輸入関税を免除・減免する税関施設(Masterlist免税制度など)を提供しています。製造業の新規投資であれば、投資調整庁(BKPM)経由で関税免除の申請が可能な場合もあります。実際に輸入を行う際には、関税分類や税率、各種優遇措置の適用可能性について専門の税関業者(フォワーダー)や税務顧問と事前に確認し、想定外のコスト発生を防ぐことが重要です。
インドネシアには国税とは別に、地方自治体が課税する地方税(Pajak Daerah)の制度があります。特にサービス業に関連して課される地方税について説明します。地方税は都道府県レベル(州=Provinsi)と市区町村レベル(Kabupaten/Kota)の二種類に大別され、サービスに関係する主なものは市区町村税として以下のようなものがあります。
以上のように、インドネシアでは事業内容によっては国税のほかに複数の地方税を考慮する必要があります。例えばホテルを開業すれば宿泊料に対し10%のホテル税を徴収・納付しなければなりませんし、レストランを経営すれば売上にレストラン税を上乗せして納税する義務があります。これら地方税は自治体ごとに税率や徴収方法(申告制か納付書制か)が異なるため、進出先地域の税規則を確認する必要があります。通常、地方税は毎月または毎四半期ごとに地方政府の税務当局に申告・納付します。例えばジャカルタ特別州ではホテル・レストラン税は月次申告・翌月15日納付となっています。
日本人経営者にとって馴染みが薄いかもしれませんが、「レストランで請求書に記載される10%のTaxはVATではなく地方税」など、インドネシア特有の税体系にも注意してください。サービス料(Service Charge)と税(Tax)は別項目です。地方税はその地域のインフラ整備等に使われる財源であり、適切な納税が求められます。事業を行う自治体の税条例(Perda)を把握し、該当する地方税についても漏れなく申告・納税するようにしましょう。
インドネシアでは、人材を派遣会社(アウトソーシング会社)から調達するケースも多く見られます。派遣社員の雇用(アウトソーシング利用)に関して留意すべき税務上のポイントを整理します。
アウトソーシングサービスに対する源泉徴収税(PPh23): 企業がアウトソーシング会社から人材提供サービスを受け、その対価として支払う費用には、所得税法第23条に基づく源泉徴収税(PPh Pasal 23)が課されます。アウトソーシングは法律上「労働力の提供に関するサービス」と位置付けられており、その支払額(税抜き金額)の2%をサービス受領企業側で源泉徴収し、国に納付する義務があります(支払先がNPWP未登録の場合は2倍の4%)。ただし、源泉徴収の課税標準となる金額はアウトソーシング会社への支払総額から、実際に労働者へ支払われる給与・賃金相当分を除いた額とされています。これは2015年の財務省規定(PMK 141/2015)で定められた特則で、派遣会社が給与明細等の証拠を提示できる場合、派遣労働者の賃金部分にはPPh23を課さず、派遣会社のマージン・手数料部分(管理費用)にのみ2%課税するという取り扱いです。例えば、アウトソーシング会社からの請求書が「給与200万円+手数料20万円(計220万円)」という内訳であれば、給与部分200万円を除いた20万円に2%を乗じた4,000円が源泉徴収税となります。もし内訳不明の場合は総額に2%を課すことになります。源泉徴収したPPh23は翌月10日までに納付し、翌月20日までに税務当局へ申告します。
給与所得に対する源泉徴収税(PPh21): 派遣社員本人が受け取る給与・賞与については、実際にその給与を支払う雇用者(この場合アウトソーシング会社)が所得税法第21条に基づく源泉徴収(PPh Pasal 21)を行います。つまり、派遣社員の給与から所定の所得税(累進税率5~35%、非居住者の場合固定20%等)が控除・納税されます。派遣先企業(サービス利用者)は派遣社員に直接給与を支払わないため、通常はPPh21の源泉徴収義務者にはなりません。一方で、派遣先企業が派遣社員に対して直接手当や交通費等を支給する場合、それが課税所得に該当すればアウトソーシング会社を通じて適切に課税されるよう取り決めておく必要があります。
直接契約の契約社員の場合: もしアウトソーシング会社を介さずに個人と直接契約して一時的・短期の業務を委託する場合、その支払いに対する課税関係は契約形態により異なります。雇用契約を結んで給与を支払うならPPh21での源泉徴収、業務委託契約で成果に対し報酬を支払うならPPh23の対象(サービス料の2%源泉)となる可能性があります。一般に、個人に対する支払いは「給与・賃金」であればPPh21、「専門サービス報酬」であればPPh23という区分です。判断が難しいケースでは税務顧問の助言を仰ぐと良いでしょう。
社会保険とその他の留意点: 派遣社員であっても、インドネシアの社会保障制度(労働者社会保障: BPJS Ketenagakerjaan、健康保険: BPJS Kesehatan)の適用対象です。通常、派遣会社が従業員としてBPJS登録し保険料を負担しますが、派遣先企業がその費用を負担する取り決めもあり得ます。これら社会保険料は税務上、法人側では損金算入可能であり、個人側では非課税の福利厚生として扱われます。
以上、アウトソーシング活用時の税務ポイントをまとめると、派遣先企業はアウトソーシング費用支払い時に2%のPPh23源泉を確実に行うこと、そして派遣元企業が派遣社員給与のPPh21源泉を適切に処理していることを確認することが重要です。両社間の契約書には税務上の役割分担を明記し、万が一税務調査があった場合でも双方で整合した対応が取れるようにしておきましょう。
日本とインドネシアの間では、二重課税防止条約(租税条約, P3B: Persetujuan Penghindaran Pajak Berganda)が1982年に締結され、1983年から発効しています。この条約により、両国で事業展開する企業や個人の税負担調整が行われ、二重課税の回避や減税措置が定められています。PT PMAを設立して事業を行う際にも、この条約の恩恵を受けられる場面がいくつかあります。
配当・利子・ロイヤルティの源泉税軽減: インドネシアの国内法では、非居住者(外国法人・個人)に支払われる配当・利子・ロイヤルティ等に一律20%の源泉徴収税(PPh Pasal 26)が課されます。しかし日尼租税条約により、日本居住者に支払われるこれら所得については軽減税率が適用可能です。主な軽減措置は以下のとおりです。
以上のように、条約適用によってクロスボーダー取引の源泉課税は軽減されます。ただし、これら軽減税率の適用を受けるためには、租税条約届出書(インドネシア税務当局指定の様式=通称「DGTフォーム」)を事前に提出し、相手方が日本の居住者であることを証明しなければなりません。具体的には、日本の受益者側で居住者証明書を税務署から取得し、それを添付したDGT-1もしくはDGT-2フォームをインドネシアの支払者が税務署に提出する必要があります。この手続きを怠ると、インドネシア側は軽減税率を認めず通常の20%課税を適用しますので注意してください。
事業所得と恒久的施設(PE): 租税条約では、企業の事業利益(Business Profits)は原則として相手国に恒久的施設(Permanent Establishment, PE)がない限り課税されないと規定されています。つまり、日本企業がインドネシアにPE(支店や工場等の拠点)を持たず、単に商品輸出するだけならインドネシアでは課税されず、日本のみで課税されます。一方、インドネシアでPEに該当する事務所や駐在員事務所を持てば、そのPEが稼得する所得にのみインドネシア課税が行われます。今回PT PMAを設立する場合、PT PMA自体はインドネシア法人(内国法人)なのでPEの概念は適用されず、PT PMAがインドネシアで納税し、日本親会社はPEを持たない形になります。ただし、日本親会社から派遣された駐在員が長期(183日超)滞在してPT PMAとは別に事業活動を行うような場合には、個別にPE認定の問題が生じ得ます。一般のケースではPT PMAという法人形態を取ることで、日本本社がインドネシアに直接課税されるリスクは条約上回避されます。
個人の給与所得・駐在員税務: 条約には教職・駐在員の所得税に関する取り決めもあります。例えば、日本の本社からインドネシアに1年未満の期間で出向して働く駐在員について、一定条件(滞在期間183日以下、給与負担が日本側、本社以外から給与支払なし)を満たせばインドネシアでは課税せず日本のみで課税する規定があります(俗にいう183日ルール)。逆に長期駐在となればインドネシア居住者となり課税されますが、その場合日本でその給与に課税されても条約に基づき二重課税調整(外国税額控除)が行われます。
二重課税の排除: 租税条約の大きな目的はダブルタックスを防ぐことです。日本・インドネシア条約では、お互いの国で生じた所得について片方の国で課税された場合、もう一方の国ではその税額を自国税から控除(外国税額控除)する方式で二重課税を排除すると定めています。日本の親会社がインドネシア子会社から配当や利息を受け取った場合、インドネシアで源泉徴収された税額を日本の税額控除に算入できますし、反対にインドネシア居住者が日本から所得を得て日本で税を払った場合には、インドネシアの納税額から控除できます。これにより同一の所得に対して両国で二重に税を払う必要がなくなります。
その他の条約上の取り決め: 条約にはこの他、租税に関する情報交換や非差別条項(他国民に不利な課税をしない)、相互協議手続(課税紛争が起きた際の政府間協議)等も定められています。また2020年代には多国間でのBEPS防止措置(Multilateral Instrument, MLI)にも両国は合意しており、条約の一部改訂が進む可能性もあります。現行の日尼租税条約は古い協定ですが、上述の源泉税率など基本的な取り決めは有効に機能しています。
租税条約の適用を受けるには適用要件と手続きを満たすことが重要です。前述のように証明書提出が必要なほか、「受益所有者」であること(単なる名義会社でないこと)も要件です。実務上は、日本の税務署発行の居住者証明を毎年取得し、インドネシア側に提出することを忘れないようにしましょう。
インドネシアで現地法人(PT PMA)を設立してビジネスを展開する日本企業にとって、税制の正しい理解と対応は非常に重要です。本記事では、法人税(PPh Badan)の基本から、VAT(付加価値税)や輸入税、地方税、派遣社員の税務、さらには日尼間の租税条約まで、広範囲にわたるインドネシア税制の実務ポイントを整理しました。
法人税率は一般的に22%ですが、企業規模や上場要件によって軽減措置も存在します。申告・納税は原則オンラインで行い、手続きミスや遅延には厳しい罰則が科される点に注意が必要です。また、VATや地方税などの間接税、そしてアウトソーシング費用への源泉徴収税など、日本の税制と異なる点も多く見られます。
さらに、日本との租税条約を活用すれば、配当・利息・ロイヤルティの源泉税軽減や二重課税の回避が可能となるため、実務的に非常に重要です。インドネシアに進出する際には、信頼できる現地の会計士や税務顧問と連携し、適切な税務コンプライアンスを行うことが、持続可能なビジネス運営の鍵となるでしょう。
インドネシアでのビジネスなら創業10周年のTimedoor
システム開発、IT教育事業、日本語教育および人材送り出し事業、進出支援事業
本記事で使用した単語の解説
よくある質問(FAQ)
Q1. 日本法人がPT PMAを設立した初年度に赤字だった場合、法人税の申告義務はありますか?
A. はい、赤字であっても法人税申告(SPT Tahunan PPh Badan)は義務です。課税所得がなくても、会計報告と税務申告は行う必要があります。
Q2. VAT(付加価値税)と地方税はどちらも請求書に記載されますか?
A. 取引内容により異なります。レストランやホテルなどの一部業種ではVATの代わりに地方税(例:レストラン税10%)が課されます。どちらが適用されるかは業種と登録状況によります。
Q3. DGTフォームは毎年提出しなければなりませんか?
A. はい、原則として毎年日本側で居住者証明を取得し、それに基づいてDGTフォームを更新・提出する必要があります。提出がないと軽減税率が適用されません。
Q4. 輸入時のVATは経費になりますか?
A. 輸入VATは仕入税額控除の対象になります。つまり課税売上に使われる場合、後日のVAT申告で控除可能です。ただし一時的なキャッシュアウトが生じます。
Q5. 派遣社員に関する税務処理は、派遣先と派遣元のどちらが責任を持つべきですか?
A. 一般的には、派遣元(アウトソーシング会社)がPPh21の源泉徴収責任を持ちます。一方、派遣先企業はPPh23(2%)の源泉徴収を行う必要があります。契約書で税務責任の明確化を推奨します。
心を込めて書いています、よろしければこちらもご覧ください