
4月 12, 2025 • インドネシア, 特定技能・技能実習
4月 9, 2025 • インドネシア • by Erika Okada
目次
日本企業が海外に進出する上で、東南アジア最大の人口と経済規模を持つインドネシア市場は極めて魅力的な存在です。実際に、食品、日用品、アパレル、乗り物、サービス、コンテンツビジネスなど多岐にわたる日本ブランドがインドネシアで成功を収めており、その背景には文化適応力、品質、信頼性、現地パートナーとの協業など、さまざまな成功要因が存在しています。
本記事では、実際にインドネシアで高い人気を誇る日本ブランドの具体例を取り上げ、それぞれの戦略と成功の背景を詳細に解説します。さらに、日本ブランドの成功要因と、インドネシア進出における課題とその対策についても体系的にまとめています。これからインドネシア市場への参入を検討している企業にとって、実践的なヒントとなる内容です。
🥛 ヤクルト:独自の販売戦略で市場を開拓
1991年にインドネシアで営業を開始し、訪問販売員「ヤクルトレディ」を導入。
このユニークな販売チャネルが消費者との信頼構築につながり、2021年には1日あたり約700万本の販売を達成しました。
💧 大塚製薬:ポカリスエットの市場適応
1974年に進出。当初はスポーツドリンクとして展開するも不振。
しかし、インドネシアの高温多湿な気候に合わせ、水分補給の重要性を訴求する戦略に変更。結果、年間6億本の販売を記録するまでに成長。
👶 ユニ・チャーム:現地ニーズに応じた製品展開
1997年に参入。インドネシアの所得層に合わせた低価格帯の紙おむつ・生理用品を提供。その結果、同カテゴリでシェアNo.1を獲得。
🍼 ピジョン:乳幼児用品のトップブランド
1994年に現地進出し、哺乳瓶市場で約60%のシェアを獲得。
病院・産院との提携や、現地ニーズに応じた製品ローカライズが功を奏しました。
🍜 丸亀製麺:パートナー協業とローカライズ戦略
2013年に進出。現地の製粉会社と提携し安定した供給体制を実現。
また、豚肉を使用しないメニューなど、ムスリム文化への対応も徹底。
現在は100店舗以上を展開。
🐮 吉野家(Yoshinoya):“早い・安い・うまい”の牛丼文化をローカルに定着
吉野家は、2009年にインドネシア1号店をジャカルタのGrand Indonesiaにオープンして以来、2024年現在で100店舗以上を展開しています。
ファストフードとしての「スピード・手頃な価格・安定した味」を軸に、都市部を中心に中間層の若者やビジネスパーソンに定着しています。
🍜 一風堂(Ippudo):プレミアムラーメンを“特別な体験”として提供
日本国内外で高評価を受けるラーメンブランド「一風堂」は、2017年にインドネシア1号店をジャカルタのパシフィックプレイス(Pacific Place)にオープン。
「ラーメン=高級外食」という位置付けで、都市部の富裕層・日本文化好きな若者層を中心に人気を獲得しています。
👕 ユニクロ:現地ニーズに合わせた商品開発
2013年にジャカルタへ出店。通気性の高い衣類や、冷房対策の軽量上着を展開。
SNSプロモーションや現地人材の活用を通じて、ブランドの信頼性と認知度を向上。
🏪 ローソン:地域に根ざした商品とサービス
ナシゴレンやミーゴレンといったローカル料理を使った弁当や、ハラル対応食品を提供。
さらに、イートインスペースを通じた地域コミュニティへの貢献も評価されています。
🪑 ニトリ:住宅事情に合わせた製品展開
2024年に進出。限られた居住空間に適したコンパクト家具や収納用品を展開。
「お、ねだん以上。」のスローガン通り、高品質・低価格の両立で人気に。
🍳 味の素:食文化に根ざした長期展開
調味料市場でのシェアが高く、ローカル料理に合う製品を開発。
家庭料理だけでなく、外食産業にも浸透しており、生活に欠かせないブランドとして定着。
🚗 トヨタ自動車:現地生産と強固な販売ネットワーク
インドネシア国内に生産拠点を構え、ローカルニーズに合った車種を多数展開。
また、販売・アフターサービス網を広く整備し、市場シェアNo.1クラスを維持。
🛵 ホンダ(二輪):圧倒的なシェアと信頼
ホンダは二輪市場の王者として、日常の足として親しまれています。
インドネシアの道路事情に適した耐久性のあるモデルを多数提供。
🏍 ヤマハ(二輪):若者に人気のスタイリッシュブランド
ヤマハは「スポーティ」「個性的」なバイクデザインで若年層に大人気。
現地生産による価格競争力、SNSマーケティングの巧みさ、そしてIoT機能搭載モデルによって、他社との差別化に成功。
🎶 ヤマハ(音楽教室):文化ビジネスとしての成功
音楽教室事業も展開し、日本式の音楽教育を提供。
高い教育品質と日本文化への憧れを背景に、富裕層の子どもたちを中心に支持を得ています。
🛍 SOGO:高品質な百貨店モデルを提供
インドネシアで百貨店を展開。高品質な商品ラインナップと接客サービスで、都市部中〜高所得層に定着。
🛒 イオン(AEON):郊外型ショッピングモールで家族層を獲得
イオンは2015年、タンゲランのBSD Cityに東南アジア最大級のショッピングモール「AEON MALL BSD CITY」をオープン。以来、ジャカルタ郊外を中心に店舗を拡大し、中間層以上のファミリー層を中心に圧倒的な支持を集めています。
🎮 ポケモン(Pokémon):日本発のIPコンテンツがZ世代を中心に熱狂的支持
「ポケットモンスター(Pokémon)」は、日本の代表的IP(知的財産)として、アニメ・ゲーム・キャラクターグッズなどを通じて、インドネシアの若者・子ども世代に圧倒的な人気を誇っています。
① 徹底した「ローカライズ戦略」
多くの成功した日本ブランドは、日本流をそのまま押しつけるのではなく、インドネシアの宗教・文化・習慣・所得層に合わせて柔軟に対応しています。
インドネシアはムスリム人口世界最多の国でもあるため、ハラル認証対応は食品や日用品において不可欠です。
② 現地パートナーとの協業と信頼構築
日本企業単独では対応が難しい法制度、土地取得、営業許可などの障壁を乗り越えるために、ローカルパートナーとの連携が非常に重要です。
現地文化や商習慣に精通したパートナーと手を組むことで、リスクを軽減し、スピード感をもった展開が可能になります。
③ 高品質・安心の「日本ブランド」イメージ
日本製品に対しては、「高品質」「安全」「壊れにくい」という印象が強く、中間層や富裕層からの信頼が厚いです。
「少し高くても長く使える」価値観が浸透しているため、価格だけで勝負しないプレミアム戦略も有効です。
④ SNSとデジタルを活用した現地マーケティング
インドネシアはFacebook・Instagram・TikTokのアクティブユーザーが非常に多い国です。
成功企業はこれらのSNSを駆使して、若年層へのダイレクトな認知獲得を行っています。
① 許認可・法制度の複雑さ
外資規制や業種ごとのライセンス取得プロセスが煩雑であり、計画通りに事業を立ち上げるには時間とコストがかかることが多いです。
対策:
② 価格競争とローカル企業の台頭
中間層向け商品では地場企業や韓国・中国ブランドとの価格競争が激しく、品質だけでは勝てない領域も存在します。
対策:
③ 人材採用・教育・定着の難しさ
優秀な人材の確保が難しい、あるいは教育しても早期退職される、という悩みは多くの日本企業が抱えています。
対策:
④ 商習慣・契約文化の違い
日本では常識の「納期厳守」「口約束の遵守」「逐次報連相(報告・連絡・相談)」などが、必ずしもインドネシアでは機能しない場面があります。
対策:
⑤ サプライチェーンやインフラの不安定さ
道路・港湾・電力・物流の信頼性に欠けるエリアも多く、物流遅延や在庫不足が発生しやすいです。
対策:
インドネシア市場において、日本ブランドは食品・飲料からアパレル、家具、交通手段、コンテンツまで幅広い分野で成功を収めています。その要因は一貫して「現地ニーズの理解と対応」「品質への信頼」「柔軟なパートナーシップ戦略」にあります。
しかしながら、進出には制度・商習慣・人材・物流など多くの壁が存在し、これを乗り越えるためには事前のリサーチ、信頼できる現地パートナーの選定、文化的な理解が不可欠です。
インドネシアは今後も経済成長が見込まれる重要な市場です。中間層の拡大、若年人口の多さ、そして親日的な国民性を活かして、日本企業が持続的に成長していくためには、現地に深く根ざした戦略が求められます。
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本記事で使用した単語の解説
ハラル(Halal)
イスラム教の戒律において「許されている」という意味を持ち、食品や飲料などがイスラム教徒にとって合法であることを指します。インドネシアでは製品や店舗のハラル認証取得が重要です。
ローカライズ(Localization)
製品やサービスを現地市場の言語、文化、習慣に合わせて調整すること。インドネシア市場では、宗教・所得・嗜好に合わせたローカライズが成功の鍵です。
中間層(Middle Class)
富裕層と貧困層の中間に位置する消費者層。インドネシアではこの層が急拡大しており、消費市場の中心的存在となっています。
アフターサービス
製品販売後のサポート業務。インドネシアでは信頼性の高いアフターサービスが日本ブランドの評価向上に貢献しています。
PDCA
Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)のマネジメントサイクル。業務の継続的改善に用いられます。
IP(Intellectual Property)
知的財産の略。キャラクターやブランド、音楽、映像などを含むもので、ポケモンなどの日本発IPはインドネシア市場でも人気です。
FAQ(よくある質問)
Q1. なぜインドネシアは日本企業にとって魅力的な市場なのですか?
A1. インドネシアは人口が2億7千万人を超え、経済成長率も高く、親日的な国民性を持つため、日本ブランドに対する信頼が高いことが魅力とされています。
Q2. 日本の中小企業でもインドネシアに進出できますか?
A2. 可能です。ただし、大企業と比較して資金・情報・ネットワークが限られるため、現地パートナーの選定や支援機関の活用が成功の鍵となります。
Q3. インドネシアで特に人気のある日本製品のカテゴリは何ですか?
A3. 食品・飲料、アパレル、家具、バイク・車、キャラクターグッズ、教育・コンテンツなど多岐にわたります。品質と信頼性が重視される分野が特に人気です。
Q4. ハラル対応はどの業種でも必要ですか?
A4. 食品・飲料、化粧品、日用品など肌や口に触れるものでは特に求められます。対応していないと消費者から敬遠される可能性があります。
Q5. 日本企業がインドネシア市場で失敗する主な要因は何ですか?
A5. 日本のやり方をそのまま持ち込んでしまうこと、現地の文化や市場特性を無視すること、パートナー選定の失敗などが挙げられます。ローカライズと現地理解が不可欠です。