
4月 20, 2025 • インドネシア
3月 31, 2025 • インドネシア • by Erika Okada
目次
インドネシアでは経済成長と都市化に伴い、国民の生活習慣に大きな変化が生じています。便利さと引き換えに食生活の乱れや運動不足が深刻化し、糖尿病や高血圧などの生活習慣病が急増しています。同時に、人々の健康への関心も高まり、健康志向のライフスタイルや予防医療、フィットネス産業への注目が急速に高まっています。本記事では、インドネシアの食生活やバイク文化がもたらす健康課題、そして健康志向の高まりとそれに伴うジムやヨガ・ピラティスといった健康ビジネス、さらにはヘルスケア市場の動向や日本企業にとってのビジネスチャンスについて、最新の情報に基づいて詳しく解説します。
1. 高カロリー・高脂質な食事
インドネシア料理は香辛料や油を多く使うのが特徴で、「ナシゴレン(炒飯)」や「ミーゴレン(焼きそば)」、「アヤムゴレン(揚げ鶏)」など、揚げ物中心のメニューが多く見られます。屋台やワルン(大衆食堂)でも、油で揚げた料理が定番となっており、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の摂取量が多いのが現状です。
さらに、「グラ(Gula=砂糖)」の消費量も高く、甘い紅茶(テ・マンニス)や砂糖入りコーヒー、甘いお菓子やスナックなどが日常的に消費されています。WHOによると、インドネシア人の砂糖摂取量は1日25g以下が推奨される中、平均的にそれを超える傾向があると報告されています。
2. 野菜・果物の摂取不足
インドネシア保健省のデータ(Riskesdas 2018)によると、15歳以上のインドネシア人の約95.5%が野菜と果物を必要量摂取していないとされています。インスタント食品や揚げ物が主流の中で、生野菜や果物の摂取が非常に少ないことが問題視されています。
3. 食事の時間と習慣
都市部では忙しいライフスタイルから、朝食を抜いて昼夜でドカ食いする人も多く見られます。また、深夜の屋台文化も根強く、深夜に高カロリーな食事を摂る習慣が肥満や糖尿病のリスクを高めています。
1. 「徒歩ゼロ文化」
インドネシア、特に都市部では交通手段の中心がバイクです。日常的な移動はほぼすべてバイクに依存しており、徒歩での移動が極端に少ない傾向があります。500メートル先のコンビニや学校でさえ、バイクで行くのが一般的です。
2. 公共交通の未整備と依存構造
ジャカルタなど一部の都市を除いて、公共交通網は未発達で、結果的にバイクが主な移動手段となっています。このため、慢性的な運動不足に陥りやすく、代謝が低下しやすい状況が続きます。
3. バイクによる姿勢悪化や身体機能低下
長時間のバイク運転は、姿勢の悪化や筋力の低下、腰痛や肩こりの原因にもなり、運動不足と相まって健康への影響はより深刻になります。
以下は、インドネシアでの生活習慣病に関する主な統計です(出典:インドネシア保健省・WHO):
疾患 |
有病率(成人) |
備考 |
高血圧 |
約34% |
特に都市部で増加中 |
糖尿病 |
約10.9%(20歳以上) |
無自覚の患者も多い |
肥満 |
約28%(女性) |
男性より女性に多い傾向 |
高コレステロール |
約35% |
40歳以上に多く見られる |
また、生活習慣病による死亡率は全体の73%を占めており(2022年WHO報告)、これは感染症よりも圧倒的に高い割合です。
インドネシアでは近年、経済成長や生活習慣病の増加を背景に、国民の健康志向が顕著に高まっています。 この動向は、食生活の改善、運動習慣の導入、健康関連商品の需要増加など、多岐にわたる変化をもたらしています。
インドネシアの急速な経済成長により、中間所得層が拡大し、可処分所得が増加しています。 これに伴い、人々は健康やウェルネスに対する関心を高め、健康維持や疾病予防への投資を積極的に行うようになっています。
都市化や食生活の変化により、糖尿病や高血圧症などの生活習慣病が増加しています。 この現状を受け、国民の間で健康維持や予防医療への関心が高まり、健康的な生活習慣の重要性が再認識されています。
健康志向の高まりにより、健康食品やサプリメントの市場が拡大しています。 特に、ビタミンCやオメガ3を含むサプリメントが人気を集めています。 また、オーガニックやナチュラル製品への関心も高まり、消費者はより健康的な選択を求めています。
ジャカルタ特別州では、毎週日曜日に「カーフリーデー」を実施し、ランニングやウォーキング、サイクリングなどの運動を奨励しています。 また、ランニングサークルなどのコミュニティ活動も活発化しており、国民の運動習慣の定着が進んでいます。
健康に関する情報収集の手段として、インターネットやソーシャルメディアの利用が増加しています。 特に、若年層を中心にオンラインでの健康情報の検索や共有が一般的となり、健康意識の向上に寄与しています。
● 市場背景
● 主要プレイヤー
● ターゲット
● 背景と現状
● 単価とポジショニング
● 普及の背景
● ターゲット
● サイクリング(インドア&アウトドア)
● Zumba・ダンス系フィットネス
● スマートフィットネス(アプリ・オンライン)
インドネシアの医療サービス市場は、右肩上がりの成長を続けています。 2021年には市場規模が440億米ドルに達し、今後もさらなる拡大が予想されています。
2018年のインドネシアの医薬品市場規模は73億米ドルで、2024年には135億米ドルに達する見込みです。 特に、インドネシア製薬会社が市場全体の約70%の売上を占めており、そのシェアは年々増加しています。
医療機器分野でも、インドネシア企業と海外企業の提携が進んでおり、臨床研究所や特定疾患に対する医療センター病院の設立などが行われています。 日本の医療技術も同国のヘルスケア産業を支える重要な役割を果たしています。
高齢化社会への対応
インドネシアは2023年に高齢化社会を迎えるとされ、高齢者人口の増加が予測されています。 これに伴い、医療サービスや介護サービスの需要が高まると考えられます。
予防医療の推進
2025年2月、インドネシア政府は早期死亡を防ぐための年間無料健康診断プログラムを開始しました。 このプログラムは、3兆ルピア(約1億8,354万ドル)を投じ、国民に無料の健康診断を提供するもので、予防医療の重要性が高まっています。
外資系企業の参入
2024年12月、米国の投資会社ベイン・キャピタルは、インドネシアの民間医療企業マヤパダ・ヘルスケア・グループに1億5,700万ドルを投資しました。 この投資は、同社の病院運営の拡大を支援するもので、海外からの投資が同国のヘルスケア市場に注目していることを示しています。
インドネシアは、東南アジア最大の人口を擁し、経済成長とともに中間所得層が拡大しています。 これに伴い、健康志向が高まり、ヘルスケア市場が急速に成長しています。 日本企業にとって、この動向は多くのビジネスチャンスを提供しています。
● 人口増加と中間層の台頭
● 健康志向の高まり
● 公共保険(BPJS)制度の限界
① 健康食品・サプリメント
チャンスの例:
② 医療機器・在宅医療
チャンスの例:
③ 美容・パーソナルケア
チャンスの例:
④ 健康管理アプリ・デジタルヘルス
チャンスの例:
● ハラール認証の取得
● 現地パートナーとの連携
● ローカライズ対応
日本企業 |
分野 |
活動内容 |
Otsuka製薬 |
サプリメント |
Pocari Sweatなどを現地生産し、国民的ブランドに成長 |
Rohto製薬 |
スキンケア・目薬 |
地元の肌質に合わせた製品開発、現地広告展開が功を奏す |
Omron Healthcare |
医療機器 |
家庭用血圧計の販売とともに健康教育も実施 |
インドネシアでは、生活習慣病の増加を背景に、人々の健康に対する意識が急速に高まっています。伝統的な高カロリー・高脂質な食事、野菜不足、バイク中心の生活といった生活習慣が健康を脅かす一方で、都市部を中心にフィットネスやヘルシーなライフスタイルへの関心が強まっています。これにより、ジムやピラティス、ヨガ、健康食品、医療機器といったヘルスケア関連分野に新たなビジネスチャンスが広がっています。日本企業にとっては、品質の高さや技術力、健康分野での実績を武器に、現地ニーズに合った商品・サービスを提供することで、インドネシア市場での成功が十分に期待できます。
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本記事で使用した単語の解説
ナシゴレン:インドネシアの代表的な炒飯料理。油や調味料を多く使用する傾向がある。
アヤムゴレン:インドネシア風のフライドチキン。油で揚げる調理法が一般的。
グラ(Gula):インドネシア語で「砂糖」の意味。
ワルン(Warung):インドネシアの庶民的な食堂や屋台のこと。
リフォーマーピラティス:専用の機器(リフォーマー)を使って行うピラティス。姿勢改善や筋力強化に効果的。
カーフリーデー:毎週日曜日にジャカルタなどで実施される、特定道路を車両通行止めにして歩行者や自転車利用者に開放するイベント。
BPJS:インドネシア政府が運営する国民健康保険制度。
Germas:Gerakan Masyarakat Hidup Sehat(健康的な生活社会運動)の略称。政府による健康増進キャンペーン。
ハラール認証:イスラム法に基づいて製造・加工された商品であることを認証する制度。インドネシアでは食品・医薬品・化粧品にも適用される。
FAQ(よくある質問)
Q1. インドネシアで生活習慣病が増えている理由は?
A. 高脂質・高糖質な食事、野菜や果物の摂取不足、運動不足、バイク中心の生活が主な要因です。都市化や働き方の変化も影響しています。
Q2. インドネシアではジムやフィットネスは一般的ですか?
A. 都市部を中心にジムの利用者は増加しており、24時間営業やサブスク型のリーズナブルなジムも普及しています。特に20〜40代の層に人気です。
Q3. 日本企業がインドネシアの健康市場に参入する際の注意点は?
A. ハラール認証の取得、現地文化や食習慣の理解、現地パートナーとの協業体制の構築が成功の鍵になります。価格やマーケティング手法も現地に合わせる必要があります。
Q4. インドネシアの女性は健康や美容に関心がありますか?
A. 非常に高い関心を持っています。ピラティスやヨガ、スキンケア商品などの需要が急増しており、美容と健康の両方を意識したライフスタイルが広がっています。
Q5. 健康ビジネスで注目されている分野は?
A. ジム・ピラティス・ヨガに加え、健康食品、スマートフィットネス(アプリやウェアラブル)、医療機器、在宅ケア、オーガニック商品などが注目されています。