3月 31, 2025 • インドネシア • by Erika Okada

インドネシアの健康志向トレンドとフィットネス・ヘルスケア市場

インドネシアの健康志向トレンドとフィットネス・ヘルスケア市場

インドネシアでは経済成長と都市化に伴い、国民の生活習慣に大きな変化が生じています。便利さと引き換えに食生活の乱れや運動不足が深刻化し、糖尿病や高血圧などの生活習慣病が急増しています。同時に、人々の健康への関心も高まり、健康志向のライフスタイルや予防医療、フィットネス産業への注目が急速に高まっています。本記事では、インドネシアの食生活やバイク文化がもたらす健康課題、そして健康志向の高まりとそれに伴うジムやヨガ・ピラティスといった健康ビジネス、さらにはヘルスケア市場の動向や日本企業にとってのビジネスチャンスについて、最新の情報に基づいて詳しく解説します。

 

インドネシア人の生活習慣からくる問題

インドネシア人の生活習慣からくる問題

インドネシア人の食生活が抱える課題

1. 高カロリー・高脂質な食事

インドネシア料理は香辛料や油を多く使うのが特徴で、「ナシゴレン(炒飯)」や「ミーゴレン(焼きそば)」、「アヤムゴレン(揚げ鶏)」など、揚げ物中心のメニューが多く見られます。屋台やワルン(大衆食堂)でも、油で揚げた料理が定番となっており、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の摂取量が多いのが現状です。

さらに、「グラ(Gula=砂糖)」の消費量も高く、甘い紅茶(テ・マンニス)や砂糖入りコーヒー、甘いお菓子やスナックなどが日常的に消費されています。WHOによると、インドネシア人の砂糖摂取量は1日25g以下が推奨される中、平均的にそれを超える傾向があると報告されています。

2. 野菜・果物の摂取不足

インドネシア保健省のデータ(Riskesdas 2018)によると、15歳以上のインドネシア人の約95.5%が野菜と果物を必要量摂取していないとされています。インスタント食品や揚げ物が主流の中で、生野菜や果物の摂取が非常に少ないことが問題視されています。

3. 食事の時間と習慣

都市部では忙しいライフスタイルから、朝食を抜いて昼夜でドカ食いする人も多く見られます。また、深夜の屋台文化も根強く、深夜に高カロリーな食事を摂る習慣が肥満や糖尿病のリスクを高めています。

バイク生活がもたらす運動不足

1. 「徒歩ゼロ文化」

インドネシア、特に都市部では交通手段の中心がバイクです。日常的な移動はほぼすべてバイクに依存しており、徒歩での移動が極端に少ない傾向があります。500メートル先のコンビニや学校でさえ、バイクで行くのが一般的です。

2. 公共交通の未整備と依存構造

ジャカルタなど一部の都市を除いて、公共交通網は未発達で、結果的にバイクが主な移動手段となっています。このため、慢性的な運動不足に陥りやすく、代謝が低下しやすい状況が続きます。

3. バイクによる姿勢悪化や身体機能低下

長時間のバイク運転は、姿勢の悪化や筋力の低下、腰痛や肩こりの原因にもなり、運動不足と相まって健康への影響はより深刻になります。

 

生活習慣病の具体的な影響と統計

以下は、インドネシアでの生活習慣病に関する主な統計です(出典:インドネシア保健省・WHO):

疾患

有病率(成人)

備考

高血圧

34

特に都市部で増加中

糖尿病

10.9%(20歳以上)

無自覚の患者も多い

肥満

28%(女性)

男性より女性に多い傾向

高コレステロール

35

40歳以上に多く見られる

また、生活習慣病による死亡率は全体の73%を占めており(2022年WHO報告)、これは感染症よりも圧倒的に高い割合です。

 

 

インドネシアの健康志向の高まり

インドネシアの健康志向の高まり

インドネシアでは近年、経済成長や生活習慣病の増加を背景に、国民の健康志向が顕著に高まっています。 この動向は、食生活の改善、運動習慣の導入、健康関連商品の需要増加など、多岐にわたる変化をもたらしています。

経済成長と健康志向の関係

インドネシアの急速な経済成長により、中間所得層が拡大し、可処分所得が増加しています。 これに伴い、人々は健康やウェルネスに対する関心を高め、健康維持や疾病予防への投資を積極的に行うようになっています。

生活習慣病の増加と健康意識の向上

都市化や食生活の変化により、糖尿病や高血圧症などの生活習慣病が増加しています。 この現状を受け、国民の間で健康維持や予防医療への関心が高まり、健康的な生活習慣の重要性が再認識されています。

健康関連商品の需要増加

健康志向の高まりにより、健康食品やサプリメントの市場が拡大しています。 特に、ビタミンCやオメガ3を含むサプリメントが人気を集めています。 また、オーガニックやナチュラル製品への関心も高まり、消費者はより健康的な選択を求めています。

運動習慣の普及

ジャカルタ特別州では、毎週日曜日に「カーフリーデー」を実施し、ランニングやウォーキング、サイクリングなどの運動を奨励しています。 また、ランニングサークルなどのコミュニティ活動も活発化しており、国民の運動習慣の定着が進んでいます。

健康情報の入手とインターネットの活用

健康に関する情報収集の手段として、インターネットやソーシャルメディアの利用が増加しています。 特に、若年層を中心にオンラインでの健康情報の検索や共有が一般的となり、健康意識の向上に寄与しています。

 

 

インドネシアのフィットネス関連市場の現状

インドネシアのフィットネス関連市場の現状

ジム・フィットネスビジネスの成長

● 市場背景

  • 都市部を中心に「健康意識」「見た目の意識(ボディメイク)」が若年層・中間層に浸透。
  • これまではジム=お金持ちの趣味という印象だったが、今ではリーズナブルな24時間ジムやサブスク型ジムも登場。
  • 特にジャカルタ・スラバヤ・バリ・バンドンなどの都市では、ジムがライフスタイルの一部となってきている。

● 主要プレイヤー

  • Celebrity Fitness や Fitness First といった高級ジムチェーンが中間層向けに拡大。
  • ReFIT、Snap Fitness などのローカル・中価格帯のジムも多数進出。
  • TRIBEVIBE や Dojo Gym のようなブティック型フィットネススタジオもトレンドに。

● ターゲット

  • 20代〜40代のオフィスワーカー、主婦層、インフルエンサー層。
  • 特に「痩せたい」「ボディメイクしたい」「健康診断で引っかかった」といったニーズが主。

ピラティスの急成長

● 背景と現状

  • インドネシアでは「ピラティス」はここ数年で大きくブームに。
  • 特に女性層に人気で、腰痛・姿勢改善・産後ケア・デスクワーク疲れといった現代病への効果が期待されている。
  • ジャカルタにはリフォーマーピラティスを提供するスタジオ(The Pilates Studio、Breathe、EQUINOXなど)が急増。

● 単価とポジショニング

  • 通常のヨガよりもやや高単価(1セッションRp 200,000〜Rp 350,000以上)。
  • 「プレミアム志向」「パーソナルケア」を求める層にマッチ。
  • 口コミやInstagramなどでのシェアが多く、SNS映えする環境やデザインも成功要因。

ヨガビジネス:地域に根ざした定番健康習慣へ

● 普及の背景

  • 仏教・ヒンドゥー文化の流れもあり、特にバリ島やジョグジャカルタなどで長年親しまれてきた。
  • 現代では都市部のカフェ・モールと併設された「ヨガスタジオ+ヘルシーカフェ」型が人気。
  • グループレッスン、マタニティヨガ、パワーヨガなどジャンルも多様化。

● ターゲット

  • 女性中心(20〜40代)
  • 健康志向、スピリチュアル志向、自然派志向の層
  • 外国人居住者・観光客にも根強いニーズあり(特にバリ)

その他の注目分野

● サイクリング(インドア&アウトドア)

  • コロナ禍以降、自転車人気が再燃。
  • ロードバイクを中心にサイクリンググループやイベントが活発。
  • インドアバイク(Spinningクラス)も都市部で人気に。

● Zumba・ダンス系フィットネス

  • 音楽と組み合わせたダンス系エクササイズ(ZumbaやK-Popフィットネス)が人気。
  • エンタメ要素が強く、飽きずに継続できるということで支持されている。

● スマートフィットネス(アプリ・オンライン)

  • スマホの普及により、オンラインレッスンやワークアウトアプリの利用も急増。
  • 自宅でトレーニングする層に向けたデジタルフィットネス事業も有望。

 

 

インドネシアのヘルスケア市場の現状

インドネシアのヘルスケア市場の現状

医療サービス市場の拡大

インドネシアの医療サービス市場は、右肩上がりの成長を続けています。 2021年には市場規模が440億米ドルに達し、今後もさらなる拡大が予想されています。

医薬品市場の成長

2018年のインドネシアの医薬品市場規模は73億米ドルで、2024年には135億米ドルに達する見込みです。 特に、インドネシア製薬会社が市場全体の約70%の売上を占めており、そのシェアは年々増加しています。

医療機器市場の動向

医療機器分野でも、インドネシア企業と海外企業の提携が進んでおり、臨床研究所や特定疾患に対する医療センター病院の設立などが行われています。 日本の医療技術も同国のヘルスケア産業を支える重要な役割を果たしています。


今後の動向と課題

高齢化社会への対応

インドネシアは2023年に高齢化社会を迎えるとされ、高齢者人口の増加が予測されています。 これに伴い、医療サービスや介護サービスの需要が高まると考えられます。

予防医療の推進

2025年2月、インドネシア政府は早期死亡を防ぐための年間無料健康診断プログラムを開始しました。 このプログラムは、3兆ルピア(約1億8,354万ドル)を投じ、国民に無料の健康診断を提供するもので、予防医療の重要性が高まっています。

外資系企業の参入

2024年12月、米国の投資会社ベイン・キャピタルは、インドネシアの民間医療企業マヤパダ・ヘルスケア・グループに1億5,700万ドルを投資しました。 この投資は、同社の病院運営の拡大を支援するもので、海外からの投資が同国のヘルスケア市場に注目していることを示しています。

 

 

日本企業にとってのビジネスチャンス

インドネシアは、東南アジア最大の人口を擁し、経済成長とともに中間所得層が拡大しています。 これに伴い、健康志向が高まり、ヘルスケア市場が急速に成長しています。 日本企業にとって、この動向は多くのビジネスチャンスを提供しています。

インドネシア市場の魅力と背景

● 人口増加と中間層の台頭

  • インドネシアは約2.8億人の人口を有し、ASEAN最大の市場。
  • 中間所得層が急増しており、健康や美容に「お金をかける層」が拡大中。

● 健康志向の高まり

  • 生活習慣病(糖尿病・高血圧・肥満)の増加により、予防医療や健康食品に注目が集まっている。
  • 政府も「Germas(健康的な生活習慣運動)」などを通じて国民の健康を推進中。

● 公共保険(BPJS)制度の限界

  • BPJSによる保険制度は存在するが、医療の質やアクセスには課題があり、民間医療や高付加価値サービスへの需要が高まっている。

注目の分野別ビジネスチャンス

① 健康食品・サプリメント

  • ビタミン、プロバイオティクス、高機能ドリンクなどが人気。
  • 日本ブランドは「品質・信頼性・安全性」で差別化が可能。
  • ハラール認証の取得が必須条件。

チャンスの例:

  • 高血圧・糖尿病対策用のサプリメント
  • ダイエットや美容を意識したプロテイン飲料
  • 高齢者向けの骨・関節系サポート食品

② 医療機器・在宅医療

  • 病院や診療所の数が不十分で、家庭用医療機器(血圧計、体温計、簡易心電図など)のニーズが拡大。
  • 遠隔医療や健康モニタリング機器の需要もコロナ禍以降高まっている。

チャンスの例:

  • 高齢者向けのスマートウェアラブル
  • 病院向けの日本製検査装置や管理システム
  • 在宅介護向けの支援ツールやリハビリ器具

③ 美容・パーソナルケア

  • 若年層や都市部女性を中心に、日本のスキンケア製品やオーガニック化粧品が人気。
  • 美白・アンチエイジング需要が非常に強い。

チャンスの例:

  • ナチュラル系スキンケア(敏感肌向け)
  • 美容と健康のクロスオーバー商品(例:コラーゲンドリンク)
  • 美容サロン向け業務用機器

④ 健康管理アプリ・デジタルヘルス

  • スマホ普及率は約70%、特に若年層の利用が活発。
  • 食事・運動・睡眠の管理アプリや、遠隔診療、AIを活用した診断支援などのデジタルヘルス分野は大きな成長分野。

チャンスの例:

  • ヘルスケア管理アプリ(日本式健康法などをローカライズ)
  • ウェアラブルと連携した血圧・心拍モニタリング
  • 医師と患者をつなぐ診療プラットフォーム

進出における成功のカギ

● ハラール認証の取得

  • 食品・化粧品・サプリメントはムスリム市場対応が必須。
  • 認証機関(BPJPHやMUI)との連携が重要。

● 現地パートナーとの連携

  • 法規制や文化の違いを理解するために、現地代理店・販売パートナーとの協業が有効。
  • JV(合弁会社)による生産・販売体制の構築も有望。

● ローカライズ対応

  • 味・香り・パッケージ・言語など、現地ニーズに合わせたカスタマイズが鍵。
  • SNS(Instagram, TikTok)を活用したローカルインフルエンサーとの連携も成功のカギ。

成功事例

日本企業

分野

活動内容

Otsuka製薬

サプリメント

Pocari Sweatなどを現地生産し、国民的ブランドに成長

Rohto製薬

スキンケア・目薬

地元の肌質に合わせた製品開発、現地広告展開が功を奏す

Omron Healthcare

医療機器

家庭用血圧計の販売とともに健康教育も実施

 

 

 

まとめ

インドネシアでは、生活習慣病の増加を背景に、人々の健康に対する意識が急速に高まっています。伝統的な高カロリー・高脂質な食事、野菜不足、バイク中心の生活といった生活習慣が健康を脅かす一方で、都市部を中心にフィットネスやヘルシーなライフスタイルへの関心が強まっています。これにより、ジムやピラティス、ヨガ、健康食品、医療機器といったヘルスケア関連分野に新たなビジネスチャンスが広がっています。日本企業にとっては、品質の高さや技術力、健康分野での実績を武器に、現地ニーズに合った商品・サービスを提供することで、インドネシア市場での成功が十分に期待できます。

 

 

インドネシアでのビジネスなら創業10周年のTimedoor 

システム開発、IT教育事業、日本語教育および人材送り出し事業、進出支援事業

お問い合わせはこちら

 

 

弊社代表のTimedoor CEO徳永へ直接相談する

Timedoor CEO 徳永 裕の紹介はこちら

 

 

 

本記事で使用した単語の解説

ナシゴレン:インドネシアの代表的な炒飯料理。油や調味料を多く使用する傾向がある。

アヤムゴレン:インドネシア風のフライドチキン。油で揚げる調理法が一般的。

グラ(Gula):インドネシア語で「砂糖」の意味。

ワルン(Warung):インドネシアの庶民的な食堂や屋台のこと。

リフォーマーピラティス:専用の機器(リフォーマー)を使って行うピラティス。姿勢改善や筋力強化に効果的。

カーフリーデー:毎週日曜日にジャカルタなどで実施される、特定道路を車両通行止めにして歩行者や自転車利用者に開放するイベント。

BPJS:インドネシア政府が運営する国民健康保険制度。

Germas:Gerakan Masyarakat Hidup Sehat(健康的な生活社会運動)の略称。政府による健康増進キャンペーン。

ハラール認証:イスラム法に基づいて製造・加工された商品であることを認証する制度。インドネシアでは食品・医薬品・化粧品にも適用される。

 

 

FAQ(よくある質問)

Q1. インドネシアで生活習慣病が増えている理由は?
A. 高脂質・高糖質な食事、野菜や果物の摂取不足、運動不足、バイク中心の生活が主な要因です。都市化や働き方の変化も影響しています。

Q2. インドネシアではジムやフィットネスは一般的ですか?
A. 都市部を中心にジムの利用者は増加しており、24時間営業やサブスク型のリーズナブルなジムも普及しています。特に20〜40代の層に人気です。

Q3. 日本企業がインドネシアの健康市場に参入する際の注意点は?
A. ハラール認証の取得、現地文化や食習慣の理解、現地パートナーとの協業体制の構築が成功の鍵になります。価格やマーケティング手法も現地に合わせる必要があります。

Q4. インドネシアの女性は健康や美容に関心がありますか?
A. 非常に高い関心を持っています。ピラティスやヨガ、スキンケア商品などの需要が急増しており、美容と健康の両方を意識したライフスタイルが広がっています。

Q5. 健康ビジネスで注目されている分野は?
A. ジム・ピラティス・ヨガに加え、健康食品、スマートフィットネス(アプリやウェアラブル)、医療機器、在宅ケア、オーガニック商品などが注目されています。

 

Testing