4月 3, 2025 • インドネシア • by Reina Ohno

インドネシア人のイスラム教のお祈りの時間と働き方

インドネシア人のイスラム教のお祈りの時間と働き方

インドネシアは、世界最大のイスラム教徒人口を擁する国であり、その文化や社会生活、労働環境はイスラム教の教えと深く結びついています。 本記事ではインドネシア人の礼拝時間と働き方について、詳細に解説いたします。

 

 

インドネシアにおけるイスラム教の影響

インドネシアにおけるイスラム教の影響

インドネシアの総人口の約87%がイスラム教徒であり、これは世界最大のムスリム人口を抱える国となっています。 しかし、イスラム教は国教ではなく、憲法で信仰の自由が認められています。 公的に認められた宗教として、イスラム教、キリスト教(カトリック・プロテスタント)、ヒンドゥー教、仏教、儒教の6つがあり、いずれかへの信仰が必要とされています。 このような宗教的背景から、イスラム教の教えや習慣が日常生活やビジネスの場面において重要な役割を果たしています。

 

礼拝(サラート)の時間とその影響

イスラム教では、1日5回の礼拝(サラート)が義務付けられています。 これらの礼拝時間は、日の出や日の入りなどの太陽の動きに基づいており、以下の通りです:

  1. ファジュル(Fajr):夜明け前
  2. ズフル(Dhuhr):正午過ぎ
  3. アスル(Asr):午後中頃
  4. マグリブ(Maghrib):日没直後
  5. イシャ(Isha):夜間

就業時間中に重なるのは、主にズフル(正午過ぎ)とアスル(午後中頃)の2回です。 特に金曜日の正午前後には、男性ムスリムにとって特別な礼拝であるジュムア(Jumu’ah)が行われ、通常よりも長い礼拝時間が必要となります。

 

 

インドネシアの労働環境における宗教的配慮

インドネシアの労働環境における宗教的配慮

礼拝のためのスペースと時間の確保

多くのインドネシア企業や工場、オフィスでは、従業員が礼拝を行えるように礼拝スペース(ムショラ)を設けています。 また、礼拝時間中は業務を一時中断することが許容されており、特にズフル(正午)の礼拝時にはその傾向が強いです。 金曜日のジュムアに際しては、昼休憩を通常よりも長く設定する企業も多く、例えば11時半から1時間半の休憩時間を設けるなどの対応が一般的です。

ラマダン期間中の労働時間の調整

ラマダン(月に一度の断食月)期間中、ムスリムは日の出から日没まで断食を行います。 この期間中、労働時間を短縮する企業もあり、例えばUAEでは1日6時間勤務が一般的とされています。 インドネシアでも、ラマダン期間中の勤務時間を柔軟に調整することが、従業員の健康と生産性を維持する上で重要です。

ハラール対応の食事提供

イスラム教徒は、ハラール(イスラム法で許可された)食品を摂取する必要があります。 そのため、社員食堂やイベントでの食事提供時には、ハラール対応のメニューを用意することが求められます。 これにより、従業員が安心して食事を摂ることができ、職場の満足度向上にもつながります。

 

 

インドネシア人の仕事観と文化的特徴

インドネシア人の仕事観と文化的特徴

家族やコミュニティを重視する価値観

インドネシア人は、家族やコミュニティとのつながりを非常に重視します。 そのため、家族の行事や宗教的なイベントがある際には、休暇を取得することが一般的です。 企業側も、これらの文化的背景を理解し、柔軟な対応を心がけることが重要です。

上下関係を重んじる社会構造

インドネシアの社会は、年齢や経験、地位に基づく上下関係を重視します。 そのため、上司や年長者に対する敬意を示すことが求められます。 ビジネスの場面でも、これらの社会的慣習を尊重することで、円滑なコミュニケーションと信頼関係の構築が可能となります。

柔軟性と調和を重視する働き方

インドネシア人は、対立を避け、調和(ハルモニ)を重んじる文化を持っています。そのため、会議や職場でのディスカッションにおいても、ストレートな否定や批判は避けられる傾向にあり、遠回しな表現や笑顔を交えて意見を述べることが一般的です。

また、働き方においても柔軟性が重視されており、突発的な家庭の事情や宗教的行事への参加のために急な休暇を取ることも珍しくありません。上司や会社がそのような個々の事情を理解し、許容することで、信頼関係や忠誠心(ロイヤルティ)が高まる傾向があります。

このような価値観を持つインドネシア人と働くには、「形式よりも関係性を重視する」という文化を理解し、長期的な信頼関係を構築する姿勢が求められます。

 

 

インドネシアのビジネス現場での対応ポイント

ビジネス現場での対応ポイント

インドネシアで現地の従業員と良好な関係を築くために、以下のような点に配慮するとよいでしょう。

礼拝時間を尊重したスケジュール調整

  • 昼休憩の時間帯には礼拝が行われるため、会議や面談の時間を避けることが望ましい。
  • 金曜日の正午には「ジュムア礼拝」のため、特に男性社員に配慮が必要。

柔軟な休暇対応

  • イスラム教の祝日や断食明け(イドゥル・フィトリ/レバラン)には長期休暇が一般的であり、数週間の帰省を伴うこともある。
  • 家族行事や冠婚葬祭への出席も大切にされるため、理解を示すことが信頼構築につながる。

ハラールや服装への配慮

  • 食事はハラールであることが必須のため、会食や社員食堂では注意が必要。
  • 女性の中にはヒジャブを着用する方もおり、服装規定に関しても柔軟な対応が求められる。

叱責よりもフォローアップ重視のマネジメント

  • 人前で叱責することは「恥をかかせる」と捉えられ、モチベーションを下げる可能性がある。
  • ミスがあった場合は個別に話し合い、解決策を一緒に考えるアプローチが好まれる。

「Tidak Enak」文化を理解する

  • 「相手に嫌な思いをさせたくない」「断るのが申し訳ない」という価値観が強く、Yes/Noが曖昧になることがある。
  • 明確なフィードバックを得るには、信頼関係を築き、安心して本音を話せる環境づくりが重要。

 

 

まとめ

インドネシアでビジネスを展開する際には、宗教的な価値観と社会文化を深く理解し、現地の人々の生活や働き方に寄り添ったマネジメントが求められます。特にムスリム人口が大多数を占めるこの国では、礼拝や宗教的行事が日常生活に深く根付いており、労働環境にも直接的な影響を与えています。

日本や欧米の「成果重視・時間管理重視」とは異なり、インドネシアでは「人との調和・柔軟性」が重視される傾向があります。信頼と尊重を土台としたマネジメントによって、現地スタッフのモチベーションを高め、持続可能なビジネス成長を実現することができるでしょう。

 

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本記事で使用した用語解説

  • ムスリム:イスラム教を信仰する人々。
  • 礼拝(サラート):イスラム教徒が1日5回行う祈りの儀式。
  • ジュムア(Jumu’ah):金曜日の特別な礼拝。男性ムスリムの義務とされる。
  • ムショラ:礼拝を行うための小規模な祈祷室。
  • ハラール:イスラム法に則って許可された食事や行動。
  • ラマダン:イスラム教における断食月。日中の飲食が禁じられる。
  • レバラン(イドゥル・フィトリ):ラマダン終了後の祝日で、家族と過ごすための帰省が一般的。

 

 

よくある質問(FAQ)

Q1:礼拝時間に業務を依頼してもよいのでしょうか?
A1:基本的には避けた方がよいです。特にズフルとアスルの時間帯は業務の手を止めて礼拝に行く社員も多いため、業務に支障が出ないよう配慮しましょう。

Q2:断食中は仕事の効率が下がりますか?
A2:個人差はありますが、午前中は通常通りのパフォーマンスでも、午後になるにつれエネルギーが低下することがあります。短縮勤務や軽めの業務配分を検討するとよいでしょう。

Q3:女性社員がヒジャブをしている場合、職場での配慮は必要ですか?
A3
:特別な対応は不要ですが、服装や言動に敬意を持って接することが大切です。企業の制服規定も柔軟に対応するのが望ましいです。

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