
4月 1, 2025 • インドネシア
4月 1, 2025 • インドネシア • by Erika Okada
目次
インドネシアでビジネスを行う日本人経営者やマネージャーにとって、現地スタッフや取引先との金銭的なやりとりは避けて通れないテーマです。特に、従業員や関係者から「お金を貸してほしい」と頼まれた場合、どのように対応すべきか戸惑う方も多いでしょう。インドネシアでは宗教や文化の影響により、お金の貸し借りに対する考え方が日本や欧米とは大きく異なります。本記事では、インドネシア人の金銭感覚の背景や、貸し借りに対する価値観を解説したうえで、実際に「お金を貸してほしい」と言われた際の対処法について、実用的なアドバイスを紹介します。
一般的に、インドネシア人は「お金は使うもの」という感覚を持っており、収入があるとすぐに消費に回す傾向があります。 例えば、給料日直後のスーパーマーケットやショッピングモールは、多くの買い物客で賑わい、ショッピングカートに山盛りの商品を購入する姿が見られます。 また、観光やレジャーにも積極的にお金を使い、まとまった休みの時期には観光地が観光客で溢れかえることも珍しくありません。
さらに、低所得層の人々でも、手に入ったお金をすぐに使ってしまう傾向があり、節約や貯蓄の意識が低いとされています。 これは、日々の収入が不安定であることや、将来の計画よりも現在の生活を優先する文化的背景が影響していると考えられます。
宗教的背景とお金の貸し借り
イスラム教徒が多数を占めるインドネシアでは、宗教的な教えが人々の金銭感覚に大きな影響を与えています。 イスラム教では、ザカートやサダカと呼ばれる喜捨が義務とされており、貧者救済のために一定比率の財産を分け与える制度が根付いています。 これにより、他人を助けることが宗教的な義務とされ、お金の貸し借りもその一環として行われることがあります。
また、イスラム教では利子を取ることが禁じられており、他人にお金を貸して利子を得ることは許されていません。 そのため、銀行の利子で儲けることは悪いとされてきましたが、近年ではイスラム銀行が設立され、宗教的な教えに沿った金融サービスが提供されています。
お金の貸し借りに関する実情
インドネシアでは、友人や家族間でのお金の貸し借りが日常的に行われています。 これは、助け合いの精神が強く根付いていることや、社会的なネットワークを大切にする文化が背景にあります。 しかし、その一方で、借金が返済されないケースも多く、貸す側としては返ってこないことを前提に貸す、あるいは最初から貸さないという選択をすることが賢明とされています。
また、インドネシア人はコミッション(手数料)を重視する傾向があり、仲介や紹介によって得られる収入が生活の一部となっています。 これにより、コミッションがもらえるとなると、やる気が高まり、積極的に行動することが多いとされています。
インドネシア人との金銭的な関わり方
インドネシアでビジネスを展開する際、現地のスタッフや取引先との金銭的な関わり方には注意が必要です。 例えば、従業員から給与の前借りやお金の貸し借りの申し出があることが一般的です。 これは、低所得者が多いためか、助け合い精神が旺盛なためか、インドネシアではお金の貸し借りが日常茶飯事であることが背景にあります。
しかし、安易にお金を貸すことは、返済されないリスクや人間関係のトラブルを招く可能性があります。 そのため、貸す際には返ってこないことを前提にする、あるいは最初から貸さないという選択をすることが重要です。 また、コミッション制度を活用して、従業員のやる気を引き出すなど、現地の文化や習慣を理解した上での対応が求められます。
~断る時の言い方と条件付きで貸す時の注意点~
インドネシアでビジネスをしていると、現地スタッフや知人から「お金を貸してほしい」と言われる場面に出くわすことがあります。インドネシアでは親族や友人同士でのお金の貸し借りは日常的であり、貸す側も返ってこないことを前提にすることが多い文化です。しかし、ビジネス上の立場で関係性がある場合は、慎重な対応が求められます。
ここでは、日本人マネージャーや経営者が直面しやすい2つの対応パターン、
この2つのケースについて、現地文化や人間関係を壊さない方法を含めて解説します。
インドネシアでは「助け合いの精神」が大切にされており、特に親しい関係の中では断ることに対して「冷たい」と思われるリスクがあります。しかし、立場上の上下関係や業務への影響を考慮すれば、むやみにお金を貸すことは避けた方が良い場合も多いです。
◆ 丁寧に断るフレーズ(例)
インドネシア語例:
◆ ポイント
もし、どうしても助けたいという気持ちがある場合や、貸さなければ相手の生活が立ち行かないような深刻なケース(例えば病気や葬儀など)では、条件付きでお金を渡す選択肢もあります。
ただし、このときは「返ってこないかもしれない」と覚悟した上で対応することが重要です。
◆ 条件付きで貸す方法
◆ 支援の代替案を提示するのも効果的
例えば:
このように、「現金ではなくモノや代替手段での支援」に切り替えるのも良い方法です。
注意点:一度貸すと「またお願いされる」可能性が高い
インドネシアでは、「1回貸してくれた人は、また貸してくれる」という認識を持たれることがあります。つまり、一度甘い顔をすると何度もお願いされる可能性があるのです。
したがって、最初に対応した時点でルールと限界を明確に伝えることが非常に重要です。
インドネシアにおけるお金の貸し借りは、単なる経済行為というよりも、文化や宗教、そして人間関係の影響を強く受けた行動です。助け合いの精神が根付いた社会では、貸し借りが日常的に行われますが、その一方で返済されないリスクも高く、日本人がそのままの感覚で対応するとトラブルに発展することもあります。ビジネスの現場では、「貸さない」ことも信頼を損なわない選択肢の一つであり、貸す場合も「条件付き」や「贈与に近い感覚」での判断が必要です。最も重要なのは、感情的ではなく理性的に、かつ文化を尊重しながら、自分の立場と相手との関係性に応じて適切に判断することです。
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本記事で使用した単語の解説
ザカート(Zakat)
イスラム教において義務付けられている喜捨制度。年に一度、一定の資産に対して一定比率の寄付が求められる。貧しい人々や社会的弱者の支援に使われる。
サダカ(Sadaqah)
ザカートとは異なり、自主的に行う寄付や施しのこと。困っている人に対する善行として奨励されている。
コミッション(Commission)
紹介や仲介の対価として支払われる手数料。インドネシアでは仕事の一部として一般的に認識されており、特に営業職以外でも重視される傾向がある。
イスラム銀行(Islamic Bank)
イスラム法(シャリア)に基づき、利子を取らずに資金の運用を行う銀行。リース契約や収益分配などの仕組みによって利益を生み出す。
給与前借り(Salary Advance)
給料日より前に従業員が一部の給与を先に受け取る制度。インドネシアでは家庭の急な出費への対応策として一般的。
FAQ(よくある質問)
Q1. インドネシア人に一度お金を貸したら、何度も頼まれることはありますか?
はい。インドネシアでは、一度貸してくれた人は今後も貸してくれるという認識を持たれることがあり、繰り返し頼まれるケースが多くあります。最初の対応時に「今回は特別」と明確に伝えることが重要です。
Q2. お金を貸すのを断ったら関係が悪くなりますか?
断り方によります。相手の人格や状況を否定するのではなく、自分の方針や制限を理由にして丁寧に伝えれば、関係が悪化する可能性は低くなります。例として「誰に対しても貸さないようにしている」という表現が効果的です。
Q3. 書面で返済約束を交わしても法的効力はありますか?
形式によりますが、個人間の貸し借りに関してWhatsAppのメッセージやサイン付きメモなどは証拠の一つになります。ただし、法的強制力は限定的なので、回収の保証とはなりません。貸す際はそのリスクを理解した上で行いましょう。
Q4. 社員の給与から天引きで返済させるのは問題ないですか?
本人の合意がある場合に限り、給与からの天引き返済も可能です。ただし、事前に文書などで明確な同意を取り、証拠を残しておくことが望ましいです。