4月 3, 2025 • インドネシア • by Delilah

本当にある?インドネシアの黒魔術ブラックマジックとは

本当にある?インドネシアの黒魔術ブラックマジックとは

インドネシアに進出した日本企業の経営者やマネージャーにとって、宗教・文化の違いを理解することはビジネス成功の鍵の一つです。その中でも、インドネシア社会に根強く残る「黒魔術(ブラックマジック)」への信仰は、日本人にとって非常に理解しづらいものの一つかもしれません。

本記事では、黒魔術とは何か、インドネシアで実際にどのように信じられ、使われているのかを、現地の最新の事例と共に丁寧に解説します。さらに、ビジネスパーソンが注意すべき文化的背景にも触れ、現地での人間関係構築やトラブル回避に役立つ知識を提供します。

 

インドネシアの黒魔術(ブラックマジック)

インドネシアの黒魔術(ブラックマジック)

インドネシアは多様な文化と伝統を持つ国であり、その中には「黒魔術(ブラックマジック)」と呼ばれる信仰や習慣も含まれています。 この黒魔術は、他者に害を及ぼす目的で行使されるとされ、多くのインドネシア人がその存在を信じています。 一方で、黒魔術による被害を防ぐ、または解消するための「白魔術(ホワイトマジック)」も存在し、これらは人々の生活や文化に深く根ざしています。

2022年12月、インドネシア政府は刑法を改正し、黒魔術の使用を禁止する条項を追加しました。 この改正は、黒魔術が依然として市民生活に影響を及ぼしている現状を反映しています。 しかし、黒魔術の効果や影響を法的に証明することは難しく、実際の運用には課題が残されています。

バリ島などの地域では、黒魔術と白魔術の存在が広く認識されており、ヒーラーと呼ばれる人々が黒魔術の影響を取り除く役割を担っています。 これらのヒーラーは、伝統的な方法や儀式を用いて、人々の健康や幸福を守るとされています。

また、近隣のパプアニューギニアでも、黒魔術が日常生活に浸透しており、ブラックマジックにかかった際には「ブッシュドクター」と呼ばれる治療師が治療を行う文化があります。

このように、インドネシアやその周辺地域では、黒魔術とそれに対抗する白魔術が文化や社会に深く根付いており、現代においてもその影響は無視できないものとなっています。

 

 

黒魔術でできると言われていること一覧

黒魔術でできると言われていること一覧

1. Santet(サンテット)

意味: 他人に病気・事故・死を引き起こす呪術
解説:
最も恐れられている黒魔術の一種で、対象者に「見えない方法」で不幸をもたらすとされます。犠牲者は突然原因不明の頭痛や吐血を起こすことがあり、医者でも原因が分からないケースがあると信じられています。

例:ライバルや恨みを持つ相手にSantetをかける事例が報告されることがある。

2. Guna-guna(グナグナ)

意味: 恋愛に関する呪術(強制的に惚れさせる)
解説:
対象者の心を操り、恋に落ちさせる呪術です。片想いの相手を振り向かせたり、不倫関係に陥らせるなど、恋愛成就のために使われることが多いですが、倫理的・宗教的にはタブー視されています。

「Guna-guna cinta」として、伝統医や「スマンギ(魔術師)」によって提供される場合があります。

3. Pelet(プレット)

意味: Guna-gunaと似ているが、より軽い恋愛魔術
解説:
より「おまじない」的な意味合いが強く、愛を引き寄せるために使われるが、悪意ある目的で使われると黒魔術に分類されることがあります。

4. Sihir Pemisah(分断の魔術)

意味: カップルや家族の仲を壊す
解説:
嫉妬心や復讐心から、他人の関係を壊すために用いられる黒魔術。対象者同士に誤解や争いを起こさせて別れさせることを目的としています。

例:夫婦仲を裂くための魔術として宗教的指導者から警戒されています。

5. Teluh(テゥル)

意味: 呪詛によって虫や針などの異物を体内に送り込む
解説:
古くからの黒魔術で、「Teluh」は対象者の体に虫や髪の毛、針などの異物を送り込み、苦しませると信じられています。実際に医療的には説明できない症状がTeluhと関連づけられることがあります。

6. Jengges(ジャングス)

意味: 財産や仕事の妨害
解説:
他人の成功を妨げる、商売を潰す、職場で悪い噂を流して失脚させるなどの目的で使われる黒魔術です。ビジネスマンがライバルに使うケースも語られています。

7. Sihir Pagar Gaib(見えないバリアを張る魔術)

意味: 防御目的の黒魔術
解説:
攻撃ではなく、呪術的な攻撃から自分を守るために「バリア」を張る魔術。これは白魔術との中間ともいえる存在で、一部の信者の間では黒魔術と見なされています。

8. Mengirim Jin(ジンを送り込む)

意味: 超自然的存在(ジン)を送り込み、人を操る
解説:
イスラム教の信仰に基づき、「Jin(ジン)」と呼ばれる存在を特定の人に送り込むことで、悪夢を見させたり、精神的混乱を引き起こすとされています。

実際に起きたとされる事例(過去2年)

  • 2023年4月(スラバヤ)
    民家で原因不明の病が続出し、近隣住民が「Santet」被害を疑い、ヒーラーを呼んで儀式を実施。
  • 2022年11月(西ジャワ州)
    商売の失敗を「Teluh」のせいだと信じた男性が、元従業員に対して復讐目的で黒魔術を依頼して逮捕。

(参考:Detik.com、Kompas.com、Liputan6.com 等の記事から)

 

 

なぜインドネシア人は黒魔術を信じているの?

インドネシア人が黒魔術(Ilmu Hitam / Sihir)を信じている理由は、単なる迷信や未開発地域の文化では片づけられない、歴史的・文化的・社会的に深く根ざした背景があります。以下に、その主な理由を詳しく解説します。

1. 歴史的に根付いたアニミズムと土着信仰

インドネシアには、イスラム教が広がる以前から「アニミズム(精霊信仰)」や「ヒンドゥー教・仏教」の要素が混ざった土着信仰が存在していました。
これらの信仰体系では、自然界には精霊(Jin、Roh、Makhluk Gaib)が宿るとされ、人々はそれらと共存・交流して生きてきました。

  • 黒魔術は自然や精霊を操る知識と見なされる
  • 村や島ごとに異なる儀式やシャーマン(ドゥクン)が存在

→ この伝統は現代でも根強く残っており、特に農村部では「科学よりも呪術を信じる」という傾向があります。

2. イスラム教と「ジン(Jin)」の存在

インドネシアは世界最大のイスラム人口を有する国ですが、イスラム教の聖典『クルアーン(コーラン)』の中でも「Jin(ジン)」という目に見えない存在の存在が記されています。

  • ジンは人間と並行して存在するとされ、「善良なジン」もいれば「悪意を持つジン」もいます。
  • 黒魔術とはこの悪意あるジンを使って人に影響を与える行為ともされる。

→ 多くのインドネシア人にとって、黒魔術は「宗教的にも存在が肯定されている」ものなのです。

3. 教育格差と情報リテラシーの課題

特に地方や教育水準が低い地域では、「科学的説明」よりも「霊的・超自然的説明」が一般的に信じられやすい傾向があります。

  • 医者に行っても原因不明な病気 → 黒魔術のせいだと解釈
  • 商売がうまくいかない → 誰かに呪われたと信じる

→ こうした状況では、「ヒーラー」や「ドゥクン(シャーマン)」の方が信頼されることさえあります。

4. 社会的ストレスや対人関係の圧力

インドネシア社会では、表向きは調和を重んじる一方で、**「表では言えない嫉妬や恨み」**が積もることがあります。
そうした感情が、表には出さず「呪術」という形で発散されることがあります。

  • **”Tidak enak hati”(気まずさを避ける文化)**が原因で、直接対立せず裏で黒魔術に頼る。
  • 競争・嫉妬・愛憎などの感情が、呪術という形で表面化。

→ これは、インドネシア独特の「和の文化」と「人間関係のストレス」が関係していると考えられます。

5. 実際に“それらしい出来事”が多く起こる

例えば以下のような事象が、黒魔術と結びつけられやすい傾向にあります:

  • 突然の病気や死
  • 不自然な行動を取る人(精神疾患など)
  • 夜中に誰かの名前を呼ぶ声がする
  • 身の回りで不可解なことが立て続けに起きる

これらが「医学的」「科学的」に説明できなければ、人々はそれを「Sihir(魔術)」として認識するのです。

6. マスコミやYouTubeによる再生産

インドネシアのテレビ番組、YouTube、TikTokなどでも黒魔術や心霊現象を扱うコンテンツが非常に多く、それが信仰を補強しています。

  • 黒魔術で病気が治った!という体験談動画
  • ドゥクンの儀式を密着取材したドキュメンタリー
  • 若者向けオカルトチャンネルも人気

→ デジタルメディアの影響で、若い世代にも「呪術はリアルだ」という印象を与えています。

ビジネスパーソンとして知っておくべきこと

インドネシアでは、黒魔術の存在を信じている人が今でも非常に多く、特に農村部や地方都市では日常的に話題にのぼります。
したがって、以下の考えに対する理解や配慮が必要です:

  • 従業員の行動の背景に黒魔術の信仰がある場合もある
    急な欠勤や体調不良の理由が「Santetによるもの」だと本人や家族が信じていることもあります。
  • ビジネスの失敗を呪術のせいにするケース
    近隣競合とのトラブルや嫉妬が黒魔術の使用に発展することもあります。
  • 社内に「白魔術のヒーラー」を紹介されるケースもある
    特に地方では、白魔術の専門家(ドゥクンやキアイ)と繋がりがある従業員が、自主的に「社内浄化」を行うこともあります。

 

 

まとめ

インドネシアにおける黒魔術の信仰は、宗教・歴史・教育・社会構造などが複雑に絡み合った文化現象であり、一部の人々にとっては現実の一部として生活に深く根付いています。
SantetやGuna-gunaといった代表的な黒魔術は、病気や恋愛、ビジネスの成功・失敗にまで影響を与えると信じられており、実際に事件やトラブルに発展するケースも少なくありません。
日本人にとっては非科学的に感じるかもしれませんが、現地で円滑な関係を築くためには、このような信仰に対して敬意を持ち、否定せずに理解する姿勢が求められます。インドネシアでのビジネスにおいて、こうした文化的背景を知ることは、信頼関係構築とリスク回避の両面で非常に重要です。

 

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本記事で使用した単語の解説

黒魔術(Ilmu Hitam / Sihir)
インドネシア語で「Ilmu Hitam」や「Sihir」と呼ばれる、他者に害を与える目的で使用される魔術や呪術のこと。

白魔術(Ilmu Putih)
人を守ったり癒したりする目的で使われる魔術。黒魔術の影響を打ち消す役割を担う。

Santet(サンテット)
他人に病気や死をもたらすとされる攻撃型の黒魔術。インドネシアで最も恐れられている。

Guna-guna(グナグナ)
恋愛に関連する黒魔術で、人の心を操って惚れさせるなどの目的で使われる。

Teluh(テゥル)
虫や針などを体に送り込むと信じられている呪術。激しい苦痛を伴うとされる。

Jin(ジン)
イスラム教に登場する超自然的存在。人間に悪影響を与えるジンを使って黒魔術を行うことがある。

ドゥクン(Dukun)
伝統的なヒーラーやシャーマン。黒魔術や白魔術、治療などを行う存在。

ヒーラー
霊的な力を使って病気や黒魔術の影響を取り除く役割を担う人物。

 

 

FAQ(よくある質問)

Q1. 黒魔術は実際に法律で禁止されているのですか?
はい。2022年12月にインドネシア政府は新しい刑法において、黒魔術の使用やその助長行為を禁止する条項を追加しました。ただし、証明が困難なため、実際の取り締まりには課題もあります。

Q2. 黒魔術を信じているのは田舎の人たちだけですか?
いいえ。都市部の教育を受けた人々の中にも黒魔術を信じている人は存在します。これは文化的・宗教的背景が深く影響しており、単に教育の問題ではありません。

Q3. 黒魔術が原因でトラブルが起きることは本当にあるのですか?
あります。商売の失敗や病気の原因を黒魔術と信じた結果、対立や暴力事件に発展するケースも報告されています。企業や組織内での人間関係に影響を及ぼすこともあります。

Q4. インドネシアでビジネスをする際、黒魔術にどう対応すればよいですか?
まずは「黒魔術の信仰が存在する」という事実を尊重する姿勢が重要です。無理に否定したり笑い飛ばしたりせず、現地の文化として理解しましょう。また、ローカルスタッフとの信頼関係を築き、トラブルが発生した場合は冷静かつ柔軟に対応することが大切です。

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