
3月 25, 2025 • インドネシア
3月 28, 2025 • インドネシア • by Yutaka Tokunaga
目次
なぜインドネシア人は嫌いながらもライオン・エアを使い続けるのか?
「また遅延かよ…」「チェックイン手続きが遅い」「荷物が壊れて返ってきた」「CAの態度が冷たい」——
インドネシア国内線でLion Air(ライオン・エア)を利用したことがある人なら、一度はこんな経験があるのではないでしょうか?
口コミサイトやSNSでは、Lion Airに対する不満が日常茶飯事。しかし驚くべきことに、ライオン・エアは今なお、インドネシア最大の航空会社として君臨し続けています。
この記事では、なぜあれだけ評判が悪いのに、インドネシアでLion Airがビジネスとして成功し続けているのか、日本人には感覚的に理解できない最低のホスピタリティで生き残るビジネス、その理由を深掘りしていきます。
インドネシアの庶民にとって、航空券の価格は最も重要な要素です。
Lion Airは超格安航空(ULCC)として、他社よりも一貫して低価格を提供しています。
✅ たとえサービスが悪くても、「安くて行ける」ことが価値になる。
特に、給料水準が低い地方都市の人々にとって、「Time is Money」ではなく「時間よりもコストが大事」という価値観が根付いており、それがLion Airの存在を正当化しています。
Lion Airグループは、インドネシア国内のほぼすべての島や地方都市をカバーしています。
しかも、Wings AirやBatik Air、Super Air Jetといった姉妹ブランドも使い分けており、どこにでも行けるネットワークを構築しています。
他社では行けない目的地に、Lion Airなら行ける。
たとえば、スラウェシ島の小さな都市や、カリマンタンの奥地への移動は、Lion Air 系列の航空機一択となることも多く、選択の余地がないのです。
インドネシア国内には他にもGaruda Indonesia、Citilink、AirAsiaなどの航空会社がありますが、
そのため、「不満があっても結局Lion Airを選ばざるを得ない」状況が続いています。
Lion Airは200機以上の保有機材を持ち、過去には大量にBoeingやAirbusを一括購入したことで有名です。
大量仕入れ → コスト削減 → チケット価格に還元
このスケールの大きさが、他社では真似できない価格設定を可能にしているのです。
Lion Airは、富裕層やビジネスクラス顧客をターゲットにしていません。
主にターゲットにしているのは以下のような層です:
彼らは、少々の不便やトラブルにはある程度耐えることができる人々です。
このような「低価格重視」層に特化したことで、サービスの質に投資せずとも成長を遂げてきました。
日本では「クレーム=正当な権利の主張」と見なされますが、インドネシアでは必ずしもそうではありません。
多くの人が「Lionだから仕方ない」「神の思し召し」と諦める傾向にあります。
また、政府の航空業界に対する監督や処分も緩く、企業がクレームを真剣に受け止める動機が生まれにくいのです。
Lion Airグループは、顧客層ごとにブランドを分けることで、価格帯別に市場を網羅しています:
このように、ブランド戦略によって競争を避けつつ市場シェアを確保するという手法を取っています。
どれだけSNSで叩かれようが、メディアに悪評が出ようが、
最終的にチケットが売れ続けている以上、ビジネスとしては成功しているのです。
不満がありながらも使わざるを得ない。 Lion Airには何を期待しても無理。このネガティブブランディングこそがLion Airの「勝ち方」なのかもしれません。
Lion Airの開き直り具合については創業者Rusdi Kiranaの言葉に集約されています。
まさにこの作戦を狙ってやっているということを公にしているのです。
まさにLion King Air、ライオンエアーは、品質ではなく「利便性」「価格」「選択肢の少なさ」によって、インドネシア人の生活に組み込まれたインフラ的存在となっています。
このような不思議な構造は、発展途上国ならではの「価格優先文化」と、航空産業の構造的な歪みが生み出した現象なのかもしれません。
私達日本人はインドネシアのような発展途上国のビジネスや顧客の考え方についてまだ深く理解できていなかいのかもしれません。
インドネシア国内出張の多い私はLion Airさんの最悪なサービスでストレスを感じていますが、Lion Airさんのおかげで、インドネシアのビジネスについて学ぶことができました。Lion Airさん、ありがとうございました。
Lion Air Groupは、インドネシアを拠点とする民間航空会社グループで、低コストキャリアからフルサービスキャリアまで、多岐にわたる航空サービスを提供しています。
1999年、ルスディ・キラナ氏とクスナン・キラナ氏の兄弟によって設立されたLion Airは、2000年6月30日にジャカルタからデンパサールおよびポンティアナックへの定期旅客サービスを開始しました。当初はボーイング737-200型機を使用し、インドネシア初の低コスト航空会社として市場に参入しました。
その後、国内の航空需要の増加に伴い、2003年には完全子会社としてリージョナルキャリアのWings Airを設立し、地域路線の拡充を図りました。さらに、2012年にはマレーシア市場への進出を目的としてMalindo Air(現Batik Air Malaysia)を設立し、東南アジア地域でのプレゼンスを強化しました。
国内競争の激化に対応するため、2013年にはフルサービスキャリアのBatik Airを立ち上げ、ガルーダ・インドネシア航空との競争に挑みました。同年、タイ市場への進出としてThai Lion Airを設立し、地域内でのネットワークをさらに拡大しました。
Lion Air Groupは、積極的な機材投資でも知られています。2011年にはボーイング社と201機のボーイング737 MAXと29機のボーイング737-900ERを総額217億ドルで発注し、当時の商業航空史上最大の単一受注記録を樹立しました。さらに、2013年にはエアバス社と234機のA320シリーズを総額240億ドルで契約し、その成長戦略を加速させました。
近年では、2021年に新たな低コストキャリアであるSuper Air Jetを立ち上げ、若年層をターゲットとしたサービスを展開しています。このように、Lion Air Groupは多角的な戦略と積極的な投資を通じて、インドネシアおよび東南アジアの航空市場で重要な地位を築いています。
インドネシアでのビジネスなら創業10周年のTimedoor
システム開発、IT教育事業、日本語教育および人材送り出し事業、進出支援事業