3月 6, 2025 • インドネシア • by Erika Okada

インドネシアの新首都ヌサンタラ(Nusantara)を徹底解説

インドネシアの新首都ヌサンタラ(Nusantara)を徹底解説

インドネシアは2024年首都をこれまでのジャカルタからにヌサンタラ(Nusantara)、通称IKN(Ibu Kota Nusantara)に移転しました。人口2億8000万人の大国が首都を移転するという国をあげての一大プロジェクト。本記事ではインドネシアの新首都ヌサンタラ(Nusantara)について詳しく解説します。

 

ヌサンタラ(Nusantara)はどこにあるの?

ヌサンタラ(Nusantara)の場所、どこにあるの

インドネシアの新首都「ヌサンタラ」は、カリマンタン島(ボルネオ島)の東部、東カリマンタン州に位置しています。 具体的には、クタイ・カルタネガラ県と北プナジャム・パスール県にまたがる地域で、主要港湾都市であるバリクパパンの北北西約30kmの地点に位置しています。

この地域は、インドネシア全土の中心に近く、地震や火山活動のリスクが低いとされています。 また、周囲には豊かな熱帯雨林が広がり、多様な生態系が存在しています。

 

 

インドネシア首都移転の背景と目的

首都移転の背景と目的

インドネシア政府が首都をジャカルタから新首都「ヌサンタラ」へ移転する背景と目的は、以下の主要な要因によるものです。

1. ジャカルタの都市問題

  • 人口過密と交通渋滞: ジャカルタは、約1,000万人以上の人口を抱える大都市であり、その結果、深刻な交通渋滞が日常的に発生しています。
  • 地盤沈下と洪水: 地下水の過剰な汲み上げやインフラの未整備により、地盤沈下が進行し、洪水のリスクが高まっています。

2. 経済的・社会的発展の促進

  • 開発の均衡化: ジャワ島に人口と経済活動が集中している現状を是正し、他地域の発展を促進することで、国全体の均衡ある成長を目指しています。
  • 新たな経済拠点の創出: 新首都ヌサンタラを経済活動の新たな中心地とし、投資や雇用の創出を図ることで、国全体の経済成長を促進する狙いがあります。

3. 環境に優しいスマートシティの実現

  • 持続可能な都市開発: ヌサンタラは、環境に配慮したスマートシティとして設計されており、再生可能エネルギーの利用や最新のテクノロジーを活用した都市運営が計画されています。

これらの要因を踏まえ、インドネシア政府は首都移転を国家の長期的な発展戦略の一環として推進しています。

 

 

誰が主導した?

ヌサンタラ(Nusantara)誰が主導した?

インドネシアの首都移転プロジェクト「ヌサンタラ」は、ジョコ・ウィドド(Joko Widodo)大統領の主導のもとで進められました。

 

ジョコ・ウィドド大統領(Jokowi)の首都移転構想

  • 2019年8月26日: ジョコ・ウィドド大統領が正式に首都移転計画を発表。
  • 2022年1月18日: インドネシア議会が首都移転を正式に承認し、新首都名を「ヌサンタラ」に決定。
  • 2022年3月9日: ジョコ・ウィドド大統領が新首都の起工式を実施し、建設開始を宣言。
  • 2024年8月17日: インドネシア独立記念日をヌサンタラで初めて祝う計画。

2019年8月16日の施政方針演説で、ジョコウィ大統領は首都移転について、「新首都は国民のアイデンティティーの象徴であるだけでなく、国家の進歩を表す」と述べ、再生可能エネルギーを利用した「近代的、スマート、グリーンシティー」をコンセプトに据えました。

また自身のインスタグラムでは、首都移転の理由について、「初代スカルノ大統領の時代から首都移転は検討されてきており、インドネシアが長期的に発展していくためには、必要かつ重要だ」と説明し、国民の理解を求めました。

 

首都移転の背後にある主要人物

  1. ジョコ・ウィドド(Jokowi) – 首都移転の発案者・推進者。
  2. バスキ・ハディムルヨノ(Basuki Hadimuljono) – 公共事業・国民住宅大臣として都市計画を担当。
  3. バンバン・スサントノ(Bambang Susantono) – ヌサンタラ庁(Otorita IKN)の初代長官。
  4. ドゥニ・アンダヤニ(Dhony Rahajoe) – ヌサンタラ庁副長官、開発の実行を担当。
  5. インドネシア議会(DPR) – 2022年に「首都移転法(UU IKN)」を可決し、プロジェクトを正式に承認。

 

 

ヌサンタラ(Nusantara)の都市計画と特徴

インドネシアの新首都「ヌサンタラ」は、持続可能性と先進技術を融合した都市計画が進行中です。以下に、その主要な特徴を詳しく解説します。

1. 持続可能な都市設計

ヌサンタラは、環境への配慮を最優先とし、再生可能エネルギーの活用やカーボンニュートラルの実現を目指しています。 具体的には、50メガワットの太陽光発電所の建設が計画されており、都市内の電力供給を再生可能エネルギーで賄うことを目指しています。

2. スマートシティの導入

最新の情報通信技術を駆使し、都市機能の効率化と市民の生活向上を図るスマートシティの構築が進められています。 交通管理、エネルギー消費の最適化、防災システムなど、多岐にわたる分野での技術導入が計画されています。

3. 自然との共生

ヌサンタラは、周囲の豊かな自然環境と調和した都市づくりを目指しています。 都市内には広大な緑地や公園が設けられ、生物多様性の保全と市民の憩いの場を提供する計画です。

4. 多文化共生の推進

インドネシア全土からの多様な文化背景を持つ人々が集まることを想定し、文化施設やコミュニティスペースを設け、多文化共生を促進する都市設計が行われています。

5. 交通インフラの整備

都市内外を結ぶ効率的な交通ネットワークの構築が計画されています。 公共交通機関の充実や歩行者・自転車専用道路の整備により、持続可能な移動手段の利用を促進します。

これらの特徴を持つヌサンタラは、インドネシアの未来を象徴する先進的かつ持続可能な都市として期待されています。

 

 

ヌサンタラ(Nusantara)プロジェクトの進捗状況と計画

インドネシアの新首都「ヌサンタラ」への移転プロジェクトは、2022年に開始され、段階的に進行しています。以下に、プロジェクトの進捗状況と今後の計画を詳しく解説します。

プロジェクトの進捗状況

  • 主要政府施設の建設: 2024年10月時点で、大統領官邸や一部の政府高官の住居が完成し、その他のインフラ(高速道路や空港など)の建設が進行中です。スマラン
  • 独立記念式典の開催: 2024年8月17日、ヌサンタラで初の独立記念式典が開催されましたが、建設の遅れや施設の不足により、規模が縮小され、外国の要人招待も見送られました。
  • 民間投資の参入: 2024年9月、中国のホテル・飲食大手であるデロニクス・グループやオーストラリアの教育機関AISなど、海外企業が初めてヌサンタラの建設プロジェクトに参入し、ホテルや学校の建設を開始しました。

今後の計画

  • 予算の割り当て: プラボウォ・スビアント大統領は、2025年から2029年にかけて、ヌサンタラの建設に約48.8兆ルピア(約30億ドル)を投じる計画を発表しました。スマラン
  • 主要施設の完成目標: プラボウォ大統領は、今後4年間で政府および議会の主要施設を完成させ、2029年の次期大統領就任式をヌサンタラで実施することを目指しています。スマラン
  • 民間投資の促進: 政府は引き続き民間投資を誘致し、ヌサンタラの開発を加速する方針です。スマラン

ヌサンタラへの首都移転プロジェクトは、建設の遅れや資金調達の課題に直面していますが、政府は引き続きプロジェクトの推進に注力しています。

 

予算停止でプロジェクトの凍結!?

プラボウォ・スビアント大統領は、2025年1月22日に発出した大統領指示第1号において、国家および地方予算の見直しを指示しました。 この指示は、各省庁や地方自治体に対し、予算の効率化を図るため、式典や出張経費などの支出を再評価し、約306兆ルピア(約3兆円)の予算を確保することを求めています。

この予算見直しの背景には、大統領の主要公約である学校給食の無償提供プログラムの拡大があります。 当初1,700万人を対象としていたこのプログラムを、8,290万人に拡大するため、約100兆ルピアが追加で必要とされています。

この予算効率化の取り組みの一環として、新首都ヌサンタラの建設予算も再評価の対象となりました。 具体的には、ヌサンタラにおける立法・司法ビルの設計見直しが指示されています。 これは、プラボウォ大統領の好みや新たな要望に合わせたものであり、予算調整が直接の理由ではないとされています。

さらに、2025年度の国家予算において、ヌサンタラ建設費は前年度比65%減となっており、予算削減が進められています。 これらの動きにより、ヌサンタラの建設計画は遅延が生じる可能性が指摘されています。

一方で、プラボウォ大統領はヌサンタラへの首都移転計画自体を中止する意向は示しておらず、2028年8月までにヌサンタラでの執務開始を目指すと表明しています。

 

 

国民や専門家の賛成意見と反対意見

インドネシアの首都移転計画「ヌサンタラ」に関して、国民や専門家からは賛否両論が寄せられています。以下に、主な賛成意見と反対意見を詳しく紹介します。

賛成意見

  1. 経済格差の是正と地域開発の促進:
    • ジャワ島に人口と経済活動が集中している現状を是正し、他の地域の発展を促進することで、国全体の均衡ある成長を目指す。
  2. ジャカルタの過密問題と環境問題の緩和:
    • ジャカルタは深刻な交通渋滞や大気汚染、地盤沈下などの問題を抱えており、首都機能の移転によりこれらの問題を軽減することが期待されている。
  3. 持続可能な都市モデルの構築:
    • 新首都ヌサンタラは、再生可能エネルギーの利用やスマートシティ技術の導入など、環境に優しい持続可能な都市として設計されており、将来的な都市モデルとしての期待が寄せられている。

反対意見

  1. 環境破壊と生態系への影響:
    • カリマンタン島は豊かな生物多様性を持つ地域であり、首都建設による森林破壊や野生生物の生息地喪失が懸念されている。
  2. 財政負担と経済的リスク:
    • 首都移転には巨額の投資が必要であり、その財政負担が他の重要な社会経済プロジェクトに影響を及ぼす可能性が指摘されている。
  3. ジャカルタの問題解決の遅れ:
    • 首都移転がジャカルタの抱える問題の根本的な解決策とはならず、既存の都市問題が放置される可能性があるとの懸念がある。
  4. 市民の意識と情報不足:
    • 首都移転に関する情報が十分に共有されておらず、市民の理解と支持が得られていないとの指摘がある。

これらの賛否両論を踏まえ、インドネシア政府は透明性のある情報公開と市民参加を促進し、持続可能で包括的な首都移転を進めることが求められています。

 

 

まとめ

インドネシアは、ジャカルタの過密化や地盤沈下などの問題を解決し、国全体の均衡ある発展を目指すため、新首都「ヌサンタラ」への移転を決定しました。ヌサンタラは、カリマンタン島東部の東カリマンタン州に位置し、持続可能なスマートシティとして設計されています。ジョコ・ウィドド前大統領の主導で2022年に建設が開始され、2024年には独立記念式典が開催されました。現在、プラボウォ・スビアント大統領の下で主要政府施設の建設が進行中であり、2029年の次期大統領就任式をヌサンタラで実施することを目指しています。

本記事で使用した単語の解説

  • ヌサンタラ(Nusantara):​古ジャワ語で「島々の間の調和のとれた協力関係」を意味し、インドネシアの新首都の名称として採用されました。

  • カリマンタン島:​ボルネオ島のインドネシア領部分の名称で、新首都ヌサンタラはこの島の東部に位置しています。

  • ジョコ・ウィドド(Joko Widodo):​インドネシアの第7代大統領で、首都移転プロジェクトを推進しました。

  • プラボウォ・スビアント(Prabowo Subianto):​現インドネシア大統領で、ヌサンタラの開発を継続しています。

  • スマートシティ:​ICT(情報通信技術)を活用して都市機能を効率化し、持続可能な発展を目指す都市のことです。

FAQ

なぜインドネシアは首都を移転するのですか?

ジャカルタの人口過密、交通渋滞、地盤沈下などの問題を解決し、国全体の均衡ある発展を促進するためです。

ヌサンタラはどこにありますか?

カリマンタン島(ボルネオ島)の東部、東カリマンタン州に位置しています。

ヌサンタラの特徴は何ですか?

持続可能な都市設計、最新の情報通信技術を活用したスマートシティの導入、自然との共生、多文化共生の推進、効率的な交通インフラの整備などが挙げられます。

プロジェクトの進捗状況はどうなっていますか?

2022年に建設が開始され、2024年には独立記念式典が開催されました。現在、主要政府施設の建設が進行中で、2029年の次期大統領就任式をヌサンタラで実施することを目指しています。

市民や専門家の意見はどうですか?

経済格差の是正や環境に優しい都市モデルの構築を支持する意見がある一方、環境破壊や財政負担を懸念する声もあります。

 

 

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