6月 2, 2025 • インドネシア • by Reina Ohno

インドネシアの実業家かつ政治家エリック・トヒルとは何者か?

インドネシアの実業家かつ政治家エリック・トヒルとは何者か?

インドネシアに進出する企業にとって、現地の政治・経済のキーパーソンを知ることは不可欠です。その中でも、実業家としてキャリアを築き、現在はジョコ・ウィドド大統領政権下で国営企業大臣として影響力を持つエリック・トヒル(Erick Thohir)は、注視すべき存在です。

本記事では、彼の人物像、ビジネス、政治、スポーツ、宗教活動、社会貢献など多角的な側面から彼の全貌を浮き彫りにし、インドネシアという市場に深く切り込むための視座を提供します。

 


1. プロフィールと出自:実業家のDNA

1-1. 生い立ちと教育

エリック・トヒルは1970年5月30日、ジャカルタで生まれました。父テディ・トヒルは中国系インドネシア人の実業家で、インドネシアの大手複合企業「アストラ・インターナショナル」の共同創業者の一人です。このような家庭環境で育ったエリックは、幼少期からビジネスとリーダーシップに触れる機会に恵まれていました。

大学はアメリカへ留学。カリフォルニア州のナショナル大学でMBAを取得するまでに、マーケティングと広告を中心に学びました。この米国での教育は、のちのグローバル志向のビジネス展開にも大きく影響を与えています。

1-2. マハカ・グループの創業

1992年、エリックはインドネシアでマハカ・グループ(Mahaka Group)を創業。メディア業界を中心に事業を広げ、新聞、ラジオ、テレビ、デジタルメディアと幅広い領域で成功を収めました。「Republika」紙、「JakTV」、ラジオ「Gen FM」などが代表的なメディア資産です。

2. ビジネス界での躍進

2-1. 多角化とグループ経営

マハカ・グループの拡大に加え、エリックは広告代理業、イベント運営、eスポーツなどの領域にも進出。変化の激しいインドネシア市場で柔軟な経営戦略をとり、若者層を中心に強いブランドイメージを確立しました。企業経営者として、リスクを恐れず果敢にチャレンジを続ける姿勢が評価されています。

2-2. 国際的なスポーツクラブの買収

2013年にはイタリア・セリエAの名門サッカークラブ、インテル・ミラノの株式を取得し、会長に就任。アジア人初の欧州ビッグクラブオーナーとして注目を集めました。さらに、米MLSのD.C.ユナイテッド、イングランドのオックスフォード・ユナイテッドなどのクラブにも出資。

スポーツを通じたブランド戦略は、国際的な信頼構築にも寄与しました。これは、国家や企業のプレゼンスを高めるという意味で、ビジネスと外交の架け橋ともなりうる戦略です。

3. 政治への進出と国家改革

政治への進出と国家改革

3-1. 国営企業大臣としての抜擢

2019年、ジョコ・ウィドド大統領により国営企業大臣(BUMN大臣)に任命されました。インドネシアには140を超える国営企業が存在し、経済の中核を担っています。エリックは、その再編と効率化を主導。国営企業同士の統合、ガバナンス強化、デジタル化の推進などを断行しました。

3-2. COVID-19対策と国家運営

パンデミック中には国家経済回復チームのトップも兼務し、ワクチン調達や国営病院の運営、企業支援策などの実務にも携わりました。危機対応能力とマクロ経済政策の理解を両立する数少ない閣僚の一人と評されています。

4. サッカー界でのリーダーシップ

4-1. インドネシアサッカー協会(PSSI)会長として

2023年、エリックはインドネシアサッカー協会(PSSI)の会長に就任。サッカーはインドネシアで圧倒的な人気を誇るスポーツですが、組織の腐敗や運営の不透明さが問題となっていました。

彼は審判制度の改革、プロリーグの再編、ユース育成の整備などを急ピッチで進め、FIFAとの連携も強化。サッカーを通じて若者に希望を与える社会改革的なビジョンも打ち出しています。

4-2. 2026年ワールドカップへの野望

「インドネシアをW杯に」という公約を掲げ、指導体制を一新。元バルセロナのジョルディ・クライフを技術顧問に招き、国際的な視点を持ち込んでいます。選手発掘においては、オランダなどにルーツを持つインドネシア系の選手にも注目。

5. 宗教観と社会貢献

5-1. モスク建設と信仰

2022年、父の名を冠した「アト・トヒル・モスク(At-Thohir Mosque)」を西ジャワに建設。宗教的意義だけでなく、地域社会の学びや対話の場としても活用されています。多民族国家インドネシアにおいて、宗教と社会の調和を意識した彼の行動は政治家としても象徴的です。

5-2. 教育・若者支援活動

複数の大学や若手起業家支援団体と連携し、奨学金やインターン制度の拡充、ICT教育などにも力を入れています。彼の支援を受けた若者が起業家として巣立つ事例も増えており、「次世代の育成」を重視する姿勢が垣間見えます。

6. ビジネスパーソンが学ぶべきこと

6-1. 政治と経済の融合モデル

エリック・トヒルは「国家の枠を超える経営者」として、ビジネスと政治を橋渡しする稀有な存在です。インドネシアではこうした官民複合型のリーダーシップが極めて重要であり、外資企業にとっても参考になる点は多いでしょう。

6-2. グローバル人脈の活用

彼が持つ人脈は、東南アジアを超えて中東、欧州、米国に及びます。現代のビジネス環境では、単一市場に依存せず、多層的な関係性を築くことが成功の鍵です。企業経営者は、この点において彼のスタイルから多くを学べます。

まとめ

エリック・トヒルは、実業家・スポーツ経営者・政治家という3つの顔を持つ、インドネシアの代表的人物です。彼の存在を理解することは、現地ビジネスや政策変化を読み解く上で欠かせません。

特にインドネシア進出を考える経営者・マネージャーにとって、エリックの動向は「時代を読む指標」となり得る存在です。今後のインドネシアにおける政策転換、国家戦略、ビジネス環境を見通す上で、彼の足跡を追い続けることを強く推奨します。

 

 

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