
2月 20, 2025 • インドネシア, 財閥
4月 10, 2025 • インドネシア • by Delilah
目次
インドネシアは、多様な民族、言語、文化、そして宗教が共存する多文化国家です。このような背景を持つ社会でビジネスを行うにあたっては、宗教や文化に対する理解と敬意が必要不可欠です。特に外国人、なかでも日本人や欧米人が現地で経営やマネジメントを行う際には、宗教的・文化的なタブーを理解し、それに配慮することが信頼関係の構築とビジネスの成功につながります。
本記事では、インドネシアにおける宗教的・文化的なタブーやマナーについて、ビジネスパーソンとして知っておくべきポイントを具体的に解説します。
インドネシアは、世界最大のイスラム教徒人口を持つ国であり、国民の約85%がイスラム教を信仰しています。その他にも、キリスト教、ヒンドゥー教、仏教、儒教などが共存し、それぞれの宗教が公に認められています。
無宗教は法律上認められておらず、宗教は個人のアイデンティティと深く結びついています。このため、宗教はビジネスにおいても避けて通れない重要な要素となっており、商談の場や従業員とのやり取りなど、あらゆるシーンで宗教的配慮が求められます。
豚肉とアルコールの忌避
イスラム教では、豚肉とアルコールの摂取が禁じられており、多くのレストランでは豚肉を使用しておらず、ハラール認証を受けた食事が一般的です。ビジネスパートナーや従業員との食事の場では、こうした点に十分な注意が必要です。
また、公共の場での飲酒は好まれず、特にイスラム教徒が隣にいる場での飲酒はマナー違反とみなされることもあります。
ラマダン期間中の配慮
イスラム教徒は、ラマダン(月の断食月)において、日の出から日没までの間、飲食を断ちます。この期間中は、日中の会食や飲食を避けるようにし、断食を実施している従業員に配慮した勤務体制を整えることが重要です。
左手の使用は避ける
インドネシアでは左手は「不浄の手」とされており、握手、名刺交換、贈り物の受け渡し、食事などの場面では右手を使うのがマナーです。特にビジネスシーンでは、初対面の印象を大きく左右するため、右手を使う習慣を意識することが大切です。
頭に触れない
東南アジアでは、頭は「魂が宿る神聖な部位」と考えられており、他人の頭に触れることは非常に失礼な行為とされています。子どもであっても、頭をなでたりするのは避けましょう。
人前で叱責しない
インドネシア人は一般的に、恥をかかされることを非常に嫌います。そのため、人前での叱責や批判は避け、個別に呼び出して冷静に指導する方が効果的です。感情的な表現よりも、柔らかな言葉遣いが信頼関係を築く上で有効です。
時間に対する考え方
インドネシアでは、日本ほど時間に対する厳密さはなく、約束の時間に遅れることも日常的です。そのため、多少の遅れに対しても寛容な姿勢を持ち、柔軟に対応することが求められます。
名刺交換の習慣
名刺交換の文化は日本ほど一般的ではありませんが、ビジネスの場では名刺を用意しておくことが望ましいです。渡す際には右手で丁寧に渡し、受け取った名刺はすぐにしまわず、目を通してから手元に置いておくのが好印象です。
服装のマナー
オフィスカジュアルが主流ですが、宗教的な配慮として、過度な肌の露出は避けるべきです。特に女性は、肩や膝を隠す服装が求められます。宗教施設を訪れる場合や宗教行事に参加する際は、よりフォーマルな服装が望まれます。
宗教的に適切な贈り物の選び方
イスラム教徒に対しては、豚肉やアルコールを含む食品、ゼラチン、みりんなどの成分にも注意が必要です。贈り物を選ぶ際には、成分表示を確認し、相手の信仰に合ったものを選ぶよう心がけましょう。
宗教行事の重要性
インドネシアでは、宗教行事が家族や地域社会にとって非常に重要な役割を果たしており、生活に深く根付いています。ムスリムの「レバラン(イドゥル・フィトリ)」、ヒンドゥー教の「ガルンガン・クニンガン」、キリスト教の「ナタール(クリスマス)」や「パスカ(イースター)」など、それぞれの行事が神聖なものとして扱われています。
参加時のマナー
宗教行事に招かれた場合は、以下の点に配慮することで、相手に敬意を示すことができます。
レバランの訪問時には「Minal Aidin wal Faizin(ミナライディン ワル ファイジン)」という挨拶を添えると、敬意を表すことができます。
断食明けの「ブカ・プアサ」への参加
ラマダン期間中、日没後に行われる「ブカ・プアサ(断食明けの食事)」に招かれることもあります。この食事は感謝と絆を深める場であり、積極的に参加することで信頼関係の構築につながります。ただし以下の点に注意が必要です:
宗教施設を訪問する際の注意点
ビジネスや交流の一環でモスク、寺院、教会などの宗教施設を訪問する場合には、次の点に注意しましょう。
なぜ宗教行事の理解と参加が重要なのか?
インドネシアでは、「人間関係を大切にする文化」が根強く存在します。そのため、宗教行事への理解や参加は、単なる社交辞令ではなく、「文化を理解し、共に歩む姿勢を見せる行為」として、高く評価されます。
ビジネスだけの関係を重視する日本的な「仕事と私生活の分離」の考え方とは異なり、インドネシアでは仕事と人間関係が密接に結びついています。相手の宗教や文化を理解しようとする姿勢は、「この人となら信頼して仕事ができる」と思わせる強力な信号となるのです。
インドネシアは多様な宗教と文化が共存する社会であり、ビジネスを成功させるためには、こうした背景を深く理解し、配慮ある行動を取ることが必要不可欠です。特に、イスラム教の教義に基づいた食事や行動、ラマダンや宗教行事への対応などは、現地の人々との信頼関係を築くための重要なポイントとなります。
また、挨拶の仕方や時間に対する感覚、名刺交換や服装のマナーなど、ビジネス上のコミュニケーションにも文化的な違いがあるため、細やかな注意が求められます。宗教行事への理解と参加は、単なる儀礼ではなく、「相手を尊重する姿勢」を示す大切な行動です。
インドネシアでのビジネスにおいては、「文化の違いを受け入れ、相手に寄り添う姿勢」が何よりも信頼構築の鍵となります。今回ご紹介した内容を参考に、異文化の中でも円滑な関係を築いていただければ幸いです。
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本記事で使用した単語の解説
イスラム教(Islam)
世界三大宗教のひとつで、アッラー(唯一神)を信仰する宗教。インドネシアでは最も信者数が多い宗教。
ハラール(Halal)
イスラム教の教義において「許されたもの」を意味し、食べ物や飲み物、行動に対して使われる。特に食事に関しては厳格なルールがある。
ラマダン(Ramadan)
イスラム教徒が1か月間、日の出から日没まで飲食を断つ断食月。宗教的に非常に重要な期間。
レバラン(Lebaran)
ラマダン明けに行われる祝祭日で、正式には「イドゥル・フィトリ」と呼ばれる。家族との再会や謝罪の文化がある。
ブカ・プアサ(Buka Puasa)
ラマダン期間中、日没後に行われる断食明けの食事。多くのイスラム教徒が家族や同僚と共に食事をとる。
アザーン(Adzan)
礼拝の時間を知らせるイスラム教の呼びかけ。モスクからスピーカーで流れる。
不浄の手(Left hand taboo)
文化的に左手は「不浄」とされ、握手や贈り物などは右手を使うのがマナーとされる。
ガルンガン・クニンガン(Galungan & Kuningan)
ヒンドゥー教の祭りで、祖先の霊を迎え入れて祈りを捧げる。主にバリ島で行われる重要な行事。
よくある質問(FAQ)
Q1. インドネシアでは豚肉やアルコールを提供しても問題ありませんか?
A1. 多くのインドネシア人はイスラム教徒であり、豚肉やアルコールは禁じられています。ビジネスの場で提供するのは避けた方が良く、代わりにハラール対応のメニューを選ぶと安心です。
Q2. ラマダン中に会食やイベントを開いても大丈夫ですか?
A2. 日中の会食は避けるのがマナーです。もしイベントを行う場合は、日没後に「ブカ・プアサ」として開催し、断食明けの食事を共にする形が好まれます。
Q3. 宗教行事に招待された場合、断っても問題ありませんか?
A3.無理に参加する必要はありませんが、可能な範囲で参加すると良好な関係づくりにつながります。参加しない場合でも、丁寧にお礼を伝え、祝福の言葉を添えることで敬意を示すことができます。
Q4. インドネシアでのビジネスマナーで特に気をつけることは?
A4. 時間の感覚に寛容であること、感情的な叱責を避けること、名刺や物の受け渡しには右手を使うことなどが大切です。また、相手の宗教的信条を尊重する姿勢が重要です。
Q5. 宗教施設を訪問する際に注意する点はありますか?
A5. 靴を脱ぐ、女性はスカーフで髪を覆う、礼拝中の行動を控えるなどのマナーがあります。寺院では特有のルールもあるため、訪問前に確認しておくと安心です。