
4月 12, 2025 • 特定技能・技能実習, インドネシア
3月 2, 2025 • インドネシア • by Erika Okada
目次
ムハマディヤ(Muhammadiyah)は、インドネシアを代表するイスラム教スンニ派の宗教団体の一つであり、イスラムの近代改革運動を推進する組織として知られています。1912年に設立され、インドネシアにおける教育、社会福祉、医療、経済発展に大きな影響を与えてきました。1912年に設立され、インドネシアのイスラム社会において重要な役割を果たしてきました。本記事ではインドネシア社会の中で非常に大きな影響力のあるイスラム教徒その最大の団体であるNU(ナフダトゥル・ウラマ)について詳しく解説します。
項目 |
内容 |
正式名称 |
Muhammadiyah(ムハマディヤ) |
設立年 |
1912年 |
創設者 |
カイ・ハジ・アフマド・ダフラン(K.H. Ahmad Dahlan) |
本部所在地 |
インドネシア・ジョグジャカルタ |
信徒数 |
約50,000,000人以上(推定) |
宗派 |
イスラム教スンニ派(ハナフィー学派、サラフィー的傾向) |
思想・理念 |
イスラム改革、近代主義、純粋主義 |
主な活動 |
宗教指導、教育、医療、社会福祉、経済活動 |
ムハマディヤ(Muhammadiyah)は、1912年にインドネシアのジョグジャカルタでカイ・ハジ・アフマッド・ダフラン(Kyai Haji Ahmad Dahlan)によって設立されたイスラム社会改革運動です。この組織は、インドネシアのイスラム社会において教育、医療、社会福祉の分野で大きな影響を与えてきました。
(1) 19世紀末から20世紀初頭のインドネシア
ムハマディヤが創立された時期のインドネシア(当時はオランダ領東インド)は、以下のような状況にありました。
(2) アフマッド・ダフランの影響
創設者のカイ・ハジ・アフマッド・ダフラン(1868-1923)は、ジョグジャカルタの名門イスラム学者の家系に生まれました。彼はメッカでの学びを通じて、イスラム改革思想(サラフィーヤ)に影響を受け、「イスラムの教えを時代に適応させ、社会改革を進めるべきだ」と考えました。
彼は、伝統的なイスラムの教えと近代教育の融合を目指し、1912年にムハマディヤを設立しました。
1912年11月18日、アフマッド・ダフランはジョグジャカルタでムハマディヤを正式に創設しました。
(1) 目的とビジョン
(2) 初期の教育活動
アフマッド・ダフランは1913年にムハマディヤの最初の学校を設立しました。この学校は、当時のペサントレンとは異なり、以下のような特徴がありました。
当時のイスラム社会の一部からは「伝統的なイスラム教育を軽視している」との批判もありましたが、ムハマディヤの学校は急速に広まりました。
(1) 教育機関の拡大
ムハマディヤは、20世紀初頭から全国的なイスラム教育ネットワークを築いていきました。
(2) 医療と社会福祉活動
ムハマディヤは、イスラムの価値観に基づく福祉活動も積極的に行い、貧困層のための病院や診療所を開設しました。
(3) インドネシア独立運動への関与
ムハマディヤはインドネシア独立運動にも関わりました。特に、1945年の独立宣言前後に多くのムハマディヤ関係者が民族主義運動に参加しました。
(1) 国内最大級のイスラム組織
ムハマディヤは、インドネシア国内でナフダトゥル・ウラマ(NU)と並ぶ最大のイスラム組織であり、約50万人以上の正式会員を持っています。
(2) 影響力
ムハマディヤ(Muhammadiyah)は、1912年の創設以来、インドネシア社会に多方面で影響を与え続けてきました。その影響は教育、医療・社会福祉、宗教・社会改革、経済、政治、国際協力など多岐にわたります。以下に、ムハマディヤがインドネシア社会に与えた主要な影響について詳しく解説します。
ムハマディヤは、インドネシアにおける近代イスラム教育の先駆者であり、国の教育水準向上に大きく貢献してきました。
(1) イスラム教育の近代化
従来のイスラム教育(ペサントレン)は、宗教的な知識に特化し、数学や科学などの近代的な科目をほとんど教えていませんでした。しかし、ムハマディヤは次のような改革を行いました。
この改革により、ムハマディヤの学校はインドネシア全土で拡大し、現在では29,000以上の学校(小・中・高)、170以上の大学を運営しています。これは、インドネシア最大規模の私立教育機関ネットワークとなっています。
(2) 高等教育への貢献
ムハマディヤの大学(Muhammadiyah University)は、国内外で評価される教育機関を多く輩出しています。特に、医学・経済・教育学の分野で優れた人材を育成しており、卒業生はインドネシアの各産業で活躍しています。
ムハマディヤは、イスラムの慈善活動(ザカート)を実践し、医療や福祉分野で大きな役割を果たしてきました。
(1) 医療サービスの提供
インドネシアでは、公的医療機関が不足しており、特に地方部では医療アクセスが限られています。ムハマディヤはこれに対応し、次のような医療サービスを提供しています。
これにより、多くの貧困層が基本的な医療サービスを受けられるようになりました。
(2) 社会福祉活動
ムハマディヤは、医療だけでなく以下のような福祉活動も展開しています。
特に、ムハマディヤは地震や津波などの災害時に迅速な支援を行い、政府機関と協力しながら被災地支援を主導することが多いです。
ムハマディヤは、インドネシアのイスラム社会において、伝統的なイスラムのあり方を改革し、近代化を促進しました。
(1) ピューリタン(純粋主義)運動
ムハマディヤは、「イスラムをより純粋な形に戻すべき」という考えに基づき、以下のような社会改革を行いました。
(2) イスラム社会の近代化
ナフダトゥル・ウラマ(NU)が伝統的なイスラムを重視するのに対し、ムハマディヤはイスラムを時代に適応させるべきだという立場を取っています。これにより、インドネシアのイスラム社会は伝統派と近代派に分かれるきっかけとなりました。
ムハマディヤは、イスラム経済の発展にも積極的に取り組んでいます。
(1) イスラム金融と経済支援
ムハマディヤの経済活動は、単なる宗教的な側面だけでなく、社会的な貧困層の経済的自立を支援する大きな役割を担っています。
ムハマディヤは政党には属さないものの、政府や政策に影響を与えています。
(1) インドネシア独立運動への関与
ムハマディヤは、1945年のインドネシア独立運動に貢献し、スカルノ初代大統領もムハマディヤの教育を受けた人物の一人です。独立後も、政府の教育・社会政策に影響を与え続けています。
(2) 政治的影響力
(3) 国際協力
ムハマディヤは、インドネシア国内だけでなく東南アジアや中東のイスラム団体とも連携しており、国際的なイスラム教育・福祉ネットワークの構築に貢献しています。
1. 伝統的イスラム勢力との対立
ムハマディヤは、イスラムの近代化を掲げ、迷信や伝統的な慣習を排除する姿勢を取ってきました。そのため、**ナフダトゥル・ウラマ(NU)**などの伝統的イスラム団体と対立することがあります。
2. 政治との距離感
ムハマディヤは政党に直接関与しない立場を取っていますが、その影響力は大きく、政治家や政府政策に影響を与えてきました。
3. 宗教的リベラル派との摩擦
ムハマディヤは、近代教育や社会福祉を推進しつつも、リベラル派や世俗主義者とは異なる立場を取っています。
4. 国際的なイスラム勢力との関係
ムハマディヤは、国際的なイスラム団体とも協力していますが、一部の国際的なイスラム勢力とどの程度関与しているかについては議論があります。
ムハマディヤ(Muhammadiyah)は、インドネシアのイスラム社会において、教育、医療、社会福祉、経済発展など幅広い分野で影響を与える最大級の宗教団体です。1912年にカイ・ハジ・アフマッド・ダフランによって設立され、イスラムの教えと近代教育を融合させることを目的としています。
特に、ムハマディヤはイスラム教育の近代化を推進し、29,000以上の学校と170以上の大学を運営しています。また、全国で100以上の病院・クリニックを展開し、貧困層向けの医療支援も行っています。さらに、政治的には政党に直接関与せず中立的な立場を維持しながらも、政府の教育・福祉政策に影響を与える重要な存在となっています。
ムハマディヤは、伝統的なイスラム団体ナフダトゥル・ウラマ(NU)とは異なる路線を歩み、より純粋主義的で近代的なイスラム改革を目指しています。そのため、伝統的イスラム勢力との対立や政治的中立性に関する議論、リベラル派との摩擦など、センシティブな側面も持っています。
インドネシア社会において、ムハマディヤは今後も教育・福祉・宗教改革の推進力となり続けるでしょう。
ムハマディヤ(Muhammadiyah)
インドネシアを代表するイスラム教スンニ派の宗教団体の一つで、1912年にカイ・ハジ・アフマッド・ダフランによって設立された。イスラムの近代改革を目指し、教育、医療、社会福祉、経済活動を幅広く展開している。現在、全国に29,000以上の学校と170以上の大学を運営し、インドネシアの社会発展に大きな影響を与えている。
カイ・ハジ・アフマッド・ダフラン(Kyai Haji Ahmad Dahlan)
ムハマディヤの創設者であり、1868年にジョグジャカルタで生まれたイスラム学者。メッカで学び、イスラムの教えと近代教育を融合させることを目指し、1912年にムハマディヤを設立した。イスラム改革運動の先駆者として知られ、インドネシアの教育と社会福祉の発展に貢献した。
スンニ派(Sunni)
イスラム教の主要宗派の一つで、全世界のイスラム教徒の約85%が属する。預言者ムハンマドの死後、正統カリフ制度を支持したグループが発展し、現在のスンニ派となった。インドネシアでは多数派を占め、ムハマディヤもスンニ派の流れを汲んでいる。
サラフィー(Salafi)
イスラム教の純粋主義的な思想で、預言者ムハンマドとその初期の弟子たちの時代の教えに立ち返ることを目指す。ムハマディヤの思想にも影響を与えており、伝統的なイスラム儀式や迷信を排除し、イスラム本来の教えに忠実であることを重視する。
ナフダトゥル・ウラマ(NU)
インドネシア最大級のイスラム団体で、ムハマディヤとは対照的に伝統的なイスラム文化やスーフィズム(イスラム神秘主義)を重視する。1926年に設立され、地域ごとの宗教習慣を尊重する立場を取るため、ムハマディヤとは思想的に異なる点が多い。
ペサントレン(Pesantren)
イスラム寄宿学校のことで、インドネシアにおける伝統的なイスラム教育機関。主にコーランの暗記やイスラム法を教えるが、ムハマディヤの学校のように近代教育を取り入れているわけではない。ナフダトゥル・ウラマ(NU)系の学校が多く、地域ごとの特色が強い。
ザカート(Zakat)
イスラム教における義務的な喜捨(寄付)のことで、貧困層や社会福祉のために使われる。ムハマディヤは、この制度を活用して貧困層向けの医療や教育、社会福祉活動を展開し、インドネシア国内の経済格差の是正に貢献している。
Q1. ムハマディヤとナフダトゥル・ウラマ(NU)の違いは?
A: ムハマディヤは、**イスラムの近代化と純粋主義(ピューリタン的思想)**を重視し、迷信や伝統儀式を排除しようとする団体です。一方、ナフダトゥル・ウラマ(NU)は、**伝統的なイスラム文化やスーフィズム(神秘主義)**を重視し、地域ごとの宗教習慣を尊重します。
Q2. ムハマディヤの教育機関にはどんな特徴があるの?
A: ムハマディヤの学校や大学は、イスラムの教えと近代教育(数学、科学、社会科など)を統合しており、男女共学を推進しています。また、全国に29,000以上の学校と170以上の大学を運営し、インドネシア最大規模の私立教育ネットワークとなっています。
Q3. ムハマディヤは政治に関与しているの?
A: ムハマディヤは政党には属さず、中立的な立場を維持していますが、その影響力は非常に大きく、政府の教育・福祉政策に影響を与えています。歴代大統領の中には、ムハマディヤの教育を受けた人物も多くいます。
Q4. ムハマディヤの医療サービスはどのようなもの?
A: ムハマディヤは全国で100以上の病院やクリニックを運営し、貧困層向けの無料または低価格の医療を提供しています。また、医学部を持つ大学を運営し、医療人材の育成にも貢献しています。
Q5. ムハマディヤの宗教的立場はどのようなもの?
A: ムハマディヤは、**イスラムの純粋主義(サラフィー的思想)**を基盤にし、迷信や伝統儀式を排除することを目指しています。しかし、サウジアラビアのワッハーブ派ほど厳格ではなく、穏健派のイスラム団体と位置付けられています。
Q6. ムハマディヤは海外にも影響を与えている?
A: はい。ムハマディヤは東南アジアや中東のイスラム団体とも連携しており、国際的なイスラム教育・福祉ネットワークの構築に貢献しています。
Q7. ムハマディヤは女性の権利をどう考えている?
A: ムハマディヤは女性の教育と社会進出を積極的に支援しています。そのため、女性の大学進学率は比較的高く、ムハマディヤ系の大学では男女共学が一般的です。しかし、イスラム法の厳格な適用を支持する立場のため、LGBTQ+やフェミニズムの問題には慎重な姿勢を取っています。
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