2月 1, 2025 • インドネシア • by Reina Ohno

インドネシアの土地の約6割を超富裕層が保有している

インドネシアの土地の約6割を超富裕層が保有している

インドネシア政府の土地銀行(Badan Bank Tanah)の発表によると、森林地域を除く国内の土地の約59%を、人口のわずか1%に当たる超富裕層が保有しているとされています。この極端な土地所有の偏りは、経済的・社会的な不平等を深刻化させ、特に都市部における住宅問題を悪化させています。本記事では、インドネシアにおける土地所有の不平等の現状、原因、政府の対策、持ち家率の実態、さらには今後の展望について詳しく掘り下げます。


土地所有の不平等の現状

別のデータでは、土地所有のジニ係数(不平等を示す指標)は0.68とされ、これは人口の上位1%が土地資源の68%を支配していることを示しています(参考:インドネシア中央統計庁)。また、首都ジャカルタをはじめとする都市部では、不動産価格の急騰が続き、庶民が住宅を購入するのはますます困難になっています。一方で、地方部では大規模農園や鉱業会社が土地を独占し、地元住民の土地利用が制限されるケースも見られます。


土地所有の不平等の要因

このような土地所有の偏りが生じる背景には、いくつかの要因が考えられます。

  1. 歴史的要因
    • 植民地時代の土地制度が現代にも影響を及ぼし、特定のエリート層が大規模な土地を保有し続けている。
    • 慣習法(アダット)と制定法の二重構造が、地元住民の土地権利を複雑にし、富裕層や企業による土地の囲い込みを助長。
  2. 経済的要因
    • インドネシアの経済成長に伴い、都市部の土地価格が高騰し、一般庶民が不動産を購入しづらくなっている。
    • 鉱業、プランテーション、不動産開発など、資源に依存する産業が大企業の土地所有を拡大させている。
  3. 政治的要因
    • 富裕層や財閥が政府との密接な関係を持ち、土地開発や許認可において優遇されるケースが多い。
    • 土地改革政策が進まず、土地の再分配がほとんど行われていない。

政府の取り組み

政府は土地所有の不平等を是正するため、いくつかの政策を進めています。

  1. 土地銀行(Badan Bank Tanah)の設立
    2021年に設立された土地銀行は、公共事業や農地改革のために土地を管理・配分する役割を担っています。現在、政府は約33,000ヘクタールの土地を土地銀行を通じて確保しており、そのうち30%を農地改革(Reforma Agraria)に充てる計画です。
  2. 社会保障型住宅(Rusunawa)プロジェクト
    都市部の低所得者向けに、政府が安価な賃貸住宅を提供する取り組みを進めています。しかし、財政不足や行政の非効率性から、計画通りに進んでいない部分もあります。
  3. デジタル化による土地管理の透明化
    近年、政府は土地登記のデジタル化を進め、土地所有の不正や重複登記を減らす試みを行っています。しかし、地方では未登録の土地が多く、全土での適用には時間を要します。

持ち家率の状況

インドネシアの全体的な持ち家率は約80%と高いものの、都市部と農村部で大きな差があります。

  • 都市部(ジャカルタなど):持ち家率は約45%。土地価格が高騰し、多くの人が賃貸暮らしを余儀なくされている。
  • 農村部:持ち家率は90%以上と高いが、土地の権利が正式に登記されていないケースが多く、法的に不安定な状況が続いている。

特に、都市部では住宅価格の上昇と賃貸住宅の不足が問題となっており、若者が持ち家を購入するのが難しい状況です。


今後の想定

インドネシアの「サンドイッチ世代」とは、子供の養育と親世代の経済的支援を同時に負担する世代を指します。この世代にとって、土地所有の不平等は大きな課題となっています。

  • 住宅購入の難しさ:都市部では住宅価格が高騰し、若い世代が持ち家を購入できない。
  • 親世代の経済的負担:高齢者の78%が年金や貯蓄を持たず、子供世代が経済的に支える必要がある。
  • 将来的な資産形成の困難さ:土地価格の高騰により、資産を形成する機会が限られている。

この状況を改善するためには、政府の住宅政策の強化や、サンドイッチ世代向けの金融支援策が必要です。


まとめ

インドネシアでは、土地の約6割を人口の1%が保有しているという極端な不平等が存在します。これは歴史的・経済的・政治的要因が絡み合った結果であり、政府の取り組みが進んでいるものの、依然として課題は多い状況です。

今後、持ち家率の低下や都市部での住宅価格の高騰が続けば、サンドイッチ世代の経済的負担はさらに増加するでしょう。この問題を解決するためには、土地改革の加速、住宅政策の充実、金融リテラシーの向上が求められます。

インドネシアの経済成長が持続する中で、土地所有の不平等を是正し、より公平な社会を実現するためには、政府と民間の協力が不可欠です。

 

 

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