
1月 29, 2025 • インドネシア
1月 18, 2025 • インドネシア • by Yutaka Tokunaga
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インドネシアの元ユニコーン企業Bukalapak(ブカラパック)は誰もが憧れるインドネシアを代表するスタートアップでした。大型の資金調達を繰り返し一気にユニーコーンから上場まで駆け上がりました。しかしその後他社の猛攻もあり業績は不振を極め、株価は低迷を続けています。今回はBukalapakのストーリーを見ながらインドネシアのスタートアップ業界について考えてみたいと思います。
インドネシアのオンラインショッピング企業、Bukalapak(ブカラパック)は、かつて東南アジアのスタートアップ業界を象徴する「ユニコーン企業」として脚光を浴びていました。同社は、地元の中小規模の小売店や伝統的市場(Warung)をデジタル化し、オンラインで取引できるプラットフォームを提供することで急成長を遂げました。これにより、「地方経済の救世主」として広く評価されていました。
2021年8月、BukalapakはIPO(新規株式公開)を実施し、約15億ドル(約1,700億円)の資金調達に成功。このIPOは、インドネシア国内で過去最大級のもので、同社はまさに「国民的企業」としての地位を確立するかに見えました。
しかし、この成功は長くは続きませんでした。業績不振が続いたBukalapakは2025年1月、Bukalapakは従来のマーケットプレイス事業を閉鎖し、バーチャル商品の販売に特化するという決断を発表しました。この動きは、同社が抱える根本的な問題を象徴しており、かつてのユニコーン企業は短期間でその輝きを失うこととなりました。
IPO以前、Bukalapakはベンチャーキャピタルや大手投資家からの巨額の資金提供を受け、急成長するテック企業としてのイメージを巧みに演出していました。しかし、同時にその評価額(バリュエーション)が過剰に膨らんでいたのではないかという疑念も生じていました。
特に注目すべきは、収益モデルと成長性の実態が不透明だった点です。Bukalapakは「地元の中小企業を支援する」という社会貢献的なイメージを掲げていましたが、実際のところ利益率の低い取引が多く、持続可能な成長ができる構造ではなかった可能性があります。IPOを主導したチームは短期的な資金調達を優先し、長期的なビジョンを明確にしないまま市場に参入したと批判されています。
創業者のAchmad Zaky氏
株価の暴落と相次ぐリーダーの退任は、投資家にとって大きな不安要素となりました。特にIPOに参加した投資家は、短期間で大幅な損失を被ることとなり、同社への信頼を失いました。また、この出来事は、インドネシアのスタートアップ市場全体への影響も少なくありませんでした。
「Bukalapakの失敗は、スタートアップ企業への投資が必ずしも成功を保証しないリスクを示した」との声もあり、インドネシアのスタートアップ業界全体に対する投資家の慎重な姿勢を助長する結果となりました。
Bukalapakの物語は、スタートアップ企業が直面するリスクや課題を浮き彫りにしました。短期的な資金調達に固執するあまり、持続可能な成長戦略を構築できなかったことが、この結末を招いたと言えるでしょう。
この事件は、インドネシアのスタートアップ市場における教訓として学ぶべきものです。同時に、投資家や企業にとって、真の価値を見極める目を持つ重要性を改めて認識させるものでした。
Bukalapakの崩壊ストーリーは、企業にとっての本当の成功とは何かを問い直す機会を私たちに提供しています。そして、スタートアップ市場の未来を築く上で、慎重な判断と長期的な視点の重要性を教えてくれました。
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