5月 11, 2025 • インドネシア • by Delilah

インドネシアのコネ入社文化は社会の害悪か?

インドネシアのコネ入社文化は社会の害悪か?

私が日本人としてインドネシアでビジネスをして驚いたのが「コネ入社(Nepotism)」という文化です。日本でも縁故採用がまったく存在しないわけではありませんが、インドネシアではこの慣習がより社会構造に根付いており、良くも悪くも多くの場面で影響を与えていると感じています。本記事ではインドネシア特有のコネ入社問題について取り上げます。

 

 

1. インドネシアのコネ入社文化とは?

インドネシアのコネ入社文化とは?

関係性が力になる社会構造

インドネシアにおいて「kenalan(知り合い)」「orang dalam(内部の人)」という言葉は、就職活動の文脈で頻繁に使われます。これは、求人情報や面接の機会そのものが、知り合いのネットワーク内で回っていることを示しています。

コネ入社と推薦の違い

重要なのは、すべての人脈採用が悪ではないという点です。過去に一緒に働いた経験がある人物を推薦するのは、ある意味で合理的な人材採用の手法とも言えます。問題となるのは、能力や適性よりも「誰の親戚か」「誰の友達か」が判断基準になるケースです。

 

 

2. どんな会社でコネ入社が起きているのか?

どんな会社でコネ入社が起きているのか?

官民問わず広く存在

インドネシアのコネ入社文化は、民間企業に限らず、行政機関、国営企業、教育機関、さらには医療や治安関連の職種にまで及んでいます。

特に地方自治体や官公庁では、「採用は上層部に頼むもの」といった価値観が根強く残っています。また、公立病院の看護師やスタッフ、警察官や地方の治安関係者に関しても、形式的な試験や募集が行われているにもかかわらず、実際の採用は「紹介」が鍵となっているケースがあります。

民間企業でも構造的に起きやすい

一方、民間企業においても、特に家族経営の中小企業や伝統産業では、親族や身近な関係者を優先的に雇う慣習が残っています。逆に、スタートアップ企業や外資系企業では、能力主義を掲げて透明な採用プロセスをで採用がされるケースが多いですが、それでも経営層との私的関係が影響するケースはゼロではありません。

 

 

3. コネ入社が成立する背景とは?

コネ入社が成立する背景とは?

家族中心の価値観と信頼の文化

インドネシアの社会は「家族」や「仲間」を大切にする価値観が強く、仕事においても「信頼できる人を内部に迎えること」が自然な発想として受け入れられています。トラブルを避け、組織の調和を保つために身内や信頼関係のある人物を雇用するのは、一種のリスクヘッジとも言えるでしょう。また家族や親戚、親しい友人を助ける、共に繁栄するという考え方も強いでしょう。

コネと汚職の曖昧な境界線

さらに複雑なのは、コネ入社と汚職(Korupsi)との境界が曖昧な点です。採用されるために金銭を支払う、あるいはポジションを買うといった行為が一部で横行している現実があり、それが制度の信頼性を大きく損ねています。見返りを前提とした不正な推薦や採用は、単なる文化の問題ではなく、深刻な構造腐敗の入り口にもなり得ます。

 

 

4. コネ入社による社会への影響

コネ入社による社会への影響

機会の不平等

本来であれば、知識やスキルに基づいて採用されるべき人材が、関係性や金銭の力によって排除されるという現象は、社会における公平性を大きく損ないます。結果として、努力や学びに対する信頼が揺らぎ、「正しく頑張っても報われない社会」という空気が広がってしまいます。

組織文化の悪化

職場内で「誰が誰の親戚か」「上層部とどれだけ近いか」といった人間関係が昇進や評価に影響するようになると、社員同士の健全な競争や相互尊重の文化は崩れていきます。忖度や保身が横行し、率直な意見や改善提案が出しにくい環境になってしまうのです。

「初期投資」を回収するための汚職リスク

コネ入社の中には、実際に金銭を支払ってポジションを得るケースもあります。そうした人物が「家族がお金を出してくれたから、その分を取り戻さなければならない」と考えるようになると、その“初期投資”を回収するために汚職や不正に手を染める危険性が高まります。
このような構造は、個人だけでなく、組織・制度そのものの腐敗を招き、健全なガバナンスを蝕む原因になります。

 

 

5. これからどうしていくべきか?

これからどうしていくべきか?

採用の透明化が鍵

企業や公的機関は、採用プロセスの明確化と外部監査の導入など、透明性を確保する取り組みが求められます。応募条件や評価基準を公表し、誰もが同じスタートラインに立てる制度を整えることで、社会全体の信頼も向上します。

意識変革の必要性

制度だけでなく、私たち一人ひとりの意識も問われています。「誰を知っているか」ではなく、「何ができるか」が評価される社会に変えていくには、教育現場やメディア、リーダー層の姿勢が重要です。

推薦の正しいあり方

すべての紹介が悪とは限りません。過去の実績や信頼をもとに推薦すること自体は健全な採用方法になり得ます。重要なのは、能力と適性がしっかりと評価され、そのプロセスが透明であることです。

 

 

終わりに

インドネシアのコネ入社文化は、歴史的背景や社会構造と深く結びついており、単純な善悪で語ることはできません。しかしながら、透明性と公平性を追求しなければ、努力する人材が報われず、社会全体の発展が妨げられることも事実です。

「人脈入社は価値か、害悪か?」—— あなたはどう思いますか?

 

 

 

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