4月 24, 2025 • インドネシア • by Yutaka Tokunaga

インドネシアに押し寄せる雇用危機の波。正社員が減ってアウトソーシングだらけになる?

インドネシアに押し寄せる雇用危機の波。正社員が減ってアウトソーシングだらけになる?

1. アウトソーシングやギグワーカーが増えて正規雇用が減っている?事実を確認

インドネシアの労働市場を冷静に眺めると、正社員(PKWTT)はおろか、有期契約社員(PKWT)ですら「ぜいたく品」になりつつあります。業界団体 FADI の推計ではアウトソーシング労働者が約300万人、BPJS に登録されているフォーマルな外注スタッフだけでも50万人超に達します。一方、統計局(BPS)が把握するインフォーマル就業者は総就業者の59%。つまり、表に出るだけでも2人に1人は「会社の外」で働いている計算です。

「いや、まだまだ正社員は減っていない」という楽観論も聞こえます。しかし JobStreet の最新調査では企業の70%が「契約・外注人材を維持または増やす」と回答し、正社員採用枠は頭打ち。IT から小売、物流、さらには官公庁の補助業務まで、“会社に雇われない働き方” が静かに常態化してきています。

 

 

2. 中小企業だけでなく、大企業でも広がるアウトソーシングの波

インドネシアを代表する大企業や国家を象徴する BUMN(国営企業)さえアウトソーシングの活用が常態化しています。公共サービスの最前線で働く人々が実は「委託会社の社員」――この構図に違和感を覚えるか、“合理化の当然の帰結” と見るのでいいのでしょうか。

企業・組織

外注部門・規模感

直近トピック

GoTo

配送・配車パートナー300

2022–23年に正社員 1,900 名超リストラ

ShopeeShopee Xpress

配送クーリエ大半が日当 mitra

2022 年報酬カット抗議スト

Traveloka

CS BPO へ一括委託

2023 年に PKWT 要員 70 名が突然雇止め

Indomaret

店舗スタッフを短期 PKWTOutsourcing

2021 THR 未払い紛争

J&T Express

配達員を委託会社経由

2024 7 月デモ

Alfamart

レジ・倉庫で派遣多数

2023 年「強制退職」提訴

BUMN ですらアウトソースを常態化

BUMN

主な外注部門・規模

主な出来事

PLN

計器検針・保守要員数万人

2023 年正社員化要求デモ

Angkasa Pura I/II

正社員 8,000/外注 8,000

2024 年統合再編で処遇不透明

Telkom Indonesia

ネットワーク保守・CS

2023 年ケーブル盗難で「犯人は outs 勤務」

Pertamina

充填所オペレーター・ドライバー

2024 May Day で外注禁止要求

Kereta Api Indonesia

駅清掃・Porter・保守

2024 May Dayouts 廃止」行進

 

 

3. なぜそのようになっているの?

インドネシア アウトソース

不安定な経済と雇用コスト爆弾

パンデミック、原料高、為替乱高下――需要は乱高下し、最低賃金は年々上がる。正社員を抱え込めば BPJS 拠出、年休、THR、退職金。「固定費」という名の時限爆弾を多くの企業は抱えたくない企業がほとんどです。

法制度の揺れが加速

  1. 2020 年雇用創出法(Omnibus Law)
    • それまで禁止だった主業務の外注制限を撤廃。
    • 対象業種は事実上“何でも可”となり、製造ライン、 IT サポート、倉庫オペレーション、テレセールス、清掃・警備・ケータリング等を企業は一気に外部化しています。
  2. 2024 年憲法裁判所判決
    • PKWT は最長 5 年で打ち止め
    • 主要業務アウトソース禁止を復活し、政府に「副次業務リスト(清掃・警備・ロジスティクス・ IT サポート・コールセンター・設備保守など)を大臣規則で明示せよ」と命じた。

制度の振り子が振れるたび、企業は「次に何が来ても対処できるよう外注比率をさらに高めておく」という逆説的行動を取る。結果、禁止業務リストの“抜け道”を求め外注が複雑化し、労働者の不安定さはむしろ増幅されています。

企業の本音――正社員はリスク資産

退職金義務、労組交渉、訴訟リスク、また閑散期による経営状況悪化。これらを避けるなら外部委託が最適解――たとえ単価が少し高くても、将来負債を抱えるより安いという経営計算が支配的です。

 

 

4. 追い打ちをかける AI やロボットの進化による従業員カット

ホワイトカラーやアウトソース人材を駆逐するのは、結局 AI かもしれません。

  • コールセンターはチャットボットへ。
  • EC の商品登録は生成 AI が自動生成。
  • 倉庫は AGV が無人搬送。

WEF 予測では世界で8,500万職が消えると言われています。インドネシアは人件費が安いのでAIやロボットへのリプレースには時間がかかるでしょう。しかし安い労働力であぐらをかけば、「人より機械の方が安い」瞬間がすぐ来ます。アウトソーシング先の人件費をさらに叩く競争は、AI の導入コスト低減と同時進行で進んでいます。

 

 

5. 今の従業員達がやるべきことは?

スキルで“不可欠な人材”になる
クラウド、セキュリティ、UX デザイン、ロボット工学、半導体などの高スキルな領域や、店舗マネージャー、訪問営業、料理など機械では代替しにくいスキルを磨く。「会社に雇われる」のではなく「自分を指名させる」発想へなることが大切です。

自分の事業を持つ/コア業務を握る
副業でも小さな起業でもいい。アウトソース不可能な“キモ”を自分側に取り返す意識が必要です。社内にいるなら 事業戦略、プロジェクト管理、営業部隊統率、新規事業など会社の中枢の仕事を奪い取る必要があるでしょう。お金をもらえるなら仕事をしてあげるという受け身の姿勢でいるならPHK(解雇)が待っています。

アンラーンとリスキリングを日常化
昨日の成功体験を捨て、新しい技術やツールを試し続ける、新しいことを学び新しい人と会う習慣を持つ。YouTube、オンライン講座、コミュニティ――学ぶ場は無数にあるのでいかに自分をアップデートするかが大事になるでしょう。

ハードワークを恐れない
「ルールや技術が変わるたびにしんどい」というのはわかります。しかしハードワークなくして市場価値は積み上がりません。変化が速いほど、努力の差はリターンとして跳ね返る。こういう時代ほどハードワークができる人材は重宝されるでしょう。

 

 

あなたはどうする?

「正社員にしがみつく者は市場から退場する」

アウトソーシングと AI の2つの大きな波によって今働いている正社員も安泰ではないでしょう。

もし雇用形態の神話にすがりたいなら、今後のインドネシアは居心地が悪いでしょう。安定した正社員も PKWT も“夢物語”になりつつある中で、アウトソーシングと AI が労働市場を塗り替える。従業員が文句を言っても国や会社が助けてくれるかどうかはわからない。

しかし逆に言えば——“企業”や“肩書”に頼らず、自分の能力とハードワークで稼ぐ人にとっては絶好のチャンスでもあります。

さぁ、あなたはどうしますか?

 

 

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