4月 14, 2025 • インドネシア • by Erika Okada

インドネシアで優秀な人材を採用する方法:地域別・職種別の徹底解説

インドネシアで優秀な人材を採用する方法:地域別・職種別の徹底解説

目次

インドネシアにおける人材採用は、地域特性、職種別ニーズ、文化的背景、法規制といった多くの要素が複雑に絡み合っています。急成長する経済の中で、どのようにして優秀な人材を見つけ、惹きつけ、長く活躍してもらうかは、現地ビジネスの成功に直結する重要課題です。本記事では、インドネシアでの人材採用における現状と課題、地域別の市場状況、ホワイトカラーとブルーカラーの人材像、効果的な採用チャネル、雇用法規、採用後の育成・定着までを幅広く解説し、実践的な戦略構築のヒントを提供します。

 

 

インドネシアの労働人口と失業率の現状

インドネシアの労働人口と失業率の現状

インドネシアの労働力人口と就業者の規模

インドネシアは2億8千万人以上の人口を抱える東南アジア最大の国です。そのうち、15歳以上で働く意思のある人々、いわゆる労働力人口は2023年時点で約1億4,771万人に達しています。実際に就業しているのは約1億3,985万人で、残りの約786万人が失業者として分類されます。

インドネシアの失業率の推移と改善傾向

2023年8月時点の失業率(TPT)は5.32%であり、前年同月の5.86%から着実に改善しています。コロナ禍で一時的に悪化した雇用状況も、ここ2年間で回復基調にあり、失業者数は約56万人減少しました。

インドネシアの産業別の就業構造

インドネシアの産業構造を見ると、農業分野が依然として最大の雇用源です。2023年前半のデータによると、全就業者の約29%が農林水産業に従事しており、都市化が進む中でも農村部では自営農業や農園労働が大きな割合を占めています。

ただし、近年は農業の就業比率がわずかに減少する一方で、サービス業や工業分野の雇用が増加傾向にあります。統計によれば、製造業(工業)が就業者全体の約19%、商業・卸売小売が約18%、サービス・行政が約17%を占めています。特に観光業の回復に伴い、宿泊業や飲食サービス業での雇用が増加しています。

地域ごとの特徴とスキルギャップ

地理的に見ると、ジャワ島に労働力が集中しています。ジャカルタや西ジャワ州などの都市部では労働力人口が多く、求職者数も相対的に多くなっています。一方で、教育水準の地域差によるスキルギャップも見られ、企業にとっては「応募者は多いが、条件を満たす人材が少ない」という質的ミスマッチの課題に直面することがあります。

このような状況に対応するためには、企業が採用基準を明確にし、内定後や入社後の教育体制を整えることが求められます。

若年層の構成と労働市場の活性化

インドネシアは若年人口が多く、毎年大量の新卒者が労働市場に参入しています。大学進学率も上昇しており、大卒者の割合が年々増えています。その結果、若年層の失業率は高めながらも、労働市場自体は非常に活発です。

このような人口構成と教育水準の変化を踏まえ、企業は新卒・若手を積極的に採用するか、即戦力となる中堅層を重視するかなど、自社の事業戦略に応じた採用計画を立てることが重要です。

 

 

インドネシアの地域別・職種別の給与相場

インドネシアの地域別・職種別の給与相場

インドネシアの各地域によって異なる最低賃金

給与水準(賃金相場)は地域や職種によって大きく異なるため、採用活動時に適切な給与提示を行うには相場観を掴んでおく必要があります。インドネシアでは最低賃金制度が整備されており、毎年政府により各州・県市の最低賃金(UMP/UMK)が定められます。

2024年時点の最低賃金の地域格差を見ると、最高位はジャカルタ近郊の工業都市である西ジャワ州ブカシ市の約5.34百万ルピア、次いでカラワン県が5.26百万ルピア、ブカシ県が5.22百万ルピアと続き、ジャカルタ特別州は5.07百万ルピアとなっています。

一方で、最低水準は中部ジャワ州のバンジャルネガラ県で約2.04百万ルピアなど、最低賃金額は地域によって2倍以上の開きがあります。一般に都市部・工業地帯ほど高く、地方農村部ほど低い傾向です。このため、例えばジャカルタで月給600万ルピアが相場の職種でも、ジョグジャカルタでは400万ルピア程度で人材が確保できる場合があります。

業種・職種別に見る給与の違い

職種別に見ても給与相場は異なります。インドネシア統計局の調査によれば、2023年前半時点の全産業平均月収は約3.18百万ルピアでした。ただしこれは都市部と地方、ホワイトカラーとブルーカラーを含めた平均値です。

より具体的に、新卒大卒者の初任給相場を見てみると、大卒新卒(S1)の平均初任給は約4.46百万ルピアというデータがあります。業種によってかなり差があり、金融・不動産・鉱業などの高収入業種では新卒でも月給4.8百万ルピア前後が得られる一方、教育やサービス業などでは1.8〜2百万ルピア台と低めです。

例えば不動産業の新卒平均給与は約4.82百万ルピア、金融保険が4.81百万ルピア、鉱業が4.59百万ルピアと高額であるのに対し、最低は「その他サービス業」で約1.79百万ルピアとなっています。つまり職種・業界によって新卒時点の給与が2倍以上異なることになります。

中途採用における給与相場の傾向

中途採用の場合は、経験年数とスキルによってさらに幅があります。一般的な目安として、スタッフクラス(非管理職)の平均月収はジャカルタで5~8百万ルピア、スラバヤ等で4~6百万ルピア程度といわれています。

エンジニア職では、希少スキルを持つ人材ほど高給になり、たとえば5年以上経験のあるソフトウェアエンジニアやプロジェクトマネージャーなら月給10百万ルピア以上を提示しないと獲得が難しいケースもあります。

また、日系企業特有の需要として日本語人材があります。日本語能力試験N2以上の人材は希少であるため、他の事務職より1~2割ほど給与が高めに設定される傾向があります。

ブルーカラー層の給与と補助的な手当

ブルーカラー労働者の給与は最低賃金が基準となります。多くの製造現場では、未熟練労働者の場合は地域の最低賃金+α程度(月収2~4百万ルピア台)が一般的です。

熟練工やチームリーダー級になるとそれより高く、例えば工場長補佐クラスの現場監督で7~8百万ルピアといった水準もあります。

ただし工場労働者の場合、基本給は抑えめでも残業代や各種手当(皆勤手当、食事手当、交通手当など)がついて実質収入が増えるケースも多く見られます。

また、インドネシアの企業文化として、毎年の定期昇給や宗教手当(THR)などがあるため、入社時だけでなく長期的な処遇を示すことが効果的です。

給与設定における地域差と戦略

地域間の給与差も考慮が必要です。例えば、優秀な人材でも地元の中小企業で低い給与で働いている場合があり、そうした人材に首都圏並みの給与オファーを出すことで、即戦力として採用できることがあります。

反対に、ジャカルタ水準の高給に慣れた人材を地方拠点に招こうとする場合、その地域の相場以上の提示が必要です。

総じて、採用する人材の市場価値を正確に見極め、公平かつ魅力的な給与条件を提示することが、優秀人材確保のポイントになります。

 

 

地域別に見るインドネシアの採用市場

地域別に見るインドネシアの採用市場

インドネシアは地域によって経済状況や人材プールが大きく異なります。まずは、主要エリアごとの採用事情を見ていきましょう。

ジャカルタ首都圏での採用事情

ジャカルタは政治・経済の中心地であり、優秀な人材が集まる一方で、企業間の人材獲得競争が最も激しい地域です。多くの国内外企業の本社が集中し、求人数も多くありますが、その分、候補者の要求水準(給与やキャリアパスなど)も高めです。

ジャカルタには有名大学が多数あり、英語が堪能な大卒人材も豊富です。ただし、失業率は全国平均よりやや高めで、2023年8月時点では約6.5%と報告されています。新卒者や地方からの移住者が職を求めて流入することが、競争の激しさにつながっています。

また、生活費が高いため、給与水準も全国で最も高い水準にあります。ジャカルタでは、ITエンジニアや金融プロフェッショナルなどの高度スキル人材が見つかりやすい反面、優秀層の採用には企業ブランドや待遇面でのアピールが必要不可欠です。

チカラン・ブカシ・カラワンなどの工業団地エリア

ジャカルタ近郊には、チカランやブカシ、カラワンといった工業都市が広がっており、多くの日系製造業の工場が進出しています。これらの地域では、製造業に従事するブルーカラー労働者が豊富で、工場作業員やオペレーター、設備保全技術者などの採用が活発です。

採用方法としては、近隣の職業訓練校や工科系高校(SMK)から新卒者を採用したり、他社工場で経験を積んだ人材を中途採用するケースが一般的です。

ただし、ジャカルタ近郊の工業地帯は最低賃金水準が高く、企業間での人材獲得競争が非常に激しい地域でもあります。2024年の西ジャワ州ブカシ市の最低賃金は月額約5,343,430ルピア、ジャカルタ特別州でも5,067,381ルピアと、全国最高水準に達しています。

このような背景から、優秀な技能工ほど、より良い条件の工場へ転職しやすい傾向があります。企業側としては、給与だけでなく、通勤送迎や食事手当といった福利厚生を充実させることで、人材の確保と離職防止に努めています。

スラバヤでの採用事情

インドネシア第2の都市であるスラバヤ(東ジャワ州)は、東部地域の商業・工業の中心地です。ジャカルタに比べると企業数や給与水準はやや低めですが、ITS工科大学やエアランガ大学などの優良大学があり、地元出身の優秀な大卒人材も多数存在しています。

スラバヤでは、営業職や技術職のほか、日系企業においては日本語ができる管理スタッフの需要もあります。ジャカルタに比べて生活コストが低いため、給与相場も低めに設定されがちですが、東ジャワ州内では最高水準の給与地域です。2024年のスラバヤ市の最低賃金は約4.7百万ルピアと、地方都市としては高い水準にあります。

また、スラバヤの人材は地元志向が強く、「地元で安定した仕事に就きたい」という希望を持つ優秀層も多いため、企業ブランドが信頼されれば、長期的に勤続してもらえる可能性が高くなります。

その他の地方都市での採用

スラバヤ以外の地方都市でも、有望な人材を採用する際には地域特性を考慮する必要があります。

たとえばバンドン(西ジャワ州)は教育水準が高く、近年はIT企業の増加に伴いエンジニア人材も増えています。中部ジャワ州やジョグジャカルタ特別州では生活費や給与水準が比較的低いものの、真面目で勤勉な人材が多い地域として知られ、製造業の拠点進出が進行中です。

ただし、地方都市では高度な専門人材やマネジメント経験者が不足しがちです。そのため、ジャカルタや海外からの人材招致や、自社内での育成を視野に入れることが必要となります。

地方都市で採用活動を行う際には、地域の大学や職業訓練校との連携、自治体が主催するジョブフェアへの参加など、地域密着型のネットワークを活用したアプローチが効果的です。地方に根ざした信頼関係を築くことで、地元人材の採用と定着を進めやすくなります。

 

 

日系企業でよく採用される職種とその特徴

日系企業でよく採用される職種とその特徴

次に、インドネシアの日系企業で特に採用ニーズの高い職種と、その採用ポイントを解説します。業界にもよりますが、以下のような職種が日系企業ではよく募集されています。

  • エンジニア・技術者:製造業では生産技術者、品質管理、機械エンジニア、設備保全担当などの技術系人材が必要です。またIT企業やSI企業ではソフトウェア開発者・システムエンジニアの需要もあります。インドネシア人エンジニアは若く意欲的な人材が増えており、特に工学系大学卒で英語あるいは日本語ができる人材は引く手数多です。応募要件としては関連分野の学士号(S1)や専門知識に加え、日本企業文化への適応力なども重視されます。日本人駐在技術者と協働できるよう、日本語もしくは英語の読解力があると即戦力として歓迎されます。
  • 営業・マーケティング:日系メーカーの現地法人や商社では営業職の採用も盛んです。自社製品をインドネシア国内で販売促進するため、ローカル市場の知見とネットワークを持つ人材が求められます。営業職では大卒以上であることに加え、コミュニケーション能力やバイタリティが重視されます。インドネシアでは対人関係を重んじる文化があるため、顧客企業との良好な関係構築やチーム内の協調性も重要です。近年はデジタルマーケティングやEC関連のポジションも増えており、SNS活用やデータ分析スキルを持つ若手人材のニーズが高まっています。
  • 製造作業員・技能工:工場のオペレーター、組立工、溶接工、フォークリフト運転手など、ブルーカラー層の人材も日系製造業には欠かせません。これらの職種では高い学歴は必須ではなく、職業高校卒や高校卒で十分な場合が多いですが、専門の技能資格(溶接資格やフォークリフト免許など)や実務経験が重視されます。インドネシア人労働者は手先が器用で忍耐強い方も多く、日本企業の生産現場でも活躍しています。募集時には、勤勉さと協調性、基本的な計算・読み書き能力などが評価ポイントとなります。技能工の場合、同業他社との人材争奪も起きやすい分野なので、給与水準や労働環境面で魅力をアピールすることも大切です。
  • 事務・管理部門スタッフ:総務・人事・経理・購買・カスタマーサービスなどのホワイトカラー事務職も、日系企業で定期的に募集があります。これらのポジションでは大卒(経営・会計・行政などの学位)であること、基本的なPCスキル(Excelや会計ソフト等)、そして場合によっては一定の英語力が求められます。特に経理財務では国際会計基準に対応できる人材、人事では労務規制に詳しい人材が求められます。また日系企業特有のポジションとして、日本人駐在員のアシスタントや通訳もあります。日本語学科出身でビジネス日本語ができる人材は貴重で、各社が積極的に採用しています。

以上のように職種ごとに求められるスキルや経験が異なります。採用活動では、職種に応じて選考プロセスや評価基準を最適化することが重要です。例えば技術者なら専門テストやケーススタディ、営業ならプレゼン面接、事務職なら適性検査など、職種に合った方法で候補者の適性を見極めると良いでしょう。

 

 

効果的な採用チャネル(人材募集ルート)

効果的な採用チャネル(人材募集ルート)

インドネシアで優秀な人材にリーチするには、どのような採用チャネル(募集ルート)を使うかが非常に重要です。以下に代表的な採用チャネルとその特徴を紹介します。

大学との連携(リクルートキャンパス)

有名大学の卒業生を採用したい場合、大学のキャリアセンターや就職課と連携し、キャンパスリクルーティングを行うのが効果的です。企業説明会やインターンシップ制度を導入し、在学中から自社に関心を持ってもらう取り組みも広がっています。

インドネシアのトップ大学(例:UI、ITB、UGMなど)では、毎年就職フェアが開催され、ブース出展によって新卒学生を集める企業も多くあります。また、優秀な学生を見極めるためにインターンを通じて試用し、そのまま卒業後に正社員として登用する手法も一般的です。

教育機関との信頼関係を築いておくことで、毎年安定して若手の優秀人材を確保しやすくなります。

オンラインの求人ポータル

現在、インドネシアで最も一般的な採用チャネルはオンライン求人サイトです。代表的なものに、JobStreet、JobsDB、Karir.com、LinkedIn、Glintsなどがあり、ホワイトカラー人材を中心に多数の応募が見込めます。

求人広告を出すと、数日で数百件の応募が集まることもあります。ただしその分、要件に合わない応募も多いため、効率的なフィルタリングや採用管理システム(ATS)の活用が重要です。

求人内容が曖昧だとミスマッチが発生しやすいため、職務内容や応募要件を明確に記載することが求められます。また、求職者は企業の評判やWebサイトをチェックする傾向があるため、会社情報の見せ方やブランディングも応募者の質に影響します。

人材紹介会社・ヘッドハンター

即戦力となる中途人材を探す場合には、人材紹介サービスの活用が有効です。インドネシアにはJACリクルートメント、エンワールド、ロバートウォルターズなどの外資系エージェントのほか、現地系の人材会社も多数存在します。

特にミドル〜シニアクラスのマネージャー職や専門職では、ヘッドハンターを通じた採用が一般的です。企業が自社で募集するよりも、効率的にターゲット人材にアクセスできるメリットがあります。

ただし仲介手数料が発生すること、複数社が同じ候補者を奪い合うためスピード勝負になることには注意が必要です。また、紹介会社によって登録候補者の層が偏ることもあるため、複数社を併用する戦略も有効です。

社員紹介(リファラル採用)

既存社員による知人紹介、いわゆるリファラル採用も、多くの企業で活用されています。社員に友人・知人を推薦してもらうことで、社風に適応しやすく、素行の良い人材に出会える可能性が高まります。

紹介者に対してインセンティブを支給する制度を設けている企業もあります。インドネシアではコミュニティとのつながりが強いため、口コミ型の採用は特にブルーカラーやローカルスタッフの採用で有効です。

ただし、紹介採用だけに頼ると人材の多様性が失われる恐れもあるため、他のチャネルとバランスよく組み合わせて活用することが望ましいです。

SNS・ソーシャルメディア

近年、SNSも採用チャネルとして重要な役割を果たしています。特にLinkedInはプロフェッショナル人材を対象としたプラットフォームとして活用されており、企業ページの発信やダイレクトメッセージによるスカウトで優秀層にリーチできます。

また、FacebookやInstagramで求人情報を掲載したり、業界グループでの投稿を通じて人材募集を行う企業もあります。若年層へのアプローチにはTikTokやTelegramといった新興メディアを活用し、企業文化を発信して採用サイトへの流入を促す工夫も広がっています。

SNSを使う際は、企業の雰囲気や魅力が伝わるビジュアルコンテンツを用意し、受動的な求職者にも印象を残すことがポイントです。

職業訓練校・専門学校との連携

ブルーカラー人材や特定技能人材の採用では、職業訓練校(Balai Latihan Kerja)や高等専門学校との提携が非常に有効です。企業が訓練校と連携し、カリキュラムを共に設計したり、実習生を受け入れることで、企業が求めるスキルを持つ卒業生を優先的に確保できます。

たとえば、溶接技術者や自動車整備士が必要な場合には、関連する職業高校(SMK)に奨学金制度を設けることで、卒業後に入社してもらう仕組みを構築できます。

これは地域に根ざした人材育成につながるだけでなく、企業イメージの向上にも貢献します。また、地方自治体や労働局が主催するジョブフェアや合同面接会に参加すれば、コストを抑えつつ地元志望の人材に直接会うことが可能です。

採用チャネルを複数組み合わせる意義

以上のように、採用チャネルにはそれぞれの特徴があります。効果的な採用を実現するためには、ターゲットとする人材層や職種に応じて、複数のチャネルを戦略的に組み合わせることが鍵となります。

特にインドネシアでは、人脈やコミュニティの重要性が高く、大学のOB会や業界団体、地方自治体との連携なども、採用活動を成功に導く重要な要素です。自社のニーズと人材市場の特性をしっかりと見極め、最適なチャネル設計を行うことが求められます。

 

 

ホワイトカラーとブルーカラー:求める人材像の違い

ホワイトカラーとブルーカラー:求める人材像の違い

インドネシアで人材採用を行う際には、ホワイトカラー(事務系管理職層)とブルーカラー(労働作業層)で、理想とされる人材像や必要とされる条件が大きく異なります。以下では、それぞれの特徴と採用のポイントについて詳しく解説します。

インドネシアのホワイトカラー系人材の特徴と要件

ホワイトカラー系の人材とは、管理職候補、専門職、事務職などを指し、通常は大学卒(S1)以上の学歴を持つ若者から中堅層が対象となります。都市部にいる優秀なホワイトカラー人材は英語に堪能な場合が多く、中には外資系企業での勤務経験を持つ人もいます。

特に日本企業にとっては、日本人と直接コミュニケーションが取れる人材が重宝されるため、英語もしくは日本語が話せることが大きな強みになります。

さらに、ホワイトカラー層には専門的な知識やスキルが求められます。たとえば、会計士であれば国際会計資格、IT職であればプログラミングやネットワークの知識などのハードスキルが必要です。それに加え、リーダーシップや問題解決力などのソフトスキルも評価対象となります。

インドネシアのホワイトカラー人材はキャリア志向が強く、自己成長への意欲も高いため、採用段階で将来的なキャリアパスや研修制度について詳しく質問されることが多いのも特徴です。

インドネシアのブルーカラー系人材の特徴と要件

ブルーカラー系の人材とは、製造ライン作業員、現場技術者、配送ドライバーなど、主に現場業務に従事する層を指します。学歴としては、高卒(SMA/SMK)や短期大学卒が中心で、専門学校や職業訓練校で技術を身につけた人も多く含まれます。

語学は必須ではありませんが、現場によっては安全標識を理解する程度の簡単な英語ができると望ましい場合もあります。

ブルーカラー人材で最も重視されるのは、実務スキルと勤怠の確実さです。例えば、機械オペレーターの場合は機械の操作経験や関連資格、電気工事系の職種であれば配線図を読めるスキルなどが求められます。

また、インドネシアでは若年層のブルーカラー労働者も多く、企業側は長く安定して働いてくれる誠実な人柄やチームワーク、身体的なスタミナなども重視しています。

待遇に対する期待の違い

ホワイトカラーとブルーカラーでは、待遇に対する期待値にも明確な違いがあります。

ホワイトカラー層は、基本給に加えて職務手当、医療保険、通勤手段や昼食の提供、そして昇進に伴う役職手当など、キャリアの進展に応じた待遇改善を重視する傾向があります。

一方、ブルーカラー層はまず第一に、最低賃金以上の安定した給与を望んでおり、残業代や深夜手当が正しく支払われること、安全で整った作業環境、社食や送迎といった福利厚生の充実を重視しています。

採用チャネルや求人票の工夫

このように、ホワイトカラーとブルーカラーでは求められる学歴・語学・スキルが異なるため、採用チャネルや求人票の作り方も変える必要があります。

ホワイトカラー向けには、オンラインの求人サイト、LinkedIn、専門の人材紹介会社の活用が有効です。募集要項には職務内容や必要なスキル、求める人物像を明確に記載し、キャリアアップの可能性も提示すると効果的です。

ブルーカラー向けには、地域の求人掲示板、職業訓練校との提携、社員紹介制度など、より現場に密着した採用ルートが効果を発揮します。また、待遇面や働きやすさが伝わるよう、福利厚生や職場環境の情報を丁寧に伝えることが重要です。

インドネシアの求職者は、ホワイトカラー・ブルーカラー問わず、人間関係の良さや職場の雰囲気を重視する文化があります。そのため、「アットホームな職場」「成長のチャンスがある」などのキーワードを打ち出すことで、応募者の興味を引きやすくなります。

 

 

インドネシアの新卒採用と中途採用のポイント

インドネシアの新卒採用と中途採用のポイント

インドネシアで人材を獲得する際、新卒者(Fresh Graduate)を採用するか、もしくは即戦力となる中途経験者を採用するかによって、戦略や留意点が異なります。それぞれのメリット・デメリットや採用時のポイントを整理しておきましょう。

インドネシアの新卒採用の特徴とメリット

インドネシアでは、通年で新卒者の採用が行われていますが、大学の卒業時期(多くは毎年中頃と年末)に合わせて、採用活動が活発になります。

新卒採用の主なメリットは、若く柔軟で、新しい知識に明るい人材を獲得できることです。新卒者はまだ仕事のやり方に染まっていないため、企業文化や価値観を吸収しやすい傾向があります。特にデジタルネイティブ世代である彼らは、最新のITツールやSNSの活用にも長けており、従来型の社員にはない視点やアイデアをもたらしてくれる存在です。

また、インドネシアの若者は初めての就職先に対して高い忠誠心を持つ場合もあり、最初に就職した会社への愛着や恩義から、一生懸命働き、成長しようとする姿勢が見られることも少なくありません。

新卒採用の課題と対処法

一方で、新卒者には職務経験がないため、即戦力としての期待は難しいというデメリットがあります。基本的なビジネスマナーや業務スキルの習得には時間がかかるため、入社後の研修や育成にかかるコストは避けられません。

また、仕事の進め方に不慣れなため、最初のうちは生産性が低かったり、ミスが発生しやすかったりする点にも注意が必要です。このため、新卒者を採用する際は、計画的な研修プログラムやOJT体制を事前に整備しておくことが重要です。

とはいえ、インドネシアの若手人材は学習意欲が高く、新しい環境への適応も比較的早いため、しっかりと指導すれば短期間で戦力化できるケースも多く見られます。育成前提でポテンシャルに賭けることが、新卒採用を成功させるカギとなります。

中途採用の特徴とメリット

中途採用(経験者採用)は、必要なスキルや経験を備えた人材を素早く確保できる方法です。最大のメリットは、即戦力になりやすい点にあります。特定分野の専門知識や実務経験を持つ人材であれば、入社後の指導期間を短縮でき、生産性の高い仕事ぶりが期待できます。

たとえば、経験豊富な会計士を採用すれば、複雑な財務処理も短期間で引き継ぎ可能ですし、熟練したエンジニアであれば、生産現場での問題解決にも即対応できるでしょう。

さらに、中途入社者は以前の職場で得た知見や業界ネットワークを自社にもたらすことができ、新たなノウハウや人脈を企業にもたらしてくれる点でもメリットがあります。

中途採用の注意点とリスク

中途採用にはいくつかの注意点もあります。まず、経験者は前職のやり方や固定観念が染み付いている場合があり、新しい企業風土への適応に時間がかかることがあります。特にベテランの場合、「自分のやり方が正しい」という意識が強く、上司からの指示やフィードバックを受け入れにくい場合もあります。

また、中途入社者同士や既存社員との間で、仕事の進め方の違いによる摩擦が生じるリスクもあります。さらに、優秀な経験者ほど他社からの引き合いも多いため、採用競争が激化し、高待遇が求められる傾向があります。

希望する人材を確保するには、市場相場よりも高い給与オファーを提示したり、将来のキャリアアップの可能性を明示するなどの工夫が必要となります。また、経験者は不満を感じるとすぐに転職する傾向もあるため、入社後のフォローやモチベーション維持も重要です。

採用戦略のバランスと実践例

総じて、新卒と中途のどちらが良いかは、企業の成長段階や事業戦略によって異なります。

たとえば、新規進出でまずは事業基盤を整える段階であれば、即戦力となる経験者を中心に採用して早期に業務を軌道に乗せ、その後、若手を新卒採用で育成していく方法が効果的です。

逆に、長期的な組織づくりを重視する企業であれば、早い段階から若手を採用し、企業文化に馴染ませながら育てていくアプローチが有効です。

近年では、インドネシアの大手企業を中心に、マネジメントトレーニープログラム(新卒総合職採用)を導入する例も増えています。新卒と中途の両方をうまく組み合わせ、自社の目的や成長ステージに合った採用計画を立てることが、成功のポイントです。

 

 

日本とインドネシアの採用文化・慣習の違い

日本とインドネシアの採用文化・慣習の違い

日本とインドネシアでは、働き方や採用にまつわる文化・慣習に違いがあります。外国人マネージャーがインドネシアで採用活動を行う際に戸惑いやすい点を挙げ、その背景を理解することが重要です。

求人・採用プロセスの違い

日本では、新卒一括採用、筆記試験、複数回の面接など、フォーマルかつ長期的な選考が一般的です。一方、インドネシアでは企業ごとに採用方法が異なり、特に即戦力採用の場合は、応募から内定までが数週間以内で完結することも少なくありません。

求職者側も複数の企業を同時に受けることが当たり前であるため、採用プロセスに時間がかかると、他社に流れてしまう可能性があります。日本本社の稟議に時間をかけすぎず、オンライン面接の導入や現地担当者への権限委譲など、柔軟でスピーディな対応が求められます。

また、日本では総合職として職種を限定せずに採用し、入社後に配置転換を通じて育成する方法が取られることが多いですが、インドネシアでは職務内容を明確にしたポジションでの募集が一般的です。応募者も自らの専門に合致した職務にしか応募しない傾向があるため、募集時にはできるだけ具体的な役割を提示することが重要です。

労働観・キャリア観の違い

日本では、1つの会社に長く勤めて出世していくことに価値があるとされる文化が根強く残っていますが、インドネシアではより良い条件やキャリアアップの機会を求めて転職することが一般的です。

特に若年層ほど転職に対して前向きで、「今の会社に満足できなければ別の会社へ」という発想が強く、定年まで一社に勤める人は少数派です。これは、インドネシアの優秀な人材ほどキャリアアップに積極的であることの裏返しでもあります。

彼らは、昇進や研修制度、役職のタイトルなど「目に見える評価」を重視する傾向があり、たとえば3年目でリーダー職に昇格させるといったような、分かりやすいキャリアの節目がモチベーションにつながります。

また、家族志向が強く、ワークライフバランスを重視する文化もあるため、残業が多く、有給が取りづらい環境は敬遠される傾向にあります。日本的な長時間労働や厳格なルールを押し付けず、働きやすい環境を整えることが、優秀人材の定着には欠かせません。

コミュニケーションと文化の違い

日本のビジネス文化は上下関係や礼儀を重視し、詳細な指示と計画性が求められます。一方でインドネシアでは、人間関係の調和や雰囲気の良さが重視されます。

そのため採用面接においても、堅苦しい雰囲気よりも雑談を交えた柔らかい雰囲気の方が好まれます。また、日本では応募者の課題や弱点を深掘りする面接が行われることがありますが、インドネシアではポジティブな側面を引き出す質問の方が候補者の魅力を見極めやすくなります。

面接の中では、家族構成や趣味といったプライベートな話題が出てくることもあります。インドネシアの若者は家族の期待を背負っていることが多く、「親を安心させたい」といった動機で就職を希望するケースもあるため、候補者の価値観や背景を理解しようとする姿勢が大切です。

忠誠心とロイヤリティの考え方

日本では会社に忠誠を誓い、与えられた業務に尽くす姿勢が美徳とされていますが、インドネシアではまず自分や家族の幸せが最優先されます。

インドネシア人は、企業に尽くすというよりは、企業がどれだけ自分の成長機会や報酬を与えてくれるかによってロイヤリティの度合いを決める傾向があります。

しかしそれはネガティブなことではなく、企業側がしっかりと応えれば、高いロイヤリティを引き出すことも十分に可能です。たとえば成果に応じた評価や昇給、家族を招待できる社内イベント、誕生日の特別休暇など、細かな配慮が「この会社は自分を大切にしてくれている」と実感させ、結果として長期的な貢献につながります。

採用活動で求められる姿勢

このように、日本とインドネシアの間には採用や労務管理に関する文化的なギャップがあります。現地の価値観に寄り添い、相手の考え方やニーズを尊重しながら採用活動を進めていくことが重要です。

「郷に入っては郷に従え」という姿勢を持つことで、現地人材との信頼関係が築かれやすくなり、組織の安定と成長につながっていきます。

 

 

採用・雇用に関わるインドネシアの労働法・規制

採用・雇用に関わるインドネシアの労働法・規制

インドネシアで人材を採用・雇用する際には、現地の労働法規制を理解し、遵守することが不可欠です。以下に、企業が特に注意すべき主要なポイントを紹介します。

インドネシアの雇用契約の種類

インドネシアの雇用契約には、大きく分けて「期間の定めのない常用契約(PKWTT)」と「有期契約(PKWT)」の2種類があります。有期契約社員(契約社員)は、以前は最長3年間とされていましたが、法改正により柔軟な運用が可能になっています。

ただし、2024年10月の憲法裁判所の判断により、PKWTの最長期間は5年までと明確にされており、それを超える場合は無期雇用に切り替える必要があります。また、有期契約には原則として試用期間を設けることはできません。一方、無期雇用契約の場合は、最大3か月までの試用期間が認められています。

採用時には、契約形態ごとに異なる規定を理解し、適切な雇用契約を締結することが重要です。

インドネシアの最低賃金(UMR/UMP/UMK)

インドネシアでは、地域ごとに最低賃金(UMR・UMP・UMK)が定められており、すべての企業に遵守が義務付けられています。最低賃金はインフレ率や経済成長率に連動して毎年見直され、2024年は全国平均で約5%の引き上げとなりました。

一般的に、この最低賃金は勤続1年未満の労働者に適用されますが、多くのブルーカラー層はこの範囲で雇用されています。地域間格差が大きいため、例えばジャカルタでの給与水準をそのまま地方に適用すると、過剰な水準になる場合があります。逆に、地方の給与水準でジャカルタに適用すると、最低賃金未満となるリスクがあります。

勤務地ごとに定められた法定の最低賃金を確認し、個別に対応することが求められます。

社会保障(BPJS)への加入

インドネシアの企業は、すべての従業員を「BPJS Ketenagakerjaan(労働社会保険)」および「BPJS Kesehatan(国民健康保険)」に加入させる義務があります。これらには、労災保険、死亡保険、老齢年金、失業保険、そして基本的な医療保障が含まれます。

外国人であっても、6か月以上の勤務が予定されている場合には加入が義務付けられています。保険料は企業と労働者がそれぞれ負担し、給与から控除して毎月納付する必要があります。加入証の発行や加入処理の遅れが従業員の不信につながるため、採用時に確実に手続きを進めることが求められます。

宗教的祝祭日手当(THR)

インドネシアでは、ラマダン明けやクリスマスなどの主要宗教祝祭日にあたって、従業員に対して1か月分の給与に相当する手当(THR)を支払う義務があります。これは勤続年数にかかわらず適用され、1年未満の従業員にも在籍期間に応じて按分支給される仕組みです。

THRの支給は法律で義務付けられており、支払わなかった場合は労働違反とみなされ、処罰対象になるため注意が必要です。

各種手当と福利厚生

インドネシアの企業では、基本給に加えて通勤手当、食事手当、皆勤手当、家族手当、職務手当など、さまざまな手当が支給されるのが一般的です。日系企業でも現地法人ではこれらの制度を導入しているところが多くあります。

また、管理職に社用車を貸与する、技能職に技能手当を支給する、社員ローン制度を設けるなど、日本ではあまり見られない福利厚生も一般的です。宗教的配慮として、礼拝の時間を確保する取り組みなどもあります。

これらの手当を最低賃金に含められるかどうかなど、制度上の細かい部分については、就業規則の策定時に専門家の意見を取り入れることが望まれます。

解雇・退職に関する規定

従業員を解雇する場合には、法律に基づいた手続きが必要であり、正当な退職金(セヴァランス)の支払いも義務付けられています。勤続年数に応じて退職金の基準が決まっており、例えば5年で5か月分、10年で8か月分といったように累進的に増えていきます。

不当解雇と見なされると労働裁判に発展することもあるため、業務成績不良や能力不足などを理由とする場合でも、まずは是正指導や配置転換といった段階を踏んで対応することが重要です。

また、自主退職の際にも未消化の有給休暇の清算や、退職証明書の発行など、適切な事務処理を行う必要があります。有期契約(PKWT)の場合でも、契約満了時には法律に基づく満了手当が必要となることを忘れてはなりません。

日系企業では、日本本社の就業慣行や規定との違いに戸惑うことも多く見られます。しかし、現地法令の遵守を徹底し、インドネシアの文化や制度に適応した労務管理体制を構築することで、長期的かつ円滑な事業運営が実現できます。現地の人事スタッフや法律顧問との連携を通じて、トラブルのない雇用関係を築いていくことが何より重要です。

採用後の定着と人材育成のポイント

採用はスタートであり、ゴールではありません。採用した優秀な人材に長く力を発揮してもらうためには、入社後の定着支援と育成が欠かせません。インドネシア人社員がやりがいを持って働き続けられるよう、以下の点に注意しましょう。

モチベーションを維持する

インドネシアの従業員は、給与や肩書きだけでなく、職場での承認や達成感にも強く動機づけられます。良い成果が出たときには、その都度称賛や表彰を行い、直接フィードバックを伝えることが大切です。

日本的な「できて当たり前」というスタンスは逆効果になる場合があります。小さな昇給やボーナスであっても、こまめにインセンティブを与えることで、日々のモチベーションを高く保つことができます。

さらに、キャリアパスを明確にし、「3年後には主任」「5年で〇〇マネージャー」といった目標を共有することで、本人の成長意欲を引き出すことができます。定期面談の場を設け、強みや期待、成長の方向性について話し合うことも有効です。

キャリア観への配慮

インドネシアでは、役職名や昇進の有無がその人の社会的ステータスと直結していると考えられています。そのため、実際の仕事内容が変わらなくても、勤続年数やスキルに応じて適切な肩書きを与えることは、社員のロイヤリティを高めるうえで効果的です。

例えば、日本企業では「シニアスタッフ」といった曖昧な呼称が一般的ですが、インドネシアでは「スーパーバイザー」や「マネージャー補佐」といった明確な役職名が好まれます。

学習意欲が高い社員には、資格取得支援や外部研修の参加機会を提供し、「この会社で働き続ければ自分の市場価値が上がる」と感じさせる工夫が必要です。

退職リスクへの対応

どれだけ良い環境を整えていても、優秀な人材がより良い条件を提示する他社に移るリスクは常にあります。特に有能な人ほど複数の企業から声がかかるため、重要なポジションは常に複数人でバックアップできる体制を整えておくことが重要です。

また、「退職したい」という意志を示した社員に対しては、カウンターオファー(昇給・異動提案など)を検討する余地もあります。ただし、無理に引き留めても逆効果になることがあるため、本人の意向を尊重し、円満に送り出すことが大切です。

離職後も良い関係を維持しておけば、将来戻ってきたり、優秀な人材を紹介してくれる可能性もあります。

社内コミュニケーションとチームづくり

インドネシアの職場文化では、和やかな人間関係が重視されます。上司が威圧的だったり、社内に対立関係があると、離職につながりかねません。

日本人管理者は常に穏やかでフラットな態度を意識し、スタッフ同士の調和を促すことが求められます。月例会でのランチミーティングや誕生日祝い、ファミリーデーなど、定期的な社内イベントを開催することで、チームの一体感を高めましょう。

社員が「この職場は家族のような場所だ」と感じることができれば、多少の不満があっても簡単には辞めなくなります。

研修と人材育成

採用した人材の能力を引き出すには、計画的なトレーニングの提供が欠かせません。新卒者にはOJTと並行して、ビジネスマナーや基礎スキルの研修を実施し、若手社員には専門スキルや語学研修など、レベルに応じた教育プログラムを整備しましょう。

また、将来のマネージャー候補には、リーダーシップ研修やプロジェクトマネジメントなどの育成が効果的です。最近ではeラーニングを活用した自主学習支援も普及しており、社員のエンゲージメント向上にもつながります。

社員が「この会社は自分の成長を支援してくれている」と実感できれば、会社への愛着も高まり、離職率の低下にも寄与します。

新卒一括採用と入社時期の違い

日本では毎年4月に一斉に新卒社員が入社する「新卒一括採用」が主流ですが、インドネシアでは統一された入社時期は存在せず、大学の卒業時期も学部や学校によってばらつきがあります。

そのため、新卒者は年間を通じて分散して就職活動を行うのが一般的です。企業側も柔軟な採用体制と、通年でのオンボーディング体制を用意しておくことが求められます。

 

 

インドネシアのよくある採用課題とその対処法

インドネシアのよくある採用課題とその対処法

最後に、インドネシアで人材採用を行う際によく直面する課題と、その具体的な対処法について紹介します。

応募者の質の見極め

オンライン求人では応募が殺到する一方で、「学歴や資格は良いが実務能力が伴わない」といったミスマッチが多発します。書類選考だけでは本当に求める人材を見極めることが難しい場面も少なくありません。

これに対処するには、筆記試験や実技試験を組み合わせたり、面接回数を増やして慎重に見極めることが有効です。また、求人票に職務内容や必要なスキル要件を具体的に記載することで、ミスマッチの応募を減らすことができます。

企業知名度の不足

新しく進出した日系企業や中小企業の場合、求職者からの認知度が低く、応募数が伸びにくいという課題があります。インドネシアでは安定志向の傾向が強く、名前を知られていない企業は敬遠されがちです。

この課題には、採用ページやSNSを活用して企業の魅力を発信することが効果的です。社内の雰囲気がわかる写真や動画、社員の声を掲載するほか、給与レンジや福利厚生を明示することで安心感を与えることができます。

応募者の「ゴースト現象」

採用担当者がよく直面するのが、候補者が急に連絡を絶つ「ゴースト現象」です。応募後に音信不通になる、内定承諾後に初日に現れない、といった事例も少なくありません。

これを防ぐには、選考スピードを上げることが第一です。さらに、最終面接後には口頭で意思確認を行い、メールやSNSでこまめに連絡を取り入社までのモチベーションを維持することも大切です。

入社書類を早めに記入してもらうなど、心理的な拘束力を高める工夫も効果的です。万が一に備えて、次点候補にも声をかけておくなど、リスクヘッジの体制も整えておきましょう。

語学・コミュニケーションのギャップ

日本人マネージャーとインドネシア人スタッフの間で、言語や意思疎通のギャップが課題になることがあります。英語やインドネシア語でのコミュニケーションが基本ですが、語学力のレベルには個人差があります。

採用時には語学レベルを確認し、英語が必須の場合はTOEICスコアなど客観的な基準を用いると良いでしょう。通訳を配置するほか、重要な情報は二か国語で文書化するなどの配慮も必要です。

また、日本語での業務を希望する場合は、日本語教育の支援を提供したり、日本語ができる人材をあらかじめ育成する方法もあります。反対に、日本人マネージャーがインドネシア語を学ぶ姿勢を見せることで、現地社員との信頼関係が深まります。

労務トラブルの防止

インドネシアでは労働組合の活動や労務トラブルが発生する可能性もあります。解雇や残業代未払いが問題になると、労働局に通報されるケースもあります。

トラブルを防ぐには、雇用契約や就業規則を明確に整備し、適正な労務管理を行うことが基本です。採用時に条件を明文化し、両者が署名することで後の誤解を減らせます。

また、社員の不満を日頃から把握し、早めに対応することも重要です。残業が多い部署には人員を補充する、ハラスメントの訴えには即対応するといった「早期対応」が、重大な問題の回避につながります。

 

 

まとめ

インドネシアでの人材採用は、一見すると人が豊富に見える一方で、「条件に合う人材がいない」「すぐ辞めてしまう」といった課題が多く存在します。本記事で紹介したように、採用を成功させるためには、地域・職種別の給与相場やスキル傾向を理解したうえで、採用チャネルの選定、文化的配慮、法律遵守、入社後のフォロー体制までトータルに設計することが鍵となります。

特に、

  • ジャカルタなど都市部と地方では人材の質と採用戦略が大きく異なる
  • ホワイトカラーとブルーカラーでは動機・価値観も大きく違う
  • 「採用後の育成と定着」が長期的な成果の分かれ目となる

という点を意識し、自社にとって最適な人材戦略を構築してください。現地市場に合わせた柔軟なアプローチこそが、インドネシアでの持続的な事業成長を支える基盤となります。

 

 

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本記事で使用した単語の解説

  • ホワイトカラー:事務職・管理職・専門職など、オフィスで働く知的業務従事者の総称。
  • ブルーカラー:製造業・建設業など、現場での作業を中心とする技能職労働者の総称。
  • UMP(Upah Minimum Provinsi):州単位で定められた最低賃金。
  • UMK(Upah Minimum Kabupaten/Kota):市・県単位で定められた最低賃金。
  • PKWT:有期雇用契約(Perjanjian Kerja Waktu Tertentu)。
  • PKWTT:無期雇用契約(Perjanjian Kerja Waktu Tidak Tertentu)。
  • BPJS:インドネシアの社会保障制度(健康保険・労働保険)。
  • THR(Tunjangan Hari Raya):宗教的祝祭日に支給されるボーナス。
  • リファラル採用:社員による知人紹介を通じた人材採用方式。
  • ゴースト現象:応募者や内定者が急に連絡を絶ち、音信不通になる現象。

 

 

FAQ(よくある質問)

Q1. インドネシアでの採用に適した時期はありますか?
A1. 新卒は大学の卒業シーズン(6月・12月)が中心ですが、年間を通じて採用活動が可能です。中途採用は常時ニーズがあります。

Q2. ジャカルタと地方都市での人材の質に違いはありますか?
A2. はい。ジャカルタは高学歴・語学力のある人材が多いですが、競争も激しいです。地方では待遇面で満足すれば長期勤務する傾向が強く、育成に向いています。

Q3. 英語や日本語を話せるインドネシア人は多いですか?
A3. 英語は都市部の大学卒業生であればある程度通じます。日本語人材は限られており、主に日本語学科出身者や元実習生に多く見られます。

Q4. 日本人管理者として注意すべき文化的違いは?
A4. 指示命令型よりも対話・共感型のコミュニケーションが好まれます。また、宗教や家族、肩書きへの配慮が非常に重要です。

Q5. 離職率を下げるにはどうしたらよいですか?
A5.
昇進の見える化、モチベーション管理、適切な役職名の付与、柔軟な勤務制度、成長機会の提供が効果的です。給与だけでなく、働きやすさも重要です。

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