
5月 3, 2025 • インドネシア, システム開発
4月 3, 2025 • インドネシア, 教育 • by Yutaka Tokunaga
先日インドネシア・スラウェシの田舎の子供に算数を教えていてインドネシアではジャリマティカという指(Jariはインドネシア語で指)を使った計算方法で子供が算数の問題を解く事を知りました。
子供はジャリマティカで足の指まで使って問題を解こうとして、数字が20以上になると、僕の朝まで使って問題を解こうとしており、驚きました😅
元々このジャリマティカは算数に苦手意識を持つ子どもたちに、楽しく直感的に計算を学ばせることを目的として考案されたようです。
ジャリマティカ(Jarimatika)
インドネシアでは多くの小学生が筆算や暗算でつまずいてしまうことがあり、特に地方や農村部では計算教育が十分でないことが問題でした。そのため、道具を使わず「自分の指だけで」簡単に足し算・引き算・掛け算ができる方法としてジャリマティカが開発されました。
私はインドネシアで長年教育事業をしていますが、残念ながらインドネシアの子供達の基本的な算数の計算力は日本人の子供と比べて弱いと感じています。
私の考えではジャリマティカの足し算の計算には以下の様なメリット、デメリットがある様に感じます。
まず、良い点として感じたのは、指を使うことで数を“体感”できるという点です。
数字が苦手な子どもでも、指を使って視覚的・身体的に数を理解できるため、抽象的な数の概念がつかみやすくなるのは大きなメリットだと思います。特に低学年の子どもにとっては「計算=楽しいもの」と感じさせる導入としては非常に効果的だと感じました。
また、道具が要らず、どこでもできるというのも、教育環境が十分でない地域では大きな利点です。教材がなくても、自分の体だけで学べるのは、発展途上国の教育現場においては意義深いといえます。
一方で、問題もあります。
指の数に限界があるため、10や20を超えるような計算では不自然な動きや無理な工夫が必要になります。冒頭で紹介したように、子どもが足の指まで使って解こうとする様子には正直驚きました。
また、ジャリマティカに慣れてしまうと、指を使わない計算や筆算、暗算に移行するのが難しくなる可能性があります。
さらに、計算の仕組み自体を理解せずに、動作だけで答えを導き出す子も少なくないため、「なぜその答えになるのか?」という根本的な理解を伴わないケースも見受けられました。
私は、ジャリマティカは“入り口”としてはとても良いメソッドだと思っています。しかし、それだけに頼ってしまうのではなく、段階的に抽象的な思考や暗算・筆算などへのステップアップが必要です。
インドネシアでは算数が嫌いな子どもが多いと感じますが、その背景には、ジャリマティカのような初歩的な計算方法にとどまり、そこから「3桁の足し算」や「掛け算」や「割り算」といったより高度な概念にうまく進めないことがあるのではないかと思います。
本来、算数の力とは、足し算・引き算から始まり、徐々に掛け算や割り算、そして図形や文章題へとステップアップしていくべきものです。しかし、ジャリマティカはあくまで「指を使った足し算・引き算」に特化したメソッドであり、抽象的な思考力や数の構造を理解する力を養うには限界があるのです。
特に、掛け算や割り算の概念は「グループに分ける」「何倍になる」といった論理的な理解が必要になります。ところが、ジャリマティカの指計算ではそれらを視覚的・身体的に表現するのが難しく、その段階に進む前に「算数は難しい」「わからない」という苦手意識が定着してしまっているケースが多いのではないでしょうか。
さらに、教師や親がその変化に気づかず、子どもが「指だけではもう無理…」と感じているのに、別の方法や考え方を教えられないままにしてしまうと、算数に対する自信を失い、学ぶこと自体が嫌になってしまうという悪循環が起こります。
ジャリマティカは算数の入口として良いと思いますが、次のレベルとして田舎の子供達みんながが掛け算や割り算、分数を得意になり、算数が好きになり、インド人や日本人の様に基本的な計算力や論理的思考を身につけられるにはどうすればいいのでしょうか。現実には田舎では教員や両親の教えるレベルも低く子供達は優れた人から教育を受けることが出来ていないという問題があります。
改めて教育の難しさについて考えさせられる体験でした。
こういう田舎の子供に何とか基本的な計算力や論理的思考能力を身につけてあげたいです