2月 23, 2026 • インドネシア • by Yutaka Tokunaga

インドネシアではラマダン前に倒産や解雇が増えるという都市伝説は本当か!?

インドネシアではラマダン前に倒産や解雇が増えるという都市伝説は本当か!?

インドネシアでは「ラマダン(断食月)前になると倒産や解雇(PHK)が増える」という話がしばしば語られます。これは単なる都市伝説なのでしょうか。それとも、経済構造に根差した現実なのでしょうか。

本記事では、大手企業の破産事例や解雇データをもとに、この現象の実態を整理します。また、宗教ボーナス(THR)の支払い時期との関係、ラマダン・レバラン特有の消費構造が企業の資金繰りに与える影響についても多角的に検証します。

ラマダン前の倒産・解雇は本当に多いのか?

ラマダン前の倒産・解雇は本当に多いのか?

2025年初頭、インドネシアの大手繊維企業であるPT Sritexが破産し、約10,665人の従業員が解雇されました。この出来事はラマダン直前に発生し、多くの労働者が経済的な困難に直面しました。また、同時期に他の企業でも解雇が相次ぎ、全国で77,965人の労働者が職を失ったと報告されています。

2026年にはインスタントラーメン「Mie Sedaap(ミーセダップ)」の製造メーカーであるPT Karunia Alam Segar (KAS)が、従業員400人の解雇(PHK)や一時帰休を行っているという噂が広がり大きな話題となりました。(その後Mie Sedaapを製造するPT KAS(ウィングス・グループ傘下)は、グレシック工場での400人の解雇および一時帰休の事実を否定しました。)

解雇のタイミングとTHR(宗教ボーナス)の関係

解雇のタイミングとTHR(宗教手当)の関係

インドネシアの労働法では、企業はラマダン終了前に従業員にTHR(宗教手当)を支払う義務があります。しかし、解雇がラマダン前に行われた場合、従業員はTHRを受け取る権利を失うことがあります。このため、一部では企業がTHRの支払いを回避するために、意図的にラマダン前に解雇を行っているのではないかという疑念が生じています。

ラマダン・レバランの影響

ラマダン・レバランの影響

需要が増加して仕入れ、資金繰りが苦しくなるケース

ラマダン期間中、消費者の需要が増加する一方で、中小企業(UMKM)は供給面での課題に直面しています。原材料の価格上昇や物流の混乱、資金繰りの難しさなどが影響し、需要に応えきれないケースが多く見られます。これにより、売上の増加が期待される時期にもかかわらず、経営が悪化するという「ラマダンのパラドックス」が生じています。

 

売り上げが下がり資金繰りが苦しくなるケース

一方で、ラマダンやレバランの期間中に売上が減少する業界も存在します。特に、教育機関やクリニックなどのサービス業、B2B系のIT開発、コンサルティング、士業などでは、クライアント企業の業務がラマダン期間中に停滞することが多く、プロジェクトの進行が遅れる傾向があります。また、クライアント企業の財務状況や支払いスケジュールの変更により、請求書の支払いが遅れることもあり、これが資金繰りに影響を与える可能性があります。

経営者の倫理観の問題は?

経営者の倫理観の問題は?

ラマダン前の倒産や解雇には、資金繰りの悪化や需要変動といった現実的な経営理由が存在するケースも少なくありません。しかし、この現象をすべて「やむを得ない判断」として受け止めてよいのかは慎重に考える必要があります。

一部の労働団体や専門家は、THR(宗教手当)の支払い時期を避けるような形で解雇が行われている可能性を指摘しています。制度上の抜け道を利用した対応が仮に存在するのであれば、それは合法であっても倫理的に許容されるとは限りません。

実際に私も知り合いの飲食店経営者の方が毎年ボーナス前にあえて社員を解雇していると聞いて驚いたことがあります。

企業経営には収益性だけでなく社会的責任も求められます。特にラマダンやレバランは家族支出が増える重要な時期であり、その直前に職を失うことは労働者に大きな影響を与えます。

経営の合理性と倫理性をどのように両立させるのかは、これからこの国で事業を続けるすべての企業に共通する課題と言えるでしょう。

 

 

まとめ

私もインドネシアで経営する日本人の一人として、ラマダン、レバラン期間は売り上げが下がるビジネスをしている関係で、THRの支払いは経営的には厳しいと感じることもあります。しかし、これは企業の義務として、その他の季節の売り上げ利益も考慮して、THRの遅配や解雇などが生じないように心掛けています。

ラマダン前の倒産や解雇の増加は、経営者の倫理観の欠如だけでなく、経済的な困難や制度的な課題が複雑に絡み合った結果と考えられます。企業の持続可能な経営と労働者の権利保護のバランスを取るためには、政府、企業、労働者が協力して制度の改善や透明性の向上に取り組む必要があります。

 

この問題に対し、皆さんはどのように感じ、どのような対応が必要だと考えますか?

インドネシアで経営する企業の経営者として、または従業員として、ラマダン前の経済活動や労働環境についてのご意見や経験をぜひお聞かせください。

 

 

 

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本記事で使用した単語の解説

PHK
Pemutusan Hubungan Kerjaの略。日本語では「解雇」や「雇用契約の終了」を意味する。インドネシアでは景気悪化や企業破産時にニュースで頻繁に使われる用語。

THR
Tunjangan Hari Rayaの略。宗教手当と訳される。ラマダン終了後のレバラン前に企業が従業員へ支払う義務のある特別手当。原則として1か月分の給与相当額が支給される。

ラマダン
イスラム教徒にとっての断食月。約1か月間続き、日中の飲食を控える。経済活動や労働時間、消費行動に大きな影響を与える期間。

レバラン
ラマダン明けの祝祭。家族の帰省、贈答、衣類購入など支出が増加する時期。インドネシアでは年間最大級の消費シーズン。

UMKM
中小零細企業を指すインドネシア語の略称。国内経済の大部分を支える存在だが、資金繰りや仕入れコスト上昇の影響を受けやすい。

資金繰り
企業が現金を確保し、給与や仕入れ代金などを支払える状態を維持すること。黒字でも資金繰りが悪化すれば倒産する可能性がある。

FAQ

Q1. 本当にラマダン前に解雇は増えるのですか?
公式統計上、毎年必ず増加すると断定できるわけではありません。しかし、THR支払い前後の時期に大規模PHKが発生すると社会的注目が高まり、「ラマダン前の解雇」という印象が強く残る傾向があります。

Q2. 解雇された場合、THRは必ずもらえないのですか?
雇用終了のタイミングや契約形態によって扱いが異なります。ラマダン前に正式に雇用関係が終了している場合、THRの対象外となるケースがあります。ただし、個別の契約内容や労働法解釈によって異なるため注意が必要です。

Q3. 企業はTHRを回避するために意図的に解雇しているのですか?
一部ではそのような疑念が指摘されていますが、すべてのケースが意図的とは言えません。実際には資金繰り悪化、受注減少、原材料高騰など複合的要因が絡んでいる場合が多いです。

Q4. ラマダンは企業経営にとってマイナスなのでしょうか?
業種によります。消費財、小売、食品関連は売上増加が期待できます。一方で教育、B2B、IT開発、コンサルティングなどは業務停滞や入金遅延が起きやすく、キャッシュフローが悪化する可能性があります。

Q5. 経営者としてどのような対策が必要ですか?
年間を通じたキャッシュフロー管理、THR支払いを前提とした資金計画、売上季節変動を見越した内部留保の確保が重要です。短期的な合理性だけでなく、従業員との信頼関係を維持する中長期視点が求められます。

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