7月 28, 2024 • システム開発
7月 3, 2024 • システム開発 • by Yutaka Tokunaga
オフショア開発で失敗する10個の事例と10個の対策
目次
オフショア開発は、企業がグローバルなリソースを活用してコスト削減や専門スキルの利用を図る有効な手法ですが、多くの落とし穴が存在します。これまで安易に開発を海外のオフショア開発に成功に導くためには、様々な課題を理解し、それに対処する方法を知ることが重要です。インドネシアで10年間システム開発事業を行う弊社Timedoorの経験から、以下にオフショア開発でよく見られる10個の失敗パターンとその詳細を解説させていただきます。
オフショア開発で失敗する10個のパターン
1. 品質管理ができていない
品質管理の不備は、プロジェクト全体の成果に直接的な影響を与えます。適切な品質管理プロセスが確立されていない場合、最終的な製品にバグや欠陥が残ることが多く、これが顧客の不満や信頼性の低下を招きます。例えば、コードレビューや定期的なテストが行われていない場合、小さなエラーが大きな問題へと発展するリスクがあります。
2. 発注者側の丸投げ、明確な要件定義の欠如
プロジェクトの成功は、明確かつ詳細な要件定義に依存します。発注者からの情報提供や要件の伝達が不十分であると、開発チームは不確かな基盤の上で作業を進めることになり、結果として期待とは異なる製品が完成してしまいます。このような状況を避けるためには、プロジェクト開始前に詳細なドキュメントの準備と共有が必要です。
3. 「よしなに」でいけると思っていたら、違うものができる
「適当に」、「いい感じに」という指示は、非常に大きな誤解を生む原因となります。特に文化や業務プロセスが異なる環境下では、このような曖昧なコミュニケーションが原因で、全く意図しない方向にプロジェクトが進むことがあります。明確で具体的なガイダンスと定期的なフィードバックが重要です。
4. 言語の違いから起きる行き違い
言語の壁は、オフショア開発の大きな障害の一つです。特に技術的な詳細やプロジェクトの要件を伝える際に、言語の違いによる誤解が生じやすいです。間に入るブリッジSEや関係者が共通言語で話せることは大切ですが、それ以上に関係者全員が行き違いが起こるリスクを前提にドキュメントを整備して気をつけてコミュニケーションを取る必要があるでしょう。
5. セキュリティの問題
データ保護とセキュリティは、特に海外のチームと協力する際に重要です。海外では日本ほどセキュリティに対する意識が高くないため、管理が煩雑になっているケースが多々あります。セキュリティ対策が不十分だと、重要なビジネス情報が漏洩する恐れがあります。開発先の会社と厳格なセキュリティポリシーの実施と、定期的なセキュリティ監査が必要です。
6. ブリッジSEが機能していない
ブリッジSEは、発注者とオフショア開発チームの間のコミュニケーションを担う重要な役割です。このポジションの不備は、情報の伝達ミスや誤解を招き、プロジェクトの遅延や失敗の原因となります。適切な技術力とコミュニケーションスキルを持つブリッジSEの確保が不可欠です。またスキルがあっても複数プロジェクトで業務を抱えすぎている人もいるので注意が必要です。
7. 人件費の高騰、為替の変動
オフショア開発の魅力の一つにコスト削減がありますが、人件費の急激な上昇や為替変動は、予算計画を大きく狂わせる可能性があります。これらのリスクを管理するためには、事前に人件費の上昇や為替の変動に対しての議論をオフショア開発会社と行い、長期的な契約や為替ヘッジ戦略を考慮することが重要です。
8. 納期が守られない
プロジェクトの納期遅延は、計画の見直しや追加コストを引き起こすだけでなく、クライアントの信頼を損なう原因となります。海外では時間に関する考え方が日本と違って緩いケースがほとんどです。納期を守るためには、担当者にも時間の意識をしっかりと共有した上で、リアルタイムでのプロジェクト管理と進捗状況の透明性が求められます。
9. メンバーが流動的で知見が残らない
海外では転職をしながら給料を上げていく文化が日本よりも強いです。オフショアチームの高い離職率は、知識の伝達と蓄積を妨げ、プロジェクトの継続性に影響を与えます。安定したチーム構成を維持するための人事戦略と適切なインセンティブが必要です。
10. 契約の曖昧さ
曖昧な契約は、後の法的なトラブルの元となります。すべての契約条項を明確にし、双方の責任と期待をはっきりさせることが重要です。法的なアドバイスを得ながら、細部にわたる契約書の作成が必要です。また契約を巻いたとしてもそれが遵守されなければ意味がありません。しっかりと契約を遵守してくれそうな信頼できる開発パートナーを探す必要があるでしょう。
オフショア開発を失敗させないためのポイント
失敗のリスクがあるオフショア開発ですが、それは国内で開発をしても同様です。しっかりと準備と対策を行うことで失敗を避け強力な開発チームを海外に作ることができます。失敗を避けるために重要なポイントを以下にまとめました。
1. 依頼先の企業をしっかりと調べる
オフショア開発を依頼する前に、パートナー企業の過去の実績、評判、技術力を徹底的に調査することが重要です。信頼できる企業との協力により、多くのリスクを事前に回避できます。
2. 明確な要件定義と言語化
プロジェクトの目的、期待される成果、納期など、すべての要件を明確に定義し、文書化することで、誤解を防ぎます。これにより、開発プロセス全体を通じて一貫性と精度が保たれます。
3. 定期的なコミュニケーションとスケジュール管理
定期的な会議や進捗報告を行うことで、プロジェクトの進行状況を把握し、必要に応じて迅速に対応できます。これにより、納期遅延や予期せぬ問題を未然に防ぐことが可能です。
4. 品質管理の為のチェックリスト作成
品質基準を設定し、それに従ったチェックリストを用いて定期的に評価を行うことが、高品質な成果物を確実に得るために不可欠です。チェックリストは開発会社に丸投げではなく、一緒に作った方がいいでしょう。これにより、初期段階で問題を発見し、修正することができます。
5. 現地視察をして現地のことを理解する
時には現地を訪れ、開発現場を直接見学してそこで働く人たちやオフィス環境を確認した方がいいでしょう。直接チームとコミュニケーションを取ることで、文化的な違いや作業環境を理解することが重要です。これにより、関係者とより良い協力関係が築けます。
6. 信頼できるブリッジSEのアサイン
有能なブリッジSEを配置することで、コミュニケーションの橋渡しを効果的に行い、文化や言語の障壁を乗り越えます。これは、双方の理解を深め、成功へと導く鍵となります。プロジェクト開始前に担当するブリッジSEと面談するなど事前に確認した方がいいでしょう。
7. 下請け扱いせずに自社の開発メンバーとして扱う
自分たちより立場の低い、いつでも切り替えられる下請けとして考えると、開発会社側もそれ相応の体制や考え方で発注先を見てしまいます。オフショアチームを単なる下請けではなく、パートナーとして尊重し、適切なトレーニングとサポートを提供することで、プロジェクトに対するコミットメントを高める方が有効でしょう。
8. セキュリティ対策の強化徹底
データの保護とセキュリティの強化は、オフショア開発において最も重要な側面の一つです。最新のセキュリティ技術とプロトコルを導入し、定期的な監査を行うことでリスクを最小限に抑えます。
9. ドキュメント化の徹底
すべてのプロセスと変更を詳細に文書化し、適切な記録を保持することで、プロジェクトの透明性を高め、将来的なトラブルを防ぎます。
10. 契約の明確化
契約内容を具体的に明確にし、双方の責任と期待を正確に反映させることが、後のトラブルを避けるために非常に重要です。プロジェクトのすべての側面をカバーする詳細な契約書が必要です。
リスクを取ってでもオフショア開発に挑戦すべき理由
オフショア開発は多くのリスクを伴いますが、それにもかかわらず挑戦する価値がある理由を以下に挙げます。
1. システム部門のコスト削減
国内ではIT人材採用のコストが年々上がってきており、高額の給与を支払わないとエンジニアリソースを確保できません。オフショア開発は、人件費や運営コストの削減を通じて企業に大きな財務的利益をもたらします。ソフトウェア開発やシステム保守の費用が大幅に削減されるため、企業はこの余剰資金を他の戦略的な活動やイノベーションに再投資することが可能です。
2. 日本のIT人材不足
日本国内のIT人材不足は深刻な問題となっており、多くの企業が必要な技術者を確保するのに苦労しています。この問題を解決する手段としてオフショア開発は非常に有効です。海外の優秀なエンジニアやデベロッパーを活用することで、プロジェクトを迅速かつ効果的に進めることができます。また、異なるバックグラウンドを持つ人材との協働は、プロジェクトに新しい視点やアイデアをもたらすことができます。
3. リソースの柔軟な活用
オフショア開発を利用することで、需要の変動に応じて迅速にリソースを調整することが可能です。これにより、企業はプロジェクトのスケーラビリティとアジリティを向上させることができます。例えば、大規模なプロジェクトが突然発生した場合でも、迅速に人材を増強することができ、逆にプロジェクトが終了した場合には無駄な人件費を抑えることができます。
4. 企業としてのグローバル化
オフショア開発は、企業がグローバル市場に適応し、国際的な競争力を持つ企業に成長するための重要なステップです。異なる文化や市場に対する理解を深めることができ、多様な視点からビジネス戦略を策定することが可能になります。これにより、新たな市場への進出や、現地の顧客ニーズに即した製品・サービスの開発が容易になります。また、グローバルなネットワークを構築することで、ビジネスチャンスを広げることができます。
以上の詳細な解説を通じて、オフショア開発のリスクとその対策、そして挑戦する理由について理解を深めることができます。これらの知識を活用し、成功に導く戦略を立てることが重要です。
インドネシアで10年間の開発実績 timedoor
最後に少しだけ宣伝させてください。弊社Timedoorは、インドネシアで10年以上にわたり、インドネシア国内の企業様向けのWebサイトやスマホアプリの開発だけでなく、日本企業様のオフショア開発も数多く手がけてきました。私たちのチームでは、日本人担当者がクライアントとインドネシア人エンジニアの間に立ち、言語の障壁を取り除き、プロジェクトがスムーズに進行するよう努めています。
当社のサービスは、人月単価20万円〜30万円で提供しており、Webやアプリのフロントエンド、バックエンドエンジニアをラボ型開発として、貴社のプロジェクトチームに組み込むことが可能です。お客様のニーズに応じて、専属チームの体制を柔軟に構築し、必要に応じて人材の採用やトレーニングもサポートいたします。
弊社は、インドネシアのバリ島でオフショア開発サービスを展開しています。バリ島は世界有数のリゾート地として知られており、その快適な環境は観光客だけでなく、プログラマーやノマドワーカーにも理想的なワークスポットとして高く評価されています。
まとめ
オフショア開発には多くのメリットと同時にリスクも伴います。コスト削減や高度な技術リソースの利用が可能ですが、品質管理やコミュニケーションの課題、セキュリティリスクなどをしっかりと理解し対策を講じることが成功の鍵です。ニアショア開発と比較し、それぞれの特徴を把握して適切な戦略を選択することが重要です。
また、成功するオフショア開発のためには、信頼できるパートナー企業の選定、明確な要件定義、定期的なコミュニケーション、現地視察、セキュリティ対策の徹底、契約内容の明確化など、様々なポイントに注意を払う必要があります。
オフショア開発のリスクを取ることで、システム部門のコスト削減、日本のIT人材不足の解消、リソースの柔軟な活用、企業としてのグローバル化といった多くの利点を享受できるため、これからも企業にとって重要な戦略の一つとなるでしょう。
弊社Timedoorは、これらの課題を乗り越えるためのサポートを提供し、企業様の成功をお手伝いいたします。オフショア開発を検討されている方は、ぜひお問い合わせください。
本ブログで使った用語の解説
オフショア開発 企業が国外のリソースを利用してシステムやソフトウェアの開発を行う手法です。これにより、コスト削減や専門スキルの活用が期待できます。
品質管理 プロジェクトの進行中に行われる製品の品質を確保するためのプロセスや活動です。コードレビューや定期的なテストが含まれます。
要件定義 プロジェクト開始前に、システムやソフトウェアが満たすべき要件や仕様を明確にする作業です。
ブリッジSE 発注者とオフショア開発チームの間でコミュニケーションを橋渡しするエンジニアのことです。技術力とコミュニケーションスキルが求められます。
為替ヘッジ 為替レートの変動リスクを回避するために行われる金融取引のことです。オフショア開発のコストを安定させるために利用されます。
セキュリティ監査 情報セキュリティの状況を確認し、リスクを評価するために行われる監査です。定期的な監査が重要です。
FAQ
Q1: オフショア開発を利用することで得られる最大のメリットは何ですか? A1: 最大のメリットはコスト削減です。人件費や運営コストの削減を通じて企業に大きな財務的利益をもたらします。また、専門スキルの活用やリソースの柔軟な調整も大きなメリットです。
Q2: オフショア開発の主なリスクは何ですか? A2: 主なリスクは品質管理の不備、言語や文化の違いによるコミュニケーションの障害、セキュリティ問題、納期遅延、人材の流動性などです。これらのリスクを管理するためには、適切な対策が必要です。
Q3: オフショア開発で成功するための鍵は何ですか? A3: 成功の鍵は明確な要件定義、定期的なコミュニケーション、品質管理の徹底、信頼できるブリッジSEの配置、そして契約の明確化です。また、現地視察やパートナー企業の徹底調査も重要です。
Q4: 日本のIT人材不足をオフショア開発で解決する方法は? A4: 海外の優秀なエンジニアやデベロッパーを活用することで、日本国内の人材不足を補うことができます。これにより、プロジェクトを効率的かつ効果的に進めることが可能です。
Q5: オフショア開発を始める前に考慮すべき点は何ですか? A5: パートナー企業の過去の実績、技術力、評判を徹底的に調査し、明確な要件定義とドキュメント化を行うことが重要です。また、セキュリティ対策の強化や長期的な契約の検討も必要です。
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